#0284) UNGOD / STABBING WESTWARD 【1994年リリース】

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米国におけるインダストリアル・メタルは1980年代中期にMINISTRY〔ミニストリー〕が開拓者となり、1980年代後期から1990年代初期にかけてNINE INCH NAILSナイン・インチ・ネイルズ〕が確立させた後、MARILYN MANSONマリリン・マンソン〕、WHITE ZOMBIE〔ホワイト・ゾンビ〕~Rob Zombie〔ロブ・ゾンビ〕によって大衆化された。


MINISTRYとNINE INCH NAILSはインダストリアル・ロックと呼ばれる場合もあり、インダストリアル・ロックとインダストリアル・メタルの境界線は極めて曖昧なのだが、私見ではインダストリアル・ロックの中でもスラッシーなギター・リフが強調されている音楽がインダストリアル・メタルなのではないかと考えている。


このインダストリアル・メタルの特徴とも言える「打ち込みによるリズム」と「スラッシーなギター・リフ」の組み合わせに対し、筆者は本能的に反応してしまう体質のようであり、1990年代中期頃はFEAR FACTORY〔フィア・ファクトリー〕、FILTER〔フィルター〕、GRAVITY KILLS〔グラヴィティー・キルズ〕、そして、今回取り上げているSTABBING WESTWARD〔スタッビング・ウエストワード〕を積極的に聴いていた。


STABBING WESTWARDは4枚のアルバムをリリースして2002年に解散し、その後、2016年に再結成して2020年の現在も活動を続けており、アルバムはリリースしていないがEPをリリースしている。


インダストリアル・メタルは音楽性に幅を持たせるのが難しい音楽だと思うのだが、それに加えて先行するMINISTRY、NINE INCH NAILSMARILYN MANSON、WHITE ZOMBIE~Rob Zombieあたりの存在が大きすぎて生き残るのが難しいのかもしれない。


STABBING WESTWARDは、今回取り上げている1stアルバム「UNGOD」はインダストリアル・メタルらしい作風なのだが、アルバムのリリースを重ねる毎にインダストリアル・メタルから離れてゆき、4thアルバム「STABBING WESTWARD」ではメロディアスな歌物ロックへの変貌を果たした。


4thアルバム「STABBING WESTWARD」で聴ける流麗なメロディも捨てがたいのだが、やはり、筆者としてはSTABBING WESTWARDのインダストリアル・メタル・バンドらしいハードな部分が最も詰まった1stアルバム「UNGOD」を推したい。


「インダストリアル・メタル・バンドらしいハードな部分」と書いてはみたが、実はこのバンドは1stアルバム「UNGOD」の時点でかなりメロディアスな傾向がある。


例えて言うならDEPECHE MODEデペッシュ・モード〕をメタル化させたような音であり、1980年代初期の英国に多く居たニュー・ウェイヴ系バンドが好きな人にも聴いてもらえるバンドなのではないかと思う。

 

#0283) IT TAKES A NATION OF MILLIONS TO HOLD US BACK / PUBLIC ENEMY 【1988年リリース】

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RAGE AGAINST THE MACHINEレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン〕やLIMP BIZKIT〔リンプ・ビズキット〕が売れたことにより1990年代にはラップ・メタルというジャンルが確立したが、そのルーツは何だろうかと考えた場合、やはり、スラッシュ・メタル・バンドのANTHRAXアンスラックス〕とヒップ・ホップ・グループのPUBLIC ENEMYパブリック・エナミー〕が共演し、1991年にリリースしたシングル"Bring The Noise"であると答えるのが妥当なのだろう。


筆者もこの"Bring The Noise"のミュージック・ヴィデオを初めて見た時はぶっ飛んだ記憶がある。


そもそも筆者はメタルとラップは最も融合し難い音楽だと思っていたので、それを見事にカッコ良く融合させているANTHRAXPUBLIC ENEMYに驚かされたのである。


当時のANTHRAXは生きの良い若手バンドという感じだったが、今では(2020年)、METALLICAメタリカ〕、MEGADETHメガデス〕、SLAYER〔スレイヤー〕と並び、スラッシュ・メタル四天王と言われる大物バンドになった。


SLAYERはヒップ・ホップのようなトレンドに魅かれやすいANTHRAXを揶揄するように「四天王のツアーはANTHRAXを外してMACHINE HEAD〔マシーン・ヘッド〕を入れようぜ」と言っていたようだが、それを聞いたANTHRAXのScott Ian〔スコット・イアン〕は「俺たちみたいにニューヨークで生まれ育って音楽活動をしている人間はヒップ・ホップから影響を受けないなんて無理なんだよ」と言っていて、面白いなと思った。


