Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0442) 衝撃を受けたロック・アルバム26選 【順位付け無し、アルファベット順】

A

Reckless / Bryan Adams】

[title]
Reckless [レックレス]
 4th album
 released: 1984

[artist]
Bryan Adams [ブライアン・アダムス]
 origin: Kingston, Ontario, Canada

[comment]
 筆者がロックを聴き始めた切っ掛けは、同級生の女子にとてもロックに詳しいお姉ちゃんが(3つ年上)おり、彼女から色々なレコード聴かせてもらったのが始まりなのだが、このアルバムもその中の1枚だった。
 それまでに彼女が聴かせてくれたのは英国のニュー・ロマンティック系のアーティストが多かったのだが、カナダ出身の Bryan Adams は彼女のレコード・コレクションの中では異色だった。
 筆者にとっても、Bryan Adams のような、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル以外のギター・オリエンテッドなロックを聴いたのは、ほぼ初めてであり、その爽快なサウンドに衝撃を受けた。
 10代だった当時も、50代のオッサンになった今も、何故か物凄く「青春」を感じさせるアルバムなのである。


Dirt / Alice in Chains】

[title]
Dirt [ダート]
 2nd album
 released: 1992

[artist]
Alice in Chains [アリス・イン・チェインズ]
 origin: Seattle, Washington, US

[comment]
グランジの範疇で最も好きなアルバムは、これか、Stone Temple Pilots の Purple なのだが、衝撃度で選ぶとなると、これになる。
 このアルバムは、音楽の3大要素であるリズム、メロディ、ハーモニーのいずれをとっても最高なのだが、特に奈落の底に沈んでいくようなコーラス・パートにおけるハーモニーの美しさは絶品だ。
 その美しさを例えるなら Simon & Garfunkel に匹敵すると言っても過言ではない。
 Layne Staley はグランジと言うジャンルを超越した素晴らしいシンガーだったのだが、ドラッグという愚かなものに溺れたため、その比類なき才能を棒に振ってしまったのは残念で仕方がない。


B

Badlands / Badlands】

[title]
Badlands [バッドランズ]
 1st album
 released: 1989

[artist]
 Badlands [バッドランズ]
 origin: Los Angeles, California, US

[comment]
Ozzy Osbourne のバンドを去った Jake E. Lee が 新たなバンドを結成し、デビュー・アルバムをリリースすると知ったとき、聴きたいのは Jake E. Lee のギターであり、ヴォーカルへの期待は全く無かったというのが正直なところである。
 しかし、そんな予想を覆し、このバンドのシンガー、Ray Gillen は規格外の歌唱力だったのである。
Jake E. Lee ほど凄腕のギタリストの場合、どうしてもギターを聴くことに集中してしまいがちなのだが、ギターと同じか、時にはそれ以上に Ray Gillen のヴォーカルに耳が奪われるのだ。
Jake E. Lee にとっての Ray Gillen は、Jeff Beck にとっての Rod Stewart のような存在であり、Badlands 解散後の Jake E. Lee は、専属のシンガーを自身のバンドに置かなくなった。


In the Flat Field / Bauhaus】

[title]
In the Flat Field [暗闇の天使]
 1st album
 released: 1980

[artist]
 Bauhaus [バウハウス]
 origin: Northampton, England, UK

[comment]
 1曲目 "Double Dare" のノイジーなギータ―が鳴った瞬間、「怪奇映画が始まったのか?」と思った衝撃を今も鮮明に記憶している(リイシュー盤の1曲目は "Dark Entries" なので印象が異なる)。
 Bauhaus のメンバーはゴシック・ロックと呼ばれることを嫌がっているが、これはどう聴いてもゴシック・ロックだ。
 否、後にゴシック・ロックと呼ばれる音楽を創ったのが Bauhaus であり、自分達のコピーだと思っているムーヴメントの中に、オリジナルである自分達が組み込まれるのが嫌だったのかしれない。
 ポストパンク/ニュー・ウェイヴにおける3大ギタリスト、それは、Echo & the Bunnymen の Will Sergean、Killing Joke の Geordie Walker、そして、Bauhaus の Daniel Ash なのである。


