Free [フリー]
origin: London, England, U.K.
Tons of Sobs [トンズ・オブ・ソブス]
1st studio album
released: 1969/03
producer: Guy Stevens
- Side one
- Over the Green Hills (Pt. 1)
- Worry
- Walk in My Shadow
- Wild Indian Woman
- Goin' Down Slow
- Side two
- I'm a Mover
- The Hunter
- Moonshine
- Sweet Tooth
- Over the Green Hills
[comment]
このアルバム・リリース時のメンバーはの年齢は、ポール・ロジャース (vo) 19歳、サイモン・カーク (dr) 19歳、ポール・コゾフ (gt) 18歳、アンディ・フレイザー (ba) に至っては 16歳である。
日本で言うところの未成年から成るバンドなのだが、渋いという言葉では表現しきれないほど大人びた曲ばかりが収録されていて、特にロジャースのヴォーカルの上手さと色気はとても19歳とは思えない。
ブルーズと言えばブルーズなのだが、本場米国のブルーズとは異なるブリティッシュ・ブルーズ・ロックであり、強烈に湿り気を帯びている。
今となっては愛聴盤なのだが、最初に聴く Free のアルバムとしては向いていない。
Free [フリー]
2nd studio album
released: 1969/10
producer: Chris Blackwell
- Side one
- I'll Be Creepin
- Songs of Yesterday
- Lying in the Sunshine
- Trouble on Double Time
- Mouthful of Grass
- Side two
- Woman
- Free Me
- Broad Daylight
- Mourning Sad Morning
[comment]
アルバム・カヴァーが前作の不気味なデザインとは真逆の美しいデザインに変っており、楽曲の方もブリティッシュ・ブルーズ・ロックであることに変りわないのだが弾むようなしなやかさが増している。
8曲がポール・ロジャース (vo) とアンディ・フレイザー (ba) のコンビによって書かれ、残りの1曲はメンバー全員によって書かれており、カヴァー曲がないのも前作との大きな違いだ。
次作のようにビッグ・ヒットを含むキャッチーなアルバムではないのだが、ロジャース/フレイザーの楽曲の基本はここにあるので、このアルバムから Free を聴き始めるのも有りだと思う。
最終曲 "Mourning Sad Morning" で聴けるクリス・ウッドのフルートの音色が切なくて悲しい。
Fire and Water [ファイアー・アンド・ウォーター]
3rd studio album
released: 1970/06
producer: Free
- Side one
- Fire and Water
- Oh I Wept
- Remember
- Heavy Load
- Side two
- Mr. Big
- Don't Say You Love Me
- All Right Now
[comment]
ブリティッシュ・ロックを掘り下げていくと必ず辿り着き、そして、絶対に避けて通ることのできない名盤中の名盤。
筆者が18~19歳頃(87~88年頃)にバイトしていたレンタル・ビデオ店に、ブリティッシュ・ロックのミュージック・ビデオを集めた VHS があったのだが、それに収録されていた "Mr. Big" に衝撃を受けたことが Free に深入りする切っ掛けだった。
サイモン・カークの手数少な目ながら絶妙の8ビートでグルーヴを醸し出すドラム、それとシンクロしながらリード楽器のように動き回るアンディ・フレイザーのベース、良い意味でヴィブラートの効かせ方がえげつないポール・コゾフの泣きのギター、そして、誰が聴いても文句の付けようがない歌唱力を持つポール・ロジャースの艶のあるヴォーカル。
そのような高水準の演奏で高水準の曲を、最初から最後まで聴き続けることができる奇跡のようなアルバム。
Highway [ハイウェイ]
4th studio album
released: 1970/12
producer: Free
- Side one
- The Highway Song
- The Stealer
- On My Way
- Be My Friend
