SUICIDAL TENDENCIES〔スイサイダル・テンデンシーズ〕とは物騒なバンド名を付けたものである。
これは「自殺の傾向」と訳すのだろうか?
そして今回取り上げている3rdアルバムのタイトルが「HOW WILL I LAUGH TOMORROW WHEN I CAN'T EVEN SMILE TODAY」だ。
これは「今日も笑えないという時に、どうやって明日を笑うんだ」と訳すのだろうか?
何とも厭世的で暗澹たる気分にさせられるバンド名とアルバム・タイトルだ。
このアルバムがリリースされた1988年はアフガニスタン紛争(1978年~1989年)やイラン・イラク戦争(1980年~1988年)といった長期に渡る紛争・戦争の時期と重なる。
それ故、こんなバンド名やアルバム・タイトルがあっても不思議ではないのかもしれない。
このアルバムがリリースされた1988年の日本はバブル経済による好景気の真っただ中だ。
日本中が浮かれまくっていた時代であり、筆者の地元の京都でも祇園などの花街が今とは比較にならないほど華やいでいた記憶がある。
そんな筆者もバブル期を代表するようなノー天気でアホ丸出しの学生だったわけだが、この物騒で厭世的なSUICIDAL TENDENCIESの3rdアルバム「HOW WILL I LAUGH TOMORROW WHEN I CAN'T EVEN SMILE TODAY」には何故か強烈に魅かれ、お気に入りの一枚だった。
このアルバムを切っ掛けにして、SUICIDAL TENDENCIESの1stアルバム「SUICIDAL TENDENCIES」、2ndアルバム「JOIN THE ARMY」も遡って聴くことになったのだが、1stと2ndはハードコア・パンク色が強く、3rdからはスラッシュ・メタル色が強くなった。
更にオーセンティックなヘヴィ・メタルからの影響も加えられており、ヴォーカルがかなりメロディアスになっている。
そして何より、このアルバムを特徴付けているのは2ndから参加したギタリスト、Rocky George〔ロッキー・ジョージ〕がアイバニーズRGから繰り出すメタリックなリード・ギターだ。
Rocky George が加入した2ndの時点でもメタル的な色彩が強まっていたのだが、3rdからはそれが完全に前面に出た形となっている。
このアルバムはMETALLICA〔メタリカ〕の「...AND JUSTICE FOR ALL」と同じ1988年のリリースなのだが、期待して買った「...AND~」の方は意外にもあまり入り込むことができず、実は気まぐれで買ったこのアルバムが筆者にとっては大物のMETALLICAを超える一枚になったのである。