Blow by Blow / Jeff Beck】

[title]
Blow by Blow [ブロウ・バイ・ブロウ]
 released: 1975

[artist]
Jeff Beck [ジェフ・ベック]
 origin: Wallington, Surrey, England, UK

[comment]
 筆者がロックを聴き始めた80年代当時、好きだったバンドのギタリストへのインタビュー記事を読むと、かなりの頻度で好きなギタリストとしてその名が挙がるのが Jeff Beck なのである。
 そうなると、Jeff Beck を聴かずにはいられなくなるわけであり、知り合いのロック好きの大学生に「Jeff Beck、聴きたいねん」と言ったところ、「ほんならこれや」と言って貸してくれたのがこのアルバムだった。
 これは、所謂フュージョン期と呼ばれる時期のアルバムなのだが、後に聴いた Weather Report、Return to Forever、Mahavishnu Orchestra といったガチのフュージョンと比べると、やはりこのアルバムは切れ味が鋭く、圧倒的にロックっぽい。
 80年代は、Joe SatrianiSteve Vai といった技巧派ギタリストによるインストゥルメンタル・ロックが人気を博すことになるのだが、彼らが活躍する道を切り開いた最初の切っ掛けはこのアルバムだと思う。


C

Electric / The Cult】

[title]
Electric [エレクトリック]
 3rd album
 released: 1987

[artist]
 The Cult [ザ・カルト]
 origin: Bradford, West Yorkshire, England, UK

[comment]
 気持ち良いくらいの捨てっぷり、2nd までのゴシック・ロックを完全に捨て去り、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル・バンドに生まれ変わった瞬間がこのアルバムだ。
 2nd アルバム Love を聴いたときに思ったのだが、ゴシック・ロックとハード・ロック/ヘヴィ・メタルは親和性が高く、実はけっこう似ている(当時はゴシック・ロックではなくポジティヴ・パンクと呼ばれていた)。
Love は良い作品であり、それなりに売れて、ヒット・シングルもあるのだが、この路線では、これ以上売れるのは無理だと感じていたのではないだろうか?
 そしてこの路線変更は見事に成功し、次作以降、4thアルバム Sonic Temple ~ 5thアルバム Ceremonyハード・ロック/ヘヴィ・メタルを極めることになる。


Colour by Numbers / Culture Club】

[title]
Colour by Numbers [カラー・バイ・ナンバーズ]
 2nd album
 released: 1983

[artist]
Culture Club [カルチャー・クラブ]
 origin: Bradford, West Yorkshire, England, UK

[comment]
 このアルバムはソウルやモータウンをベースにしているのでロックの範疇ではないのかもしれないが、「ベスト盤か?」と錯覚するほど収録されている全ての曲のクオリティーが高い。
 大ヒットした "Karma Chameleon (カーマは気まぐれ)" が収録されているが、他の曲もそれと同等か、それ以上のクオリティーを有しており、シングルにならなかった曲までヒット・シングルっぽい。
 筆者はこのアルバムのせいで、アルバムというフォーマットに対し、このレベルのクオリティーを求めてしまうようになった。
 このアルバムの後、米ソ冷戦の時代にシングル "The War Song (戦争のうた)" で ~ War, war is stupid ~ と歌ってしまい、米国では17位という彼らとしては不甲斐のない結果に終わり、凋落の一途を辿ってしまうのだが、筆者としてはそんな彼らの空気を読めない感じも好きだったりする。


D

Pyromania / Def Leppard】

[title]
Pyromania [炎のターゲット]
 3rd album
 released: 1983

[artist]
Def Leppard [デフ・レパード]
 origin: Sheffield, South Yorkshire, England, UK

[comment]
ハード・ロック/ヘヴィ・メタルというジャンルの音楽は、普段それを聴かない人にとっては、極めて聴きにくいはずなのだが、その常識を覆したのがこのアルバムだ。
 このアルバムは、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルなのに聴き易いという、それまでに無かったサウンドを確立した、ロックの歴史においてエポックメーキングな作品となった。
 そして、驚くべきは、聴き易いのにハード・ロック/ヘヴィ・メタルとしての激しさや切れ味が失われていないことだ。
 英国から登場したこの若いバンドが示したサウンドが、80年代中期~後期にかけて米国で興るメタル・バブルの勃発を刺激したのは明白である。


