the Bob Seger System [ザ・ボブ・シーガー・システム]
origin: Detroit, Michigan, U.S.
Ramblin' Gamblin' Man [ランブリン・ギャンブリン・マン]
1st studio album
released: 1969/01
producer: The Bob Seger System & Punch Andrews
- Side one
- Ramblin' Gamblin' Man
- Tales of Lucy Blue
- Ivory
- Gone
- Down Home
- Train Man
- Side two
- White Wall
- Black Eyed Girl
- 2 + 2 = ?
- Doctor Fine
- The Last Song (Love Needs to Be Loved)
[comment]
ボブ・シーガーと言えば「ハートランド・ロックの雄」というのが彼のイメージだと思うのだが、the Bob Seger System 名義でリリースしたデビュー・アルバムは、そんなパブリック・イメージとは全く異なるので初めて聴いたときは戸惑いを覚えた。
酩酊感の漂うサイケデリック・ロックや、歪んだギターが荒々しく鳴るガレージ・ロックなど、この時期のボブ・シーガーは同郷 (ミシガン州) の the Stooges [ザ・ストゥージズ] や MC5 [エム・シー・ファイヴ] に近い。
ただしアングラ感は稀薄であり、後に米国の国民的シンガーに登り詰める彼のメジャー感は、この時点で既に感じることができる。
Noah [ノア]
2nd studio album
released: 1969/09
producer: Punch Andrews
- Side one
- Noah
- Innervenus Eyes
- Lonely Man
- Loneliness Is a Feeling
- Cat
- Side two
- Jumpin' Humpin' Hip Hypocrite
- Follow the Children
- Lennie Johnson
- Paint Them a Picture Jane
- Death Row
[comment]
A面1曲目、アルバムのオープニングを飾る "Noah" だけが全体の中で異様に浮いている気がする。
A面2曲目からB面5曲目までの9曲は同質の緊張感を備えているのだが、"Noah" だけは牧歌的な曲であり、何故この曲をオープニングに選んだのか謎だ(逆に "Noah" だけが、ちょっとハートランド・ロックっぽい)。
A面ラストに入れて、B面への切り換えとして使うなら納得できるのだが、アルバムのタイトルチューンなので思い入れが深い曲なのかもしれない。
しかし、A面2曲目の "Innervenus Eyes" をオープニングに持ってきた方がリスナーの心を掴めると思うのだが...
Mongrel [モングレル]
3rd studio album
released: 1970/08
producer: Punch Andrews
- Side one
- Side two
- Teachin' Blues
- Leanin on My Dream
- Mongrel Too
- River Deep, Mountain High
[comment]
the Bob Seger System というバンド名で、且つ、歌っているのがボブ・シーガーなので彼のワンマン・バンドであることは否めないのだが、このアルバムは the Bob Seger System としてリリースした3作の中で最もバンド・サウンドを感じさせてくれる。
とりわけボブ・シュルツのオルガンは印象深く、このアルバムでの the Bob Seger System は、Vanilla Fudge [ヴァニラ・ファッジ] や 第1期 Deep Purple [ディープ・パープル] に通じるアート・ロック的側面もある。
これを最後にバンドは解散となり、ボブ・シーガーはソロ・アーティストになるのだが、成り行きとしてソロになったものの、本当のところボブ・シーガーはバンドとして活動したかったのではないだろうか?
Bob Seger [ボブ・シーガー]
origin: Detroit, Michigan, U.S.
Brand New Morning [ブランド・ニュー・モーニング]
4th studio album (1st solo album)
released: 1971/10
producer: Punch Andrews
- Side one
- Brand New Morning
- Maybe Today
- Sometimes
- You Know Who You Are
- Side two
- Railroad Days
- Louise
- Song for Him
- Something Like
[comment]
the Bob Seger System 解散後、ソロ・アーティストとなってリリースされた本作は、ボブ・シーガー自身が弾くギターとピアノの上に憂いのあるヴォーカルを乗せただけのシンプルな弾き語りアルバムとなった。
バンド時代とは明確に音楽性を変えているのだが、この時点でも、まだ後の「ハートランド・ロックの雄」というイメージからはかけ離れている。
個人的には、ここに収められているちょっとローファイな曲は好みなのだが、当時リアルタイムでバンド時代からボブ・シーガーを追いかけていた人にしてみれば「全然違うやん」と感じたのアルバムだったのではないだろうか?
