#0366でRick Springfield[リック・スプリングフィールド]の「BEAUTIFUL FEELINGS」を取り上げた時に「このアルバムはロックを聴き始めた人が聴くのにちょうど良い」と書いた。
「BEAUTIFUL FEELINGS」に限らず1980年代にリリースされたRick Springfieldのアルバムは、どれもキャッチーで、メロディアスで、いかにもロックらしいロックなので、とにかくロックを聴き始めた人の入り口としてちょうど良いのである。
例えば、ロックを聴き始めたばかりの人に、ポストパンク、エクスペリメンタル・ロック、デス・メタル、インダストリアル・メタル等、癖の強いジャンルを聴かせたら、その人がよほどの変わり者でない限り、殆どの人はロックを嫌いになってしまう可能性が高い。
ロックを聴き始めた頃は、変に癖の強いものを聴くよりも、メインストリームのロックらしいロックを聴き、そこから徐々にロックの多様性を学び、癖のあるものも気に入ればオルタナティヴな方へ進めば良いし、気に入らなければメインストリームを突き進めば良い。
今回取り上げているJohn Waite[ジョン・ウェイト]の2ndアルバム「NO BRAKES」もロックを聴き始めた人が聴くのにちょうど良いアルバムだ。
筆者もロックを聴き始めた中学生の頃(1980年代)、このアルバムを毎日のように聴いていた。
チャートの順位なんて筆者にとっては特に大切な付加価値ではないのだが、このアルバムには全米1位になった永遠の名曲"Missing You"が収録されているのも良い。
失った愛への未練を歌う、この切ないミドルテンポの曲をテレビの洋楽番組で初めて聴いた時、体に電流が走り抜けたような感覚があったことを、今でもはっきりと憶えている。
筆者はこのアルバムを起点として、彼が所属していたTHE BABYS[ザ・ベイビーズ]を知り、1980年代後半には、そのTHE BABYSを再構築したようなBAD ENGLISH[バッド・イングリッシュ]の登場に胸を躍らせたものである。
そう言えば、BAD ENGLISHにも"When I See You Smile"という永遠の名バラードがあり、この曲もロックを聴き始めた人が聴くのにちょうど良い曲だ。
John Waiteというシンガーは、派手さはないのだが、とても歌の上手いシンガーであり、歌い方に変な癖が無いところも良いし、ちょっと湿り気を帯びた声に、筆者はこの人が持つ英国人らしさを感じている。
どんな曲でも歌える人だが、ミドルテンポやバラードには特にフィットする声なのである。