■ 第10位
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title | FIRST AND LAST AND ALWAYS[マーシーの合言葉] |
artist | THE SISTERS OF MERCY[ザ・シスターズ・オブ・マーシー] |
released | 1985年 |
origin | Leeds, West Yorkshire, England, UK |
comment | 実のところ、一番好きなTHE SISTERS OF MERCYのアルバムは、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルに限りなく接近した3rd「VISION THING」だ。 しかし、ゴシック・ロックとしてのTHE SISTERS OF MERCYであるならば、この1st「FIRST AND LAST AND ALWAYS」を選ばざるを得ない。 このアルバムの半分以上の曲を書いているのは、後にTHE SISTERS OF MERCYを脱退し、THE MISSION[ザ・ミッション]を立ち上げるWayne Hussey[ウェイン・ハッセイ]なのだが、「良い曲は全部THE MISSIONのために取っておいたのですか?」と尋ねたくなるほど、このアルバムでのWayne Husseyの曲は、彼のペンによる曲の中では平凡である。 それにも関わらず、このアルバムが放つゴシック・ロック感は尋常ではなく、もし、ゴシック・ロックを知りたいという人がいるのであれば、最初に聴かせるべきアルバムはこれなのである。 |
■ 第9位
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title | SONG AND LEGEND[ソング・アンド・リジェンド] |
artist | SEX GANG CHILDREN[セックス・ギャング・チルドレン] |
released | 1982年 |
origin | Brixton, London, England, UK |
comment | SEX GANG CHILDRENは、SOUTHERN DEATH CULT[サザン・デス・カルト](後のTHE CULT[ザ・カルト])、THE DANSE SOCIETY[ザ・ダンス・ソサエティ]と共に、ポジティヴ・パンク御三家と呼ばれていたのだが、現在ではポジティヴ・パンクという言葉がそもそも死語である。 ポジティヴ・パンクを簡単に説明するのであれば「ポジティヴ・パンク≒ゴシック・ロック」ということになるのだが、筆者にとってのSEX GANG CHILDRENは、今でもポジティヴ・パンクと言った方がしっくりくるバンドだ。 Gothic[ゴシック]という言葉を聞くと、何となく荘厳なイメージが湧くかもしれないが、SEX GANG CHILDRENの曲は荘厳なイメージを持ちつつ、どこかヘンテコで笑ってしまいたくなる妙なところがある。 ちなみに、CULTURE CLUB[カルチャー・クラブ]Boy George[ボーイ・ジョージ]が自分のバンドの名前として考えていたのがSEX GANG CHILDRENなのだが、もし、CULTURE CLUBではなくSEX GANG CHILDRENと名乗っていたら、どれだけ曲が良かったとしても、Boy Georgeの世界規模での成功は難しかったような気がする。 |
■ 第8位
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title | HEAVEN IS WAITING[ヘヴン・イズ・ウェイティング] |
artist | THE DANSE SOCIETY[ザ・ダンス・ソサエティ] |
released | 1983年 |
origin | Barnsley, England, UK |
comment | THE DANSE SOCIETYも、SOUTHERN DEATH CULT、SEX GANG CHILDRENと共に、ポジティヴ・パンク御三家と呼ばれていたのだが、「御三家」なんていうものを作りたがるのは、たぶん日本の洋楽雑誌であり、彼らの本国である英国では、この3つのバンドを一括りに捉えるようなことは無いのではないだろううか? シンガーのSteve Rawlings[スティーヴ・ロウリングス]が超美形だったので、このジャンルでは女子からの人気が高めのバンドだったのだが、音楽的には女子が好むようなアイドル的なポップなものではない。 キーボードによる音の壁のような「硬さ」がこのバンドの曲の特徴であり、そんな彼らの特徴が最も良い形で仕上がっているのが、この2nd「HEAVEN IS WAITING」だ(ポップすぎると叩かれた3rd「LOOKING THROUGH」も好きだ)。 筆者は、JOY DIVISION[ジョイ・ディヴィジョン]を初めて聴いた時に、「ダンス・ソサエティに似てる」と思ったのだが、実際はTHE DANSE SOCIETYがJOY DIVISIONの影響を受けているのだろう(筆者はJOY DIVISIONよりもTHE DANSE SOCIETYの方が好きだ)。 |
■ 第7位
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title | ALL ABOUT EVE[イヴの序曲] |
artist | ALL ABOUT EVE[オール・アバウト・イヴ] |
released | 1988年 |
origin | England, UK |
