Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0483) 好きな日本人シンガー(3)Fayray

Fayray [フェイレイ]

origin: 東京都


竹内結子が目当てで見始めたドラマ『Friends』で偶然に聴いた "tears" という曲があまりにも印象的だった。

 ドラマの内容は殆ど憶えてないのだが、"tears" を聴いたときの「なんて美しいバラードなんだろう」という衝撃は今も鮮明に憶えている。

 当然、その後の調べで "tears" が Fayray というシンガーソングライターの曲であることを知ったのだが、彼女のプロフィールにも驚き、そして興味を持った。

 4歳からクラシック・ピアノを習い始め、帰国子女で英語が達者、ミス立教という美貌を持ち、頭が良くて、曲が書けて歌詞も書ける。

 「天は二物を与えず」という諺があるが、世の中には二物どころか全てを持っている人がいるんだなと、何だか羨ましくなったものである。

 筆者が Fayray を見付けた頃、つまり、"tears" という曲を知った頃は西暦2000年だ。

 西暦2000年というと、その当時の筆者は30代に入り、最も仕事が激務だった頃であり、おまけに離婚直後だった。

 ただ、筆者だけが激務だったわけではなく、資本主義社会における企業という営利組織の中で働くビジネスマンは、まともに仕事をしているのであれば誰しもが激務だ。

 企業どうしの自由競争というものは、言い方を変えれば「武器を使わない戦争」であり、我々ビジネスマンは、その最前線で戦う兵士だ。

 と、こう書くと何だかカッコいい感じになってしまうが、実際には無様なくらい泥臭く、毎日が必死のパッチなのである。

 資本主義社会の企業に与する人間にとって、揺るぎない正しさとは「より多くの売り上げを稼ぐ」ことであり、筆者のような技術者の場合、技術力でそれに貢献することだ。

 当時の筆者は今以上に新しい技術力を得ることに貪欲であり、出勤や退勤の電車の中では常に資格取得の勉強をしていた(今も似たようなものだが...)。

 もし、古い技術にしがみついたり、或いは、新しい技術に対応することができなくなったらどうなるかというと、会社を去ることになる。

 もちろん、会社側から社員の解雇を行うためには法律上の正当性が必要になるので、会社側が社員の解雇を行うことはない。

 ただ、腕を磨くことを怠った技術者に対しては、会社に居ずらい空気が徐々に作られてゆくため、自ら辞めざるをえなくなるのである。

 中には泣きながら辞めていった人もいたが、自己の研鑽を怠ったことによる自己責任であり、明日は我が身なので、彼らのことを気の毒だと思うことは全くなかった。

 そんな殺伐とした世界に一番ドップリと浸かっていたのが30代であり、そのときに出会ったのが Fayray の "tears" だったのである。

Fayray の書く曲と歌詞、そして彼女の声には癒しの効果がある。

 殺伐とした世界でビクともぜずに仕事をしているつもりでも、やはりそこは生身に人間であり、気付かないうちに疲弊しているのである。

 そんなときは Fayray の曲を聴くことで当時の筆者は癒されていた。

 当時の筆者は京都から大坂まで door to door で1時間半くらいかけて通勤していたのだが、退勤時は帰宅してから Fayray の曲を聴くのが楽しみだった(ちなみに当時の筆者は、音楽はステレオで聴くものという固定概念があり、ウォークマンなどで聴くことに否定的だった)。

 今回、これを書くにあたり、久々に Fayray の全てのアルバムを聴き直してみたのだが、駄作なしの名盤ばかりであることをあらためて再認識した。

 これを書いている2025年現在、7thアルバム「寝ても醒めても」が Fayray の最後のアルバムだ。

 2006年からニューヨークに在住し、彼の地を活動拠点としているため、この先、Fayray が日本で音源をリリースしてくれることはなさそうだ。

Fayray の音楽が好きなリスナーとしては少々残念なのだが、帰国子女である彼女にとっては、日本よりもニューヨークの方が音楽創作の場所として魅力的なのだろう。


CRAVING [クレイヴィング]

 1st studio album
 released: 1999/05/26
 label: アンティノスレコード
 producer: 浅倉大介

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 in four〜Love Always, Fayray Fayray
2 太陽のグラヴィティー 井上秋緒 浅倉大介 浅倉大介
3 NEON TETRA 井上秋緒 浅倉大介 浅倉大介
4 Daydream Café 井上秋緒 浅倉大介 浅倉大介
5 PURE WHITE 井上秋緒 浅倉大介 浅倉大介
6 Same night, Same face 井上秋緒 浅倉大介 浅倉大介
7 YURA・YURA〜Vibration 井上秋緒 浅倉大介 浅倉大介/ブラス・アレンジ: 数原晋
8 UNTOUCHABLE GIRLS 井上秋緒 浅倉大介 浅倉大介
9 Powder Veil 井上秋緒 浅倉大介 浅倉大介
10 Craving Fayray Fayray, 浅倉大介 浅倉大介
11 Daydream Café (DA MIX) 井上秋緒 浅倉大介 浅倉大介

[comment]
Fayray の1stアルバムは、彼女のディスコグラフィーの中でも一際異彩を放っている。
Fayray が楽曲制作に関与している曲は、全11曲中わずか2曲であり、プロデュースには全く関与していない。
 殆どの楽曲制作を「作詞=井上秋緒」、「作曲/編曲/プロデュース=浅倉大介」というコンビ(つまり T.M.Revolutionの 楽曲制作コンビ)が担当している。
 いわゆる、当時流行っていた「ヒット曲を量産できるプロデューサーとヴィジュアルのいけてる女性シンガーを組ませたデスクトップ・ミュージック」という感じであり、Fayrayら しさは薄い。
 アルバム・カヴァーのデザイン、衣装、ヘアスタイルも制作スタッフから「押し付けられてる感満載」であり、けして彼女の好みではないはずだ。
 上述のとおり、Fayray らしさの薄いアルバムであり、彼女にとっては黒歴史なのかもしれないが、筆者はこのアルバムがけっこう好きだ。
 何故なら、このアルバムのために用意してもらった制作スタッフや関連企業のために、一生懸命に努力している彼女の姿が美しいからだ。
 そして、このアルバムでの Fayray は、頑張って可愛い声を作って歌っており、この声は次作以降では聴けなくなるので、その点においても貴重なアルバムだ。


EVER AFTER [エヴァー・アフター]

 2nd studio album
 released: 2000/09/06
 label: アンティノスレコード
 producer: Fayray

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 give it back Fayray Fayray 野崎貴郎
2 No,never (album version) Fayray Fayray 野崎貴郎
3 その愛のかたち Fayray Fayray 野崎貴郎
4 All I Want,All I Need Fayray Fayray 野崎貴郎
5 If,I Fayray Fayray 五十嵐宏治
6 tears Fayray Fayray 野崎貴郎
7 見て Fayray Fayray 野崎貴郎
8 約束 Fayray Fayray 五十嵐宏治
9 Shane Fayray Fayray 野崎貴郎
10 My Heart Belongs To Daddy Cole Porter Cole Porter 五十嵐宏治
11 MY EYES Fayray Fayray 野崎貴郎

[comment]
 筆者が Fayray を知ったのは、本アルバム収録の "tears" だった。
 "tears" は、2000年に放送された浜田雅功が主演したドラマ『Friends』の主題歌としてタイアップされた曲であり、筆者を含めて多くの人がこの曲で Fayray を見付けたのである。
 初めて聴いたとき「なんて美しいバラードなんだろう」と衝撃を受けたことが鮮明に記憶に残っている。
 一見するとクールに見える Fayray だが、"tears" の歌詞を見てみると、好きになった男性のことを一途に想い続ける可愛い女性であることが分る。
 "tears"以外も名曲ぞろいで、捨て曲無しの名盤だ。
 CM のタイアップが付いた "MY EYES" はラテンっぽい軽快な曲で、Fayray の新しい面を見ることができ、カヴァー曲の "My Heart Belongs To Daddy" は、他の人のカヴァーも聴いたことがあるのだが、アレンジも歌唱も Fayray が一番だ。
井上秋緒浅倉大介の楽曲制作チームから離れ、本作では Fayray が作詞・作曲・プロデュースを行っている。
 彼女は、これが自分の1stアルバムだと思っているのではないだろうか?


