Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0440.13) 好きなスラッシュ・メタルのアルバム10選(北米編・四天王以外)

■ 第10位

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title THE ULTRA-VIOLENCE
(1st album)
artist DEATH ANGEL[デス・エンジェル]
released 1987年
origin San Francisco Bay Area, California, US
comment  名盤という意味では3rd「ACT III」なのだが、出会ったときの衝撃が大きすぎたので、筆者にとってのDEATH ANGELとは、いまだにこのこのデビュー・アルバム「THE ULTRA-VIOLENCE」なのである。
 サンフランシスコ・ベイエリア出身のバンドだが、この突進力は欧州出身のスラッシュ・メタルに近いのではないだろうか?
 同じベイエリア出身のグラム・メタル・バンドVAIN[ヴェイン]のシンガーDavy Vain[デイヴィー・ヴェイン]がバンドと共同プロデュースしているというのも面白い。
 なお、デビュー当時は、「全員10代」、「全員フィリピン系米国人」、「全員親戚関係」というユニークなメンバー構成だった。

■ 第9位

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title TAKING OVERR
(2nd album)
artist OVERKILL[オーヴァーキル]
released 1987年
origin Old Bridge Township, New Jersey, US
comment スラッシュ・メタル・バンドでギタリストが1人というのは珍しい。
 そして、シンガーは、スラッシュ・メタル・バンドとしては、けっこうメロディを歌う方である。
 この後、3rd「UNDER THE INFLUENCE」、4th「THE YEARS OF DECAY」で音楽性の幅を広げていくのだが、この2ndアルバムでは1st「FEEL THE FIRE」の荒々しさも残しつつ徐々に音楽性の幅を広げ始めているのが面白い。
 メタル好き以外のリスナーには、間違っても購買意欲をそそらせないようなアルバム・カヴァーも最高だ。

■ 第8位

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title GAME OVER
(1st album)
artist NUCLEAR ASSAULT[ニュークリア・アソルト]
released 1st年
origin New York City, New York US
comment クロスオーヴァー・スラッシュは、ハードコア・パンクからヘヴィ・メタルに接近するケースと、ヘヴィ・メタルからにハードコア・パンク接近するケースがあるのだが、NUCLEAR ASSAULTは後者になる。
クロスオーヴァー・スラッシュの起源は諸説あるのだが、NUCLEAR ASSAULTはその起源の1つと言われている。
 このバンドが不思議なのは、ハードコア・パンクの成分を多分に取り得れながらも、楽曲はヘヴィ・メタルらしい鋼鉄感があるところだ。
 完成度という点では3rd「HANDLE WITH CARE」なのだが、筆者がスラッシュ・メタルに求めるものは完成度よりも衝撃度なので、1枚選ぶとなるとどうしてもこの1stになってしまうのである。

■ 第7位

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title THE LEGACY
(1st album)
artist TESTAMENT[テスタメント]
released 1987年
origin Berkeley, California, US
comment  TESTAMENTは、ベイエリア・スラッシュを代表するバンドだが、ちょっと異色のバンドのようにも思える。
 このバンドを異色たらしめているのは、あのJoe Satrianiジョー・サトリアーニ]の生徒の1人であるAlex Skolnick[アレックス・スコルニック]のテクニカルなギターだ。
 Alex Skolnickは、後にニューヨークのニュースクール大学でジャズを学ぶのだが、このTESTAMENTの1stの時点で既にメタル・ギタリストの枠を超える流麗で多角的なプレイを聴かせてくれている。
ベイエリア・スラッシュ特有のザクザクと刻まれるリフの中に入ってくるAlex Skolnickのギターは、一聴すると浮いているように感じるときもあるのだが、それこそがTESTAMENTの個性なのである。

