母体のバンドやグループよりも、そこから派生したバンドやグループの方が好きになるケースがけっこうな頻度であったりする。
いきなり話が横道に逸れるが、筆者の中では、正式メンバーだけで自分たちの曲をライヴで再現できる集合体のことをバンド、正式メンバーだけでは自分たちの曲をライヴで再現できない集合体のことをグループという具合に呼び分けている。
話を戻すと、「母体のバンドやグループよりも、そこから派生したバンドやグループの方が好きになる」というのは、例えば、DEEP PURPLE[ディープ・パープル]よりもRAINBOW[レインボー]が好きだったり、METALLICA[メタリカ]よりもMEGADETH[メガデス]が好きだったりするということだ。
ただし、L.A. GUNS[LAガンズ]よりはGUNS N' ROSES[ガンズ・アンド・ローゼズ]が好きなので絶対的な法則ではない。
ジャンルをシンセポップに向けてみると、THE HUMAN LEAGUE[ザ・ヒューマン・リーグ]よりもヘヴン17[HEAVEN 17]が好きだし、DEPECHE MODE[デペッシュ・モード]よりも今回取り上げているERASURE[イレイジャー]の方が好きだ。
書くまでも無いが、ERASUREとは、DEPECHE MODEのメイン・ソングライターだったVince Clarke[ヴィンス・クラーク]が、YAZOO[ヤズー]~THE ASSEMBLY[ジ・アッセンブリー]の活動を経て、シンガーのAndy Bell[アンディ・ベル]と結成したシンセポップ・デュオだ。
筆者の中におけるDEPECHE MODEとERASUREでは、圧倒的にERASUREの方が自分の好みに合っており、レコードを聴いた回数もERASUREの方が大きく上回る。
その理由はと言うと、DEPECHE MODEの曲よりもERASUREの曲の方が断然にキャッチーだからだと思う。
1980年代の英国は多くの優れたシンセポップ・グループを輩出したが、一緒に歌えるキャッチーな曲を書かせたらVince Clarkeがダントツの1位なのではないだろうか。
Vince Clarkeの書く曲は、とにかくしつこいくらい耳に残るのだが、音域の広いAndy Bellの卓越したヴォーカルが更にそれに拍車をかけている。
逆に言えば、これほど優れたソングライターを失いながらも、後に世界規模の成功を修めたDEPECHE MODEも凄いグループだ。
1980年代のERASUREのアルバムは名盤揃いだが、1枚選ぶなら、これぞERASUREというべき名曲"A Little Respect"が収録されている3rdアルバムの「THE INNOCENTS」を推したい。