Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

自分のロック感を作ったアーティスト(5)Small Faces

Small Faces [スモール・フェイセス]

origin: London, England, U.K.


Small Faces [スモール・フェイセス]

 1st studio album
 released: 1966/05
 producer: Ian Samwell, Kenny Lynch, Don Arden

  • Side one
    1. Shake
    2. Come on Children
    3. You Better Believe It
    4. It's Too Late
    5. One Night Stand
    6. Whatcha Gonna Do About It
  • Side two
    1. Sorry She's Mine
    2. Own Up Time
    3. You Need Loving
    4. Don't Stop What You're Doing
    5. E Too D
    6. Sha-La-La-La-Lee

[comment]
 デッカ・レコードからリリースされた Small Faces のデビュー・アルバム。
 自らのバンド名をアルバム・タイトルにしているのだが、これが後にややこしいことになる。
 R&Bやソウルをルーツに持つモッズ・バンドなのだが、この時代としては異例なくらいハードな演奏と、スティーヴ・マリオットのパワフルなヴォーカルにガツンとやられる。
 モッズ的なスタイリッシュさもあるのだが、後のハード・ロックに繋がる激しさが際立っている。


From the Beginning [フロム・ザ・ビギニング]

 compilation album
 released: 1967/06/02
 producer: Ian Samwell, Kenny Lynch, Steve Marriott, Ronnie Lane

  • Side one
    1. Runaway
    2. My Mind's Eye
    3. Yesterday, Today and Tomorrow
    4. That Man
    5. My Way of Giving
    6. Hey Girl
    7. (Tell Me) Have You Ever Seen Me?
  • Side two
    1. Come Back and Take This Hurt Off Me
    2. All or Nothing
    3. Baby Don't You Do It
    4. Plum Nellie
    5. Sha-La-La-La-Lee
    6. You've Really Got a Hold on Me
    7. Whatcha Gonna Do About It

[comment]
 デビュー直後に人気バンドになった Small Faces がイミディエイト・レコードに移籍したため、デッカ・レコードが Small Faces でもう一稼ぎするために制作したコンピレーション・アルバム。
 それ故、アーティスト側の意向は無視されていて、デビュー・アルバムとの曲の重複もあるのだが、「これが正式な 2nd でもえぇやん」と思えるくらい充実した内容だ。
 筆者は、これに収録されている "All or Nothing" を the Dogs D'Amour [ザ・ドッグス・ダムール] がカヴァーしたことにより、このバンドを知った。
 コンピレーション・アルバムだが、"All or Nothing" も含め、このバンドがデッカ・レコード時代に残したアウトテイクを聴けるため、非常に重要なアルバムでもある。


Small Faces [スモール・フェイセス]

 2nd studio album
 released: 1967/06
 producer: Ronnie Lane, Steve Marriott

  • Side one
    1. (Tell Me) Have You Ever Seen Me?
    2. Something I Want to Tell You
    3. Feeling Lonely
    4. Happy Boys Happy
    5. Things Are Going to Get Better
    6. My Way of Giving
    7. Green Circles
  • Side two
    1. Become Like You
    2. Get Yourself Together
    3. All Our Yesterdays
    4. Talk to You
    5. Show Me the Way
    6. Up the Wooden Hills to Bedfordshire
    7. Eddie's Dreaming

[comment]
 イミディエイト・レコードに移籍してリリースされた 2nd アルバムなのだが、デッカ・レコードからリリースされたデビュー・アルバムと同じタイトル(=バンド名)なので紛らわしい。
 そして、"My Way of Giving" と "(Tell Me) Have You Ever Seen Me?" は、デッカ・レコードがリリースした編集版 From the Beginning と重複している(権利関係はどうなってるの?)。
 デッカ時代に比べるとR&Bやソウルなどのブラック・ミュージック色が後退しており、時代の影響なのかフォーク風の曲が増えた。
 ロニー・レーン (ba) のリード・ヴォーカル曲が増えており、これにより1枚のアルバムにおけるコントラストが鮮やかになった。