- Side two
- Sunny Day
- Ride on a Pony
- Love You So
- Bodie
- Soon I Will Be Gone
[comment]
Free の最高傑作と言うと、ヒット・シングル "All Right Now" を含む Fire and Water というのが通説なのだが、筆者が最高傑作を選べるならこの Highway を挙げる。
Highway が、前作までと大きく異なるのは「米国感」、というか「カントリー感」のある牧歌的な曲が含まれており、ブリティッシュ・ブルーズ・ロックという枠から飛び出したイメージがある。
曲も粒ぞろいで、ポール・ロジャースは前作よりも更に抑揚を効かせて歌っている。
中でも "Be My Friend"、"Love You So" というバラードにおけるロジャースの歌唱力は尋常ではなく、「誰もカヴァーできないぞ」というレベルに達している。
Free Live! [フリー・ライヴ]
1st live album
released: 1971/06
producer: Andy Johns
- Side one
- All Right Now
- I'm a Mover
- Be My Friend
- Fire and Water
- Side two
- Ride on Pony
- Mr. Big
- The Hunter
- Get Where I Belong
[comment]
解散を決めた Free の「解散記念」的な意味でアイランド・レコードがリリースしたライヴ盤であり、たぶんバンド側の意向は反映されていない。
それでも、この時期の Free のライヴ演奏を収録した正規盤は貴重であり、「ありがとう!アイランド・レコード」と言いたい。
7曲("Get Where I Belong" のみスタジオ録音)というのは、正直なところ物足りなさを感じるのだが、バンド絶頂期のライヴ演奏、特に "Be My Friend" と "Mr. Big" を聴けるのは、このバンドのファンとして幸せである。
ヒット曲を出し、バンドが成功してからの Free はメンバーどうし、特にポール・ロジャース (vo) とアンディ・フレイザー (ba) の関係が険悪だったらしいのだが、このライヴ盤からはそれを感じることは無い(さすがプロ!)。
Free at Last [フリー・アット・ラスト]
5th studio album
released: 1972/05
producer: Free
- Side one
- Catch a Train
- Soldier Boy
- Magic Ship
- Sail On
- Travellin' Man
- Side two
- Little Bit of Love
- Guardian of the Universe
- Child
- Goodbye
[comment]
解散していたバンドが、レコード会社の思惑に操られるように再結成してリリースしたアルバムなのだが、前向きな再結成ではなく、アルバム・タイトルどおり、これで本当に Free を終わらせようとして制作されたアルバムだ。
71年に解散し、翌72年に再結成というのは、あまりにも節操が無いように思われるが、アーティストと言えども売り上げを期待できる活動をするのは当然のことであり、この選択は正しい。
普通、この手の再結成によるアルバムは駄作になるのだが、またもや新たな名盤を作ってしまうところが、このバンドの凄いところだ。
これぞ Free と言える泣きのメロディーが印象的な曲が多く、この時期のポール・コゾフはドラッグに蝕まれていたと思うのだが、このアルバムでの彼のギターからは、まだ衰えを感じることはない。
Heartbreaker [ハートブレイカー]
6th studio album
released: 197301
producer: Free & Andy Johns
- Side one
- Wishing Well
- Come Together in the Morning
- Travellin' in Style
- Heartbreaker
- Side two
- Muddy Water
- Common Mortal Man
- Easy on My Soul
- Seven Angels
[comment]
Free at Last というタイトルのアルバムをリリースしておきながら、更にもう一枚というのが、この時期のバンドのグダグダ感を物語っている。
不安定な状況で制作されたとは、とても思えない名盤であり、Free 史上最もマイルドで歌もの嗜好のアルバムだ。
