Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0290) MINK, RAT OR RABBIT / THE DETROIT COBRAS 【1998年リリース】

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今回取り上げているTHE DETROIT COBRAS〔ザ・デトロイトコブラス〕は、その名のとおり米国ミシガン州デトロイト出身のバンドだ。


5人組のバンドなのだが、ヴォーカルのRachel Nagy〔レイチェル・ナギー〕とギターのMaribel Ramirez(マリベル・ラミレズ)という女性二人がバンドの中心となっており、この二人以外は度々メンバー・チェンジを行っている。


このバンドを知った切っ掛けは、同じくデトロイト出身のガレージ・ロック・バンドTHE DIRTBOMBS〔ザ・ダートボムズ〕のディスコグラフィを追いかけている時にTHE DIRTBOMBSの周辺のバンドとして検索にヒットしたからだ。


THE DETROIT COBRASの音楽性もTHE DIRTBOMBSと同様、ガレージ・ロックなのだが、THE DETROIT COBRASの特徴的なところはリリースしている楽曲の殆どがカヴァーだということだ。


今回取り上げている1stアルバム「MINK, RAT OR RABBIT」も全ての収録曲がカヴァーであり、THE MARVELETTES〔ザ・マーヴェレッツ〕、THE SHIRELLES〔ザ・シュレルズ〕、THE SHANGRI-LAS〔ザ・シャングリラス〕といった有名どころから、このアルバムで初めて知ったWikipediaの日本語版ページすらないようなアーティストまでカヴァーしているのだが、その多くは往年のソウルやR&Bある。


この手法はなかなか面白い。


1962年にTHE BEATLESザ・ビートルズ〕が登場して以降、ロック・バンドは自作曲を演奏することが必須のごとくなっているが、それ以前の1950年代は職業作曲家が書いた曲をアーティストが演奏したり歌ったりする方が主流だった。


THE DETROIT COBRASの場合は彼女たち用の曲を職業作曲家に書いてもらっているわけではなく、既存の楽曲をカヴァーしているわけだが、ロック・バンドをやるのに自作曲を書くことが必須ではないことを気付かせてくれた。


そう言えば、筆者が敬愛するソングライターである元HANOI ROCKSハノイ・ロックス〕のAndy McCoy〔アンディ・マッコイ〕が「HANOI ROCKSで演奏する曲が必ずしも俺の書いた曲である必要は無い」と言ってことを今思い出したのだが、その柔軟な姿勢もロックには必要なのである。


THE DETROIT COBRASのRachel NagyとMaribel Ramirezの二人がどのようなバックグラウンドを持っているのか全く知らないのだが、このアルバムを聴いている限り、子供の頃からソウルやR&Bに親しんできたように思われる。


デトロイトという都市は古くからロックの盛んな都市として有名だが、THE DETROIT COBRASもその系譜を受け継ぐバンドなのである。