1980年代はロック不毛の時代と言われているようだが本当にそうなのだろうか?
1980年代のロックの中でも特に馬鹿にされる傾向があるのはグラム・メタルだと思うのだが、今でも筆者はグラム・メタルを好んで聴くし、極めて優れた音楽だと思っている。
そして、グラム・メタルほどではないが「あれは何だったんだろう」的な扱いをうけているのがゴシック・ロックではないだろうか?
今回取り上げているTHE MISSION〔ザ・ミッション〕は、1980年代における英国のゴシック・ロック・シーンから登場したバンドとしては最も大きな成功を修めたバンドである。
THE MISSIONの英国における現在の地位というのはよく分からないのだが、少なくともTHE SMITHS〔ザ・スミス〕はもちろん、THE JESUS AND MARY CHAIN〔ザ・ジーザス&メリーチェイン〕にも遠く及ばないような気がする。
ここ日本においても、インターネットでかつてTHE MISSIONを聴いていた人が書いたであろうと思われるTHE MISSIONへの評価を検索すると「今聴くと大袈裟で笑ってしまう」とか「今聴くと面白みの無いハード・ロック」のような、どちらかと言うとネガティブな評価が多い。
筆者は一度好きになった音楽に対しては、確かに当時と同じ気持ちで聴けない場合もあるが、自分にとっては全て大切な音楽なので、上記のように、その音楽を馬鹿にしたような言い方はとてもじゃないが出来ない。
筆者はゴシック・ロックとはポストパンクの流れから派生したジャンルだと認識しているのだが、多くのポストパンク・バンドが前世代の音楽であるハード・ロックを完全否定していたことに対し、そこから派生したゴシック・ロックは巧みにハード・ロックを取り入れることに成功したジャンルだと思っている。
THE MISSIONはゴスの帝王THE SISTERS OF MERCY〔ザ・シスターズ・オブ・マーシー〕に在籍していたWayne Hussey〔ウェイン・ハッセイ〕(guitar)とCraig Adams〔グレッグ・アダムス〕(bass)がAndrew Eldritch〔アンドリュー・エルドリッチ〕(vocals)と喧嘩別れしたことにより生まれたバンドだ。
Wayne HusseyはTHE SISTERS OF MERCYで作曲の中核を担っていたメンバーなのだが、THE SISTERS OF MERCYでは抑え気味だったハード・ロック指向を、今回取り上げているTHE MISSION の1stアルバム「GOD'S OWN MEDICINE」ではリミッターを解除している。
ヴォーカルも担当するようになったWayne Husseyの声は逞しく、美しく、ゴスというよりは由緒正しいハード・ロック・シンガーなのである。