筆者はあくまでもロック・ファンであり、最も多く聴く音楽はロックなのだが、ヒップ・ホップはロック周辺の刺激的な音楽として、どうしても避けて通れないと思っている。


上記の"Bring The Noise"のミュージック・ヴィデオを見てPUBLIC ENEMYに興味を持った筆者が、当時矢も楯もたまらず買いに走ったアルバムが今回取り上げているPUBLIC ENEMYの2ndアルバム「IT TAKES A NATION OF MILLIONS TO HOLD US BACK」だ。


ラップ/ヒップ・ホップは英語が理解できないとその面白みが分からないという説もあるが、PUBLIC ENEMYの音楽にはアフロアメリカンとして米国で生きる彼らのヒリヒリとした緊張感が漲っており、筆者はPUBLIC ENEMYこそがロック・ファンが最も入り易いヒップ・ホップ・グループだと思っている。


そう言えば、あの英国の国民的バンド、MANIC STREET PREACHERSマニック・ストリート・プリーチャーズ〕がデビュー当時、「現存するアーティストで好きなのはGUNS N' ROSES〔ガンズ・アンド・ローゼズ〕とPUBLIC ENEMYだけ」と言っていたことを今思い出した。

 

#0282) JOBRIATH / Jobriath 【1973年リリース】

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今回取り上げているJobriath〔ジョブライアス〕の1stアルバム「JOBRIATH」は、SILVERHEAD〔シルヴァーヘッド〕2ndのアルバム「16 AND SAVAGED」と並び、筆者が最も高い金額を支払って買った中古レコードである。


どちらが高かったかは憶えていないが、いずれの中古レコードにも2万円近い価格が付いていたような気がする。


二組とも1970年代初頭に盛り上がったグラム・ロック・ムーヴメントから出てきたアーティストであり、Jobriathは米国のソロ・シンガー、SILVERHEADは英国のバンドだ。


そして、二組ともこのムーヴメントの中では、あまり売れなかったアーティストだ。


SILVERHEADの「16 AND SAVAGED」はその高価な額に値する筆者好みのロックン・ロールであり、直ぐに愛聴盤になったのだが、Jobriathの「JOBRIATH」は「なんやこれ?金返せ!」というのが最初に聴いた時の率直な感想だった。


Jobriathの音楽性というのは「こういう感じです」という具合に言葉で言い現わすのが難しい。


それをどうにかして、あえて言うのであれば、オペラっぽい、或いは、宇宙っぽいと言えば少しは伝わるのだろうか?


宇宙っぽいと言ってもDavid Bowieデヴィッド・ボウイ〕の「SPACE ODDITY」や「ZIGGY STARDUST」とはかなり趣が異なる。


実はBowieも最初に聴いた時は歌い方と声がなかなか受け入れらなくて、その良さが解るまでに少しの時間を要したアーティストである(もちろん、今では「SCARY MONSTERS」までの全てBowieのアルバムを超名盤だと思っている)。


Jobriathの宇宙っぽさというのは、どこかチープで、作り物っぽい匂いがするのである。


そして、Jobriathの歌はドラァグクイーンが場末のキャバレーでオペラを歌っているようなシーンが目に浮かぶのである。


とにかく、大枚を投じて買ったレコードなので何とか好きになろうとして毎日聴いていたところ、不思議なことにJobriathの音楽が好きになっていたのである。


今思うと、後に筆者がロックン・ロールだけではなく、Scott Walker〔スコット・ウォーカー〕、Marc Almond〔マーク・アーモンド〕、Rufus Wainwrightルーファス・ウェインライト〕といったバロック・ポップやオペラティック・ポップと呼ばれる音楽を好んで聴くようになったのは間違いなくJobriathに出会っていたからなのである。

 

#0281) WHATEVER HAPPENED TO... THE COMPLETE WORKS OF SOHO ROSES / SOHO ROSES 【2007年リリース】

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このブログのタイトルは「ロックン・ロール・プリズナーの憂鬱」なのだが、実際にはロックン・ロール・バンドをあまり取り上げていない。


何故このような状態になったのかと言えば、取り上げたいロックン・ロール・バンドがあまりにもマイナーなため、ブログに記事を書いたところで、それを読んで興味を持ってくれた人が音源を入手しにくいということに気付いたからであり、「これはアカン」と思い、早々に方向転換を図ったわけである。


このブログではマイナーなロックン・ロール・バンドをいくつか取り上げてきたが、今回取り上げているSOHO ROSES〔ソーホー・ローゼズ〕はTHE LONDON COWBOYS〔ザ・ロンドン・カウボーイズ〕JACOBITES 〔ジャコバイツ〕THE CRYBABYS〔ザ・クライベイビーズ〕あたりよりも更にマイナーなバンドなのではないかと思う。