genuine [ジェニュイン]

 3rd studio album
 released: 2001/0718
 label: アンティノスレコード
 producer: Fayray, 佐橋佳幸

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 Walk on Fayray Fayray 佐橋佳幸
2 Baby if, Fayray Fayray 佐橋佳幸
3 US Fayray Fayray 佐橋佳幸
4 faith Fayray Fayray 佐橋佳幸
5 sugar Fayray Fayray 佐橋佳幸
6 genuine:j-girl suite Fayray Fayray 佐橋佳幸
7 I'll save you Fayray Fayray 佐橋佳幸
8 同じ瞳 Fayray Fayray 佐橋佳幸
9 better days Fayray Fayray 佐橋佳幸

Bonus tracks

  1. RaptureBlondieのカヴァー, 作詞/作曲: Debbie Harry, Chris Stein, Remix: 森俊彦)

[comment]
 前作の2ndアルバムから Fayray 自身の作詞・作曲・プロデュースとなり、制作の大部分を自分でコントロールできるようになった。
 2ndは、セールス面では1stに少し及ばなかったものの、"tears" の大ヒットにより彼女への注目が集まり、その勢いもあって、この3rdアルバムは全てのアルバム中、最も売れたアルバムとなった。
 本作収録の "Baby if," も浜田雅功のドラマ『明日があるさ』の主題歌としてタイアップされたバラードだ。
 浜田からの引きがあったのか、或いはドラマの制作スタッフから「"tears" みたいな曲で...」という要望があったのかは不明だが、若干「二匹目のどじょう」っぽさを感じるものの、良い曲であることは確かだ。
 前作よりもさらにオシャレ感が増しており、聴取者ターゲットは20代~30代の、今でいう意識高い系女子なのだろう。
 "I'll save you" はカネボウ化粧品「KATE」の CM ソングになり、CM には Fayray 本人も出演しているのだが、曲、映像、Fayrayの美しさ が三位一体となり、息を呑むような美麗な CM だった。
 余談だが、昔から日本の化粧品の CM は曲・映像ともに名作が多い。


白い花

 4th studio album
 released: 2003/02/19
 label: avex trax
 producer: Fayray, KANONJI

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 即興曲Op.1 〜しろいはな〜 Fayray
2 好きだなんて言えない Fayray Fayray 徳永暁人
3 白い花 Fayray Fayray 寺地秀行, 窪田博之
4 Over (album version) Fayray Fayray 大賀好修
5 悲しい自由 Fayray Fayray 大賀好修
6 Baby if, (album version) Fayray Fayray 古井弘人
7 別々の帰り道 Fayray Fayray 小澤正澄
8 君だけのメロディー Fayray Fayray 池田大介
9 stay (album version) Fayray Fayray 尾城九龍
10 Remember (album version) Fayray Fayray 小林哲
11 touch me, kiss me Fayray Fayray 徳永暁人
12 tears (album version) Fayray Fayray 徳永暁人

Bonus tracks

  1. Over (album version) 〜Instrumental〜
  2. Remember (album version) 〜Instrumental〜
  3. stay (album version) 〜Instrumental〜
  4. touch me, kiss me 〜Instrumental〜

[comment]
 前作から引き続き、意識高い系女子をターゲットにしてつつ、自己のアーティスト性を前面に押し出しており、相変わらずの名盤だ。
 "即興曲Op.1 〜しろいはな〜" での Fayray によるピアノ演奏から、"好きだなんて言えない" への流れは、このアルバムのオープニングとして完璧である。
 売り上げでは若干前作に及ばなかったものの、チャートではオリコン6位を記録しており、これは Fayray のアルバムの中では最高位である。
 このアルバム収録されている "好きだなんて言えない" と "Over" はドラマとのタイアップ、"touch me, kiss me" は映画とのタイアップ、"Remember" は横浜国際女子駅伝のイメージソング、さらに、"Over" と "stay" はカネボウ化粧品「KATE」の CM ソングであり、Fayray がミュージシャンとして、タレントとして最も売れていた時期にリリースされたアルバムだ。
 楽曲的には、これまでで最もアート性が高いのだが、歌詞はこれまでどおり、女子らしい恋愛観や、それに対して傷つくことへの不安を綴ったものが多い。
Fayray のシャープなヴィジュアルと、その外見とは異なる女の子っぽい可愛い歌詞のギャップは彼女の大きな魅力だ。


HOURGLASS [アワーグラス]

 5th studio album
 released: 2004/10/27
 label: R and C
 producer: Fayray, KANONJI

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 first time Fayray Fayray 林正樹
2 願い Fayray Fayray 小林哲
3 最初で最後の恋 Fayray Fayray 小澤正澄
4 feel Fayray Fayray 高橋圭一
5 樅の木-樹の組曲- Jean Sibelius
6 白い二月 Fayray Fayray 小林哲
7 Fayray Fayray 寺地秀行, 窪田博之
8 look into my eyes Fayray Fayray 徳永暁人
9 living without you Fayray Fayray 林正樹
10 口づけ Fayray Fayray 小林哲
11 愛しても愛し足りない Fayray Fayray 葉山たけし
12 名前 Fayray Fayray

[comment]
 前作以上にアート性が高く、その分、大衆性が後退したアルバムだ。
 たぶん、デビュー以降、商業的な成功という結果を出してきたことにより、音楽制作面におけるイニシアティブの多くを握れるようになったのではないだろうか?
 ソングライターとしての Fayray の才能が存分に発揮されており、どの曲も制作するにあたり、かなり時間をかけて設計~構築されているように思える。
 収録曲の多くがピアノとアコースティック・ギターを中心に据えたスローテンポの曲なので、アルバム全体がグレースケールなイメージで覆われている。
 このアルバムにもドラマとのタイアップ曲が多く収録されているのだが、狙った感がなく、純粋に良い曲だから使われた感じがする(実際には事務所の営業力が大きいと思うが)。
 アルバムの前半と後半を分ける幕間的に入るシベリウスの "樅の木-樹の組曲" は Fayray 自身によるピアノ演奏なのだが、これがこのアルバムのイメージと合っていて、かつ、メチャメチャ上手い。


COVERS [カヴァーズ]

 cover album
 released: 2005/06/08
 label: R and C
 producer: Fayray, Dougie Bowne

収録曲
No. タイトル オリジナル・アーティスト
1 Heaven the Psychedelic Furs [ザ・サイケデリック・ファーズ]
2 Dreams Fleetwood Mac [フリートウッド・マック]
3 Angel Jimi Hendrix [ジミ・ヘンドリックス]
4 The First Time Ever I Saw Your Face Roberta Flack [ロバータ・フラック]
5 I Wanna Be Free the Monkees [ザ・モンキーズ]
6 Tiny Dancer Elton John [エルトン・ジョン]
7 This Is Love PJ Harvey [PJ ハーヴェイ]
8 Moonchild King Crimson [キング・クリムゾン]
9 I Believe In You Neil Young [ニール・ヤング]
10 The Wind Cat Stevens [キャット・スティーヴンス]

[comment]
 全曲洋楽のカヴァーによるアルバムだ。
 筆者がしっかり聴いたことのあるアーティストは the Psychedelic FursKing Crimson くらいだ。
 "Dreams" というタイトルだけを見たときは、「えっ、Allman Brothers Band の曲やん。でも Fayray のイメージに合わんやん!」と思ったのだが、スティーヴィー・ニックス作曲による Fleetwood Mac の曲だった。
 自作の英語の歌詞を歌うときもそうなのだが、この人は帰国子女であり、日本に戻ってきた当時は英語の方が達者で、日本語の方が苦手だった人なので、英語での歌唱に不自然さがない。
 米国に住んでいた頃、親が聴いていた70年代から80年代の洋楽が、彼女の音楽的ルーツらしいのだが、確かにこのアルバムの選曲も彼女の世代では通常は聴かないような曲が多い。
 彼女がリアルタイムで聴いたのはPJ ハーヴェイくらいだろう。
 前作 HOURGLASS は、たぶん楽曲制作に神経をすり減らしたアルバムだと思うので、本作のような息抜き的なアルバムが必要だったのではないだろうか?


