#0384) MODUS OPERANDI / Photek 【1997年リリース】

f:id:DesertOrchid:20210116134654j:plain

 

聴いた瞬間に不安定な心理状態となり、心がざわめき立つドラムン・ベースの名曲と言えば、筆者の中ではPLUG[プラグ]の"Me & Mr Jones"と、Photek[フォーテック]の"The Hidden Camera"だ。


"Me & Mr Jones"はLuke Vibert[ルーク・ヴァイバート]がPLUG名義でリリースしたアルバム「DRUM 'N' BASS FOR PAPA」の1曲目、"The Hidden Camera"は今回取り上げているPhotekの1stアルバム「MODUS OPERANDI」の1曲目に収録されている。


Photekの「MODUS OPERANDI」も筆者が嵌りに嵌ったドラムン・ベースの名盤である。


このアルバムの作り方は凄い。


1曲目に"The Hidden Camera"という、聴いているだけでハラハラドキドキさせられる曲を持ってこられては、「この先どうなるのだろうか?」という心理状態にさせられ、再生したら最後、アルバム終了まで聴き続けなければいられなくなるのである。


そして、最後まで聴き続ければ途中でハラハラドキドキが解消される瞬間が来るのかと言うと、そんなことは全く無い。


結局、最後までハラハラドキドキの不安な心理状態が続くのである。


このアルバムは、各曲が、と言うよりも、各音が緻密に計算されており、リスナーにつけ入る隙を全く与えない作りになっているのだ。


ドラムン・ベースも、他の音楽ジャンルと同様、ドラムン・ベースであるための最低限の下地はあるのだが、アーティスト毎にその音楽性は全く異なる。


そんなドラムン・ベースのアーティストの中でもPhotekの暗黒感漂う音は、かなり個性的なのではないだろうか。


前回のブログにも書いたのだが、筆者は1990年代後半から、それまで必死に聴いてきたロックへの興味を急激に失った。


1990年代後半と書いたが、実のところ1990年代に入った頃から既にロックへの興味を失いつつあったのである。


筆者が心底好きと言えるロックのアーティストは1980年代までに登場したアーティストに大幅に偏っており、1990年代以降に登場したアーティストとなると、その数が大幅に減る。


ドラムン・ベースは筆者がロックに対する興味を失う切っ掛けとなったジャンルだが、ドラムン・ベースに出会わなければ、音楽自体への興味すら失っていた気がするのである。

 

#0383) BROWN SUGAR / D'Angelo 【1995年リリース】

f:id:DesertOrchid:20210115225031j:plain

 

今回取り上げているD'Angeloディアンジェロ]の1stアルバム「BROWN SUGAR」は1995年にリリースされた作品なのだが、この年辺りから筆者はそれまで頻繁に聴いてきたロックへの興味を急激に失い始めた。


1995年には、King of Drum 'n' BassことGoldie[ゴールディー]の1stアルバム「TIMELESS」もリリースされており、「TIMELESS」の衝撃が決定打となって筆者はロックへの興味を失ったのである。


それ故、筆者が1995年に最も聴いたアルバムは間違いなくGoldieの「TIMELESS」なのだが、たぶん、その次によく聴いたアルバムはD'Angeloの「BROWN SUGAR」なのではないかと思う。


筆者はロックを中心に洋楽を聴いてきた音楽リスナーなのだが、ブルース、ジャズ、R&B、ソウル、ファンク等のブラック・ミュージックも結構な頻度で聴いている。


何故ブラック・ミュージックを聴くのかと言えば、ロックのルーツの一つがブラック・ミュージックだからであり、ロックを聴いている以上、ブラック・ミュージックはどうしても意識せざるを得ない音楽なのである。


D'Angeloに関しても、「今、最も重要なソウル・ミュージックの新人」として、当時のメディアに取り上げられていたので、聴かないわけにはいかなかったのである。


みっともない話だが、筆者はメディア、特に洋楽雑誌の煽りに対し、簡単に踊らされるミーハーな洋楽リスナーだった(というか、それは今でも変わってないような気がする)。


まぁ、そんな訳で当時の筆者はD'Angeloの「BROWN SUGAR」に飛びついたのだが、このアルバムはそれまでに聴いてきたブラック・ミュージックとは明確な違いを感じたのである。


上述したとおり、それまでの筆者はブラック・ミュージックをロックのルーツの一つとして聴いてきたのだが、「BROWN SUGAR」はロックには繋がらない、何か途轍もなく新しい音楽に聴こえたのである。


BROWN SUGAR」から聴こえてくるのは明確にヒップ・ホップを通過したソウル・ミュージックであり、後にD'Angeloの音楽がネオ・ソウルと呼ばれていることを知り、「ベタやけど、おもろいネーミングやなぁ」と思ったものである。


