Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0440.7) 好きなニュー・ウェイヴのアルバム10選

■ 第10位

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title POWER, CORRUPTION & LIES[権力の美学]
artist NEW ORDERニュー・オーダー
released 1983年
origin Salford, England, UK
comment NEW ORDERというバンドへの思い入れは全く無いのだが、曲が良いので80年代の彼らのアルバムはけっこうな頻度で聴いていた。
NEW ORDERの前身であるJOY DIVISIONジョイ・ディヴィジョン]は、ゴシック・ロックにカテゴライズされることがあるのだが、JOY DIVISIONにゴシック・ロック的な要素って殆ど無いのではないだろううか?
 初期のNEW ORDERは、プロのバンドとしては、かなり演奏技術が危うい(スタジオ・アルバムですら、ギリギリセーフとバリバリアウトの境目だ)。
 特にBernard Sumner[バーナード・サムナー]が一番危ういと思うのだが、そんな彼にバンドのフロントを任せるという英断が凄い。
 更に、そのBernard Sumnerがギターを弾きながら歌うというのだから、危うさが倍増するのである(せめて、どっちか一つにしといたら?)。
 書けば書くほど悪口っぽくなってしまうのだが、筆者はこのバンドの曲は好きなのである。

■ 第09位

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title KISS ME, KISS ME, KISS ME[キス・ミー、キス・ミー、キス・ミー]
artist THE CUREザ・キュアー
released 1987年
origin Crawley, West Sussex, England, UK
comment THE CUREというバンドへの思い入れは全く無いのだが、曲が良いので(特に5th「THE TOP」以降)彼らのアルバムはけっこうな頻度で聴いていた。
 中でも、全18曲(アナログ盤では2枚組)という大作である、この7th「KISS ME, KISS ME, KISS ME」は一番のお気に入りだ。
 Robert Smith[ロバート・スミス]は天才的なソングライターだと思うのだが、筆者はSimon Gallup[サイモン・ギャラップ]のベースが好きだ。
THE CUREはゴシック・ロックにカテゴライズされることもある。
 筆者はゴシック・ロックも大好きなのだが、筆者の耳ではTHE CUREの曲からゴシック・ロックらしさを感じることは殆どなく、非常にポップな曲を書くのが上手なポストパンク/ニュー・ウェイヴのバンドという印象が強い(このバンドにゴシック・ロック感あるかな?)。

■ 第8位

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title PLEASURE VICTIM[そのとき、私は…]
artist BERLIN[ベルリン]
released 1982年
origin Los Angeles, California, U.S.
comment  BERLINといえば、映画『トップガン』の挿入歌である"Take My Breath Away"(邦題:愛は吐息のように)が最大のヒット曲なので、この曲が収録されている4th「COUNT THREE & PRAY」が代表作なのだろうか?
 しかし、筆者が一番好きなBERLINのアルバムは2nd「PLEASURE VICTIM」だ。
 オリジナル盤は収録曲が7曲なのでミニ・アルバムと言ってもいいくらいのサイズなのだが、女性ヴォーカルをフィーチュアしたシンセポップとしては極上の作品だ。
 と、蘊蓄(うんちく)を書いて見たものの、筆者がBERLINを好きな一番の理由はシンガーのTerri Nunn[テリー・ナン]が可愛かったからだ。
 若い頃のTerri Nunnは、今でも十分通用するくらい、超絶的な可愛さなのである。

■ 第7位

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title DECLARATION[アラーム宣言]
artist THE ALARM[ジ・アラーム]
released 1984
origin Rhyl, Wales, UK
comment  THE ALARMはデビューしたときに「MUSIC LIFE」や「音楽専科」で彼らの記事を読んで、「なんか、カッコ良さげなバンドが出てきたわぁ~」と思って、貸しレコード屋でこのデビュー・アルバム借りて聴いたところ、予想通りのカッコ良さで逆に意表を突かれた。
 このアルバムがリリースされた頃はロックを聴き始めて2年くらいが経過していたので、それなりに何度かの失敗を味わっていたのだが、このアルバムは文句なしのカッコ良さだった。
 当時は、このバンドがウェールズ出身ということは意識していなかったのだが、今、改めて聴くと、後に同じウェールズから登場するMANIC STREET PREACHERSマニック・ストリート・プリーチャーズ]に通じる「熱さ」と「優しさ」があることに気付いた。
 "Sixty Eight Guns"のような、アコースティック・ギター使って、コーラス・パートでシンガロングに盛り上がる曲は、否が応でも思春期の少年の心に刺さるのである。

