今回取り上げているSIXPENCE NONE THE RICHER〔シックスペンス・ノン・ザ・リッチャー〕のアルバムで聴いたことがあるのは2枚のみ。
3rdアルバム「SIXPENCE NONE THE RICHER」と、今回取り上げている4thアルバム「DIVINE DISCONTENT」だ。
何故この2枚のみを聴いているのかと言えば、「SIXPENCE NONE THE RICHER」ではTHE LA'S〔ザ・ラーズ〕の"There She Goes"、「DIVINE DISCONTENT」ではCROWDED HOUSE〔クラウデッド・ハウス〕の"Don't Dream It's Over"をカヴァーしているからだ。
筆者はSIXPENCE NONE THE RICHERに限らず女性ヴォーカルものが好きなので女性のソロ・アーティストや女性がヴォーカルを務めるバンドへの評価が甘くなりがちなのだが、こういう永遠の名曲~Timeless melody~をカヴァーするのは流石にあざと過ぎる感じがしなくもない。
しかし、SIXPENCE NONE THE RICHERの"There She Goes"と"Don't Dream It's Over"に関しては、これほどの珠玉の名曲となると、よほどスカタンなアレンジでもしないかぎりは失敗しないということのお手本のようなカヴァーなのである。
正直なところ、"There She Goes"に関しては、筆者はLee Mavers〔リー・メイヴァース〕の声があまり好きではないのでSIXPENCE NONE THE RICHERのカヴァーの方が聴いていて心地よく感じる。
"Don't Dream It's Over"に関しては、この曲がリリースされた年(1986年)に初めて聴いてから現在に至るまで筆者が愛してやまない曲であり、名曲故に様々なミュージシャンにカヴァーされた曲だが、「このカヴァーは良いな」と思えたのはPaul Young〔ポール・ヤング〕だけだった。
正直なところ、Paul Youngには申し訳ないのだが、Paul Youngに期待するのは彼のオリジナル曲ではなく、「あの名曲をPaul Youngの歌唱力で聴いてみたい」ということなのだが。
兎にも角にも、筆者が"Don't Dream It's Over"という曲のカヴァーに求める評価は厳しかったのだが、SIXPENCE NONE THE RICHERのカヴァーはPaul Young以外で初めて良いと感じられるカヴァーだったのである。
確かにこの曲はカヴァーして失敗し難い曲だがここまで成功させるのは凄い。
そして、この"Don't Dream It's Over"のカヴァーが収録されている「DIVINE DISCONTENT」が凄いのは、これほど他の曲を殺してしまいそうな名曲が4曲目に収録されているにも関わらず、この曲以降も最後まで聴けてしまえるところだ。
このアルバムは全13曲収録されているのだが、"Don't Dream It's Over"より後に収録されている9曲も実はかなりの佳曲揃いなのである。