#0338) FIRST AND LAST AND ALWAYS / THE SISTERS OF MERCY 【1985年リリース】

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筆者は1969年生れなので1977年に英国でパンク・ムーヴメントが勃発した時は小学3年生だ。


従って、パンク・ムーヴメントはリアルタイムで体験できていない。


もちろん、中には小学生でロックを聴き始める人もいるのかもしれないが、それはかなり稀なケースだろう。


筆者がロックを聴き始めたのは中学1年生、つまり1982年からなので、その頃に聴いていた英国の(当時の)新人アーティストは多かれ少なかれパンクの影響を受けていた。


所謂ポストパンクやニュー・ウェイヴと呼ばていたアーティストがそれにあたるのだが、51歳になった2020年現在では、当時必死に聴いていたそれらのアーティストを殆ど聴かなくなってしまった。


その理由は簡単で、当時のポストパンクやニュー・ウェイヴのアーティストは実験精神に溢れた個性的で面白い音楽を制作していたのだが、音楽的にも演奏面でも成熟していないアーティストが多く、多種多様な音楽を聴くようになった現在では、そういった音楽を聴くのが少々しんどくなってしまったのである。


ただ、そんな中でも聴き続けているアーティストもあり、それがゴシック・ロック系のアーティストなのある。


このブログではゴシック・ロックの起源とも呼べるバンドBAUHAUS〔バウハウス〕は取り上げているので、今回はゴシック・ロックの象徴とも言えるバンドTHE SISTERS OF MERCY〔ザ・シスターズ・オブ・マーシー〕を取り上げてみる。


取り上げるのは1stアルバム「FIRST AND LAST AND ALWAYS」なのだが、実はこのアルバムはTHE SISTERS OF MERCYがリリースした3枚のスタジオ・アルバムの中では聴く回数が最も少ないアルバムだ。


むしろ、ヘヴィ・メタルちっくビルドアップされた3rdアルバム「VISION THING」の方が圧倒的に聴く回数が多い。


しかし、THE SISTERS OF MERCYの代表作を一枚選ぶとなる、どうしても「FIRST AND LAST AND ALWAYS」になってしまうのである。


やはり、このDoktor Avalanche〔ドクター・アバランシュ〕(ドラムマシン)が叩き出す無機質なリズムと暗黒感が漂う曲調こそ、ゴスの象徴たるTHE SISTERS OF MERCYの世界なのである。


ただし、Andrew Eldritch〔アンドリュー・エルドリッチ〕のヴォーカルはかなり下手糞なので、聴くのが少々しんどくなる時もある。

 

#0337) HANDLE WITH CARE / NUCLEAR ASSAULT 【1989年リリース】

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現在では大物となったスラッシュ・メタル・バンドの中には活動初期に分裂を起こし、派生バンドを誕生させたバンドが存在する。


Dave Mustaine 〔デイヴ・ムステイン〕がMETALLICAメタリカ〕在籍中に他のメンバーと揉めて、METALLICAを解雇された後に立ち上げたバンドがMEGADETHメガデス〕であることは有名な話だ。


ちなみに、この解雇の経緯はロック史上稀に見るえげつない内容である。


今回取り上げているNUCLEAR ASSAULT〔ニュークリア・アソルト〕はANTHRAXアンスラックス〕のベーシストだったDan Lilker〔ダン・リルカ〕が、シンガーのNeil Turbin〔ニール・タービン〕と揉めてANTHRAX脱退後に結成したバンドだ。


面白いのは揉めた相手のNeil Turbinも後に歌唱力の問題によりANTHRAXを解雇されていることだ。


そしてDan LilkerがNUCLEAR ASSAULTを結成する際に組んだシンガー/ギタリストのJohn Connelly〔ジョン・コネリー〕はANTHRAX初期のメンバーである。


前述のとおりDan LilkerはNeil Turbinとは揉めたが他のANTHRAXのメンバーとの確執は無かったようであり、ANTHRAXのギタリストScott Ian〔スコット・イアン〕とはSTORMTROOPERS OF DEATH〔ストームトゥルーパーズ・オブ・デス〕(S.O.D.という略称の方が有名)を結成し、一緒に活動していた。


つまり、Dan Lilker とANTHRAX は、Dave MustaineとMETALLICAのような見苦しい泥仕合に縺れ込むことは無かったのである。


NUCLEAR ASSAULTは1stアルバムのリリースが1986年なのでスラッシュ・メタル第2世代とされることもあるが(METALLICAの1stは1983年、ANTHRAXの1stは1984年)、上記のとおりバンドの中心メンバーであるDan LilkerとJohn Connellyはスラッシュ・メタルの黎明期から活動しているミュージシャンなので第2世代とはちょっと言い難いバンドだ。