Hear Nothing See Nothing Say Nothing / Discharge】

[title]
Hear Nothing See Nothing Say Nothing [ヒア・ナッシング・シー・ナッシング・セイ・ナッシング]
 1st album
 released: 1982

[artist]
 Discharge [ディスチャージ]
 origin: Stoke-on-Trent, Staffordshire, England, UK

[comment]
 筆者は中一のときに(1983年)、同級生の H 君から Sex Pistols のコンピレーション・アルバムを聴かせてもらい、「なるほどパンクとはこういうものか」と理解したつもりになったのだが、その後に聴いた他の UK パンクのバンド(The ClashThe Damned、The Stranglers、The Jam等)は全くパンクのイメージと結びつかなかった。
 他の UK パンクのバンドは聴く順番を間違え、80 年代にリリースされたアルバムを先に聴いたので、尚更だったというのもある。
 そんな中、この Discharge の 1stアルバムは筆者の中のパンクのイメージとピタリと一致し、この音がハードコア・パンクであるとこと後から知った。
 当時の筆者は、このアルバムで歌われている「反戦」「反核」「反権力」というメッセージには全く気付いておらず、とにかくサウンドに痺れただけなのだが。


The Doors / The Doors】

[title]
The Doors [ハートに火をつけて]
 1st album
 released: 1967

[artist]
The Doors [ザ・ドアーズ]
 origin: Los Angeles, California, US

[comment]
The Doors を聴く場合、シンガーの Jim Morrison にまつわるスキャンダラスな話しは全て無視して、純粋に彼らの曲の良さを楽しむべきだ。
The Doors の曲が素晴らしい理由はドラッグにあるのではなく、優秀なソングライターがいたからに他ならない(特にギタリストの Robby Krieger が書いた曲が好きだ)。
 Jim Morrison が優れたシンガーであることは確かなのだが、呪術的な彼のヴォーカルが何故ここまで輝いているのかと言えば、それはジャズや米国のルーツミュージックに根差した楽器隊が驚異的にセンスの良い演奏をしているからだ。
 そして、そんな豊かなバックグラウンドを持ちながらも、難解になり過ぎることなく、ポップでキャッチーで、それでいてミステリアスなところがこのアルバムの最大の魅力なのである。


Rio / Duran Duran】

[title]
Rio [リオ]
 2nd album
 released: 1982

[artist]
Duran Duran [デュラン・デュラン]
 origin: Birmingham, England, UK

[comment]
 目の前に閃光が走ったかのような衝撃を受けたのは Duran Duran のシングル "Rio" が最初だったかもしれない。
 とにかく、"Rio" の入っているアルバムが聴きたくて、同級生の女子のロックに詳しいお姉ちゃんに訊いたところ、彼女が聴かせてくれたのがこのアルバム Rio だったのである。
Duran Duran は当時の洋楽雑誌でアイドル的な取り上げられ方をしていたので、本格派を自称するようなのロック・ファンからは敬遠されがちだったのだが、このアルバムをを聴いたら「アイドルだから云々」なんて言ってられないほど、Duran Duran の曲が素晴らしいのは明白である。
Duran Duran なんて聴かないと言っていたカッコつけのへそ曲がりも、絶対にこっそりと Duran Duran を聴いていたはずだと筆者は思っている。


E


F


G

Appetite for Destruction / Guns N' Roses】

[title]
Appetite for Destruction [アペタイト・フォー・ディストラクション]
 1st album
 released: 1987

[artist]
 Guns N' Roses [ガンズ・アンド・ローゼズ]
 origin: Los Angeles, California, US

[comment]
 後追いで過去のアルバムを聴いたのではなく、リアルタイムで聴いて最も衝撃を受けたのがこのアルバムだ。
 今では、グラム・メタルとして Mötley Crüe、RattBon Jovi 等と同じ土俵で語られたりするが、 当時を原体験した者から言わせてもらうと Guns N' Roses は彼らより前のバンドと比べて明確な新しさがあった(念ため言っておくが筆者は Mötley Crüe も RattBon Jovi も大好きだ)。
 その新しさとはストリート感覚であり、明らかにパンクを通過した後のハード・ロック/ヘヴィ・メタルだったのである。
 90年代以降、グランジ/オルタナ系のバンドから「リアルではない」と馬鹿にされたが、後から出てきた者は先人に対してそういう反発的なことを言うものであり、気にする必要はないのである。