Wikipediaを見るとSOHO ROSES は1989年に1stアルバム(と言うよりも最初で最後のアルバム)「THE THIRD AND FINAL INSULT」をリリースしているので、彼らの登場した時期は、GUNS N' ROSES〔ガンズ・アンド・ローゼズ〕の登場により米国で盛り上がりを見せていたロックン・ロールのブームが英国にも派生していた時期と重なる。


この頃の英国ではTHE DOGS D'AMOUR〔ザ・ドッグス・ダムール〕、THE QUIREBOYS〔ザ・クワイアボーイズ〕、TIGERTAILZ〔タイガーテイルズ〕等が登場しているのだが、SOHO ROSESもその流れから登場したバンドである。


SOHO ROSESの奏でるロックン・ロールはTHE DOGS D'AMOURやTHE QUIREBOYSのようなブルージーなものでもなく、TIGERTAILZのようなポップ・メタル風のものでもなく、タテノリのパンキッシュなロックン・ロールだ。


SOHO ROSESの音を他のバンドを引き合いに出して説明するならBUZZCOCKS〔バズコックス〕をグラマラスにしたようなロックン・ロールであり、今回取り上げているコンピレーション・アルバム「WHATEVER HAPPENED TO... THE COMPLETE WORKS OF SOHO ROSES」でもBUZZCOCKS の"What Do I Get?"をカヴァーしている。


そして、このバンドのユニークなところはドラマーのPat ‘Panache’ Walters〔パット・ウォルタース〕が黒人ということだ。


こういうスリージーなロックン・ロール・バンドにいる黒人メンバーとして、今直ぐ他に思いつくのはTHE LONDON COWBOYSのギタリストBarry Jones〔バリー・ジョーンズ〕くらいである。


それにしても、こんなマイナーなバンドの音源が音楽配信サービス(Amazon Music Unlimited)で聴けるとは、良い時代になったものである。

 

#0280) DIVINE DISCONTENT / SIXPENCE NONE THE RICHER 【2002年リリース】

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今回取り上げているSIXPENCE NONE THE RICHERシックスペンス・ノン・ザ・リッチャー〕のアルバムで聴いたことがあるのは2枚のみ。


3rdアルバム「SIXPENCE NONE THE RICHER」と、今回取り上げている4thアルバム「DIVINE DISCONTENT」だ。


何故この2枚のみを聴いているのかと言えば、「SIXPENCE NONE THE RICHER」ではTHE LA'S〔ザ・ラーズ〕の"There She Goes"、「DIVINE DISCONTENT」ではCROWDED HOUSE〔クラウデッド・ハウス〕の"Don't Dream It's Over"をカヴァーしているからだ。


筆者はSIXPENCE NONE THE RICHERに限らず女性ヴォーカルものが好きなので女性のソロ・アーティストや女性がヴォーカルを務めるバンドへの評価が甘くなりがちなのだが、こういう永遠の名曲~Timeless melody~をカヴァーするのは流石にあざと過ぎる感じがしなくもない。


しかし、SIXPENCE NONE THE RICHERの"There She Goes"と"Don't Dream It's Over"に関しては、これほどの珠玉の名曲となると、よほどスカタンなアレンジでもしないかぎりは失敗しないということのお手本のようなカヴァーなのである。


正直なところ、"There She Goes"に関しては、筆者はLee Mavers〔リー・メイヴァース〕の声があまり好きではないのでSIXPENCE NONE THE RICHERのカヴァーの方が聴いていて心地よく感じる。


"Don't Dream It's Over"に関しては、この曲がリリースされた年(1986年)に初めて聴いてから現在に至るまで筆者が愛してやまない曲であり、名曲故に様々なミュージシャンにカヴァーされた曲だが、「このカヴァーは良いな」と思えたのはPaul Young〔ポール・ヤング〕だけだった。


正直なところ、Paul Youngには申し訳ないのだが、Paul Youngに期待するのは彼のオリジナル曲ではなく、「あの名曲をPaul Youngの歌唱力で聴いてみたい」ということなのだが。


兎にも角にも、筆者が"Don't Dream It's Over"という曲のカヴァーに求める評価は厳しかったのだが、SIXPENCE NONE THE RICHERのカヴァーはPaul Young以外で初めて良いと感じられるカヴァーだったのである。


確かにこの曲はカヴァーして失敗し難い曲だがここまで成功させるのは凄い。


そして、この"Don't Dream It's Over"のカヴァーが収録されている「DIVINE DISCONTENT」が凄いのは、これほど他の曲を殺してしまいそうな名曲が4曲目に収録されているにも関わらず、この曲以降も最後まで聴けてしまえるところだ。


このアルバムは全13曲収録されているのだが、"Don't Dream It's Over"より後に収録されている9曲も実はかなりの佳曲揃いなのである。