今回は、そんなNUCLEAR ASSAULTの3rdアルバム「HANDLE WITH CARE」を取り上げている。


このバンドはクロスオーバー・スラッシュ(ハードコア・パンクからの影響が濃いスラッシュ・メタル)にカテゴライズされることが多いのだが、筆者の耳ではハードコア・パンクの要素はそれほど聴きとることは出来ず、初めて聴いた時からかなりメタリックな印象が強い。


所謂ドコドコドラムにザクザクギターが乗るスラッシュ・メタルなのだが、アルバム全体に漲る狂気じみたテンションが凄まじく、特にこのアルバムが放つ喧しさからは四天王を凌駕する危険な匂いが感じられるのである。

 

#0336) SUNRISE OVER SEA / THE JOHN BUTLER TRIO 【2004年リリース】

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インターネットが人々の生活の基盤を支えるインフラストラクチャーとなって久しい。


現在では、多くの人がインターネットを介して商品を購入し、商品を販売する側の企業は顧客の購入履歴や閲覧履歴を分析することにより、次に購入させるべき商品を提案する。


筆者はこれを鬱陶しいと感じることの方が多かったのだが、それでも時々凄い商品と出会えることもあるので、最近ではこれもなかなか舐めたものでもないと感じている。


今回取り上げているTHE JOHN BUTLER TRIO〔ザ・ジョン・バトラー・トリオ〕の3rdアルバム「SUNRISE OVER SEA」は上記の所謂「お客様へのお薦め」として2~3年前に出会った一枚だ。


このアルバムは2004年にリリースされたアルバムであり、このブログを書いている現在は2020年7月なので、けっこう古い作品だ。


16年も前のアルバムなのだが、どうも最近は自分の感覚が壊れてしまっているようで、2000年以降のリリースとなると、少しも古いと感じなくなってしまっている。


THE JOHN BUTLER TRIOとは、その名のとおりJohn Butler〔ジョン・バトラー〕が率いるスリー・ピース・バンドであり、音楽性はブルースがベースとなっているが、ヒップ・ホップの要素もあり、かなり雑食感の強いバンドだ。


今回取り上げている「SUNRISE OVER SEA」は2000年代型のモダン・ブルースという感じで、初めて聴いた時は、その感性の新しさと、あまりのカッコ良さにぶっ飛んでしまった。


このアルバムを自分で発見できなかったのは2000年以降の作品ということもあるのだが、実はこのバンドがオーストラリア出身であるということも大きいような気がする。


どうも筆者は「ロックは英米の音楽」という前時代的な先入観が強く、オーストラリアを含め、オセアニアや南米など、南半球には目が向かない傾向がある。


これはロックを聴き始めた1980年代初期からの傾向であり、英米以外で目が向くのはドイツか北欧くらいである。


今回取り上げているTHE JOHN BUTLER TRIO以前で、最後に好きになった南半球出身のバンドとして、今パッと思いつくのはニュージーランド出身のTHE DATSUNS〔ザ・ダットサンズ〕くらいだ。


この年齢になり、THE JOHN BUTLER TRIOのような良質なアーティストに出会えて感じたのは、やはり、人間は長生きするべきだなということである。

 

#0335) FLIRTIN' WITH DISASTER / MOLLY HATCHET 【1979年リリース】

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サザン・ロックが好きだ。


ロックを聴き始めた1980年代初期、好んで聴いていた米国のアーティストはDaryl Hall & John Oates〔ダリル・ホール&ジョン・オーツ〕、CHEAP TRICK〔チープ・トリック〕、TOTO〔トト〕等、洗練されたポップ・センスを持つグループだった。


当時の筆者は中学生であり、買う、或いは、レンタルするレコードの情報は洋楽雑誌の「MUSIC LIFE」と「音楽専科」から仕入れていた。


そのうち、ロックが好きな大人のお兄さん、お姉さん連中と仲良くなり、ロックの英才教育を受け始めるのだが、お兄さん連中にはサザン・ロック好きが多かった。


そして、サザン・ロックの中でもお兄さん連中から圧倒的な人気を得ていたのがLYNYRD SKYNYRDレーナード・スキナード〕だった。


従って、お兄さん連中が筆者に対し、真っ先に薦めてくるくるバンドはLYNYRD SKYNYRD、および、その周辺のバンドなのである。


「その周辺のバンド」の一つが当ブログの#0325で取り上げた38 SPECIAL〔サーティーエイト・スペシャル〕であり、このバンドはLYNYRD SKYNYRDのシンガーRonnie Van Zant〔ロニー・ヴァン・ザント〕の実弟、Donnie Van Zant〔Donnie Van Zant〕がシンガーを務めるバンドだ。