■ 第6位

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title NO PLACE FOR DISGRACE
(2nd album)
artist FLOTSAM AND JETSAM[フロットサム・アンド・ジェットサム]
released 1988年
origin Phoenix, Arizona, US
comment  言わずと知れた、METALLICAメタリカ]にベーシストのJason Newsted[ジェイソン・ニューステッド]を引き抜かれたバンドである。
 そして、METALLICAはJason Newstedを手に入れて、筆者にとって初めてNGとなったMETALLICAのアルバム「...AND JUSTICE FOR ALL」を制作した。
 今回取り上げている「NO PLACE FOR DISGRACE」はJason Newstedが引き抜かれた直後のアルバムであり、彼は演奏していないのだが、はっきり言って「...AND JUSTICE FOR ALL」とは比較にならないほどの大傑作アルバムである。
スラッシュ・メタルの成分も含みつつ、正統派ヘヴィ・メタル(パワー・メタル)としての大傑作アルバムであり、もっとバカ売れしていても不思議ではないアルバムだと思う。

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■ 第5位

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title BONDED BY BLOOD
(1st album)
artist EXODUS[エクソダス
released 1985年
origin Richmond, California, US
comment  EXODUSは、何故か「聴きたい」という衝動が湧き上がらなかったバンドであり、この「BONDED BY BLOOD」は今回取り上げた10枚の中で、唯一リアルタイムで聴いていないアルバムだ。
 そんなEXODUSに対し、「聴きたい」という衝動が湧き上がった原因は、雑誌BURRN!における「ミュージシャンが選ぶ好きなスラッシュ・メタルのアルバム」のような企画で、この「BONDED BY BLOOD」を1位に上げている人があまりにも多かったからだ。
 その企画を読んだことにより、早速、このアルバムを聴いたのだが、完璧なベイエリア・クランチと、狂気を撒き散らすPaul Baloff[ポール・バーロフ]のヴォーカルに一発でノックアウトされたのである。
 ある意味、四天王(METALLICAMEGADETH、SLAYER、ANTHRAX)の何れのアルバムよりも、スラッシュ・メタルを最も体現しているアルバムはこの「BONDED BY BLOOD」なのではないだろうか?

■ 第4位

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title RRRÖÖÖAAARRR
(2nd album)
artist VOIVOD[ヴォイヴォド]
released 1986年
origin Jonquière (Saguenay), Quebec, Canada
comment スラッシュ・メタルの曲の多くは、「よくこんな難しい曲を演奏できるね?」とか「なんでこんな複雑な曲が書けるの?」と感じるものが多いのだが、VOIVODの曲を聴くと特にそれを感じる。
 VOIVODは、後にプログレッシヴ・メタルとして、更に複雑でテクニカルな世界を極めていくのだが、この2ndの時点でも充分過ぎるほどプログレッシヴな曲を演奏している。
 正直なところ、VOIVODのアルバムは聴きにくく、特に1st「WAR AND PAIN」と、この2nd「RRRÖÖÖAAARRR」は特に聴きにくいのだが、何故か中毒のように何度も聴かされてしまうのである。
 筆者は薬物やアルコールの中毒は「大反対」なのだが、こういった音楽への中毒なら「吝か(やぶさか)ではない」と思っている。

■ 第3位

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title ALICE IN HELL
(1st album)
artist ANNIHILATOR[アナイアレイター]
released 1989年
origin Ottawa, Ontario, Canada
comment MEGADETHメガデス]からギタリストが脱退すると、必ずDave Mustaine[デイヴ・ムステイン]から声が掛かる男が、このANNIHILATORのJeff Waters[ジェフ・ウォーターズ]だ。
 確かに、Jeff Watersが弾く正確無比なリフと速弾きのソロは、間違いなくMEGADETHに嵌るはずだ。
 音楽的にもMEGADETHと極めて近い位置にいるテクニカル・スラッシュメタルなのだが、初期(1st~3rd)のMEGADETHが持っていたパンキッシュな要素はANNIHILATORには無く、MEGADETHよりもANNIHILATORの方が正統派ヘヴィ・メタル(パワー・メタル)に近い。
 Jeff Watersは気に入ったシンガーがいないときは無理にシンガーを加入させずに自分で歌ってしまう人なのだが、このデビュー・アルバムではヴォーカルをRandy Rampage[ランディー・ランペイジ]に任せて、自分はギターに専念している。

