このブログを始める前は、自分にとって思い入れが強すぎるアーティストほど、ネタとしては取り上げ易いような気がしてたのだが、実際には逆で、返って取り上げにくい。
そう言う訳で、今回取り上げているTHE PRETTY THINGS[ザ・プリティ・シングス]も、381回目にして漸く取り上げることになった。
筆者がTHE PRETTY THINGSを知った切っ掛けは、多くのロック・ファンと同様、THE ROLLING STONES[ザ・ローリング・ストーンズ]経由だ。
THE ROLLING STONESのギタリストだったDick Taylor[ディック・テイラー]がベーシストに転向させられるのを嫌い、THE ROLLING STONESを脱退して結成したバンドがTHE PRETTY THINGSであることはロック・ファンの間では有名な話だ。
20歳頃の筆者(約30年前)は、とにかくTHE PRETTY THINGSのレコードが欲しくて欲しくて、懇意にしていた中古レコード屋の店主に探してもらい、漸く手に入れたのが今回取り上げている1stアルバムの「THE PRETTY THINGS」なのである。
けっこう頑張って探してもらった一枚であることは憶えているのだが、購入にあたっては法外な金額を支払った記憶はなく、今振り返ると、かなり良心的な店主だったなと思う。
THE PRETTY THINGSは、THE ROLLING STONESと同様、米国のブルースやR&Bから影響を受けた英国のバンドなのだが、当時(1960年代初期)、不良と言われていたTHE ROLLING STONESよりも更に不良っぽい上に、更に黒っぽい演奏が特徴で、このアルバム1曲目の"Road Runner"で聴けるPhil May[フィル・メイ]の艶めかしいヴォーカルと、たぶんベースのJohn Stax[ジョン・スタックス]が吹いていると思われるブルース・ハープが鳴った瞬間、若かりし筆者はノックアウトされたのである。
現在のように配信やダウンロードで個々の楽曲をフラットに聴くことが主流な時代と違い、10曲前後を一つのメディアに纏めたアルバムを聴くことが主流だった時代は、アルバムの1曲目は非常に重要だったのである。
事ある毎にTHE ROLLING STONESを引き合いに出すのも気が引けるのだが、THE ROLLING STONESは1stアルバム「THE ROLLING STONES」において全12曲のうち自作曲は1曲だが、THE PRETTY THINGSは1stアルバム「THE PRETTY THINGS」において全12曲のうち自作曲が3曲もあるのは凄いことである。
THE PRETTY THINGSはTHE ROLLING STONESのような世界的な成功を修めることが出来なかったバンドだ。
しかし、いつの時代でもロックの歴史を紐解くと、大成功を修めたバンドと同じ時代には徒花のようなバンドもいて、ロック・ファンにとっては、その両者に違いは無く、いずれも同じくらい大切なバンドなのである。
AEROSMITH[エアロスミス]も最高だが、NEW YORK DOLLS[ニューヨーク・ドールズ]も同じくらい最高なのである。
MÖTLEY CRÜE[モトリー・クルー]も最高だが、HANOI ROCKS[ハノイ・ロックス]も同じくらい最高なのである。
GUNS N' ROSES[ガンズ・アンド・ローゼズ]も最高だが、THE DOGS D'AMOUR[ザ・ドッグス・ダムール]も同じくらい最高なのである。
そして、THE ROLLING STONESも最高だが、THE PRETTY THINGSも同じくらい最高なのである。
ロック・ファンなら、この感覚、分ってもらえるのではないだろうか?