■ 第6位

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title THE CROSSING[インナ・ビッグ・カントリー]
artist BIG COUNTRY[ビッグ・カントリー]
released 1983年
origin Dunfermline, Fife, Scotland, UK
comment  これはロックをを聴き始めた頃に聴きまくったアルバムだ(たぶん、半年くらい、毎日聴き続けたんちゃうやろか?)。
 このアルバムがリリースされた当時の筆者は中2であり、スコットランドがどんな国かも分かっていなかったのだが、このアルバムで聴けるバグパイプ調のギターで、今も筆者の中にあるスコットランドという国へのイメージが完成したような気がする。
 バンド名がBIG COUNTRYで、一番有名な曲が"In a Big Country"なので、日本では一発屋っぽいイメージを持たれているが、彼らの本国である英国では、2nd「STEELTOWN」は全英1位を獲得しており、長期的な人気を維持していた。
 筆者にとっても、このバンドの最高傑作は「STEELTOWN」なのだが、「思い出」という付加価値があるので、1枚選ぶとなると、どうしてもこのデビュー・アルバムになってしまう。

■ 第5位

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title REACH THE BEACH[リーチ・ザ・ビーチ
artist THE FIXX[ザ・フィクス]
released 1983年
origin London, England, UK
comment  筆者はニュー・ウェイヴというジャンル名を聞くと、真っ先に思い浮かぶのがこのTHE FIXXというバンドだ。
 この2nd「REACH THE BEACH」は、たぶん、彼らのアルバムの中で最も商業的に成功したアルバムだと思うのだが、今、改めて聴き直してみても、よく出来たアルバムだなと感じる。
 80年代の他の英国のバンドと比較した場合、DURAN DURANデュラン・デュラン]やSPANDAU BALLETスパンダー・バレエ]ほどポップではなく、初期のTHE HUMAN LEAGUE[ザ・ヒューマン・リーグ]やDEPECHE MODEデペッシュ・モード]ほどアート志向でもない。
 ニッチなところに上手いこと入り込んだバンドである。
 THE FIXXの曲は、一聴すると特別な個性が無いように聴こえるのだが、非常に曲作りの上手いバンドであり、実はこのバンドに似ているバンドは、当時の英国にいなかったのである。

■ 第4位

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title DREAMTIME[夢現
artist THE STRANGLERS[ザ・ストラングラーズ
released 1986年
origin Guildford, Surrey, England, UK
comment  このアルバムは、THE DAMNEDザ・ダムド]の「PHANTASMAGORIA」と共に、筆者に「パンクとは何なのか」ということを分からなくさせたアルバムだ。
 洋楽雑誌のパンク特集では、SEX PISTOLSセックス・ピストルズ]と共に、必ずその名が挙がるバンドでなので、「ピストルズと同じ頃に出てきたパンク・バンドやし、これやったら間違いないやろ」ということで買ったわけなのだが、スピーカーから出てきた音はSEX PISTOLSとは全く違う音なのである。
 その結果、パンクが分からなくなるのだが、このアルバムは曲が良いのでパンクとは無関係に好きになってしまうのである(これはTHE DAMNEDの「PHANTASMAGORIA」も同じだ)。
 このアルバムにはステレオタイプなパンクのイメージは皆無なのだが、欧州的で耽美な色彩を放つアート・ロックの名盤であり、今でも一番好きなTHE STRANGLERSはこれだ。

■ 第3位

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title OCEAN RAIN[オーシャン・レイン]
artist ECHO & THE BUNNYMEN[エコー&ザ・バニーメン]
released 1984
origin Liverpool, England, UK
comment  現在、筆者が最もよく聴くECHO & THE BUNNYMENのアルバムは5th「ECHO & THE BUNNYMEN」なのだが、ニュー・ウェイヴらしさで語るなら、この4th「OCEAN RAIN」までかなと思う。
 ECHO & THE BUNNYMENを知る前の筆者は、ニュー・ロマンティックや第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン、グラム・メタル等、メインストリームのロックを中心に聴いていたのだが、ECHO & THE BUNNYMENを知ることにより、ポストパンク、ニュー・ウェイヴ、インディー・ロック等、オルタナティヴなロックに興味を持つようになった。
 このアルバム「OCEAN RAIN」はストリングスが多用されているのだが、聴きどころは、やはり、Will Sergeant[ウィル・サージェント]のギターだと思う。
 Will Sergeantの弾く、闇を切り裂くような怜悧なギターは痺れるほどカッコ良い。
 筆者の中でのWill Sergeantは、BAUHAUS[バウハウス]のDaniel Ash[ダニエル・アッシュ]、KILLING JOKEキリング・ジョーク]のGeordie Walker[ジョーディー・ウォーカー]と並ぶ、ポストパンク世代の3大ギタリストなのである。