光と影

 6th studio album
 released: 2006/01/25
 label: R and C
 producer: Fayray, Dougie Bowne

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 Home Fayray Fayray  
2 Pain Fayray Fayray  
3 Close your eyes Fayray Fayray  
4 Nostalgia Fayray Fayray, Marc Ribot, Dougie Bowne  
5 光と影 Fayray Fayray  
6 Fayray Fayray  
7 Spotlight Fayray Fayray  
8 Shame Fayray Fayray, Marc Ribot, Dougie Bowne  
9 Angel Fayray Fayray  
10 愛燦燦 小椋佳 小椋佳  

[comment]
 オリジナル・アルバムとしての前作「HOURGLASS」を聴いたときに「もしかしたら、今後は音楽の方向性を変えるのではないだろうか?」と思ったのだが、予想どおりとなった。
 1曲目が始まった瞬間、思い浮かべたのが「アニマルズ (Animals)」、「ザ・ウォール (The Wall)」、「ファイナル・カット (The Final Cut )」、つまり、ロジャー・ウォーターズの意向が強く反映されていた時期のピンク・フロイド [Pink Floyd] だ。
 いわゆる超絶テクニックで攻めるタイプのプログレではなく、抒情的な演奏で精神世界を描くタイプのプログレである。
Fayrayピンク・フロイドを意識したわけではないと思うのだが、自分の音楽を純粋に突き詰めていったら結果的にそうなったのだろう。
 変ったのは音楽性だけではなく、歌詞も大きく変っている。
 心の内面をえぐるような、重く内省的な歌詞になった。
 音楽的には非常に優れたアルバムなのだが、大ヒット・シングルの "tears" で彼女を見付けた J-POP ファンにとっては、ついていくのが辛いアルバムだと思う。
 "愛燦燦" のカヴァーは、たぶんレコード会社からの要望だと思うのだが、これはいらなかった。


寝ても醒めても

 7th studio album
 released: 2009/01/14
 label: R and C
 producer: Fayray, Rusty Santos

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 序曲 Fayray Fayray, Rusty Santos
2 るらら Fayray Fayray Fayray, Rusty Santos
3 流れ星 Fayray Fayray Fayray, Rusty Santos
4 さよなら Fayray Fayray Fayray, Rusty Santos
5 陽の当たる海 Fayray, Rusty Santos Fayray, Rusty Santos
6 By The Fire Fayray Fayray, Rusty Santos Fayray, Rusty Santos
7 寝ても醒めても Fayray Fayray Fayray, Rusty Santos
8 愛のリズム Fayray Fayray, Rusty Santos
9 いいな Fayray Fayray Fayray, Rusty Santos
10 Lullaby Rusty Santos Rusty Santos Fayray, Rusty Santos
11 ruby Fayray Fayray Fayray, Rusty Santos

Bonus tracks

  1. ゼロ(作詞:Fayray, 作曲: Fayray, 編曲: Fayray, Dowgie Bowne)
  2. ひとりよりふたり(作詞:Fayray, 作曲: Fayray, 編曲: Fayray, Dowgie Bowne)

[comment]
 予想はしていたのだが「うぅ~ん、とうとうここまで来てしまったか...」という感じのアルバムだ。
 誤解のないよう、先んじて言っておきたいのは、音楽的なクオリティーはこれまでのアルバムの中で、ぶっちぎりのトップであるということだ。
 歌詞についても、悲しい言葉を使ってはいるものの、全体としてはポジティヴな印象となるように組み立てられている。
 個人的には、このアルバムを買ってから、しばらくの間、毎日聴き続け、とにかくこのアルバムを聴いてからでなければ眠れない日が続いた。
 しかし、インストゥルメンタルを3曲も含む、このアンビエントで少々前衛的なアコースティック・フォークを、かつて J-POP シンガーの Fayray が好きだったファンに与えるのは酷というものだろう。
 前作と本作については、Fayray ではなく、異なるアーティスト名でリリースした方が良かったのではないかと思う。


#0482) 好きな日本人シンガー(2)及川 光博【東芝EMI~ワーナー期】

及川 光博 [おいかわ みつひろ]

origin: 東京都


 筆者のことをよく知ってくれている友達からは、筆者のことを洋楽ロックが一番好きな音楽リスナーだと思われているのだが、実はそういうわけでもない。

 洋物ならクラシックテクノカントリーブルーズジャズソウルファンクなど、和物なら邦楽ロックJ-POP謡曲雅楽など、とにかく何でも聴くし、特にこれといったポリシーもない。

 あえて言うならメッセージ色の強い曲は避ける傾向にあるのだが、筆者は英語が苦手なため、洋楽なら歌詞の意味が解らないのでメッセージ性は度外視して、ヴォーカルを単に楽器として楽しむことができる。

 そんな筆者が「このアーティスト、めっちゃ好っきゃねん」と言って驚かれるのが、前回取り上げた德永英明や、今回取り上げるミッチーこと及川光博だ、

 とにかく、ミッチーに関しては、彼の書くメロディーが好きだし、外部のライターから提供される楽曲も好きなのだが、なによりも彼の書く歌詞が好きなのである。

 彼の歌詞に出てくる男の恋愛観はとてもチャーミングで、共感せずにはいられない。

 色々なパターンの歌詞があるのだが、特に好きなのが「僕の気持ちが大好きなあの娘に伝わらない、でも僕はあの娘を振り向かせるために頑張る!」みたいな歌詞だ。

 ミッチーほどの美男子なら、女子にモテまくりのはずだと思うのだが、「彼が一番好きだった女子には意外と振り向いてもらえなかったのかな?」と思わせるところが共感せずにはいられないのである(もちろん歌詞の世界はフィクションの可能性もある)。

 ミッチーのように容姿端麗な人は、ともすれば退廃的で耽美な世界に行ってしまいがちなのだが、彼の場合、そうはならず、いつも健康的で清潔感のあるところも好感が持てる。

 ミッチーは筆者と同い年なので、その点でも筆者にとって、彼は共感しやすいのかもしれない。

 筆者が京都で生まれ育っている同じ時期に、ミッチーが東京で生まれ育ってアーティストとして世に出たことを思うと感慨深いものがあるのだ。

 そして、彼がアルバムをリリースするタイミングが、仕事、結婚、離婚といった筆者の人生の節目と何故かリンクするのである(筆者の強引な思い込みかもしれないが...)。

 今回は、1stから6thアルバムまでを取り上げた。

 この範囲のアルバムは、レコード会社で言えば、東芝EMIからワーナーミュージック・ジャパンの時期に合致する。

 ワーナーからの最後のアルバム「ヒカリモノ」がリリースされたのが2004年なのだが、筆者の地元である京都がギリギリ京都らしかったのはこの頃までだ。

 その意味でも、ミッチーのアルバムは筆者の人生とリンクしているような気がするのだ。

 2000年代の後半以降、京都は加速度的に京都らしさを失ってゆき、今ではオーバーツーリズムで街中が汚れてしまい、かつての美しい京都の姿は見る影もなくなってしまった。

 最近、筆者がミッチーのアルバムを聴くとき、ちょうどその頃の美しかった京都の景色が目に浮かぶのである。


理想論

 1st studio album
 released: 1996/07/10
 label: 東芝EMI

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 「宇宙人デス。」 - - -
2 モラリティー EGO Mix 及川光博 大八木弘雄 大八木弘雄/伊藤信雄
3 ワルイコトシタイ 及川光博 及川光博 及川光博小西貴雄/伊藤信雄
4 不真面目な女神 及川光博 及川光博 伊藤信雄
5 SNOW KISS 及川光博 及川光博 伊藤信雄
6 理想論 及川光博 及川光博 高野康弘/伊藤信雄
7 真昼の月 及川光博 及川光博 伊藤信雄
8 テイク・マイ・ハート - - -
9 死んでもいい 及川光博 及川光博 及川光博/伊藤信雄
10 運命のいたずら 及川光博 大八木弘雄 大八木弘雄/伊藤信雄
11 求めすぎてる?僕。 及川光博 及川光博 及川光博/伊藤信雄