There Are But Four Small Faces [ゼア・アー・バット・フォー・スモール・フェイセス]

 1st studio album (U.S.)
 released: 1968/03/17
 producer: Ronnie Lane, Steve Marriott

  • Side one
    1. Itchycoo Park
    2. Talk to You
    3. Up the Wooden Hills
    4. My Way of Giving
    5. I'm Only Dreaming
    6. I Feel Much Better
  • Side two
    1. Tin Soldier"
    2. Get Yourself Together
    3. Show Me the Way
    4. Here Come The Nice
    5. Green Circles
    6. (Tell Me) Have You Ever Seen Me?

[comment]
 Small Faces の米国でのデビュー・アルバムであり、はっきり言って、彼らのディスコグラフィの中では重要視されていないアルバムだと思うのだが、米国でのブレイクを狙って曲が厳選されており、筆者はけっこうな頻度でこのアルバムを聴く。
 何よりも素晴らしいのは、名曲 "Itchycoo Park" がアルバムの冒頭を飾っていることだ。
 この曲は彼らの名曲のなかでもスティーヴ・マリオットの歌の上手さが際立つ曲だ。
 Small Faces のシンガーはマリオットだけではないので、彼だけを持ち上げるのは他のシンガーに申し訳なのだが、マリオットの歌が上手すぎるので、こればかりは如何ともしがたい。


Ogdens' Nut Gone Flake [オグデンズ・ナット・ゴーン・フレイク]

 3rd studio album
 released: 1968/05
 producer: Ronnie Lane, Steve Marriott

  • Side one
    1. Ogdens' Nut Gone Flake
    2. Afterglow
    3. Long Agos and Worlds Apart
    4. Rene
    5. Song of a Baker
    6. Lazy Sunday
  • Side two
    1. Happiness Stan
    2. Rollin' Over
    3. The Hungry Intruder
    4. The Journey
    5. Mad John
    6. HappyDaysToyTown

[comment]
 リリースが68年であり、サイケ感漂うその音楽性は、前年にリリースされた the BeatlesSgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band の影響が強いと言われている。
 筆者は、60年代のバンドの中では the Beatles よりも圧倒的に Small Faces の方が好きなので贔屓目があるのかもしれないが、スティーヴ・マリオットの熱いソウルフルなヴォーカルが聴けるこのアルバムの方が上だと思っている。
 イアン・マクレガンのキーボードがサウンドの要になっている曲が多い。
 全英1位を獲得したこのアルバムの後、マリオットはバンドを脱退し、結成からデビューに向けて試行錯誤中の Humble Pie に合流する。
 そして、Small Faces は、元 the Jeff Beck Group のロッド・スチュワートロニー・ウッドを迎えて Faces となる。


Playmates [プレイメイツ]

 4th studio album
 released: 1977/08
 producer: Kemastri; Shel Talmy on "Lookin' for a Love"

  • Side one
    1. "High and Happy
    2. Never Too Late
    3. Tonight
    4. Saylarvee
    5. Find It
  • Side two
    1. Lookin' for a Love
    2. Playmates
    3. This Song's Just for You
    4. Drive-In Romance
    5. Smilin' in Tune

[comment]
 奇しくも時期を同じくして解散した Humble Pie と Faces。
 スティーヴ・マリオット (vo/gt)、イアン・マクレガン (key)、ケニー・ジョーンズ (dr) による Small Faces の再結成・復活作。
 残念ながら、ロニー・レーン (ba) は本作リリース前に脱退したので不参加であり、Roxy Music のツアー・メンバーや、後に Foreigner のメンバーとなるリック・ウィルスが参加している。
 「枯れている」と言うと、鮮烈な印象を残さないものへの遠まわしの表現として使われることが多いのだだ、このアルバムの楽曲は本当に良い意味で枯れている。
 「こういうのいい」ではなく「こういうのいい」、そんな一枚である。


78 in the Shade [78イン・ザ・シェイド]

