お気に入りの曲を配信やダウンロードで聴くことが主流となった現在とは異なり、かつてロックとは10曲くらいが一つのメディアに詰め込まれたアルバムというフォーマットで聴くことが主流だった。
そんな時代において、アルバムのオープニングを飾る1曲目は非常に重要だったのである。
ある意味、その1曲目の良し悪しで、40分ほどの時間を費やしてでもアルバムを最後まで聴き続けるか、或いは、聴くのを止めるかが決まると言っても過言ではなかった。
例えば、1曲目のインパクトが強烈なアルバムの代表と言えば、NEW YORK DOLLS〔ニューヨーク・ドールズ〕の「NEW YORK DOLLS」(1曲目は"Personality Crisis")や、IGGY & THE STOOGES〔イギー&ザ・ストゥージズ〕の「RAW POWER」(1曲目は"Search and Destroy")等がある。
そして、今回取り上げているALICE COOPER〔アリス・クーパー〕の4thアルバム「KILLER」も、そんな1曲目のインパクトが強烈な1枚だ。
このアルバムの1曲目、"Under My Wheels"は相当な数のミュージシャンにカヴァーされているはずだが、つまりは、それだけこの曲のインパクトにやられたミュージシャンが多いということの現れだろう。
この「KILLER」というアルバムの面白いところは、1曲目の"Under My Wheels"だけがアルバム全体の中では少し浮いているということである。
"Under My Wheels"にはRick Derringer〔リック・デリンジャー〕がアディショナル・ギターという形で参加しているのだが、この曲だけ極端にハード・ロック感が強いのである(ちなみにRick Derringerは6曲目の"Yeah, Yeah, Yeah"にも参加してるが、こちらは綺麗に収まっている)。
Under My Wheels"以外の曲は思いのほかレイドバックしていたり、サイケデリックだったり、スペイシーだったりという具合に、非常にバラエティに富んだ内容になっていて、聴く人を飽きさせない工夫が伺える。
アルバムとしてのバランスは、次作「SCHOOL'S OUT」や、次々作「BILLION DOLLAR BABIES」の方が良いのだが、ALICE COOPERというバンド(と言うよりもAlice Cooperというミュージシャン)の奥深さが最もよく出ているのは「KILLER」なのである。
1980年代前半には一旦沈みかけたものの、1980年代後半からは当時トレンドだったグラム・メタルの波に上手く乗り、ヒットメーカーDesmond Child〔デズモンド・チャイルド〕と組んで再びメインストリームに戻ってきたのもこの人の凄さである。