聴いた瞬間に不安定な心理状態となり、心がざわめき立つドラムン・ベースの名曲と言えば、筆者の中ではPLUG[プラグ]の"Me & Mr Jones"と、Photek[フォーテック]の"The Hidden Camera"だ。
"Me & Mr Jones"はLuke Vibert[ルーク・ヴァイバート]がPLUG名義でリリースしたアルバム「DRUM 'N' BASS FOR PAPA」の1曲目、"The Hidden Camera"は今回取り上げているPhotekの1stアルバム「MODUS OPERANDI」の1曲目に収録されている。
Photekの「MODUS OPERANDI」も筆者が嵌りに嵌ったドラムン・ベースの名盤である。
このアルバムの作り方は凄い。
1曲目に"The Hidden Camera"という、聴いているだけでハラハラドキドキさせられる曲を持ってこられては、「この先どうなるのだろうか?」という心理状態にさせられ、再生したら最後、アルバム終了まで聴き続けなければいられなくなるのである。
そして、最後まで聴き続ければ途中でハラハラドキドキが解消される瞬間が来るのかと言うと、そんなことは全く無い。
結局、最後までハラハラドキドキの不安な心理状態が続くのである。
このアルバムは、各曲が、と言うよりも、各音が緻密に計算されており、リスナーにつけ入る隙を全く与えない作りになっているのだ。
ドラムン・ベースも、他の音楽ジャンルと同様、ドラムン・ベースであるための最低限の下地はあるのだが、アーティスト毎にその音楽性は全く異なる。
そんなドラムン・ベースのアーティストの中でもPhotekの暗黒感漂う音は、かなり個性的なのではないだろうか。
前回のブログにも書いたのだが、筆者は1990年代後半から、それまで必死に聴いてきたロックへの興味を急激に失った。
1990年代後半と書いたが、実のところ1990年代に入った頃から既にロックへの興味を失いつつあったのである。
筆者が心底好きと言えるロックのアーティストは1980年代までに登場したアーティストに大幅に偏っており、1990年代以降に登場したアーティストとなると、その数が大幅に減る。
ドラムン・ベースは筆者がロックに対する興味を失う切っ掛けとなったジャンルだが、ドラムン・ベースに出会わなければ、音楽自体への興味すら失っていた気がするのである。