既に述べたとおり、筆者がロックへの興味を失う切っ掛けとなったアーティストの一人がD'Angeloなのだが、ロックへの興味が回復した今でも「BROWN SUGAR」を聴くと、これを聴く以前ほどロックへの情熱を持っていない自分に気付かされるのである。

 

#0382) ヘンデル:管弦楽組曲「王宮の花火の音楽」「水上の音楽」 / 指揮:ネヴィル・マリナー、演奏:アカデミー室内管弦楽団

f:id:DesertOrchid:20210110103449j:plain

 

筆者はこのブログのタイトルのとおり、主にロックを聴く音楽リスナーだが、それ以外のジャンルもけっこう聴くことが多く、中でもクラシックは大好きなジャンルなのだが知識については殆どゼロに近い。


初めてクラシックを聴いて「良いな」と感じたのは小学校に上がる前なので、たぶん幼稚園に通っている頃のことだと思う。


筆者が幼少の頃(45年ほど前)に住んでいた家には大量のレコードと、ステレオ(レコードプレイヤー)の置いてある部屋があった。


筆者の祖父は京都の商人であり、祇園に遊びに行くと何日も帰ってこないような放蕩三昧の人間だったのだが、かなりの好事家でもあったので、おそらくそれらのレコードは祖父が集めたものなのではないかと思う。


筆者はその部屋に度々入っては色々なレコードを再生し、訳も分からずに音楽を聴いていたのだが、その中でも特に気に入って何度も聴いていたレコードの一枚がゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル[Georg Friedrich Händel]の管弦楽組曲「王宮の花火の音楽」「水上の音楽」が収録されているLPレコードだった。


今回取り上げているのは、指揮:ネヴィル・マリナー[Neville Marriner]、演奏:アカデミー室内管弦楽団[Academy of St Martin in the Fields]によるヘンデル管弦楽組曲「王宮の花火の音楽」「水上の音楽」なのだが、小さい頃に聴いていたレコードは別の指揮者と楽団だったような気がする(なにしろ古すぎる記憶なので、その辺りのことは朧気である)。


小学校に上がる前なので漢字や英語は読めなかったのだが、LPレコードの帯(この表現、伝わるだろうか?)に書かれた「ヘンデル」という片仮名が強く印象に残った記憶がある。


クラシックの知識が無いので確かなことは言えないのだが、ヘンデルの曲の中でもこの管弦楽組曲は特に有名なのではないだろうか。


大規模な曲が多いクラシックの中でも、この管弦楽組曲はかなり大規模な方だと思われる。


ヘンデルバロック音楽に分類される音楽家なのだが、その後に登場する古典派音楽やロマン派音楽と比べると、バロック音楽には中世ヨーロッパの名残を感じさせる華やかな印象があり、ヘンデル管弦楽組曲「王宮の花火の音楽」「水上の音楽」にもそれが顕著だ。


クラシックとロックは真逆の音楽のような印象があるが、プログレッシヴ・ロックヘヴィ・メタルには一般的に言われている以上にクラシックの要素があると筆者は感じている。

 

#0381) THE PRETTY THINGS / THE PRETTY THINGS 【1965年リリース】

f:id:DesertOrchid:20210109114323j:plain

 

このブログを始める前は、自分にとって思い入れが強すぎるアーティストほど、ネタとしては取り上げ易いような気がしてたのだが、実際には逆で、返って取り上げにくい。


そう言う訳で、今回取り上げているTHE PRETTY THINGS[ザ・プリティ・シングス]も、381回目にして漸く取り上げることになった。


筆者がTHE PRETTY THINGSを知った切っ掛けは、多くのロック・ファンと同様、THE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ]経由だ。


THE ROLLING STONESのギタリストだったDick Taylor[ディック・テイラー]がベーシストに転向させられるのを嫌い、THE ROLLING STONESを脱退して結成したバンドがTHE PRETTY THINGSであることはロック・ファンの間では有名な話だ。


20歳頃の筆者(約30年前)は、とにかくTHE PRETTY THINGSのレコードが欲しくて欲しくて、懇意にしていた中古レコード屋の店主に探してもらい、漸く手に入れたのが今回取り上げている1stアルバムの「THE PRETTY THINGS」なのである。


