今回取り上げているMY SISTER'S MACHINE〔マイ・シスターズ・マシーン〕は米国ワシントン州シアトル出身のバンドであり、1stアルバム「DIVA」をリリースしたのは1992年だ。
1992年と言えば、NIRVANA〔ニルヴァーナ〕、PEARL JAM〔パール・ジャム〕、SOUNDGARDEN〔サウンドガーデン〕、ALICE IN CHAINS〔アリス・イン・チェインズ〕というシアトル・グランジ四天王の人気がメジャー・シーンで盛り上がっていた時期だ。
更に、MUDHONEY〔マッドハニー〕、SCREAMING TREES〔スクリーミング・トゥリーズ〕といったシアトル・アンダーグランドの大物までもがメジャー・シーンに進出していた時期でもある。
MY SISTER'S MACHINEの1stアルバム「DIVA」はこのような時期にリリースされたアルバムであり、遅れてきた大物という感じもあったが、また出てきたなという感じもあった。
そんな食傷気味の時期に聴いたアルバムだったのだが、最初の2曲を聴き終えた時、「これはシアトル・グランジ四天王に匹敵する凄いバンドになる」と筆者は予測した。
結果としては全くそうならなかったわけだが、筆者は未だにこのアルバムのことをシアトル・グランジ屈指の名盤だと思っている。
シアトル・グランジの中ではALICE IN CHAINSが最もヘヴィ・メタルの要素が強いバンドだと言われているが、MY SISTER'S MACHINEの音楽性はALICE IN CHAINSよりも更にヘヴィ・メタルの要素が強い。
ちなみにMY SISTER'S MACHINEのシンガーNick Pollock〔ニック・ポロック〕は、ALICE IN CHAINSのシンガーLayne Staley〔レイン・ステイリー〕とALICE N' CHAINSというバンドをやっていた人物だ(INではなくN’であり、紛らわしいのだがALICE IN CHAINSとALICE N' CHAINSは違うバンドだ)。
MY SISTER'S MACHINEの音楽性はALICE IN CHAINSよりもSOUNDGARDENの方に近く、SOUNDGARDENにヘヴィ・メタルの要素を追加して拡張させたような感じと言えば伝わるのだろうか。
当時の筆者のような、1980年代に興ったメタル・バブルにどっぷりと嵌っていたロック・リスナーが最も受け入れやすいグランジであり、逆に言うと、これがグランジと呼べるギリギリのラインなのではないだろうか。
全体的に完成度の高いアルバムだが、特に1曲目"Hands and Feet"から2曲目"Pain"へのシームレスな流れが素晴らしい。
あと1年早くこのアルバムがリリースされていたらグランジ・シーンの勢力図が変わっていた可能性も十分に考えられるのである。