H

See the Light / The Jeff Healey Band】

[title]
See the Light [シー・ザ・ライト]
 1st album
 released: 1988

[artist]
 The Jeff Healey Band [ザ・ジェフ・ヒーリー・バンド]
 origin: Toronto, Ontario, Canada

[comment]
 ロックを聴き始めてから今まで色んなギタリストを見てきた(聴いてきた)が、度肝を抜かれるほどの衝撃を受けたのは Jeff Healey 唯一人だ。
 盲目の彼が、スクワイアの黒いストラトを膝の上に置いて、座ったまま縦横無尽にギターを操り、ブルージーなフレーズをヒステリックに弾きまくっているその姿には鬼気迫るものを感じた。
 そんな彼が率いる The Jeff Healey Band のデビュー・アルバムがこれであり、もちろん、レコードなので映像は無いのだが、音だけでも充分に彼のセンスを感じ取ることができ、見ることのできない彼がアルバム・タイトルを See the Light と名付けたのも素敵だ。
 筆者は自分の好きなアーティストが死んでも悲しいという感情が湧き上がらないタイプなのだが、Jeff Healey が永年患っていたガンにより、41歳という若さで2008年に亡くなったときだけは悲しいというより辛い気持ちになった。


I


J


K

In the Court of the Crimson King / King Crimson】

[title]
In the Court of the Crimson King [クリムゾン・キングの宮殿]
 1st album
 released: 1969

[artist]
King Crimson [キング・クリムゾン]
 origin: London, England, UK

[comment]
 ロックを聴き始めて以降、どれだけの枚数のアルバムを聴いてきたか分からないが、最も衝撃を受けたアルバムをどうしても1枚だけ選ばなければならないのであれば、このアルバムになる。
 このアルバムのリリースは1969年、筆者は1969年生れ、当然ながら後追いで聴いたアルバムだが、筆者が生まれた頃にこんな先鋭的な曲を書くロック・バンドがいたことが信じられなかった。
 ロックを聴く以前に LP で聴く音楽はクラシックくらいであり、その影響をこのアルバムから感じ取ることができたし、後にジャズを聴くようになってからは、その影響をこのアルバムの中に見つけることができた。
 この先、何年くらい生きられるか分からないが、もうこれ以上の衝撃には出会わないような気がする。


L

Vivid / Living Colour】

[title]
Vivid [ヴィヴィッド]
 1st album
 released: 1988

[artist]
 Living Colour [リヴィング・カラー]
 origin: New York City, US

[comment]
 当時は(今もか?)、「黒人はソウル/R&B/ファンク/ヒップ・ホップ等をやるもの」という押し付けのようなジャンル分けがあり、ここまでガッツリとハード・ロック/ヘヴィ・メタルをやる黒人のバンドは珍しかった(今もか?)。
 Bad Brains や Fishbone 等、部分的にメタルの要素を取り入れる黒人のバンドはいたのだが、ほぼ丸ごとメタルというのは Living Colour が最初だったのではないだろうか?
 もちろん、当時はメタル・バブルだったので「売れるかも?」という下心はあったのかもしれないが、それでは済まされないほど、このアルバムのクオリティーは高いのである。
 Living Colour のメタルはファンク・メタルではあるが、ラップ・メタルではなく、歌うメタルであり、その点も当時としては異色だった(今もか?)。


Thunder in the East / Loudness】

[title]
Thunder in the East [サンダー・イン・ジ・イースト]
 5th album
 released: 1985

[artist]
Loudness [ラウドネス]
 origin: Osaka, Japan

[comment]
 世界進出した日本のハード・ロック/ヘヴィ・メタル・バンドの中では Vow Wow の方が好きなのだが、衝撃ということになると、やはり、Loudness だ。
 曲、演奏、歌、いずれにおいても日本的な要素(歌謡曲的な要素)が皆無であり、欧米のハード・ロック/ヘヴィ・メタル・バンドとシャッフルして聴いても全く遜色が無いのである。
 筆者は英語が苦手なので、この英語の歌唱がどれほどのものか分からないのだが、二井原実はプロデューサーの Max Norman から、かなり厳しく英語の発音を指導されたので、けっこう良い線を言っているのではないだろうか。
 欧米に似せればそれで良いという訳ではないと思うのだが、それでもやはり、このアルバムは驚異的としか言いようがない。