[comment]
 テレビドラマ『相棒』の「神戸尊」役以降、俳優として知られることが多くなった及川光博(以下、ミッチー)の「ミュージシャン」としてデビュー・アルバム。
 今、あらためてこのアルバムを聴いてみると、ラジオ・ドラマっぽいオープニングの「宇宙人デス。」や、花椿蘭丸というキャラで演じる寸劇 "テイク・マイ・ハート" などが収録されており、音楽だけではなく演技もこの人の表現手段だったことが判る。
 破格のクオリティーを持つデビュー・アルバムだが、ジャジーなバラード "SNOW KISS" と、ミッチー流切なさ全開ポップスの原点 "死んでもいい" が特に秀逸。


嘘とロマン

 2nd studio album
 released: 1998/02/25
 label: 東芝EMI

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 発信音のあとに - - -
2 三日月姫 及川光博 及川光博 及川光博/堀川満志
3 その術を僕は知らない[G] 及川光博 及川光博 及川光博/ザ・マングース
4 忘れてしまいたい 及川光博 及川光博 及川光博/堀川満志
5 君がいなくても 及川光博 及川光博 及川光博田辺恵二
6 発信音のあとに - - -
7 彼と彼女のこと 及川光博 及川光博 及川光博/堀川満志
8 フィアンセになりたい 及川光博 及川光博 田辺恵二
9 発信音のあとに - - -
10 ワンダフル入浴 及川光博 及川光博 及川光博/ザ・マングース
11 ペンフレンド 及川光博 大八木弘雄 田辺恵二
12 発信音のあとに - - -
13 悲しみロケット2号 及川光博 及川光博 及川光博今井裕
14 展望デッキ~夜間飛行~ 及川光博 及川光博 及川光博/高野康弘

[comment]
 初めて買ったミッチーのCDがこれだった。
 何故、彼に興味を持ったのかは全く憶えてないのだが、京都・四条烏丸・西南角(現在、COCON KARASUMAのある辺り)の地下にあったJEUGIA(十字屋)でこのCDを買ったことだけは鮮明に憶えている。
 筆者にとって、ミッチーの最高傑作はこのアルバムだ。
 Prince[プリンス]のミネアポリスサウンド岡村靖幸の日本語ファンク、グラム・ロック、ニューロマ、昭和歌謡などなど、彼が影響を受けてきた音楽が最高の形で昇華した名盤だ。
 曲の合間に挟まる寸劇(ラジオ・ドラマ?)も面白い。
 作詞のセンスも秀逸で、当時ですら殆ど死後と化していた「ペンフレンド」の可愛さ溢れる歌詞は聴いていて微笑ましくなる。
 そして、お互いを信じきれなかった男女の別れを歌った切ないバラードの "展望デッキ~夜間飛行~" は、曲、歌詞ともに美しく、この曲が彼の最高傑作だと筆者は思っている。


欲望図鑑

 3rd studio album
 released: 1999/07/07
 label: 東芝EMI

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 エレベータの女 - - -
2 今夜、桃色クラブで(B) 及川光博 及川光博 及川光博田辺恵二
3 名器 及川光博 及川光博 田辺恵二及川光博
4 ロリータの罠 及川光博 及川光博 及川光博田辺恵二
5 意気地なし 及川光博 及川光博 高野康弘
6 エレベータの男 - - -
7 血管と白夜/1999 及川光博 及川光博 田辺恵二
8 僕のゼリー 及川光博 及川光博 D.I.E.
9 懺悔 及川光博 大八木弘雄 田辺恵二
10 帝王学 及川光博 及川光博 及川光博田辺恵二
11 ズキズキ 及川光博 及川光博 高野康弘
12 可能 - - -
13 バラ色の人生 及川光博 生熊 朗 CHOKKAKU
14 S.D.R 及川光博 及川光博 高野康弘/及川光博
15 抱かれたい男 花椿蘭丸 花椿蘭丸 花椿蘭丸/ザ・マングース

[comment]
 ミッチーのアルバムの中でも、最もファンク色の強いアルバムだ。
 正直なところ、前作が名盤すぎるのでリリース当時は、ちょっと地味なアルバムだと思っていたのだが、あらためて聴いてみるとミッチー流ミネアポリスサウンドの完成形が多く収録されていることに気付く。
 Chuning Candy[チューニングキャンディー]など、多くのアーティストにカヴァーされた "ダイナミック琉球" の作者、生熊 朗から提供された "バラ色の人生" のメロディーは、ミッチーの歌詞との相乗効果により、素晴らしい多幸感を聴く者に与えてくれる。
 引き続き寸劇も収録されているが、ちょっと、おざなりな感じだ。


聖域~サンクチュアリ

 4th studio album
 released: 2001/12/06
 label: 東芝EMI

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 サンクチュアリ 及川光博 及川光博 及川光博/CHOKKAKU
2 天使のうた 及川光博 及川光博 CHOKKAKU
3 きれいな嘘 及川光博 及川光博 及川光博田辺恵二
4 君の罪、僕の雨。 及川光博 筒美京平 小西貴雄
5 SEXの意味・意味のないSEX 及川光博 及川光博 高野康弘
6 パズルの欠片 及川光博 筒美京平 小西貴雄
7 若さのカタルシス 阿木燿子 都倉俊一 田辺恵二
8 特別なひと 及川光博 及川光博 田島貴男
9 君の中へ 及川光博 及川光博 高野康弘
10 聖域 - - -
11 CRAZY A GO GO!! ~この世でオンリーワン!!~ 及川光博 筒美京平 及川光博小西貴雄
12 ミス・アバンチュール 及川光博 及川光博 田辺恵二
13 solution 及川光博 大八木弘雄 CHOKKAKU
14 ココロノヤミ ―聖域― 及川光博 及川光博 及川光博田辺恵二

[comment]
 寸劇が無くなり、「真剣にJ-POPのアルバムを制作しました」という感じの作風になった。
 このアルバムの価値は、何といっても昭和~平成にかけての大御所からサポートを受けているところであり、筒美京平からの提供曲が3曲、都倉俊一からの提供曲と、阿木燿子の作詞曲が、それぞれ1曲ずつ収録されいる(クレジットを見てもらえば分かるが編曲陣も豪華だ)。
 ミッチーの自作曲もクオリティーは高いのだが、収録曲が多すぎるので、シングルにもなった珠玉のバラード "ココロノヤミ" が目立たなくなっているのが少々勿体ない。


流星

 5th studio album
 released: 2002/12/20
 label: ワーナーミュージック・ジャパン

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 月下美人 及川光博 及川光博 深沼元昭
2 強烈ロマンス 及川光博 及川光博忌野清志郎 KANAME
3 まるごとフルーツ 及川光博 及川光博 深沼元昭
4 ベストフレンド 及川光博 加藤ひさし 西脇辰哉
5 花びらのように ~モノローグ~ 及川光博 及川光博忌野清志郎 KANAME
6 恍惚ニ死ス。 及川光博 原田喧太 西脇辰哉
7 シャンデリア・ラブ 及川光博 加藤ひさし 西脇辰哉
8 セルロイドの夜 及川光博 及川光博 西脇辰哉
9 ヘヴンな気分♥ 及川光博 及川光博 及川光博深沼元昭
10 流星 及川光博 清水裕 深沼元昭
11 NEON BOY 柴山俊之 花田裕之 深沼元昭

[comment]
 King of Rock こと忌野清志郎との共作が2曲と、小倉が生んだロックン・ロール・バンド the Roosterz [ザ・ルースターズ] のカヴァーが収録されてるのだが、ロック色が強くなったわけではない。
清志郎との共作曲 "強烈ロマンス" は、出だしはロックっぽいのに、サビになると一緒に歌いたくなる日本的なポップなメロディーに変るという、いかにも清志郎らしい曲だ。
 逆に、もう一つの共作曲 "花びらのように ~モノローグ~" は、清志郎っぽさが感じられず、ミッチー流のキュートなバラードだ。
 "NEON BOY" は、大江慎也の脱退後、初めてルースターズが1985年にリリースしたアルバム NEON BOY の収録曲なのだが、実はこのアルバム、あまり評判が良くない。
 ただ、NEON BOY は筆者が初めて買ったルースターズのアルバムなので思い入れが深く、この曲を選ぶミッチーに対し、同い年としてのシンパシーを感じてしまう。
 "セルロイドの夜" はミッチーの自作曲なのだが、一瞬カヴァー曲かと勘違いするほどの見事な昭和ムード歌謡だ。
 前作に続き、寸劇は封印している。


