今回はTHE SMASHING PUMPKINS〔ザ・スマッシング・パンプキンズ〕の3rdアルバム「MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS」を取りあることにした。
1990年代初頭に勃発したグランジ・ムーヴメントにおけるこのバンドの傑作という意味では2ndアルバムの「SIAMESE DREAM」を取り上げた方が妥当なのかもしれない。
しかし、筆者がこのバンドを真剣に聴いたのは「MELLON COLLIE~」からなので、どうしてもこのアルバムへの思い入れが深くなってしまう。
THE SMASHING PUMPKINSは1stアルバムの「GISH」をリリーした時に話題のバンドとして日本の音楽雑誌に取り上げられていたので聴いてはいたのだが、Billy Corgan〔ビリー・コーガン〕のガチョウのような声がどうにも好きになれなかった。
大物と言われているシンガーでも歌うことに適していない声を持つ人はいると思う。
例えば、Mick Jagger〔ミック・ジャガー〕、David Bowie〔デヴィッド・ボウイ〕、Bryan Ferry〔ブライアン・フェリー〕あたりは歌うのに適していない声だと思うし、むしろ最初に聴いた時は気色悪くて好きになれなかった。
今でも同じ英国のシンガーならSteve Marriott〔スティーヴ・マリオット〕、Rod Stewart〔ロッド・スチュワート〕、Paul Rodgers〔ポール・ロジャース〕の方が、圧倒的に歌唱力が高い上に表現力もあり、こちらの方が断然好きなのである。
しかし、Mick Jagger、David Bowie、Bryan Ferryの凄いところは、彼等の持つ独創性やアイデアにより、あまり歌うことに適していない声さえも武器にして唯一無二の音楽を創造したことである。
そして、Billy CorganおよびTHE SMASHING PUMPKINSもこの3rdアルバム「MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS」で、とうとうその域に到達したのだ。
CD2枚組、収録時間120分を超える大作でありながら、オープニングの"Mellon Collie and the Infinite Sadness"、"Tonight, Tonight"(筆者の中ではこれは2曲で1つの組曲だ)で高らかに物語の始まりが宣言され、ポップな曲、ジャンクな曲、メタリックな曲、グランジ―な曲、そして、メランコリックな曲が次から次へと飛び出し、全く飽きることなく最後まで聴き続けることが出来る稀代の大傑作アルバムなのである。
蛇足になるが、このバンドのベーシストであるD'arcy Wretzky〔ダーシー・レッキー〕は、バンドへの音楽的な貢献はあまりなさそうだが、グランジ/オルタナ系のバンドにはあまりいなさそうなタイプの美人さんであり、若い頃の筆者は彼女のことを、ちょっとアイドル視していたのである。