comment | 美しい女性ヴォーカルとゴシック・ロックが描く荘厳な世界観は相性が良い。 後に、ゴシック・ロックをアップデートしたゴシック・メタルというジャンルが確立し、WITHIN TEMPTATION[ウィズイン・テンプテーション]やNIGHTWISH[ナイトウィッシュ]という素晴らしいバンドが登場することを見ても、その相性の良さは明らかだろう(WITHIN TEMPTATIONややNIGHTWISHはシンフォニック・メタルなのかな?)。 ALL ABOUT EVEの音楽性にメタル感はゼロであり、むしろ、フォークっぽいのだが、このALL ABOUT EVEの名盤デビュー・アルバムは、後に登場する、女性ヴォーカルをフィーチュアした数々のゴシック・ロック/ゴシック・メタル系バンドに影響を与えているはずだ。 と、書きつつ、このアルバムを久しぶりに聴いてみたのだが、ゴシック・ロックっぽい「おどろおどろしいさ」は殆ど無く、少しダークなドリーム・ポップという感じなので、ちょっと驚いている。 |
■ 第6位
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title | CATASTROPHE BALLET[カタストロフィ・バレー] |
artist | CHRISTIAN DEATH[クリスチャン・デス] |
released | 1984年 |
origin | Los Angeles County, California, US |
comment | CHRISTIAN DEATHについて、一番驚くのは、このバンドが英国ではなく、米国、それもカリフォルニア州ロサンゼルスの出身であるということだ。 そして、このバンドのシンガーであるRozz Williams[ロズ・ウィリアムズ]が最も影響を受けたアーティストが、David Bowie[デヴィッド・ボウイ]とROXY MUSIC[ロキシー・ミュージック]なのだが、David Bowieはともかく、ROXY MUSICを好きな人がカリフォルニアにいるというのが意外で仕方がないのだ(まぁ、これは筆者の偏見だ)。 このバンドのインパクトという面では、1st「ONLY THEATRE OF PAIN」だと思うのだが、音楽的な面では2nd「CATASTROPHE BALLET」か3rd「ASHES」であり、今回は僅差で2ndを選んでみた。 少年時代のRozzが、BowieやROXY MUSIC(というより、Bryan Ferry[ブライアン・フェリー])に夢中だったことがありありと伝わってくるアルバムなのだが、BowieやFerryよりも先に逝ってしまったRozzのことを思うと、ちょっと悲しく聴こえてしまうアルバムでもある。 |
■ 第5位
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title | IMMIGRANT[過ちの美学] |
artist | GENE LOVES JEZEBEL[ジーン・ラヴズ・ジザベル] |
released | 1985年 |
origin | UK |
comment | GENE LOVES JEZEBELのアルバムは、ポップになった3rd「DISCOVER」以降の方が好きなのだが、ゴシック・ロックとしてのGENE LOVES JEZEBELなら1st「PROMISE」か2nd「IMMIGRANT」ということになる。 今回、2nd「IMMIGRANT」を選んだのは、筆者が初めて買ったGENE LOVES JEZEBELのアルバムであり、思い入れが強いからだ。 Michael Aston[マイケル・アストン](vocals)、そして、ジェイ・アストン[Jay Aston](guitar&vocals)という超美形の双子の兄弟がフロントにいるということが当時の洋楽雑誌では殊の外取り上げられていたのだが、筆者は男なので彼らが美形か否かはどうでもいい話しであり、筆者にとっての興味の対象は彼らの作り出す音楽のみだった。 ゴシック・ロックの中でも一際耽美な彼らの曲が好きだったのだが、今では、Michael Aston's GENE LOVES JEZEBEL、Jay Aston's GENE LOVES JEZEBELという2つに分裂しており、「兄弟仲が悪い」という兄弟がいるバンドの伝統を守っているところも素敵だ。 |
■ 第4位
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title | PHANTASMAGORIA[ファンタスマゴリア] |
artist | THE DAMNED[ザ・ダムド] |
released | 1985年 |
origin | London, England, UK |
comment | このアルバムは、筆者に「パンクとは何なのか」ということを分からなくさせたアルバムだ。 中1の時(1983年)に、同級生のH君からSEX PISTOLS[セックス・ピストルズ]のコンピレーション・アルバムを聴かせてもらい、「ふぅ~ん、パンクって、こういう激しい音楽なんやぁ」と自分の中で定義して、その後、しばらくはパンクを深掘りすることはなかった。 そして、ある時、ふと「パンクを掘ってみよ」と思って買ったのが、このTHE DAMNEDの6thアルバム「PHANTASMAGORIA」なのである。 「ダムドって、ピストルズと同じ頃に出てきたパンク・バンドやし、これやったら間違いないやろ」と思って買ったのだが、スピーカーから出てきた音がSEX PISTOLSと全く違っていたので面喰ってしまい、パンクが分からなくなったのである。 ただ、このアルバムそのものは曲が良いので直ぐに大好きになり、今でも1番好きなTHE DAMNEDのアルバムはこれだ。 シンガーであるDavid Vanian[デイヴ・ヴァニアン]のゴシック趣味が全開になったアルバムである。 |
■ 第3位
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title | GOD'S OWN MEDICINE[ゴッズ・オウン・メディシン] |
artist | THE MISSION[ザ・ミッション] |
released | 1986年 |
origin | Leeds, West Yorkshire, England, UK |