ヒカリモノ

 6th studio album
 released: 2004/06/09
 label: ワーナーミュージック・ジャパン

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 純愛 - - -
2 恋ノヒゲキ 及川光博 及川光博 CHOKKAKU
3 恋愛中毒 及川光博 森元康介 森元康介
4 不純異性交遊 浜崎貴司及川光博 浜崎貴司ヲノサトル CHOKKAKU
5 ビトゥイーン・ザ・シーツ 及川光博 深沼元昭 深沼元昭
6 くどくど口説く男 - - -
7 バタフライ 及川光博 森元康介 深沼元昭
8 プラネタリウム 及川光博 及川光博 深沼元昭
9 続・純愛 - - -
10 じれったい 松井五郎 玉置浩二 深沼元昭
11 セックスフレンド 及川光博 及川光博 CHOKKAKU
12 光るの君 - - -
13 メリーゴーラウンド 及川光博 森岡 森岡
14 ラヴソング 及川光博 深沼元昭 深沼元昭
15 初愛 及川光博 及川光博 CHOKKAKU

[comment]
 「セルロイドの夜」というお遊び的なアルバムを「東馬 健」名義で Project-T というレーベルから前年にリリースしているのだが、「及川光博」名義としては「流星」依頼となる。
 全編を通して、愛を感じさせるアルバムだ。
 寸劇が復活しており、オープニングの "純愛" における、大御所俳優の伊武雅刀とミッチーのシュールな芝居が面白い。
 そんなオープニングに続いて始まる "恋ノヒゲキ" は、ミッチーの真骨頂とも言える「好きなあの娘に僕の思いが届かない」切なさを歌った神曲だ。
 1番好きなミッチーの自作曲を聴かれて真っ先に思い浮かぶのは "展望デッキ~夜間飛行~" なのだが、"恋ノヒゲキ" も同じくらい好きだ。
松井五郎・作詞、玉置浩二・作曲による安全地帯の名曲 "じれったい" におけるミッチーの歌唱はドハマりしており、こういうアダルトでムーディーな曲を歌わせるとミッチーは抜群に上手い。
 本作を最後に再びレコード会社を移籍するのだが、筆者の中では本作をもって第1期ミッチーが終了した感がある。


#0481) 好きな日本人シンガー(1)德永 英明【ラジオシティ~アポロン期】

德永 英明 [とくなが ひであき]

origin: 福岡県柳川市生まれ、兵庫県伊丹市育ち。


 まもなく還暦を迎える歳になってからはロックを聴くことに辛さを感じることが多い。

 能の「敦盛」で謡われている「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」の意味が身に染みて解るようになった。

 やはり、ロックとは、若さゆえに共感できる音楽なのかもしない。

 最近、日常的に聴いているのは日本人シンガーだ。

 特に今回取り上げた德永英明は、彼が初のヒット曲 "輝きながら…" をリリースした1987年から、ずっと好きで聴き続けている。

 ただし、女性シンガーのカバー「VOCALISTシリーズ」以降は、ちょっと熱は下がり気味であり、筆者が最も好きな徳永はラジオシティレコードからアポロン期である。

 アルバムで言えば、1stの「Girl」から9thの「太陽の少年」が、その時期にあたる。

 今回は、ほほ上述した範囲にあたる8thの「Nostalgia」までを連続して聴き、かれの軌跡を振り返ってみた。

 「太陽の少年」を外した理由は、売元はアポロンだったと記憶しているが、売元は徳永が設立した BEATONE であり、ここで明確に作風が変ったからである。

 筆者は、洋楽を聴くときは、英語が苦手なので歌詞の意味を全く理解せずに聴いていることが殆どなのだが、邦楽を聴くときは歌詞が日本語なので意味を理解せざるを得なくなる。

 洋楽を聴くときに歌詞を理解していない理由として「英語が苦手」と書いたが、もう1つの理由は、時々、歌詞が気になって和訳を読んだときに、洋楽の歌詞はあまりにもド直球なものが多く、そこに「陰影」や「侘び寂び」を感じることが少なかったからということもある(まぁ「侘び寂び」なんていうものは日本独自の文化なので洋楽にそれが無いのは当たり前なのだが)。

 筆者は、職業作詞家の書いた歌詞が好きだ。

 メロディーに日本語を乗せる場合、1つの音符に乗せることができるのは、たいてい一音なので、1つの音符に1つの単語を乗せることができる英語の歌詞と比べると、日本語の歌詞の方が圧倒的に情報量が少ないはずだ。

 そんな日本語が持つ制約のあるなかで、職業作詞家は実に上手く歌詞を書いている。

 日本語の歌詞の最大の特徴は「直接的な言い方をせずに、如何に美しい表現で伝えることができるか」ということだと思う。

 例えば「愛してる」という言葉を使わずに、如何に他の言葉を巧みに使って「愛してる」を伝えることができるかということだ(これは日本の「空気を読む」という文化に通じるのかもしれない)。

 何故、日本語の歌詞について、長ったらしく書いたのかと言えば、そんな職業作詞家の歌詞と、徳永の書くメロディーの相性が抜群に良いということを言いたかったからである。

 特に、徳永の初期の曲が持つ瑞々しさは、今の感覚で聴くと、ちょっと気恥ずかしくなる80年代の職業作詞家が書く歌詞との相性が良い。

 そんな曲が、徳永の美しく繊細な声で謡われるのだからたまらない。

 筆者は、シンガーは自分で歌詞を書かない方がいいのではないかと思っている。

 自分で書いた歌詞を自分で歌ってしまうと、感情過多となりベタついてしまうことがあるからだ。

 徳永の場合も、彼が書いた歌詞は内省的すぎて、ちょっと聴いていて重たく感じることがあり、職業作詞家に発注した歌詞を多く含むアルバムの方がバランスがとれている。

 もしかすると自分でもそれが分かっていて、だからこそ「VOCALISTシリーズ」を制作したのかもしれず、その真偽は不明だが「VOCALISTシリーズ」は大当たりすることとなった。


Girl [ガール]

 1st studio album
 released: 1986/01/21
 label: ラジオシティレコード

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 Rainy Blue 大木誠 德永英明 武部聡志
2 リアリストとロマンチスト 竹花いち子 德永英明 和泉一弥
3 夏のプリズム 篠原仁志 德永英明 和泉一弥
4 冬の動物園 さがらよしあき 德永英明 和泉一弥
5 ガール 平野肇・篠原仁志 鈴木キサブロー 武部聡志
6 僕の憂鬱 竹花いち子 德永英明 武部聡志
7 未完成 さがらよしあき 德永英明 和泉一弥
8 Air Port 20:13 篠原仁志 德永英明 和泉一弥
9 レター 篠原仁志  鈴木キサブロー 田原音彦・和泉一弥
10 最後の学園祭 篠原仁志 德永英明 椎名和夫
11 奇跡のようなめぐり逢い 竹花いち子 德永英明 椎名和夫

[comment]
 德永英明が24歳のときにリリースしたデビュー・アルバム。
 後に作詞も手がけるようになるが、デビューから暫くの間は作曲のみを手がけている。
 今では「徳永と言えば先ずはこの曲」というほどのアンセムとなったデビュー・シングル、珠玉のバラード "Rainy Blue" で幕を開けるが、このシングルのチャート・アクションは90位止まりだった。
 アルバムのチャート・アクションも最高位66位なのでヒットしたとは言い難い。
 しかし、この瑞々しい「青さ」を放つアルバムは、後にヒットを連発する徳永の魅力がぎゅっと詰め込まれている。


Radio [ラジオ]