M

Rising Force / Yngwie Malmsteen】

[title]
Rising Force [ライジング・フォース]
 1st album
 released: 1984

[artist]
Yngwie Malmsteen [イングヴェイ・マルムスティーン]
 origin: Hässelby-Vällingby, Sweden

[comment]
 ロックの歴史において、革命を起こしたギタリストとは、結局のところ Jimi Hendrix、Edward Van HalenYngwie Malmsteen の三人だけなのではないだろうか?
Yngwie Malmsteen の場合、驚異的な速弾きで脚光を浴びたわけだが、彼の凄さは「速弾き」に加えて「良い曲が書ける」ことであり、ネオクラシカル・メタルというジャンルを確立させた功績は大きい。
 このデビュー・アルバムは全8曲中、6曲がインストゥルメンタル、2曲でヴォーカルをとっているのが Jeff Scott Soto なのだが、結局のところ Yngwie の曲に一番合うシンガーは Jeff なのではないだろうか?
 Iron Maiden のシンガー Bruce Dickinson に対し、「俺様の先祖は貴族だ」と言ったところ、「それがどうした?」と返されて激怒したという有名なエピソードも面白い。


Faith / George Michael】

[title]
Faith [フェイス]
 1st album
 released: 1987

[artist]
George Michael [ジョージ・マイケル]
 origin: East Finchley, Middlesex, England, UK

[comment]
 このアルバムをロックの範疇で取り上げるのはちょっと無理があるとは思うのだが、それでも初めて聴いたときの衝撃が大きかったので取り上げることにした。
 ソロになる前の Wham! もけっこう好きだったのだが、Duran DuranSpandau BalletCulture Club、Kajagoogoo あたりと比べると、Wham! はそこまでではなく、「George Michael って苗字も名前みたいやないか!」と変な突っ込みを入れたりしていた。
 しかし、このアルバムを聴いた時は、「Wham! よりも更に数段良くなってるやん!」というのがストレートな感想であり、Wham! 時代よりも更にブラック・ミュージックに傾倒したポップ・ミュージックにド嵌りしたのである。
 この頃の George Michael は Princ に匹敵すると言っても言い過ぎではないと思っている。


N

New York Dolls / New York Dolls

[title]
New York Dolls [ニューヨーク・ドールズ]
 1st album
 released: 1973

[artist]
 New York Dolls [ニューヨーク・ドールズ]
 origin: New York City, US

[comment]
 速すぎたパンクとか、プロトパンクとか、色々な言われ方をするが、このアルバムの凄さや魅力を言い現わすなら難しい説明は全て捨てて、単にロックン・ロールとだけ言えばそれで充分だ。
 演奏が下手と言われることもあるが、これといった高度なテクニックを使わずに、これほど一瞬で人を惹き付ける演奏をするのは逆に難しいはずであり、練習を積み重ねて出来たものではなく、メンバー各人か持っているセンスの賜物だろう。
 筆者がロックン・ロールに引き摺り込まれたのは、このアルバムを聴いてしまったからであり、これを聴かなければもっと真っ当な人生を歩めていたような気がする。
 それを後悔しているかと訊かれたときに「後悔していない」と答えられればカッコ良いのだが、最近はけっこう後悔している。


O


P

Around the World in a Day / Prince & the Revolution】

[title]
Around the World in a Day [アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ]
 7th album
 released: 1985

[artist]
 Prince & the Revolution [プリンス&ザ・レヴォリューション]
 origin: Minneapolis, Minnesota, US

[comment]
 このアルバムの衝撃は、初めて聴いたときの衝撃ではなく、2回、3回、4回と繰り返し聴いてからの衝撃だ。
 このアルバムの一つ前が、あの記録的大ヒットとなった全曲がポップな大名盤 Purple Rain であり、同じ路線を期待して聴いたので、最初に聴いたときはこの音を好きになれるとは思えなかった。
 ところか繰り返し聴いていると、変な夢にうなされそうな、このサイケデリックな音が、聴けば聴くほど好きになっていくのである。
 安っぽい言い方になってしまうが、こういうアルバムまで好きにさせてしまう Prince は天才としか言いようがない。