そして、もう一つの「その周辺のバンド」が今回取り上げているMOLLY HATCHET〔モリー・ハチェット〕であり、このバンドはLYNYRD SKYNYRDのRonnie Van Zantに見出されたバンドなのである。


これはもう40年近い昔のことだが、サザン・ロックを初めて聴いた時、そのカッコ良さに痺れたことを今でもはっきりと憶えている。


タフで、むくつけき、南部の男たちに筆者は憧れ、彼らの奏でる荒々しくも情感たっぷりのロックに痺れたのである。


今回取り上げている「FLIRTIN' WITH DISASTER」はMOLLY HATCHETの2ndアルバムであり、トリプル・ギターが炸裂する「これぞサザン・ロック」と呼ぶべき豪快な一枚である。


このバンドは数あるサザン・ロック・バンドの中でもハード・ロックに通じるラウドな音が特徴的であり、後のCORROSION OF CONFORMITY〔コロージョン・オブ・コンフォーミティ〕辺りのサザン・メタルにも影響を与えている。


「FLIRTIN' WITH DISASTER」はダブル・プラチナムを獲得した商業的に最も大きな成功を修めた彼らのアルバムであり、MOLLY HATCHETを聴くなら先ずはこのアルバムからなのである。

 

#0334) HEAVY AS A REALLY HEAVY THING / STRAPPING YOUNG LAD 【1995年リリース】

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インダストリアル・メタルの大御所アーティストと言えばMINISTRY〔ミニストリー〕とNINE INCH NAILSナイン・インチ・ネイルズ〕である。


筆者もこの二つはかなり聴き込んだ時期があったのだが、最も好きなインダストリアル・メタルのアーティストは、今回取り上げているSTRAPPING YOUNG LAD〔ストラッピング・ヤング・ラッド〕...と言うよりはDevin Townsend〔デヴィン・タウンゼンド〕のような気がする。


Devin Townsendは色々な名義を使い分けて様々な音楽をリリースしているので、純粋なインダストリアル・メタルのアーティストではなく、彼の音楽の表現手段の一つとしてインダストリアル・メタルがあるだけなのかもしれない。


筆者は、Steve Vaiスティーヴ・ヴァイ〕が1993年にVAIというバンド名義でリリースした「SEX & RELIGION」において、Devin Townsendがシンガーとしてデビューした時から「この人は只者ではない」と感じていた。


バンド名がVAIなので当然ながらSteve Vaiというスーパー・ギタリストのリーダー・アルバムなのだが、このVAIというバンドはベースがT. M. Stevens〔T.M.スティーヴンス〕、ドラムがTerry Bozzio〔テリー・ボジオ〕なのである。


この顔ぶれの中で、当時無名の新人だったDevin Townsendが全く物怖じすることなく歌いまくっている「SEX & RELIGION」を聴いて「只者でない」と感じない人は少ないだろう。


VAIの「SEX & RELIGION」以降、THE WILDHEARTSザ・ワイルドハーツ〕のツアーにギタリストとして参加していたDevin Townsendが、STRAPPING YOUNG LAD名義でリリースしたインダストリアル・メタル・アルバムが今回取り上げている「HEAVY AS A REALLY HEAVY THING」である。


この時点でのSTRAPPING YOUNG LADはまだDevin Townsendのソロ・プロジェクトのようなものだが、当時の筆者は「待ってました」とばかりに、このアルバムに飛びつき、Devin Townsendの才能に改めて感嘆させられたのである。


このアルバムはインダストリアル・メタルなので、かなり激烈な部分もあるのだが、意外なほどキャッチーな面もあり、聴いていると不意に意表を突かれる瞬間がある。


インダストリアル・メタルというジャンルは、ともするとMINISTRYやNINE INCH NAILSエピゴーネンに陥り易いのだが、Devin Townsendはこの開始時点において既に STRAPPING YOUNG LADとしか言いように無い音を構築している。


これ以降、様々な名義を使い分けながらDevin Townsendの名盤の乱発が開始されるのである。