comment | 3位以上が筆者にとって、ゴシック・ロックの不動の名盤3枚である。 「GOD'S OWN MEDICINE」は、THE SISTERS OF MERCYで多くの曲を書いていたWayne Husseyが、SISTERSを脱退して立ち上げたTHE MISSIONの1stアルバムなのだが、SISTERS時代にWayne Husseyが書いたどの曲よりも、このアルバムの曲の方が遥かにクオリティが高い。 SISTERSはドラムマシン(Doktor Avalanche[ドクター・アバランシュ])を使っていたのでリズムが無機質だったが、THE MISSIONでは生身のドラマー(Mick Brown[ミック・ブラウン])が演奏しているのでリズムにオーガニックな広がりがある(筆者はドラムマシンも生身のドラマーも両方好きだ)。 このアルバムの基盤は当然ゴシック・ロックなのだが、曲調はかなりメロディアスであり、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル色が強いので、その手のジャンルが苦手な人には合わないかもしれない。 しかし、ゴシック・ロックはもとより、ゴシック・メタルも守備範囲のリスナーにとっては至高の1枚であると言えるだろう。 |
■ 第2位
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title | LOVE[ラヴ] |
artist | THE CULT[ザ・カルト] |
released | 1985年 |
origin | Bradford, West Yorkshire, England, UK |
comment | THE CULTの前身は、SEX GANG CHILDREN、THE DANSE SOCIETYと共に、ポジティヴ・パンク御三家と言われていたSOUTHERN DEATH CULTだ。 他の2バンドとTHE CULTの最も大きな違いはシンガーの歌の上手さだ(もちろん、上手いのはTHE CULTの方)。 このアルバムはTHE CULTの2ndであると共に、彼らにとって最後のゴシック・ロック路線のアルバムであり、3rd「ELECTRIC」では筋骨隆々にビルドアップしたハード・ロック/ヘヴィ・メタル路線を打ち出す。 しかし、このアルバムも普段ハード・ロック/ヘヴィ・メタルを聴かない人にとっては、充分すぎるくらいのハード・ロック/ヘヴィ・メタル感があるのではないだろうか? 幽かな記憶なのだが、シンガーのIan Astbury[イアン・アストベリー]とギタリストのBilly Duffy[ビリー・ダフィー]が、日本の洋楽雑誌のインタビューで、FREE[フリー]、BAD COMPANY[バッド・カンパニー]、LED ZEPPELIN[レッド・ツェッペリン]が好きだと言っているのを読んだことがある。 本格的なハード・ロック/ヘヴィ・メタルになるのは3rd「ELECTRIC」からなのだが、既にこの2nd「LOVE」でもその片鱗を聴くことができる。 |
■ 第1位
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title | IN THE FLAT FIELD[暗闇の天使] |
artist | BAUHAUS[バウハウス] |
released | 1980年 |
origin | Northampton, England, UK |
comment | 「ゴシック・ロックとはBAUHAUSのことである」、ゴシック・ロックを説明するにも、BAUHAUSを説明するにも、それで充分なのではないだろうか? BAUHAUSのメンバーはゴシック・ロックと呼ばれることを嫌がっていたが、彼らどれだけ否定しても、BAUHAUSはゴシック・ロック・バンドなのである。 そして、この1stアルバム「IN THE FLAT FIELD」こそが、ゴシック・ロック感が最も強く打ち出されたBAUHAUSのアルバムなのである。 ただし、現在、主に流通しているリイシュー盤はシングル曲の"Dark Entries"を1曲目に収録しているので、"Double Dare"から始まるオリジナル盤とは、かなり印象が変わってしまっている。 リイシュー盤は、2曲目の"Double Dare"から聴き始めた方が良い(何で1曲目に"Dark Entries"を入れたのだろう?)。 ゴシック・ロックはポストパンクから派生したジャンルだと思うのだが、パンクはもとよりグラム・ロックからの影響も強い。 BAUHAUSは、T. REX[T・レックス]の"Telegram Sam"とDavid Bowie[デヴィッド・ボウイ]の"Ziggy Stardust"をカヴァーしてるので、ゴシック・ロック・バンドの中でも殊の外グラム・ロックからの影響が強い。 BAUHAUSを最も気持ち良く聴く方法は、この「IN THE FLAT FIELD」を聴きながら、彼らと共に奈落に沈んでいくことである。 |
筆者は1969年生れなので、パンク・ムーヴメントをリアルタイムでは体験できていない。
筆者がリアルタイムで体験したのはパンク の後に興ったハードコア・パンクとポジティヴ・パンクだ。
そして、時代の流れの中でポジティヴ・パンクというジャンル名は無くなり、ゴシック・ロックというジャンル名に統一されていった。
反戦反核という社会性のあるメッセージをテーマとするバンドが多かったハードコア・パンクに比べ、ポジティヴ・パンクは独自の美意識で世界観を構築するバンドが多かったため、いつしかパンクという言葉とは結びつけにくくなり、ゴシック・ロックという呼び方で統一されたのではないかと思っている。
そして、筆者の中におけるゴシック・ロックは、ニュー・ロマンティックと並び、70年代のグラム・ロックから影響を受け、80年代に花開いたムーヴメントであると定義付けている。
今回は、そんなゴシック・ロックというジャンルから、好きなアルバムを10枚選んだのである。