Q

Operation: Mindcrime / Queensrÿche】

[title]
Operation: Mindcrime [オペレーション:マインドクライム]
 3rd album
 released: 1988

[artist]
 Queensrÿche [クイーンズライク]
 origin: Bellevue, Washington, US

[comment]
プログレッシヴ・メタルの名盤と言えば、Savatage の Streets: A Rock Opera、W.A.S.P. の The Crimson Idol 等があるが、その出発点にして最高峰と言えるのが、Queensrÿche Operation: Mindcrime だ。
プログレッシヴ・メタルとは、文字通り、70年代に人気を博したプログレッシヴ・ロックの要素を取り入れたヘヴィ・メタルだ。
 犯罪組織の黒幕であるドクターXと、彼にヘロインを餌に操られる殺し屋のニッキー、そんなニッキーが心の拠り所とするシスター・メアリー、ある意味この物語のキーパーソンとも言えるウィリアム神父、こういった登場人物が絡み合う複雑で壮大なストーリー。
 そのストーリーが、確かな演奏と素晴らしい楽曲で展開される掛け値なしの名盤である。


R

Eat 'Em and Smile / David Lee Roth】

[title]
Eat 'Em and Smile [イート・エム・アンド・スマイル]
 1st album
 released: 1986

[artist]
David Lee Roth [デイヴィッド・リー・ロス]
 origin: Bloomington, Indiana, US

[comment]
 とにかく、このアルバムの衝撃は、Steve Vai、Billy Sheehan、Gregg Bissonette という、超絶技巧派ミュージシャンを David Lee Roth終結させたということだ。
Van Halen という、当時、世界最強とも言えるバンドを脱退したシンガーがソロ活動を始めるためには、ここまでやらなければダメなのかと、非常に驚いたものである。
Steve Vai のお喋りするギターに度肝を抜かれる "Yankee Rose" が始まった瞬間、Diamond Dave Quartet が織りなすド派手なロックン・ロール・パーティの幕が上がる。
Van Halen が世界最強のバンドなら、そのシンガーだった David Lee Roth は世界最強のフロントマンであり、このアルバムがリリースされた直後は、「これは Dave の勝ちだな」と思ったのだが...


S

Reign in Blood / Slayer】

[title]
Reign in Blood [レイン・イン・ブラッド]
 3rd album
 released: 1986

[artist]
 Slayer [スレイヤー]
 origin: Huntington Park, California, US

[comment]
 高校の同級生、H君はバリバリのスラッシャーで、この Reign in Blood と、MetallicaMaster of Puppets を筆者に聴かせてくれたのだが、筆者が速攻で嵌ったのは Reign in Blood の方だった。
 後に Master of Puppets も楽しんで聴けるようになったのだが、Master of Puppets は最初の2曲は高速なので嵌れるのだが、3曲目でペースダウンして以降は最後まで集中力が持たなかったのだ。
 それに比べて Reign in Blood は、高速のまま全10曲を30分足らずで走り切ってくれるので、最初から最後までテンション高く聴いていられるのである。
 今では Slayer より高速で演奏するバンドは、ごまんといるのだが、筆者にとって「速い」と言えば、Slayer であり、Reign in Blood なのである。


Born to Run / Bruce Springsteen】

[title]
Born to Run [明日なき暴走]
 3rd album
 released: 1975

[artist]
Bruce Springsteen [ブルース・スプリングスティーン]
 origin: Long Branch, New Jersey, US

[comment]
 筆者の世代のロック・リスナーが Bruce Springsteen と出会ったのは大ヒットアルバム Born in the U.S.A. になるのだが、当時の筆者は "Born in the U.S.A." という曲の真意が分からず今一つピンときていなかった。
Bruce Springsteen が気になりだしたのは、Frankie Goes to Hollywood がド直球にカヴァーした "Born to Run (明日なき暴走)" を聴いてからであり、オリジナが収録されているアルバム Born to Run に嵌ることになる。
 しかし、その後、ロック・リスナーとしてある程度キャリアを重ねてからは斜に構えてしまい、「走るために生まれてきた」というのがカッコ良すぎて、Bruce Springsteen から距離を置くようになったのだが、10年くらい前に無性にこのアルバムが聴きたくなり、そこで改めて衝撃を受けたのである。
 2000年以降、ロックの音があまりにも綺麗になってしまい、それに馴染めなかった筆者にとって、このアルバムの生々しい音が「もう少しロックを好きなままでいようかな」と感じさせてくれたのだ。


