アーティスト | 曲名 / 収録アルバム / リリース / コメント | 出身国 |
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CIRCUS OF POWER〔サーカス・オブ・パワー〕 | 【 曲 名 】Don't Drag Me Down 【 収録アルバム 】VICES 【 リリース 】1990年 【 コメント 】 1stアルバムにはバラードは収録されていなかったので、もしかするとレコード会社からの圧力で書いた曲なのだろうか? もし、そうだとしても、或いは、そうではなくても、この曲が良い曲であることに変わりはない。 ニューヨークのバンドだが、この曲だけ聴いた人は南部出身だと勘違いするのではないかと思えるほどサザン・テイストが溢れる曲だ。 歌詞の意味はイマイチ分かり難いのだが、怠惰な女性にむけて「俺を引き摺り込まないでくれ」と言っているように聴こえる。 |
米国 |
ENUFF Z'NUFF〔イナフ・ズナフ〕 | 【 曲 名 】Time to Let You Go 【 収録アルバム 】STRENGTH 【 リリース 】1991年 【 コメント 】 バラードという意味では1stアルバム収録の"Fly High Michelle"の方がこのリストに入れるには適切なのかもしれない。 そもそも筆者はポピュラー音楽におけるバラードの定義というものを正確に理解していないのだが、スロー・テンポの曲ならバラードと言っても差し支えないと思っているので大好きなこの曲をリストに入れてみた。 このバンドの曲はDonnie Vie〔ドニー・ヴィー〕& Chip Z'Nuff〔チップ・ズナフ〕というTHE BEATLES〔ザ・ビートルズ〕を敬愛するソングライター・チームによって書かれているが、Donnie Vieのが一人で書いた曲はJohn Lennon〔ジョン・レノン〕度が増す傾向にある。 John Lennonのアウトテイクだと言われると信じてしまいそうな曲である。 |
米国 |
FIREHOUSE〔ファイアーハウス〕 | 【 曲 名 】"Love of a Lifetime" 【 収録アルバム 】FIREHOUSE 【 リリース 】1990年 【 コメント 】 FIREHOUSEはグラム・メタルが衰退しゆく1990年代になってからデビューしたバンドだが、90年代デビュー組としては、このリストでも取り上げているSLAUGHTER〔スローター〕と並び、大健闘したバンドである。 何故そんな逆風の中でこのバンドが大健闘できたのか、その答えはこの曲を聴けば直ぐに分る。 とにかくキャッチーで、多くの人の共感を得易い良い曲が書けるからである。 最初は3rdアルバム「3」に収録されている"I Live My Life for You"をリストに入れようと思っていたのだが、やはり鮮烈なデビュー・アルバムに収録されているこの曲を入れることにした。 |
米国 |
FLIES ON FIRE〔フライズ・オン・ファイア〕 | 【 曲 名 】Blues #33 【 収録アルバム 】OUTSIDE LOOKING INSIDE 【 リリース 】1991年 【 コメント 】 この曲は今回作っているリストの中では唯一リアルタイムで聴いていない曲であり、初めて聴いたのは2000年代後半になってからだ。 ブルース・テイストの強いロックン・ロール・バンドによる、そのタイトルどおりのブルースであり、アルバムのラストを飾るに相応しい曲だ。 全身全霊で魂を絞り出すようにぶつけてくるヴォーカルが素晴らしい。 2020年現在でバンドは既に解散しているので無理な願いだが、ぜひライヴで聴いてみたい曲である。 |
米国 |
GUNS N' ROSES〔ガンズ・アンド・ローゼズ〕 | 【 曲 名 】Don't Cry (Original) 【 収録アルバム 】USE YOUR ILLUSION I 【 リリース 】1991年 【 コメント 】 GUNS N' ROSESの曲を聴いて筆者が特に良いと感じる曲の作曲者を見てみると、そこには必ずIzzy Stradlin〔イジー・ストラドリン〕の名を見つけることが出来る。 この"Don't Cry"もAxl Rose〔アクセル・ローズ〕とIzzy Stradlinのペンによる曲だ。 Axl Rose一人により書かれた"November Rain"や"Estranged"ほど大仰でもなく、バンド名義で書かれた"Patience"ほど素朴でもない。 丁度良い匙加減のラヴ・バラードである。 |
米国 |
