KILLING JOKE〔キリング・ジョーク〕は、今回取り上げている12thアルバム「HOSANNAS FROM THE BASEMENTS OF HELL」を聴くまでは、ロックを聴き始めた遥か昔(たぶん1980年代中頃)に1stアルバム「KILLING JOKE」を聴いたのが最後だった。
1stアルバム「KILLING JOKE」はそれなりに愛聴盤になっていたのだが、それ以降、何となく聴くタイミングを逃してしまっていた。
昔はロックを聴くということはアルバムを聴くということに等しかった時代であり、アルバムを聴くということは40分ほど集中して音楽を聴くということに他ならず、けっこうなエネルギー消費を要求される作業なのである。
更にアルバムとは1980年代当時で2,800円くらいする高価な品物であり、現在(2020年)のような聴き放題の音楽配信サービスなど存在しない時代では、聴きたくても聴くことが出来ず、いつの間にか聴かなくなってしまうアーティストというのも少なくなかった。
KILLING JOKEとは筆者にとって、その類のアーティストだったのである。
それが何故久しぶりにKILLING JOKEのアルバムを買って聴いてみたくなったのかと言えば、本作に参加しているPaul Raven〔ポール・レイヴン〕の訃報(2007年永眠)を知ったからだ。
Paul RavenはKILLING JOKEに比較的永く在籍し、その後はMINISTRY〔ミニストリー〕やPRONG〔プロング〕等、多くのインダストリアル系グループで活躍してきたベーシストである。
筆者にとってPaul Ravenはというベーシストを意識した切っ掛けは、自分の最も好きなバンドであるTHE DOGS D'AMOUR〔ザ・ドッグス・ダムール〕のシンガー/ギタリストのTylaがキャリアの初期において在籍していたKITSCH〔キッチュ〕というバンドにPaul Ravenも在籍していたからだ。
Paul Ravenの訃報を受け、急に彼のプレイを聴いてみたくなり購入したのが今回取り上げている「HOSANNAS FROM THE BASEMENTS OF HELL」なのである(当時、Paul Ravenの参加作としてはこのアルバムが最も入手し易かった)。
一応、シンセサイザーも随所に使われており、インダストリアル・メタルにカテゴライズできる作品だと思うのだが、ベースもドラムも人が演奏しているため、それほどマシーナリーな質感は無い。
むしろVictor Safonkin〔ビクター・サフォンキン〕が描いたアルバム・カヴァーからイメージできるゴシックな質感が強いため、インダストリアルというよりはゴシック・ロックに近い音を楽しめる一枚になっている。