けっこう頑張って探してもらった一枚であることは憶えているのだが、購入にあたっては法外な金額を支払った記憶はなく、今振り返ると、かなり良心的な店主だったなと思う。


THE PRETTY THINGSは、THE ROLLING STONESと同様、米国のブルースやR&Bから影響を受けた英国のバンドなのだが、当時(1960年代初期)、不良と言われていたTHE ROLLING STONESよりも更に不良っぽい上に、更に黒っぽい演奏が特徴で、このアルバム1曲目の"Road Runner"で聴けるPhil May[フィル・メイ]の艶めかしいヴォーカルと、たぶんベースのJohn Stax[ジョン・スタックス]が吹いていると思われるブルース・ハープが鳴った瞬間、若かりし筆者はノックアウトされたのである。


現在のように配信やダウンロードで個々の楽曲をフラットに聴くことが主流な時代と違い、10曲前後を一つのメディアに纏めたアルバムを聴くことが主流だった時代は、アルバムの1曲目は非常に重要だったのである。


事ある毎にTHE ROLLING STONESを引き合いに出すのも気が引けるのだが、THE ROLLING STONESは1stアルバム「THE ROLLING STONES」において全12曲のうち自作曲は1曲だが、THE PRETTY THINGSは1stアルバム「THE PRETTY THINGS」において全12曲のうち自作曲が3曲もあるのは凄いことである。


THE PRETTY THINGSTHE ROLLING STONESのような世界的な成功を修めることが出来なかったバンドだ。


しかし、いつの時代でもロックの歴史を紐解くと、大成功を修めたバンドと同じ時代には徒花のようなバンドもいて、ロック・ファンにとっては、その両者に違いは無く、いずれも同じくらい大切なバンドなのである。


AEROSMITHエアロスミス]も最高だが、NEW YORK DOLLSニューヨーク・ドールズ]も同じくらい最高なのである。


MÖTLEY CRÜE[モトリー・クルー]も最高だが、HANOI ROCKSハノイ・ロックス]も同じくらい最高なのである。


GUNS N' ROSES[ガンズ・アンド・ローゼズ]も最高だが、THE DOGS D'AMOUR[ザ・ドッグス・ダムール]も同じくらい最高なのである。


そして、THE ROLLING STONESも最高だが、THE PRETTY THINGSも同じくらい最高なのである。


ロック・ファンなら、この感覚、分ってもらえるのではないだろうか?

 

#0380) FINO + BLEED / DIE MANNEQUIN 【2009年リリース】

f:id:DesertOrchid:20210102150420j:plain

 

筆者は2000年以降に登場したロックを積極的に聴いてこなかったのだが、そんな2000年以降でも時折「おっ」と感じさせてくれるアーティストに出会うことがある。


今回取り上げているカナダのオンタリオ州トロント出身のDIE MANNEQUIN[ダイ・マネキン]も、そんなアーティストの一つだ。


Care Failure[ケア・フェイリアー]という何とも変な感じのステージ・ネーム(「お手入れの失敗」という意味か?)を持つ女性シンガー/ギタリストが率いるバンドなのだが、実際にはバンドというよりもCare Failureソロ・プロジェクトに近いような気がする。


DIE MANNEQUINに興味を持った切っ掛けは、日本の洋楽雑誌に掲載されていたCare Failureの写真から只者ではないオーラが放たれていたからと言うとそれらしく聞こえるのだが、要はCare Failureのヴィジュアルが可愛かったからである。


「そんなん、全く音楽性とか関係ないやん、このスケベ!」と、突っ込まれそうである。


しかし、女性の場合はどうだか分からないのだが、男性が女性アーティストに興味を持つ切っ掛けは、結局のところ先ずは外見からなのではないだろうか?


筆者が最初に聴いたDIE MANNEQUINのアルバムは「UNICORN STEAK」という初期の音源を纏めた(らしい?)コンピレーション・アルバムなのだが、これを聴いた時は「1990年代のグランジとかオルタナティヴ・ロックに影響を受けた威勢のいい娘が出てきなな」という感じだった。


どうやらCare Failureは、SONIC YOUTHソニック・ユース]の「GOO」とDINOSAUR JR.[ダイナソー・ジュニア]の「GREEN MIND」の刺青を入れているらしく、かなりのオルタナ・マニアなようだ。


そんなCare Failure率いるDIE MANNEQUINが正式な1stアルバムとしてリリースしたのが今回取り上げている「FINO + BLEED」なのである。


このアルバム「FINO + BLEED」は「UNICORN STEAK」と比べると曲のクオリティが格段に上がっており、特にサビの部分ではかなりキャッチーなメロディが出てくる曲が増えている。


UNICORN STEAK」では殆どの曲をCare Failureが一人で書いていたのだが、「FINO + BLEED」では逆に殆どの曲を他のソングライターと共作しており、たぶん、それが刺激となって曲のクオリティが上がったのだろう。


2014年に2ndアルバム「NEON ZERO」をリリースして以降は音沙汰が無いのだが、才能のある人だと思うので何とか活動を続けてほしいものだ。