LITTLE CAESAR〔リトル・シーザー〕 | 【 曲 名 】Ballad of Johnny 【 収録アルバム 】INFLUENCE 【 リリース 】1992年 【 コメント 】 この曲も上記のCIRCUS OF POWERと同様、曲だけ聴いたら南部出身だと勘違いしてしまいそうなサザン・テイスト溢れるバラードだ(こちらはロサンゼルスのバンドだ)。 こういう厳つい奴らが聴かせてくれるバラードはバンドのイメージにそぐわないところが逆に胸に染みる。 この曲に纏わるエピソードは全く不明なので曲中に登場するJohnnyが誰を指しているのか分からないのだが、この曲がリリースされる前年(1991年)にJohnny Thunders〔ジョニー・サンダース〕が他界しているので、筆者にはどうにもJohnny Thundersのイメージが被ってしまう。 曲調も何となく逝ってしまった人を送っているように聴こえなくもない。 |
米国 |
THE QUIREBOYS〔ザ・クワイアボーイズ〕 | 【 曲 名 】I Don't Love You Anymore 【 収録アルバム 】A BIT OF WHAT YOU FANCY 【 リリース 】1990年 【 コメント 】 この曲はブルーアイド・ソウルと言ってしまっても差し支えないのではないだろうか。 このバンドは本来の持ち味であるロックン・ロール・バンドとしてのラフな部分を持ちながら、この曲のようにかなり洗練されたアダルトな曲も聴かせてくれる。 この曲も少しアレンジを変えたらSIMPLY RED〔シンプリー・レッド〕の曲になりそうだ。 ちょっとしたボタンの掛け違いで男女関係はいとも簡単に破局するものだが、この曲も、もう元には戻れなくなった男と女についての歌だ。 |
英国 |
RATT〔ラット〕 | 【 曲 名 】Givin' Yourself Away 【 収録アルバム 】DETONATOR 【 リリース 】1990年 【 コメント 】 バラードを頑なに拒んできたRATTが5thアルバム「DETONATOR」に収録したバンド史上初のバラードである。 この時代のグラム・メタル・バンドがバラードをやらないというのは異例のことだと思うのだが、つまり、それはバラードに頼る必要がないほどラットン・ロールというものが強力だったことの証でもある。 この曲はBAD ENGLISH〔バッド・イングリッシュ〕の"When I See You Smile"や、AEROSMITH〔エアロスミス〕の"I Don't Want to Miss a Thing"の作曲者として有名なDiane Warren〔ダイアン・ウォーレン〕と、Stephen Pearcy〔スティーヴン・パーシー〕の共作曲だ。 Stephen Pearcyには少し申し訳ないのだが、この曲はRATT というよりもDiane Warrenというソングライターのスキルの高さが分かる曲なのである。 |
米国 |
SAIGON KICK〔サイゴン・キック〕 | 【 曲 名 】Love Is on the Way 【 収録アルバム 】THE LIZARD 【 リリース 】1992年 【 コメント 】 このバンドは日本では殆ど知られていなさそうだが、この曲は全米チャートで12位を獲得したヒット曲である。 愛をテーマにした曲ではあるが、甘く多幸感のある曲ではなく、非常に荘厳で哲学性を感じさせる曲だ。 この曲で歌われている愛は、男女間の愛とも取れるが、もっと広い意味での愛と取ることもできるような気がする。 シンガーのMatt Kramer〔マット・クレイマー〕と、ギタリストのJason Bieler〔ジェイソン・ビーラー〕によるコーラスが美しい。 |
米国 |
SLAUGHTER〔スローター〕 | 【 曲 名 】Fly to the Angels 【 収録アルバム 】STICK IT TO YA 【 リリース 】1990年 【 コメント 】 ロック・シーンのトレンドがハード・ロック/ヘヴィ・メタルからグランジ/オルタナティヴ・ロックに移る直前にデビューしたバンドだが、このバンドはそんな逆風の吹く中で大健闘したバンドだ。 この曲はバラードというよりは、スロー・テンポのハード・ロックと言った方が正しいのかもしれない。 米国のバンドらしいスケールの大きさを感じさせる曲であり、聴いていると別世界につれて行かれる錯覚に陥る。 歌メロというよりは、楽曲のアンサンブルで聴かせてくれる曲である。 |
米国 |
THUNDER〔サンダー〕 | 【 曲 名 】Love Walked In 【 収録アルバム 】BACKSTREET SYMPHONY 【 リリース 】1990年 【 コメント 】 この曲はブリティッシュ・ハード・ロック・バンドがやるバラードとして、非の打ち所がない曲である。 FREE〔フリー〕~BAD COMPANY〔バッド・カンパニー〕といったブリティッシュ・ブルース・ロック~ブリティッシュ・ハード・ロックの系譜を受け継ぐ曲であり、ギター・ソロからはJimmy Page〔ジミー・ペイジ〕の影響も感じ取れる。 ヴォーカルはPaul Rodgers〔ポール・ロジャース〕やDavid Coverdale〔デイヴィッド・カヴァデール〕からの影響を隠さない分かり易さが良い。 こういうルーツに根差した曲作り、演奏、歌唱ができるバンドが今の英国には殆どいなくなってしまった。 |
英国 |