 2nd studio album
 released: 1986/08/21
 label: ラジオシティレコード

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 9月のストレンジャー 秋谷銀四郎 德永英明 奥慶一
2 夏のラジオ 竹花いち子 德永英明 奥慶一
3 僕のハートに君はStay 大津あきら 德永英明 椎名和夫
4 ライディーン 大津あきら 鈴木キサブロー 椎名和夫
5 夢に抱かれて 神田エミ、補作詞:秋谷銀四郎 德永英明 和泉一弥
6 抱きしめたい 篠原仁志 德永英明 奥慶一
7 ペンダント 大津あきら 德永英明 和泉一弥
8 感じるままに 竹花いち子 德永英明 奥慶一
9 振られるなんて 竹花いち子 德永英明 奥慶一
10 心の中はバラード 篠原仁志 德永英明 奥慶一
11 愛の中から 篠原仁志 德永英明 和泉一弥

[comment]
 前作から7ヶ月のインターバルを経てリリースされた2ndアルバム。
 引き続き「青さ」を感じさせる作風なのだが、それは徳永の書くメロディと絶妙にマッチする作詞家陣の提供する歌詞の影響も大きい。
 正直なところ、バブルや昭和の香りがする歌詞は今の感覚で聴くと気恥ずかしさがあるのだが、それも日本の音楽史を知るための貴重な史料と捉えたい。
 前作の "リアリストとロマンチスト" のようなポップで弾けるような曲が1曲くらいあってもよかったと思う。
 セールス面やチャート・アクションは順調とは言えず、前作を下回り最高位73位止まりとなった。


BIRDS [バーズ]

 3rd studio album
 released: 1987/05/21
 label: アポロン

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 輝きながら… 大津あきら 鈴木キサブロー 川村栄二
2 シック 篠原仁志 德永英明 武部聡志
3 ため息のステイ 川村真澄 德永英明 川村栄二
4 ノースリーブのクリスマス 秋谷銀四郎 德永英明 和泉一弥
5 夏の素描 秋谷銀四郎 德永英明 和泉一弥
6 BIRDS 大津あきら 德永英明 川村栄二
7 君は悲しいギター 川村真澄 德永英明 川村栄二
8 さよならの水彩画 大津あきら 德永英明 武部聡志
9 Silent good-night 〜君のために… 篠原仁志 德永英明 和泉一弥
10 レター 篠原仁志 鈴木キサブロー 田原音彦・和泉一弥

[comment]
 このアルバムは、1st、2nd で商業的な成功を得られなかった德永英明が崖っぷちで放った一撃だ。
 このアルバムを成功に導いたのは、オリコン4位の大ヒットとなった "輝きながら…" であることは明確だ。
 "輝きながら…" は徳永の書いた曲ではなく、日本の音楽史において、数々の名曲を残した鈴木キサブローからの提供曲だ。
鈴木キサブローは 1st アルバムのときから曲を提供していたのだが、彼の書くメロディは徳永の声質と実によく合う。
 そもそも、1stアルバムの表題曲は徳永の曲ではなく、鈴木キサブローが作曲した "ガール (Giel)" だった。
 "ノースリーブのクリスマス"、そして、チャート圏外ではあったものの "BIRDS" など、稀代のメロディ・メイカー、德永英明の才能が開花したアルバムである。


DEAR [ディア]

 4th studio album
 released: 1988/04/21
 label: アポロン

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 風のエオリア 大津あきら  德永英明 瀬尾一三
2 HONG KONG NIGHT 篠原仁志 德永英明 瀬尾一三
3 あなたのために 竹花いち子 德永英明 瀬尾一三
4 Tenderly 竹花いち子 德永英明 遠山裕
5 Dear... 徳永英明 德永英明 瀬尾一三
6 幾つものワンシーン 大津あきら 德永英明 新川博
7 ガラス越しのあなた 篠原仁志 德永英明 遠山裕
8 どれくらいの時がたてば 麻生圭子 德永英明 新川博
9 真夜中のリバティー 大津あきら 德永英明 瀬尾一三
10 Melody -永遠の鍵- 大津あきら 德永英明 瀬尾一三

[comment]
 3rd アルバムの後、ベスト・アルバム INTRO. を挟んでリリースされた 4th アルバムであり、全ての収録曲が徳永英明の作曲となった。
 徳永の作詞曲がリリースされたのは、上記 INTRO. に収録された、オリジナル・アルバム未収録曲 "さよなら言葉" が初めてだと思うのだが、本作の "Dear..." も徳永の作詞曲だ。
 作詞を手がけ始めた頃の徳永の詞は内省的であり、 "Dear..." もその例外ではない。
 1st ~ 3rd までは、曲をシャッフルして三枚のアルバムを制作し直したとしても違和感が無いと思うのだが、本作は德永英明というシンガー・ソングライターの個性が確立されており、それぞれの曲が一枚のアルバムの中で嵌るべく場所にカッチリと嵌っている。
 このアルバムとしての統一感は、10曲中、6曲の編曲をを瀬尾一三が手がけているからだと思うのだが、徳永と瀬尾のタッグは次作と次々作で完成に至る。


REALIZE [リアライズ]

 5th studio album
 released: 1989/05/21
 label: アポロン

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 君の青 篠原仁志 德永英明 瀬尾一三
2 眠れない夜 德永英明 德永英明 瀬尾一三
3 ラバーズ 篠原仁志 德永英明 瀬尾一三
4 You're in the sky 〜Eolia〜 竜真知子 德永英明 瀬尾一三
5 そして星になったよ 德永英明 德永英明 遠山裕
6 恋人 德永英明 德永英明 瀬尾一三
7 コバルトに消えたブルー 麻生圭子 德永英明 瀬尾一三
8 MYSELF 〜風になりたい〜 津あきら 德永英明 瀬尾一三
9 最後の言い訳 (Los Angels Mix) 麻生圭子 德永英明 瀬尾一三
10 僕の時計 篠原仁志 德永英明 瀬尾一三

[comment]
 德永英明のキャリアにおいて、最初の到達点と言えるアルバムだ。
 德永自身が作詞した曲は、過去最多で3曲収も録されている。
 "最後の言い訳"、"恋人"、"MYSELF 〜風になりたい〜" という、オリコン・チャートのトップ10内に入ったシングルが3曲も収録されており、それがこのアルバムをオリコン・チャート4位という成功に導いたことは確かなのだが、このアルバムの一番の魅力はオープニングの "君の青" だ。
 デビューから徳永が磨き続けてきた青く煌めくメロディと、篠原仁志の瑞々しい歌詞の相乗効果により、これ以上に清々しいオープニングは無いと感じるほどの曲に仕上がっている。


JUSTICE [ジャスティス]

 6th studio album
 released: 1990/10/09
 label: アポロン

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 NEWS 篠原仁志 德永英明 瀬尾一三
2 壊れかけのRadio 德永英明 德永英明 瀬尾一三
3 MYKONOS 德永英明 德永英明 瀬尾一三
4 帰れない二人 德永英明 德永英明 瀬尾一三
5 想い出にかわるまで 秋谷銀四郎 德永英明 瀬尾一三
6 道標 篠原仁志 德永英明 国吉良一
7 雨が降る 德永英明 德永英明 瀬尾一三
8 Be nude 秋谷銀四郎 德永英明 瀬尾一三
9 CRESCENT GIRL 秋谷銀四郎 德永英明 瀬尾一三
10 JUSTICE 德永英明 德永英明 瀬尾一三

[comment]
 「徳永英明Live」から約3ヶ月という短いインターバルでリリースされた6thアルバム。
 個人的には、このアルバムで徳永の第2章が始まったというイメージがあり、次作 Revolution、次々作 Nostalgia と併せて三部作というイメージもある。
 前作から引き続き、徳永の作曲と瀬尾一三の編曲が絶妙に噛み合っているのだが、これまでに無かったシリアスな曲調が多く、今改めて聴くと、このアルバムには「沈みゆくバブル景気」のような終末感が漂っている。
 全10曲中、5曲も徳永が作詞しているのも前作までとの大きな違いなのだが、この時期の徳永の歌詞は重い。
 本作はオリコン1位を獲得しており、名曲 "壊れかけのRadio" は本作に収録されている。