ただし、ポール・コゾフはドラッグのオーヴァードーズにより安定した演奏が困難だったため、アディショナル・ミュージシャン扱いであり、彼が弾けなかった分のギターはポール・ロジャースやサイモン・カーク、ゲストのスナッフィーが弾いている。
そして、ベーシストのアンディ・フレイザーが脱退したので、日本人の山内テツが正式メンバーとして参加しており、米国人キーボーディストのラビットも正式メンバーとして参加している。
アルバム・タイトルになっている Heartbreaker だが、「他者を傷つける人」という言葉がカッコいいと感じるのか、ロック・ミュージシャンにチョイスされがちな言葉である。
~ 総括 ~
Free は、最初に聴いたとき、とても分かりにくいバンドだった。
英国におけるハード・ロック黎明期のバンドの1つだが、他のバンドに比べると圧倒的に派手さに欠けるのである。
筆者は、ハード・ロックを勉強するつもりで、Deep Purple in Rock と Led Zeppelin (1st)を、同じ日に聴いたのだが、Deep Purple の曲、特に速くてラウドな曲はド派手で分かりやすく、すぐに好きになった。
Led Zeppelin の方は想像していたよりも難解で、良さが分かるまでに時間が掛かった。
一発で気に入ったのは "Communication Breakdown" だけだったのだが、難解ながらも華があったので聴き続けることができ、その後、Led Zeppelinの凄さを分かるようになった。
Free のアルバムは、能動的な聴き方ではなかった。
当時(80年代後半)、仲良くしていた10歳以上年上のバンドマンのお兄さんが「勉強しなはれ」と言って、段ボール箱に詰った50枚ほどのレコードを貸してくれたのだが、その中に Heartbreaker があったのだ。
50枚ものレコードを無料で聴けるというだけでも嬉しかったのだが、「あの有名な Free のアルバムを聴ける」ということが更に嬉しくて、かなり期待して Heartbreaker を聴いたのだが、速い曲が1曲も入ってなかったので残念ながら当時の筆者にはピンとこなかったのである。
結局、Heartbreaker は数回聴いただけで段ボール箱の中で眠らせてしまった。
その後、筆者が Free に対し、再度興味を持った切っ掛けは、上述した Fire and Water のコメントに書いたとおり、バイト先のレンタル・ビデオ店で "Mr. Big" のミュージック・ビデオを見たときだ。
先ずは、ポール・ロジャースの歌の上手さに引き込まれ、続けて、ポール・コゾフ (gt)、アンディ・フレイザー (ba)、サイモン・カーク (dr) の演奏にも引き込まれた。
Free の演奏の上手さは、ロックを聴き始めた人にとって、分かりにくい上手さだと思う。
Deep Purple のように、聴いた瞬間に分かる上手さではなく、職人的な燻し銀の上手さなのである。
Free のアルバムは、一枚まるごとギター、ベース、ドラム、それぞれの楽器を主役にして聴き続けることができる。
中でも、アンディ・フレイザーのベースを主役にして聴き続けると、Free の曲の別の魅力が聴こえてくる。
Free の音楽性は、ブルーズ・ロックと言えば確かにそうなのだが、同時代の英国3大ブルーズ・ロック・バンド、Fleetwood Mac、Chicken Shack、Savoy Brown あたりとは明確な違いがある。
3大バンドは、かなり忠実に米国のブルーズを再現しようとしていたと思う(ただし、どうしても英国らしさが出てしまう)。
それに対し、Free は、ブルーズ・ファン以外も自分たちのファンに取り込もうとしていたような気がする。
そして、それを明確に打ち出していたのは、ポール・ロジャースのヴォーカルだ。
緩やかな「こぶし」の効いた彼の歌は万人向けであり、誰が聴いても上手いと感じるシンガーだ。
筆者は、「一番好きなロック・シンガーは?」と聴かれたら、迷わずスティーヴ・マリオット(Small Faces ~ Humble Pie)の名を挙げるが、「一番歌が上手いロック・シンガーは?」と聴かれたらポール・ロジャースの名をあげる。
スティーヴ・マリオットもポール・ロジャースも、歌の上手さでは拮抗しているのだが、万人受けを考えるとポール・ロジャースを選ぶことになる。
正に、ポール・ロジャースの歌は、英国の国宝なのである。
Free 解散後、ポール・ロジャースとサイモン・カークは、Bad Company を結成するのだが、このバンドも筆者のロック感を作ったバンドなので、いずれ取り上げたいと思っている。