■ 第2位

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title NEW GOLD DREAM (81-82-83-84)[黄金伝説]
artist SIMPLE MINDS[シンプル・マインズ
released 1982年
origin Glasgow, Scotland, UK
comment  ニュー・ウェイヴに限らず、あらゆるロックのアルバムの中で最も聴いた回数の多いアルバムの1つが、このSIMPLE MINDSの5th「NEW GOLD DREAM (81-82-83-84)」だ。
 ただ、面白いなと思うのは、あれほど聴いていながら、今はSIMPLE MINDSというバンドに対する思い入れが全く無いということだ。
 それにも関わらず、今もって、この「NEW GOLD DREAM (81-82-83-84)」は筆者にとっての名盤なのである。
 一般的には、SIMPLE MINDSの名盤は、Steve Lillywhite[スティーヴ・リリーホワイト]がプロデュースした6th「SPARKLE IN THE RAIN」なのかもしれない。
 しかし、筆者にとってのSIMPLE MINDSとは、ニュー・ウェイヴらしい内省的な部分を多分に持つ、この5th「NEW GOLD DREAM (81-82-83-84)」までなのである。

■ 第1位

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title MIRROR MOVES[ミラー・ムーヴス]
artist THE PSYCHEDELIC FURS[ザ・サイケデリック・ファーズ]
released 1984
origin London, England, UK
comment  引き続き、ニュー・ウェイヴに限らず、あらゆるロックのアルバムの中で最も聴いた回数の多いアルバムの1つが、このTHE PSYCHEDELIC FURSの4th「MIRROR MOVES」だ。
 そして、これもまた面白いなと思うのは、あれほど聴いていながら、今はTHE PSYCHEDELIC FURSというバンドに対する思い入れが全く無いということだ。
 「MIRROR MOVES」は、THE PSYCHEDELIC FURSというバンドが、ギリギリまでメインストリームに接近し、その結果、大成功となったアルバムだと思う。
 次作「MIDNIGHT TO MIDNIGHT」では、完全にメインストリームになったのだが、この「MIRROR MOVES」では、ギリギリのところでオルタナティヴに留まりつつ、極上のポップ・ミュージックを提供してくれている。
 メインストリームにメロディが有って、オルタナティヴにはメロディが無いというわけではないのだが、このアルバムは奇跡的なくらい、オルタナティヴでありながらキャッチーなメロディが満載なのである。

 

今回は、「好きなニュー・ウェイヴのアルバム10選」となったわけだが、これまでの10選シリーズの中で一番難しかった。


理由は二つある。


一つは、ニュー・ウェイヴとポストパンクの明確な違いが分からないからだ。


筆者の認識としては、「ポストパンクよりもニュー・ウェイヴの方がメインストリームに近いのかな?」という程度だ。


もう一つは、ニュー・ウェイヴ系アーティストの場合、アルバムは好きで聴いていたのだが、アーティストへの思い入れが無いからだ(思い入れがあるのはECHO &  THE BUNNYMENくらいだ)。


ここが、これまで10選を書いてきたグラム・ロック、グラム・メタル、ニュー・ロマンティック、ゴシック・ロックとの大きな違いだ。


ニュー・ウェイヴ系バンドの多くは、雑誌のインタビュー等で、なんとなくスノッブな印象を持ってしまっていた。


また、同級生でロックを聴いている連中のなかでもニュー・ウェイヴやポストパンクを聴いている連中は、「自分は他の人とは違う特別な感性を持っている」的な痛い奴が多かったのである。


筆者にしてみたら、「君は、特に特徴の無い平凡な人ですよ」という連中ばかりだったのだが、グラム・メタルを聴きつつ、ニュー・ウェイヴも聴いていた筆者に対し、ニュー・ウェイヴ好きの連中は、「グラム・メタルみたいな下品なロックを聴いてる奴がニュー・ウェイヴのような価値の高い音楽を聴くな!」という接し方だったのである。


特にニュー・ウェイヴ好きの女子からは、殊の外、上記の扱いを受けた記憶がある。


筆者にしてみらた、「いやいや、両方とも時代に消費されるだけの、たかがポップ・ミュージックでしょ?」という感じだったのである。


なお、今回10選で「なんでU2[ユートゥー]が入っていないんだ、書いた奴は頭がおかしいじゃないか?」と思う人がいるかもしれないが、これはあくまでも筆者の好みのリストである。


当時の筆者にとっては、アイルランドの英雄U2の曲よりも、スコットランドのBIG COUNTRYやSIMPLE MINDSウェールズのTHE ALARMの方が心に刺さったのだから仕方がないのである。