T


U


V

5150 / Van Halen】

[title]
5150 [5150]
 7th album
 released: 1986

[artist]
Van Halen [ヴァン・ヘイレン]
 origin: Pasadena, California, US

[comment]
 筆者の周りでは、David Lee Roth が抜けた Van Halen は、いくら Edward Van Halen という天才ギタリストがいたとしても、この先はちょっとヤバいんじゃないかというのが専らの噂だった。
 筆者世代のロック・リスナーにとって、新しいシンガーの Sammy Hagar は、名前を聴いたことがあるくらいで、彼のキャリアを知らない人が多かったので不安は尚更だった。
 そこへ出てきたのがシングル "Why Can't This Be Love" と アルバム 5150 なのだが、Dave とは全くタイプの違う、しっかりと歌い上げる Sammy の歌を聴いて、不安は杞憂だったことに気付いたのである。
 冷静に考えてみれば、当時、世界最強のバンドだった Van Halen が並のシンガーを入れるわけが無いのである。


W


X


Y

jaguar hard pain / The Yellow Monkey】

[title]
jaguar hard pain [ジャガー・ハード・ペイン]
 3rd album
 released: 1994

[artist]
The Yellow Monkey [ザ・イエロー・モンキー]
 origin: Tokyo, Japan

[comment]
 このアルバムは彼らの3rdアルバムであり、「1944年に戦死したジャガーが1994年の現代(当時)に蘇り、恋人のマリーを探す」という物語を綴ったコンセプト・アルバムなのだが、実はこの物語は2ndアルバム EXPERIENCE MOVIE 収録の最終曲 "シルクスカーフに帽子のマダム" で既に始まっている。
 シンガーでメイン・ソングライターの吉井和哉が言うには、イエモンの版の Ziggy Stardust ということらしいのだが、個人的には、このスケールの大きな物語と音楽性は既に Ziggy Stardust を超えていると思っている。
 リリース当時は全く思いつかなかったのだが、1944年に戦死したということは、ジャガー第二次世界大戦に出征した兵士だったのだろうか?
オリコンチャート上位の常連になる前のダークなイエモンの最後のアルバムであり、4thアルバム smile 以降ではダークの表現方法を変えていくことになる。


Z


~ 総括 ~

 今回は「衝撃を受けたロック・アルバム」を選んだんわけだが、「衝撃を受けたロック・アルバム」というのは「好きなロック・アルバム」とは少し様相を異にする。

 ここで選んだ「衝撃を受けたロック・アルバム」をリリースしたアーティストは、もちろん好きなのだが一番好きというわけではない。

 単純に「一番好き好きなアーティストは?」と訊かれたら、The Dogs D'Amour と答えるし、続けて「他には?」と訊かれたら、Hanoi RocksAC/DCMotörhead、The Georgia Satellites、The Replacements、Soul AsylumGoo Goo Dolls あたりの名前を挙げると思う。

 しかし、これらのアーティストには衝撃を受けていない。

 これらのアーティストの音は、筆者の耳に物凄く馴染むのである(AC/DCMotörhead には少し衝撃を受けたかもしれない)。

 ここで選んだ「衝撃を受けたロック・アルバム」とは、筆者の「その後のロックの聴き方に影響を与えたロック・アルバム」であり、とにかく「聴いた時にガツンときたロック・アルバム」なのである。

 今回は、自分のロック人生を振り返ることにもなったのだが、よく分かったのは、自分は、やはりメインストリームを中心に聴いてきたロック・リスナーであり、オルタナティヴではないということだ。

 もちろん、オルタナティヴにも好きなアルバムはあるのだが、中心は必ずメインストリームなのである。

 実際には、今回選んだアルバム以外でも衝撃を受けたアルバムは何枚もある。

 例えば、Kate BushThe Kick InsideAphex TwinSelected Ambient Works 85–92、Goldie の Timeless 等には大きな衝撃を受けたのだが、ロックという範疇で選ぶには無理があったので入れなかった。

 いずれ、ロック以外でも衝撃を受けたアルバムを選んでみようと思う。