ブリットポップの二大巨頭と言えばBLUR〔ブラー〕とOASIS〔オアシス〕であることは多くのロック・ファンにとって共通の認識だろう。
しかし、ブリットポップ・ムーヴメントの勃発は1994年頃であり、BLURはそれよりも少しだけ前から、OASISはそれよりもほんの少しだけ前から活動している。
筆者にとって、ブリットポップ・ムーヴメントの真っ只中から登場したアーティストとして真っ先に思い浮かべるのはSUPERGRASS〔スーパーグラス〕だ。
そして、SUPERGRASSは他のブリットポップのアーティストを寄せ付けることなく、早々にブリットポップから抜け出し、UKロックのアイコンになった。
同じ時期にこれもまたブリットポップの真っ只中から出てきたMENSWEAR〔メンズウェア〕もデビューし、SUPERGRASSと比較されたりもしたが、MENSWEARが急激に下降線を辿っていったのに対し、SUPERGRASSは鰻上りに評価を高めていった。
残念ながらSUPERGRASS は2010年に解散してしまったが、SUPERGRASSの活動期間中に彼らのことをブリットポップのアーティストとして捉えているロック・ファンは殆どいなかっただろう。
筆者もSUPERGRASSのことをブリットポップのアーティストとして聴いていたのは1stシングル"Caught By The Fuzz"と2ndシングル"Mansize Rooster"までだ。
今回取り上げたのはSUPERGRASSの1stアルバム「I SHOULD COCO」だ。
「I SHOULD COCO」を聴く前に、既にテレビの洋楽番組で"Caught By The Fuzz"と"Mansize Rooster"を聴いていたのだが、「メチャクチャ良い曲を書く生きの良いバンドが出てきてな」と思う反面、「この2曲だけで才能を使い果たして消えていくブリットポップ・バンドの一つかな」とも思っていた。
しかし、「I SHOULD COCO」は、そんな筆者の予想を遥かに上回るアルバムだった。
どこから聴いてもポップでキャッチーなロックン・ロールが飛び出す名盤であり、それでいて、この1stアルバムくらいでは才能が枯渇しようもない懐の深さも同時に感じさせる名盤だったのである。
筆者の予想通りと言うか、SUPERGRASSの才能からすれば当たり前だったのだが、その後の彼らはブリットポップという小さな枠組みにはとても収まり切れないバンドに成長し、1990年代から2000年代にかけての英国を代表するバンドとしての存在感を示し続けたのである。