 5th studio album
 released: 1978/09
 producer: Kemastri

  • Side one
    1. Over Too Soon
    2. Too Many Crossroads
    3. Let Me Down Gently
    4. Thinkin' About Love
    5. Stand by Me (Stand by You)
  • Side two
    1. Brown Man Do
    2. Real Sour
    3. Soldier
    4. You Ain't Seen Nothing Yet
    5. Filthy Rich

[comment]
 再結成 Small Faces の第二弾。
 この時期の Small Faces の活動期は、英国におけるパンク/ニュー・ウェイヴの勃興期と重なっており、当時は良くも悪くも素人臭いバンドが多かったのだが、このアルバムにはそれと対局にある玄人芸と呼ぶべき完成度の高い歌と演奏が収められている。
 ベースは前作に続きリック・ウィルス、"Thinkin' About Love" と "You Ain't Seen Nothing Yet" では、Wings のジミー・マカロックがリード・ギターを弾いている。
 前作もそうだったのだが、今作でもスティーヴ・マリオットは Humble Pie 時代の泥臭いヴォーカルは封印し、都会的な洗練された歌を聴かせてくれる。
 上手いだけでなく、実に器用なシンガーなのである。


~ 総括 ~

 the Dogs D'Amour [ザ・ドッグス・ダムール] が93年にリリースしたアルバム ...More Unchartered Heights of Disgrace (邦題: 許されざる恥辱) にボーナス・トラックとして収録されていた "All or Nothing" を聴いたのが Small Faces を知った切っ掛けだった。

 否、厳密に言うと、当時の筆者はロックを聴き始めてから、既に10年くらい経っていたので Small Faces 自体は知っていたのだが、Small Faces を意識したのが上述した "All or Nothing" のカヴァーだったのだ。

 とにかく、曲の良さに打ちのめされ、the Dogs D'Amour、というより タイラ (vo/gt) の書く曲とは明らかに印象か違っていることに気付き、クレジットを見て、それが Small Faces (スティーヴ・マリオット/ロニー・レーン) の曲であることを知った。

 その後、Small Faces のオリジナルを聴いてみたところ、the Dogs D'Amour のスリージーR&Rな印象とは全く異なるものの、キーボードの効いたスタイリッシュな演奏と歌に魅了された。

 そして何よりも筆者が Small Faces に惹かれたのはスティーヴ・マリオットの歌の上手さだった。

 英国のバンドのシンガーには、以外と歌の上手い人が少ない。

 どちらかと言うと、技術的な上手さではなく、独特の個性で聴かせようとする人の方が多い。

 そんな英国において、スティーヴ・マリオットは、ポール・ロジャース(Free、Bad Company)、ロッド・スチュワート(the Jeff Beck Group、Faces)、スティーヴ・ウィンウッド(tSpencer Davis Group、Traffic、Blind Faith)あたりと並ぶ、技術的に上手い歌を聴かせることのできるシンガーだ。

 やはり、貴重な時間を使ってヴォーカル入りの曲を聴くなら、上手い歌を聴きたい。

 歳を取ってからは、それが顕著になった。

 若いころに好んで聴いていたポストパンク、ニュー・ウェイヴ、ローファイあたりは、ヴォーカルの弱い曲が多いので、ちょっと聴くのが辛くなってきた。

 人は歳を重ねると嗜好がコンサバになっていく傾向にあるというが、筆者はモロにそれである。

 最近は、ほぼ 100% くらい、音楽を聴くとなると YouTube Music を利用しているのだが、ヴォーカル入りの曲をピックアップするときは上述した上手いシンガーの曲を無意識に選んでいる。

 この傾向は、この先、自分が認知症などで音楽への興味を失わない限り、深化してゆきそうな感じだ。

 スティーヴ・マリオットのもう一つのバンド、Humble Pie も、Small Faces とは一味違うマリオットの泥臭いヴォーカルが楽しめるアルバムが多いので、いずれ取り上げたいと思う。