「Punk is attitude, not style(パンクはスタイルではない、姿勢だ)」・・・これはJoe Strummer〔ジョー・ストラマー〕が言った有名な言葉であり、パンクの本質を見事に言い切った名言である。
1977年に英国で興ったパンク・ムーヴメントは極めて個性的なバンドを輩出した。
SEX PISTOLS〔セックス・ピストルズ〕、THE CLASH〔ザ・クラッシュ〕、THE DAMNED〔ザ・ダムド〕、THE STRANGLERS〔ザ・ストラングラーズ〕、THE JAM〔ザ・ジャム〕等々、列挙するときりが無いのでこれくらいにしておくが、とにかく一つとして似たバンドが無く、それぞれが唯一無二のバンドばかりだ。
しかし、今だから白状できるのだが初めて上記のバンドのレコードを聴いた時は、それぞれの音楽性が違い過ぎて、パンクとはどのような音楽なのか、その定義が分からなかった。
当時はJoe Strummerの名言もまだ知らなかったので、パンクとは音楽性とそれに付随するファッションを指す言葉だと思っていたのである。
SEX PISTOLSとTHE DAMNEDの曲を聴いた時はパンクに対して持っていたイメージに近かったのだが、THE CLASHとTHE STRANGLERSとTHE JAMの曲を聴いた時はイメージとのズレを感じた。
その後、購入した「ロック名盤辞典」のような本でハードコア・パンクなるものがあることを知り、輸入レコード店で購入したのが今回取り上げたDISCHARGE〔ディスチャージ〕の1stアルバム「HEAR NOTHING SEE NOTHING SAY NOTHING」だ。
このアルバムを初めて聴いた時に感じたことは、イメージしていたパンクそのものであるということだ。
DISCHARGEは、GBH〔ジー・ビー・エイチ〕、THE EXPLOITED〔ジ・エクスプロイテッド〕と並び、英国3大ハードコア・パンク・バンドと言われているが、当時の筆者のようなロックの初心者がイメージするパンクとは、オリジナル・パンクよりも、むしろ、こういったハードコア・パンクの方なのではないだろうか?
DISCHARGEがこのアルバムで鳴らしている音は実に分かり易い。
彼らはこのアルバムの中で、後にDビートと呼ばれる激烈ながらも軽快な2ビートにのせて、反戦・反核・反権力を叫んでいる。
齢五十にもなると、激烈な音楽を聴くのが辛くなってくるのだが、このアルバムを聴くと十代の頃に持っていた権力に対する嫌悪感が蘇ると同時に、その権力に屈している今の自分に対する嫌悪感を禁じ得ないのである。