このブログではSPANDAU BALLET〔スパンダー・バレエ〕、DURAN DURAN〔デュラン・デュラン〕、CULTURE CLUB〔カルチャー・クラブ〕、KAJAGOOGOO〔カジャグーグー〕、ABC〔エービーシー〕等、かつてニュー・ロマンティックと呼ばれたアーティストを取り上げてきた。
いずれもニュー・ロマンティックが勃発した1980年代初頭の英国における人気バンドである。
しかし、本当の意味でこのニュー・ロマンティックというムーヴメントを代表する存在はVISAGE〔ヴィサージ〕のSteve Strange〔スティーヴ・ストレンジ〕と、ADAM AND THE ANTS〔アダム・アンド・ジ・アンツ〕のAdam Ant〔アダム・アント〕なのではないかと筆者は思っている。
今回取り上げているのは、そのADAM AND THE ANTSの2ndアルバム「KINGS OF THE WILD FRONTIER」であり、これはVISAGEの1stアルバム「VISAGE」と並ぶニュー・ロマンティックを代表する名盤だ。
ニュー・ロマンティックというのは、当時、煌びやかな衣装を身に纏っていたアーティストを英国の音楽メディアがカテゴライズした呼称であり、音楽的にはこれと言えるような共通点がある訳ではなく、そういう意味では1970年代初頭に興ったグラム・ロックに近い。
ただし、ニュー・ロマンティックの音楽性に無理やり共通点を見出すなら、シンセポップやブルーアイド・ソウル等、「ポップ・ミュージック」であると言えなくもない。
これは、つまり、ニュー・ロマンティックにはロック的な要素が薄いということになるのだが、ADAM AND THE ANTSは、このムーヴメントの中では異質なくらいロックらしいエッジやダイナミズムを備えたアーティストだと言える。
ADAM AND THE ANTSがこの「KINGS OF THE WILD FRONTIER」で聴かせてくれるのはギター、ベース、ドラムスというロック・バンドの基本フォーマットによる演奏であり(ただし、ドラマーは二人いる)、ニュー・ウェイヴやポストパンクからの影響による民族音楽的なリズムはあるものの、躊躇なくロックと言いきれるサウンドである。
ニュー・ロマンティックのアーティストの多くがDavid Bowie〔デヴィッド・ボウイ〕とROXY MUSIC〔ロキシー・ミュージック〕というアート・ロック2大巨頭の影響下にあるのとは異なり、ADAM AND THE ANTSはブギーのアイドルT. REX〔T・レックス〕の影響下にあると言えるのではないだろうか?
音楽的にはT. REXのようなブギーではないのだが、ロック・バンドとしてのフォーマットに忠実なADAM AND THE ANTSの音楽は意外なほど古臭さを感じさせないのである。