Revolution [レボリューション]

 7th studio album
 released: 1991/10/05
 label: アポロン

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 REVOLUTION 德永英明 德永英明 佐藤準
2 德永英明 德永英明 佐藤準
3 Wednesday Moon 德永英明 德永英明 瀬尾一三
4 LOVE IS ALL 德永英明 德永英明 佐藤準
5 La vie en rose 〜心の旅〜 篠原仁志 德永英明 佐藤準
6 德永英明 德永英明 佐藤準
7 負けるな 德永英明 德永英明 佐藤準
8 BOXER 德永英明 德永英明 佐藤準
9 幻を止めて 秋谷銀四郎 德永英明 佐藤準
10 どうしようもないくらい 德永英明 德永英明 佐藤準

[comment]
 初のオリコン1位を獲得したシングル "Wednesday Moon" が収録され、アルバム自体も前作に続きオリコン1位を獲得しているので、徳永のキャリアにおいて重要なアルバムだ。
 徳永自身は、前作 JUSTICE のような内省的な作風と思っていないらしいのだが、初期のアルバムと比べると十分すぎるほど内省的だ。
 前作では、10曲中9曲の編曲を担当していた瀬尾一三は、今作では1曲のみの参加となり、他の9曲は佐藤準の編曲となっている。
 意図的に前作とは作風を変えたかったのかもしれないが、自己の内面をえぐるような重い歌詞が綴られた "どうしようもないくらい" で幕を閉じるため、やはり前作の延長線上にある作品としか思えない。


Nostalgia [ノスタルジア]

 8th studio album
 released: 1993/12/10
 label: アポロン

収録曲
No. タイトル 作詞 作曲 編曲
1 過ちの夏 德永英明 德永英明 国吉良一
2 Navigation 德永英明 德永英明 国吉良一
3 Money 德永英明 德永英明 国吉良一
4 僕のそばに 德永英明 德永英明 国吉良一
5 魂の願い 德永英明 德永英明 国吉良一
6 また明日は来る 德永英明 德永英明 国吉良一
7 FRIENDS 德永英明 德永英明 佐藤準
8 恋の花 德永英明 德永英明 德永英明
9 Jealousy 山田ひろし 德永英明 国吉良一
10 もう一度あの日のように 德永英明 德永英明 瀬尾一三

[comment]
 1曲目の "過ちの夏" は、変拍子のジャズ・ロック風バラードであり、アルバムの開始早々、別次元に引き込まれたような錯覚に陥る。
 作詞は、10曲中9曲を徳永自身が書いており、これが吉と出たのか凶と出たのかは微妙なところなのだが、職業作詞家にはない「未熟さ」があり、筆者はけっこう気に入っている。
 ただし、徳永の歌詞は内省的になる傾向があり、半分くらいは職業作詞家に発注した方がいいような気もする。
 この時期の徳永は健康面の不調や、彼を支えてきたギタリストの他界が重なり、沈みながらも何とか前に進もうとしている印象の曲が多い。
アポロンからの発売はここまでであり、次作「太陽の少年」は徳永自身が設立した BEATONE からの発売となり、ガラっと作風を変えてくる。


#480) アル・ジュールゲンセンと共和党

 Ministry[ミニストリー]と言えば米国におけるインダストリアル・メタルの礎を築いた存在だが、その中心人物、というよりも Ministry そのものと言える Al Jourgensen[アル・ジュールゲンセン]は生粋の米国人ではなく、キューバで生まれで、生後すぐに米国に移住したというバックグラウンドを持つ。

 幼少期のアルは英語も喋れず、移民の子であるため、けっこう激しい差別を受けながら育ち、気付いた頃には不良少年になっていたという。

 そんな生い立ち故、移民への風当たりの強い共和党に対して反感を抱くようになったアルは、レーガン政権の頃から筋金入りの反共和党になった。

 ただし、当時のレーガン大統領は、1982年1月1日以前に米国へ不法入国した人々に対して、納税など一定の条件を満たした人であればグリーンカードを発行するという、共和党の大統領としては異例な措置を行っており、これが関係しているとは思えないが、レーガン政権下(1981年1月20日→1989年1月20日)のアルは、今ほど激しい反共和党という印象は無い。

 Ministry のデビュー・アルバム With Sympathyレーガン政権下の1983年にリリースされているが、この頃の音楽性は激烈なインダストリアル・メタルではなく、ニューロマっぽいシンセポップだ。

 アルの反共和党主義は、ジョージ・H・W・ブッシュ政権下(1989年1月20日→1993年1月20日)、そしてその息子、ジョージ・W・ブッシュ政権下(2005年1月20日→2009年1月20日)において急激に牙をむくようになった気がする。

 そして、第一次トランプ政権下(2017年1月20日→2021年1月20日)で再燃した印象だ。

 その時期に符合するが如く、1992年には Ministry 史上最高傑作で最も苛烈な音楽性を持つ ΚΕΦΑΛΗΞΘ-詩篇69-、2004年、2006年、2007年には反ジョージ・W・ブッシュ3部作の Houses of the MoléRio Grande BloodThe Last Sucker、2018年には反トランプ作の AmeriKKKant をリリースしている。

 筆者は、政治に関してはノンポリであり、そもそも政治で人の暮らしは良くならないと思っているし、この世に存在する全ての政治家は私利私欲の輩であり、政治家や政治家になりたがる人間はロクな奴ではないと思っている。

 政治なんて紀元前からやっているのに、未だに争いは無くならないし、貧富の差は激しさを増し、人権は蹂躙されて続けている。

 筆者にとって、投票とは、糞の中から、多少ましな糞を選ぶ行為でしかない。

 そんなノンポリの筆者から見ると、アル・ジュールゲンセンの政治に対する怒りのエネルギーには感服するとしか言いようがない。

 嫌味ではなく、本当に彼のエネルギーは凄いと思うのだ。

 実のところ、筆者は、ミュージシャンやミュージシャンになりたがる人間もロクな奴ではないと思っている。

 なので、ミュージシャンが創り出す音楽を好きになることはあるが、その音楽を創り出したミュージシャンを音楽家としては尊敬するものの、人として尊敬することや興味を持つことはない。

 冷静に考えてみると、政治家もミュージシャンも正業に就けない「はみ出し者」である。

 自分が好んで聴いているミュージシャンだとしても、彼らが、学生時代のクラスメートや、或いは、一般社会の中にいた場合、筆者は絶対に彼らと仲良くすることは不可能だと思っている。

 政治家という正業に就けない「はみ出し者」と戦うには、ミュージシャンのような、これまた正業に就けない「はみ出し者」でなければ対抗することが不可能なのだろう。


 Ministryの最高傑作と言えば、このアルバム。
 1曲目の "N.W.O." は、このアルバムがリリースされた前年に終結した湾岸戦争について言及した曲。
 "N.W.O." とは、ジョージ・H・W・ブッシュが唱えた「新世界秩序 (New World Order)」のことを指す。

ΚΕΦΑΛΗΞΘ[-詩篇69-]


5th album
released: 1992/07/14
producer: Hypo Luxa, Hermes Pan

No. Title
1 N.W.O.
2 Just One Fix
3 TV II
4 Hero
5 Jesus Built My Hotrod [feat. Gibby Haynes]
6 Scare Crow
7 Psalm 69
8 Corrosion
9 Grace

イラク戦争の期間中(2003年3月20日~2011年12月15日)にリリースされた、反ジョージ・W・ブッシュ3部作。
 怒りに満ちた内容であることは言うまでもないが、Rio Grande Blood のアルバム・カヴァーがヤバい。
 こういうのを見ると、米国はカウンター・カルチャーがある国だということが分かる。
 日本で、政治家を使ったこのようなデザインの商品を市場に出そうとするなら、リリース元から絶対にNGが出るだろう。

Houses of the Molé[ハウジズ・オブ・ザ・モーレ]


9th album
released: 2004/06/21
producer: Al Jourgensen

No. Title
1 No W
2 Waiting
3 Worthless
4 Wrong
5 Warp City
6 WTV
7 World
8 WKYJ
9 Worm
23 Psalm 23 (hidden track)
69 Walrus (hidden track)

