今回はSTARZ[スターズ]が1977年にリリースした2ndアルバムの「VIOLATION」を取り上げている。
STARZについての記事を書いている今回も、そして、#0425でANGEL[エンジェル]を取り上げたときも、実は同じ疑問を持って書いている。
その疑問とは、「果たしてパンクとは、それほどまでに、ハード・ロックを滅ぼしたのだろうか?」ということである。
もちろん、この記事を書いている2021年現在でもハード・ロックは存在するし、筆者がロックを聴き始めた1980年代はヘア・メタルというハード・ロックの一種が全盛を極めた時代なので、ハード・ロックが滅んでいないことは、ロック・ファンなら誰しも知っていることだ。
筆者が1980年代に読んでいた雑誌に、1977年以降のパンク・ムーヴメントを特集した記事が掲載されると、必ず「パンクが古いロックを一掃した」と書かれており、当時はそれを鵜呑みにしていたのだが、自分で1970年代後半のロックを掘り起こして聴き始めてからは「本当かな?」という疑問を持つようになった。
その疑問を持つ切っ掛けが、今回取り上げているSTARZの「VIOLATION」なのである。
とにかく、このアルバム、凄まじく完成度が高いのである。
1970年代の米国におけるハード・ロックの王者と言えば、AEROSMITH[エアロスミス]とKISS[キッス]なわけだが(王者と言いつつ、2つ挙げるのは矛盾しているが)、STARZは王者に匹敵するくらい楽曲の完成度が高いと思っている。
特に、1stアルバムの「STARZ」と、今回取り上げている2ndアルバムの「VIOLATION」は、AEROSMITHやKISSの全盛期のアルバムと比較しても、何の遜色の無い、ハードで、ワイルドで、タフで、セクシーで、そして、キッチュな要素も合わせ持つ、王道のアメリカン・ハード・ロックが聴ける名盤中の名盤だと言い切れる。
そして、これら初期2枚のアルバムからは"Detroit Girls"、"Cherry Baby"、"Sing It, Shout It"といったヒット曲も生まれているし、その後のアルバムからも全米チャートの100位以内に入るヒット曲が生まれている。
ますます、「パンクが古いロックを一掃した」というのが疑問に思えてくる。
ちなみに、AEROSMITHとKISSの跡を受けて、後にアメリカン・ハード・ロックの王者となるVAN HALEN[ヴァン・ヘイレン]の1stアルバムは1978年のリリースなので、ますます疑問に思えて仕方がない。