Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0443) 好きなシンセポップ(80年代)のアルバム10選

【10位】How Men Are / Heaven 17

[title]
How Men Are [薔薇のダンディズム]
 3rd album
 released: 1984

[artist]
Heaven 17 [ヘヴン・セヴンティーン]
 origin: Sheffield, England, UK

[comment]
 The Human League を脱退した Martyn Ware と Ian Craig Marsh がシンガーの Glenn Gregory を誘って始めたグループが Heaven 17 だ。
 正直なところ、本家の The Human League には興味を持ったことがないのだが、分家の Heaven 17 はけっこう好きで80年代当時よく聴いていた。
 特にこのアルバムは、1st、2nd よりも煌びやかでファンキーな曲が多く収録されており、Martyn と Ian が Glenn のヴォーカルを活かすことに最も成功したアルバムだと思う。


【9位】With Sympathy / Ministry

[title]
With Sympathy [ウィズ・シンパシー]
 1st album
 released: 1983

[artist]
 Ministry [ミニストリー]
 origin: Chicago, Illinois, US

[comment]
 後にインダストリアル・ロックの先駆者となる Ministry は、何故か 1st アルバムではシンセポップをやっている。
 もしかすると、このアルバムは、Al Jourgensen とっては黒歴史なのかもしれないが、この捻りの無いベタなシンセポップはけっこう好きだったりする。
 しかし、この音のままで売れるのはやはり難しそうであり、早々にこの路線を捨てて、激烈なインダストリアル・ロックに路線変更したのは正解だったと思えるアルバムでもある。


【8位】The Innocents / Erasure

[title]
The Innocents [イノセンツ]
 3rd album
 released: 1988

[artist]
 Erasure [イレイジャー]
 origin: London, England, UK

[comment]
Depeche Mode を脱退した Vince Clarke と、彼にオーディションで選ばれた Andy Bell によって結成されたグループが Erasure だ。
 これも実は本家の Depeche Mode には殆ど興味が無いのだが、Vince Clarke に関しては Yazoo も、そしてこの Erasure もかなり好きで80年代当時よく聴いていた。
 特にこのアルバムは、弾けるようなポップ感と、胸を締め付けるような切なさが同居しており、初期の Erasure の集大成のような名盤だと思う。


【7位】Underneath the Radar / Underworld

[title]
Underneath the Radar [アンダーニース・ザ・レイダー]
 1st album
 released: 1988

[artist]
Underworld [アンダーワールド]
 origin: Cardiff, Wales, UK

[comment]
 後にテクノ/エレクトロニカの大御所となる Underworld だが、何故か 1st アルバムではシンセポップをやっている。
 Karl Hyde と Rick Smith がこのアルバムを黒歴史だと思っているのかどうかは全く知らないのだが、けっこうカッコ良いファンキーなシンセポップをやっている。
 アルバム・カヴァーのダサさには如何ともし難いものがあるのだが、曲の良さに関しては、後の名盤 Dubnobasswithmyheadman に繋がるキラリと光るセンスを感じる。


【6位】Human's Lib / Howard Jones

[title]
Human's Lib [かくれんぼ]
 1st album
 released: 1984

[artist]
Howard Jones [ハワード・ジョーンズ]
 origin: London, England, UK

[comment]
 筆者がシンセポップと聴いて先ず思い浮かべるのは Howard Jones であり、そしてこのアルバムだ。
 テレビの洋楽番組で "What Is Love?" を聴いて、その曲の良さに感動し、お小遣いをはたいて買ったアルバムであり、洋楽ビギナーの頃にかなりの回数を聴いたアルバムだ。
 シンセポップは殆ど生演奏をしていないことが多いので軽く見られがちなのだが、Howard Jones の曲には深遠な趣があり、どこか人間らしい温かみのあるところが好きだ。


【5位】The Hurting / Tears for Fears

[title]
The Hurting [ザ・ハーティング]
 2nd album
 released: 1983

[artist]
Tears for Fears [ティアーズ・フォー・フィアーズ]
 origin: Bath, Somerset, England

[comment]
Tears for Fears と言えば、"Shout" そして "Everybody Wants to Rule the World" という2大名曲を収録した 2nd アルバム Songs from the Big Chair が有名だが、この 1st アルバムもかなりの名盤である。
Roland Orzabal と Curt Smith は共に離婚家庭で育っており、その影響があるのかどうなのか、The Hurting というタイトルがぴったりとはまるアルバムだ。
 これはシンセポップなのか?と言われると、違うような気もするのだが、シンセサイザーをふんだんに使っているアルバムなので入れることにした。


【4位】Flaunt It / Sigue Sigue Sputnik

[title]
Flaunt It [ラヴ・ミサイル]
 1st album
 released: 1986

[artist]
Sigue Sigue Sputnik [ジグ・ジグ・スパトニック]
 origin: London, England, UK

[comment]
 80年代における最大のハイプと言えば、それは Sigue Sigue Sputnik なのではないだろうか?
 筆者も「EMI と15億円で契約」、「第5世代ロックン・ロール」という謳い文句に踊らされてこのバンドに興味を持ち、1st シングル "Love Missile F1-11" を買って「おや?」となり、でもアルバムは色んな曲があるはずだと思い込んで、1st アルバム Flaunt It を買って「これはエライもんにお金をつぎ込んでしもた!」と気付いたわけである。
 ところが不思議なもので、今となってはかなり大好きなアルバムなのである(なんなんこれ!?)。


【3位】Welcome to the Pleasuredome / Frankie Goes to Hollywood

[title]
Welcome to the Pleasuredome [ウェルカム・トゥ・ザ・プレジャードーム]
 1st album
 released: 1984