Rio Grande Blood[リオ・グランデ・ブラッド]


10th album
released: 2006/05/02
producer: Al Jourgensen

No. Title
1 Rio Grande Blood
2 Señor Peligro
3 Gangreen [feat. Sgt. Major]
4 Fear (Is Big Business)
5 LiesLiesLies
6 The Great Satan [Remix]
7 Yellow Cake
8 Palestina
9 Ass Clown [feat. Jello Biafra]
10 Khyber Pass [feat. Liz Constantine]
11 Untitled (silent track)
12 Untitled (silent track)
13 Sgt. Major Redux [feat. Sgt. Major]

The Last Sucker[ザ・ラスト・サッカー]


11th album
released: 2007/09/18
producer: Al Jourgensen, Dave Donnelly

No. Title
1 Let's Go
2 Watch Yourself
3 Life Is Good
4 The Dick Song
5 The Last Sucker
6 No Glory
7 Death & Destruction
8 Roadhouse Blues (Originally performed by The Doors)
9 Die in a Crash
10 End of Days (Pt. 1)
11 End of Days (Pt. 2)

 「トランプ政権の米国にインダストリアル・メタルの鉄槌を振り下ろす」というキャッチコピーが付けられたアルバム。
 このアルバムがリリースされた前年に、ドナルド・トランプが米国の大統領に就任している。
 ただし、音楽的には ΚΕΦΑΛΗΞΘ や、反ジョージ・W・ブッシュ3部作ほど激烈なものでなく、内容もトランプ本人というよりは、彼を生み出した米国社会の歪みに対して言及しているようだ。
 アルバム・タイトルには K の三つ並びが入っており、意味深で不気味だ。

AmeriKKKant


14th album
released: 2018/03/09
producer: Al Jourgensen

No. Title
1 I Know Words
2 Twilight Zone
3 Victims of a Clown
4 TV 5/4 Chan
5 We're Tired of It
6 Wargasm
7 Antifa
8 Game Over
9 AmeriKKKa

#479) メディアが作ろうとして失敗したロック・ムーヴメント (3) - ニュー・グラム

 「メディアが作ろうとして失敗したロック・ムーヴメント」の中で、このニュー・グラムこそ、失敗中の失敗だろう(そもそも殆ど知られていない)。

 同じ年(1993年)にデビュー・アルバムをリリースした、Suedeスウェード]、Verve[ヴァーヴ]、Adorable[アドラブル]の3組を纏めて ニュー・グラム(New Glam)というムーヴメントにしようと思ったらしいのだが、これは無理がありすぎる。

 ちなみに、この頃は米国のヴァーヴ・レコードからのクレームが入る前なので、the Verve ではなく、Verve だ(これは the が付くことで逆にカッコ良くなったのでは?)。

Suede は、この後、米国の同名シンガーから訴訟を起こされ、米国では the London Suede と名乗ることを余儀なくされる(こっちは明らかにカッコ悪くなった)。

 それにしても上記の3バンドを纏めてニュー・グラムとは、センスが無さすぎるのではないだろうか?

 3バンドの中で、グラム・ロック感があるのは Suede くらいだ。

 その Suede にしても、英国のグラム・ロックとしては王道ではない。

 筆者が思う英国のグラム・ロックの王道と言えば、T. Rex[T・レックス]、Slade[スレイド]、the Sweet[ザ・スウィート]あたりの、後のグラム・メタルに繋がるロックン・ロール・バンドだ。

Suede は、David Bowieデヴィッド・ボウイ]、Roxy Musicロキシー・ミュージック]、Cockney Rebelコックニー・レベル]といった、1970年代初期におけるグラム・ロックの人気を上手に利用したアート・ロックの系譜にある。

 Verve は、初期はサイケデリック・ロック、あるいは、スペース・ロック、後期はブリットポップであり、グラム・ロック感はゼロだ。

 Adorable は、Echo & the Bunnymen[エコー&ザ・バニーメン]と、the House of Love[ザ・ハウス・オブ・ラヴ]から多大な影響を受けたニュー・ウェイヴ/ポストパンクの系譜にあるバンドだが、影響源となったバンドよりもメロディー嗜好が強いので、ほんの僅かだけグラム・ロック感がある。

 筆者は3バンド、全てが好きなのだが、ダントツで好きなのは Adorable であり、唯一、商業的成功を得られなかったのも Adorable だ。

 それにしても、これら3バンドの個性はバラバラであり、彼らを一纏めにしてニュー・グラムなんて言われると「何でっ?」となる。

 いったい誰が言い出したのか?


Suedeスウェード

origin: London, England, UK

Suedeスウェード


1st album
released: 1993/03/29
producer: Ed Buller

  1. So Young
  2. Animal Nitrate
  3. She's Not Dead
  4. Moving
  5. Pantomime Horse
  6. The Drowners
  7. Sleeping Pills
  8. Breakdown
  9. Metal Mickey
  10. Animal Lover
  11. The Next Life

[comment]
 Brett Anderson[ブレット・アンダーソン]の声質や、腹ではなく喉から声を出す歌唱法は苦手なのだが、曲と演奏が素晴らしいので苦手な部分が全て相殺されてしまう。
 最初はハイプっぽい疑わしさもあったのだが、この高品質の曲が揃ったデビュー・アルバムによって、彼らはその疑いを実力で捻じ伏せることに成功した。
 楽曲クオリティーの最高傑作は 2nd の Dog Man Star、商業的成功のピークは 3rd の Coming Up だが、衝撃度の大きさはこのデビュー・アルバムだ。


■ Verve[ヴァーヴ]

origin: Wigan, Greater Manchester, England, UK

A Storm in Heaven[ア・ストーム・イン・ヘヴン]


1st album
released: 1993/06/21
producer: John Leckie

  1. Star Sail
  2. Slide Away
  3. Already There
  4. Beautiful Mind
  5. The Sun, the Sea
  6. Virtual World
  7. Make It 'Til Monday
  8. Blue
  9. Butterfly
  10. See You in the Next One (Have a Good Time)

[comment]
 それにしても、何故このバンドをニュー・グラムとしてカテゴライズしようと思ったのだろう...グラマラスな要素は全く無い。
 2nd の A Northern Soul、3rd の Urban Hymns と進むにつれ、ブリットポップ化していったのだが、このデビュー・アルバムの目が眩むようなサイケ感は特別だ。
 デビュー時はシューゲイズにもカテゴライズされていたようだが、シューゲイズのようなヘナチョコ感はなく、かなり骨太のサイケデリック・ロックだ。


■ Adorable[アドラブル]

origin: Coventry, England, UK

Against Perfection[アゲンスト・パーフェクション]


1st album
released: 1993/03/01
producer: Pat Collier, Alan Moulder(track 5)

  1. Glorious
  2. Favourite Fallen Idol
  3. A to Fade In
  4. I Know You Too Well
  5. Homeboy
  6. Sistine Chapel Ceiling
  7. Cut #2
  8. Crash Sight
  9. Still Life
  10. Breathless

[comment]
 このバンドが商業的成功を得られなかったのは、英国メディアの気まぐれと、底意地の悪さが大きな原因だ。
 デビュー・シングル "Sunshine Smile" は英国インディー・チャートの1位を飾り、英国メディアも大きく持ち上げたのだが、このデビュー・アルバムのリリース時には冷ややかな視線に変っていた(ただし、バンドのフロントマン Piotr Fijalkowski[ピョートル・フィヤルコウスキー]がビッグマウス過ぎたので、バンド側の責任もゼロではない)。
 シューゲイズにもカテゴライズされていたのだが、このナルシスティックな歌いっぷりや、メロディアスな楽曲、しっかりとした演奏技術は、シューゲイズとは別物だ。
 そして、殆ど話題にならなかったが、2nd の Fake も、このデビュー・アルバムを超える名盤だ。


 ちなみに、同じ1993年には、Kinky Machine[キンキー・マシーン]もセルフ・タイトルのデビュー・アルバムをリリースしていて、このバンドが一番グラム・ロックっぽいのだが、

 たぶん、Adorable よりも商業的成功からは遠かった。