■ 第2位

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title INTO THE MIRROR BLACK
(2nd album)
artist SANCTUARY[サンクチュアリ
released 1990年
origin Seattle, Washington, US
comment MEGADETHのDave Mustaineがプロデュースした1st「REFUGE DENIED」は未だしも、この2ndはスラッシュ・メタルというよりもパワー・メタルだ。
 しかし、ギター・リフにはスラッシュ・メタルの面影が残っている曲もあり、とにかく大好きなアルバムなので今回のリストに入れることにした。
 このバンドの魅力は、荘厳な雰囲気が漂う楽曲と、オペラ歌手としてのトレーニング経験を活かしたWarrel Dane[ウォーレル・デイン]が歌う安定感のあるヴォーカルだろう。
 「とにかく速い曲が好き、ミドルテンポはけしからん」という人にはお薦めしかねるのだが、このアルバムは90年代に入って飽和状態と化したスラッシュ・メタルの次なる可能性を示した名盤である。

■ 第1位

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title PROCESS OF ELIMINATION
(1st album)
artist MACE[メイス]
released 1985年
origin Seattle, Washington, US
comment クロスオーヴァー・スラッシュを標榜するバンドは数あれど、最もヘヴィ・メタルハードコア・パンクをガチンコでぶつけ合ってるバンドはこのMACEなのではないだろうか?
 このバンドの音楽性はあまりにもUnusualすぎて説明が難しく、「ハードコア・パンクの中にテクニカルなメタル・ギターが入る」と言ってしまえばそれまでなのだが、それだけでは説明しきれないヘンテコ感がある。
 かつて、相反するジャンルだったメタルとパンクは、クロスオーヴァー・スラッシュによって融合が始まり、MACEがそれを完成させた。
 筆者はロックを聴き始めた頃からメタルもパンクも節操なく聴くリスナーであり、ロックに纏わりつく精神論やイデオロギーなんてものは一切無視するタイプなので、MACEのこのアルバムを聴いていると楽しくて仕方がないのだ。
 ちなみに2nd(ラスト・アルバム)の「THE EVIL IN GOOD」も本作と甲乙つけがたい名盤である。

 

筆者の世代(1969年生れ)にとって、メタルと言えば、グラム・メタルと、今回取り上げたスラッシュ・メタルなのではないだろうか?


グラム・メタルのことをポーザーと呼び、そのカウンターとして登場したのがスラッシュ・メタルということになっているらしい。


つまり、グラム・メタルとスラッシュ・メタルは対立関係にあるのだが、どちらか一方だけを聴くというリスナーは、少なくとも筆者の周りには殆どいなかったと記憶している。


そして、アーティスト側も実際には対立していなかったのではないかと筆者は思っている。


METALLICAメタリカ]が「METALLIC」(通称「THE BLACK ALBUM」)のプロデュースをBob Rock[ボブ・ロック]に依頼した理由は、MOTLEY CRUE[モトリー・クルー]の「DR. FEELGOOD」を聴いたからだ。


今回は、「好きなスラッシュ・メタルのアルバム10選(北米編・四天王以外)」ということで選んだ。


四天王、つまり、METALLICAMEGADETH、SLAYER、ANTHRAXを外したのは、これらを入れてしまうと、それだけで4/10が埋まってしまい、面白くもなんともないリストになるからだ。


四天王には別格というイメージがあるが、筆者の中では今回取り上げた10組のアーティストも四天王に勝るとも劣らない存在だ。


今回選んだ10枚のうち、1位に選んだMACEの「PROCESS OF ELIMINATION」以外、差は殆ど無い。


違う日に選んだなら、順位は入れ替わるかもしれない。


筆者にとってのスラッシュ・メタルとは、グラム・メタルと双璧を成すくらい思い入れの深い80年代のムーヴメントなので、機会があれば欧州や南米のスラッシュ・メタル・バンドも取り上げて「お気に入りリスト」を作ってみたいと思う。