[artist]
Frankie Goes to Hollywood [フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド]
 origin: Liverpool, England, UK

[comment]
Sigue Sigue Sputnik が登場するまでは、このバンド Frankie Goes to Hollywood が最大のハイプだったのではないだろうか?
 ただし、Sigue Sigue Sputnik と違い、Frankie Goes to Hollywood には分かり易い曲の良さがあり、デビューから "Relax"、"Two Tribes"、"The Power of Love" の3曲を立て続けで UK チャート1位に叩き込んだのは伊達ではない。
 特に "The Power of Love" の美しさは素晴らしく、筆者の中では Duran Duran の "Save a Prayer"、Culture Club の "Victims" と並ぶ、80年代におけるUKバンド屈指の名バラードだと思っている。


【2位】Hunting High and Low / a-ha

[title]
Hunting High and Low [ハンティング・ハイ・アンド・ロウ]
 1st album
 released: 1985

[artist]
 a-ha [アーハ]
 origin: Oslo, Norway

[comment]
 a-ha はロック・バンドとは言い難いので前回の記事「衝撃を受けたロック・アルバム26選」には入れなかったが、このアルバムにはかなり衝撃を受けた。
 当時の筆者はノルウェーという国がどこにあるのかも知らなかったのだが、馴染みの無い国から登場した彼らのデビュー曲 "Take On Me" の鮮烈な印象は今も忘れ難く、耳に残る印象的なメロデイー、Morten Harket の透明感のある声と美しいファルセットは本当に衝撃的だった。
 このアルバムは、デビュー・シングル "Take On Me" で a-ha を好きになったリスナーの期待を裏切らない完璧なデビュー・アルバムであり、珠玉の名曲が詰ったシンセポップ史に残る名盤である。


【1位】Youthquake / Dead or Alive

[title]
Youthquake [ユースクエイク]
 2nd album
 released: 1985

[artist]
Dead or Alive [デッド・オア・アライヴ]
 origin: Liverpool, England, UK

[comment]
Dead or Alive については、とにかく "You Spin Me Round" という曲の凄さであり、こんな名曲を書けたのであれば筆者がミュージシャンなら「もう引退してもいい」と思ってしまうだろう。
 とにかく "You Spin Me Round" が素晴らしいのだが、Dead or Alive の場合、他の曲が全くダメというわけではなく、他の曲もかなり良いのだが、どうしても "You Spin Me Round" に全部持っていかれてしまうきらいがある。
 このアルバムは、プロデューサー・チーム Stock Aitken Waterman と、ロック・バンドだった頃の名残がある Dead or Alive が絶妙にマッチした彼らの最高傑作である。


総括

 筆者はこのブログでロックン・ロール、ハード・ロックヘヴィ・メタル等のギター・オリエンテッドな音楽を取り上げることが多いのだが、テクノやエレクトロニカ等もかなり好きだったりする。

 そんな嗜好の源流は、たぶんシンセポップにあると思っており、むしろ洋楽を聴き始めの頃はギターよりもシンセサイザーの方が好きだった。

 筆者が洋楽を聴き始めた80年代は、多くのシンセポップ・グループがいた時代であり、洋楽と言えばシンセポップだったような気がする。

 筆者が好きだったのは大衆的でキャッチーでポップなシンセポップであり、実験的だったりアーティスティックだったりするシンセポップは苦手だった。

 今回取り上げた10枚は、いずれも大衆的でキャッチーでポップなシンセポップだと思っている。

 今回取り上げた10枚以外にも、Orchestral Manoeuvres in the Dark、The Associates、Soft Cell、Bronski Beat、Pet Shop Boys 等も好きなのだが、これらのグループはアルバムよりもシングルやベスト盤を聴くことの方が多かったので今回のリストには入れなかった。

 今回取り上げた10枚の中で、自分でも以外だなと思ったのは Sigue Sigue Sputnik だ。

 最初にリストを作るときは、Sigue Sigue Sputnik のことは眼中に無かったのである。

 何しろ、彼らのデビュー・アルバム Flaunt It は悪い意味での凄いアルバムであり、"Love Missile F1-11" 以外の曲は、辛うじて「これは、たぶん "Love Missile F1-11" ではない」ということくらいは薄っすらと分かるのだが、集中して聴かなければ、どの曲を聴いても殆ど一緒なのである。

 どの曲も、おもちゃのような打ち込みをバックに、物凄く下手糞で地声が分からないくらい加工されたヴォーカルが乗る。

 この歌なら、むしろ歌を歌わないラップの方がよほど歌心を感じさせてくれる。

 しかし、ふと思い出し、改めて Flaunt It 聴いてみたら、以外にも「良いな」と思ったのである。

 否、「良いな」ではなく「面白いな」と言うべきかもしれない。

 そして思いついたのは、Sigue Sigue Sputnik は「筆者世代の New York Dolls なのではないだろうか?」ということであり、「New York Dolls の80年代版がSigue Sigue Sputnik なのではないだろうか?」ということだ。

Sigue Sigue Sputnik も New York Dolls と同様に、無駄にケバくて、インチキ臭くて、紛い物っぽくて、まともなロック・ファンからは相手にされなさそうなのだが、逆にそこが彼らの最大の魅力なのである。

Sigue Sigue Sputnik は、さすがに New York Dolls ほどの伝説にはなれなかったし、音楽的にも New York Dolls には遠く及ばないのだが、今回このリストを作ることにより、自分自身が予想以上に Sigue Sigue Sputnik が好きであることに気付くことができた。