VAIN〔ヴェイン〕 | 【 曲 名 】Crumpled Glory 【 収録アルバム 】MOVE ON IT 【 リリース 】1994年 【 コメント 】 VAINの曲はバラード以外でも大抵の場合、どこか哀愁を帯びた曲が多く、一筋縄ではいかないメロディにDavy Vain〔デイヴィ・ヴェイン〕というソングライターの非凡な才能が感じられる。 この曲はスロー・テンポなのだが、切々と歌い上げている感じがしないので、聴く人によってはバラードには聴こえないかもしれない。 "Crumpled Glory (しわくちゃの栄光)"というタイトルからは成功や勝者という言葉からは程遠いものをイメージさせられる。 実際のところ、この曲の歌詞は「人生は望み通りには行かない」という内容であり、そこはかとなく漂う無常観が聴く者の心の奥底に入り込んでくるのである。 |
米国 |
WHITE LION〔ホワイト・ライオン〕 | 【 曲 名 】You're All I Need 【 収録アルバム 】MANE ATTRACTION 【 リリース 】1991年 【 コメント 】 MÖTLEY CRÜE〔モトリー・クルー〕の有名なバラードと同じタイトルだが、この曲はWHITE LIONのオリジナルであり、MÖTLEY CRÜEのカヴァーではない。 "You're All I Need"というタイトルどおり、恋をすれば誰もがこの曲のように「あなたは私の求めるものの全て、欲しいものはあなただけ」という思いになるだろう。 この歳になっても(2020年3月現在で50歳)、こんな甘いラヴ・バラードを聴くと、うっとりとしてしまうものである。 このバンドのギタリストVito Bratta〔ヴィト・ブラッタ〕はタッピングの名手だが、この曲で聴けるアコースティック・ギターもまた美しくて素晴らしい。 |
米国 |
THE WILDHEARTS〔ザ・ワイルドハーツ〕 | 【 曲 名 】Bad Time to Having a Bad Time 【 収録アルバム 】Sick of Drugs(シングル) 【 リリース 】1996年 【 コメント 】 この曲はシングル"Sick of Drugs"に収録されてリリースされた曲だと思うのだが、グレイテスト・ヒッツ・アルバム「THE BEST OF THE WILDHEARTS」の日本盤にも収録されている。 独特の倦怠感のある曲であり、やるべき事を全て終えて、あとはもう寝るだけという時に聴きたくなる曲だ。 Ginger〔ジンジャー〕というソングライターは何とも掴み所のない人である。 このバンドの音楽性は、THE BEATLES〔ザ・ビートルズ〕 meets METALLICA〔メタリカ〕という言葉で説明されることが多いが、この曲のようなスロー・ナンバーを聴いていると、その二つのビッグ・アーティストよりも、THE REPLACEMENTS〔ザ・リプレイスメンツ〕からの影響の方が大きいような気がする。 |
英国 |
WINGER〔ウィンガー〕 | 【 曲 名 】Miles Away 【 収録アルバム 】IN THE HEART OF THE YOUNG 【 リリース 】1990年 【 コメント 】 WINGERはハード・ロック/ヘヴィ・メタルにカテゴライズされているバンドだが、この曲にはその要素が殆ど無い。 ぎりぎりパワー・バラードと言えなくもないが、これはもう非常に良く出来たAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)である。 記録を見てみると全米チャートで12位まで上がった曲であり、WINGERのシングルの中では最も成功したシングルだが、もし、この曲をポップ系のソロ・シンガーに提供していたとしても同じくらいヒットしていたのではないだろうか。 そんなことを想像してしまうほど完成度の高い曲なのである。 |
米国 |
引き続き番外編としてバラード・リストを作ってみた。
選んだ曲はロックン・ロールとグラム・メタルにカテゴライズできるアーティストの曲なのだが、前回は1980年代にリリースされた曲の中から選んだので、今回は1990年代にリリースされた曲の中から選んでみた。
このリストを作ってみて意外だったのは「けっこう沢山出てきたな」ということである。
1990年代の初頭には、筆者のロックに対する興味がハード・ロック/ヘヴィ・メタルから、グランジ/オルタナティヴ・ロックに移っていたので、こんなに沢山出てくるとは思っていなかったのである。
こんな書き方をすると、「お前みたいな尻の軽い奴がいるからハード・ロック/ヘヴィ・メタルが衰退したんだ」とお叱りを受けそうだが、消費者とは本来そういうものであり、新しいものには直ぐに飛びつくのである。
今回、1980年代と1990年代のバラード・リストを作ってみて改めて感じたのは、シンプルな感想だが曲の良さである。
バラードに対し、保守的だとか、こんなものはロックじゃないという批判を耳にすることもあるが、筆者にとってのロックとは、「これはロックだけれど、これはロックではない」というような窮屈なものではないと思っている。
しばらくはこの余韻でバラードを聴く日が続きそうだ。