かつて毎月購入していた洋楽雑誌の一つであるMUSIC LIFEは筆者にとって貴重な情報源だった。
筆者はこのMUSIC LIFEを1982年頃から毎月購入し始めたのだが、1980年代初期のMUSIC LIFEの巻末特集で、1960年代の英国のアーティストをジャンル別に紹介する記事が掲載されていた。
記憶が曖昧だが、当時は第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン(DURAN DURAN〔デュラン・デュラン〕やCULTURE CLUB〔カルチャー・クラブ〕等)が米国チャートを賑わしていた時代なので、ブリティッシュ・ロックのルーツを当時の若い世代(つまり当時中学生だった筆者の世代)に紹介するような記事だったと思う。
特集は時系列でジャンル別にアーティストを紹介していたのでマージー・ビート(THE BEATLES〔ザ・ビートルズ〕やTHE ROLLING STONES〔ザ・ローリング・ストーンズ〕等)から始まるわけだが、途中で「3大ブリティッシュ・ブルース・ロック・バンド」として、CHICKEN SHACK〔チキン・シャック〕、SAVOY BROWN〔サヴォイ・ブラウン〕と共に紹介されていたのが今回取り上げたFLEETWOOD MAC〔フリートウッド・マック〕だ。
当時の筆者はブルースと言われて思いつくのは歌謡曲の"宗右衛門町ブルース"と"伊勢佐木町ブルース"くらいしかなく、それが何故ロックと結びついてブルース・ロックになるのか不思議に思ったものである。
ブルースがどういう音楽であるのかを知ったのは高校生になってからであり、当時通っていた輸入レコード店の主からRobert Johnson〔ロバート・ジョンソン〕を教えてもらってからだ。
そして、今回取り上げたFLEETWOOD MACの2ndアルバム「MR. WONDERFUL」も同じ輸入レコード店の主に薦められて買ったレコードである。
アコースティック・ギター一本で弾き語りをするRobert Johnsonのデルタ・ブルースを聴いていた当時の筆者にとって、エレクトリック・ギターを取り入れたバンドで演奏するFLEETWOOD MACのブルース・ロックは随分とロックに聴こえたものである。
しかし、色々な音楽を聴くようになった今の筆者の耳でこのアルバム「MR. WONDERFUL」を聴くと、むしろロックらしさは希薄でブルースそのものに聴こえてしまう。
当時は「殆どの曲が米国のブルースのカヴァーなんだろうな」と思い込んでいたのだが、改めて作曲者を見てみると、収録されている12曲の内、10曲がメンバーによるオリジナルであることに驚いた。
これはブルース入門に最適なアルバムである。