Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

自分のロック感を作ったアーティスト(8)Jeff Beck [Beck, Bogert & Appice 期]

Beck, Bogert & Appice [ベック・ボガート&アピス]

origin: Pittsburgh, Pennsylvania, U.S.


Beck, Bogert & Appice [ベック・ボガート&アピス]

 1st studio album (the only studio album)
 released: 1973/03
 producer: Don Nix, Beck, Bogert & Appice

  • Side one
    1. Black Cat Moan
    2. Lady
    3. Oh to Love You
    4. Superstition
  • Side two
    1. Sweet Sweet Surrender
    2. Why Should I Care
    3. Lose Myself with You
    4. Livin' Alone
    5. I'm So Proud

[comment]
 第2期 Jeff Beck Group ではメイン・ギターにフェンダーストラトキャスターを使っていたが、このアルバムではギブソンレスポールに戻しているので、音色は第1期 Jeff Beck Group に近い。
 しかし、楽曲は、第2期 Jeff Beck Group で掘り下げたソウル・ミュージックやモータウンに傾倒した曲が多い。
 そもそもこのバンドは、元 Vanilla Fudge [ヴァニラ・ファッジ] のティム・ボガート(ba/vo) とカーマイン・アピス(dr) という強力ななリズム隊に、ロッド・スチュワート(vo) を加えた4ピースによるバンド結成を計画していたところから始まったのだが、ジェフの自動車事故が原因でバンド結成の中止を余儀なくされている。
 その後、第2期 Jeff Beck Group の解散を経て、ロッドを除く3人で3ピース・バンドとして結成されたのだが、ティムとカーマインの歌が予想以上に良い(ロッドの歌で聴いてみたい気もするのだが...)。
 いただけないのは、1曲目、"Black Cat Moan" におけるジェフのリード・ヴォーカルだ。
 新バンドによる大切なデビュー・アルバムの1曲目で、なんで歌っちゃったのかなぁ~とう感じである。


Live in Japan [ベック・ボガート&アピス・ライヴ・イン・ジャパン]

 live album
 released: 1973/10
 producer: The Boys (Beck, Bogert & Appice)

  • Side one
    1. Superstition
    2. Lose Myself with You
    3. Jeff's Boogie
  • Side two
    1. Going Down
    2. Boogie
    3. Morning Dew
  • Side three
    1. Sweet Sweet Surrender
    2. Livin' Alone
    3. I'm So Proud
    4. Lady
  • Side four
    1. Black Cat Moan
    2. Why Should I Care
    3. Plynth/Shotgun (Medley)

[comment]
スティーヴィー・ワンダーがら送られた "Superstition"(迷信)は、スタジオ盤ではA面ラストという重要な位置に収められていたが、このライヴ盤ではA面トップを飾っている。
 スタジオ盤とは、曲の始まり方が全然違うので(ライヴ盤ではトーキング・モジュレーターを使っている)、初めて聴いたときは "Superstition" だと気付くのに一瞬遅れたのだが、筆者はライヴ盤の方が好きだ。
 続く2曲目の "Lose Myself with You"(君に首ったけ)は、10分を超えるインプロヴィゼーションの応酬であり、バンド名のとおり Beck, Bogert & Appice を堪能できる(ちなみに、スタジオ盤では3分ちょっと)。
 日本公演という特殊な環境がそうさせたのか、このライヴ盤はジェフ・ベックが演奏を楽しんでいる姿が目に浮かんでくる。


~ 総括 ~

ジェフ・ベックの長い活動歴の中で、Beck, Bogert & Appice は一瞬の通過点のようで、それほど重要な位置付けをされていないような気がする。

 しかし、ジェフにとって、BBA という存在は、その後の活動に大きな影響を与えたのではないだろうか?

 ジェフは、第1期 Jeff Beck Group でロッド・スチュワートという稀代のシンガーと出会っている。

 そして、その後、BBA でティム・ボガート、カーマイン・アピスという個性的で凄腕のベーシストとドラマーに出会った。

 BBA の解散以降、ジェフの活動はパーマネントなバンド活動は無くなり、ソロが中心となった。

 一緒に演奏するミュージシャンは流動的になり、楽曲もインストゥルメンタルが中心となった。

 これは、即ち、BBA の解散を経て、ロッドのようなシンガー、ボガート&アピスという強力なリズム隊がなければ、バンドは成立しないと悟ったのではないだろうか?

 たった1つのパートでも、自分から見て「上手い」と認められないメンバーがバンドの中にいるのが耐えられなくなったのではないだろうか?

 しかし、それほどの腕を持つミュージシャンと長期にわたるバンド活動は難しい。

 それなら、自分を中心に据えて、そのとき最高と思えるメンバーと一緒に演奏をするソロというスタイルをとるようになったのではないだろうか?

 もしそうなら、おこがましいかもしれないが、そんな気持ちが筆者にも少し分かる。

 筆者の仕事は技術職であり、他の技術者と一緒に仕事をすることは多々あるのだが、下手な技術者と一緒に仕事をするときは精神的なストレスが滅茶苦茶大きいので、四六時中いらいらしてしまうのである。

 繰り返しになるが、BBA はジェフにとって、大きな転換期となった重要な時期だと思っている。

 第1期と第2期の Jeff Beck Group、そして、BBA は取り上げたので、今後は折を見てソロ・アルバムも取り上げていきたい。