Smokin' O.P.'s [スモーキンO.P.’s]
5th studio album
released: 1972/08
producer: Punch Andrews
- Side one
- Bo Diddley
- Love the One You're With
- If I Were a Carpenter
- Hummin' Bird
- Side two
- Let It Rock
- Turn on Your Love Light
- Jesse James
- Someday
- Heavy Music
[comment]
A面はボ・ディドリー、スティーヴン・スティルス、ティム・ハーディン、レオン・ラッセルのカヴァー、そして、B面の1曲目がチャック・ベリーのカヴァー!
強烈に米国を感じさせる選曲であり、ボブ・シーガーのロック・シンガーとして力量が存分に発揮されたアルバムだ。
自作曲は2曲だけ最後にひっそりと収められており、カヴァーを前面に押し出した構成は、ここで一区切り付けようとした印象を受ける。
筆者は煙草を吸わない(というより煙草に嫌悪感がある)ので、このアルバム・カヴァーが有名な煙草の銘柄をモチーフにしていることを永年に渡り気付かなかった。
Back in '72 [バック・イン・72]
6th studio album
released: 1973/01
producer: Punch Andrews, Bob Seger
- Side one
- Midnight Rider
- So I Wrote You a Song
- Stealer
- Rosalie
- Turn the Page
- Side two
- Back in '72
- Neon Sky
- 've Been Working
- I've Got Time
[comment]
これまでのアルバムも名盤揃であり、個人的にボブ・シーガーのアルバムにハズレは無いと思っているのだが、このアルバムは一皮むけた感じがする。
前作ほどではないが、the Allman Brothers Band [オールマン・ブラザーズ・バンド] の初期の名曲 "Midnight Rider"、ヴァン・モリソンの "I've Been Working"、そして、筆者が愛する Free [フリー] の "Stealer" といった秀逸なカヴァーが収録されている。
そして、逆に、Thin Lizzy [シン・リジィ] にカヴァーされることになる名曲 "Rosalie" も収録されている。
シーガーの熱唱に胸が絞めつけられる切ないバラードの "Turn the Page は永遠の名曲だ。"
Seven [セヴン]
7th studio album
released: 1974/03
producer: Punch Andrews, Bob Seger
- Side one
- Get Out of Denver
- Long Song Comin'
- Need Ya
- School Teacher
- Cross of Gold
- Side two
- U.M.C. (Upper Middle Class)
- Seen a Lot of Floors
- 20 Years from Now
- All Your Love
[comment]
the Bob Seger System 時代から数えて7枚目のアルバムだから Seven なのだろうか?
今回は全曲、ボブ・シーガーのペンによるオリジナルであり、カヴァー曲は無い。
前作から、その兆候はあったが、いよいよハートランド・ロックっぽくなってきた。
ハートランド・ロックというジャンル名は日本では浸透していないので分かりにくいかもしれないが、70年代から80年代を通して人気を博す典型的なアメリカン・ロックなのだが、このアルバムはその原型である。
Beautiful Loser [美しき旅立ち]
8th studio album
released: 1975/04
producer: Bob Seger, Muscle Shoals Rhythm Section, Punch Andrews
- Side one
- Beautiful Loser
- Black Night
- Katmandu
- Jody Girl
- Side two
- Travelin' Man
- Momma
- Nutbush City Limits
- Sailing Nights
- Fine Memory
[comment]
ボブ・シーガーが本格的にブレイクするのは、Bob Seger & the Silver Bullet Band [ボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンド] としてリリースした、次作 Night Moves からだが、このアルバムはチャート成績では次作に及ばないものロックの歴史に刻まれた名盤である。
ハートランド・ロックには「男らしい」とか「勇ましい」というイメージを持たれがちだが、実は意外と弱々しいのである。
メロディーや歌詞も繊細であり、このアルバムも正にそのとおりのアルバムだ。
タイトルの「美しい敗者」のとおり、敗れっ去った者たち向けた優しがある。
~ 総括 ~
ハートランド・ロックの四天王と言えば、Bruce Springsteen [ブルース・スプリングスティーン]、Tom Petty [トム・ペティ]、John Mellencamp [ジョン・メレンキャンプ]、そして今回取り上げたボブ・シーガーである。
はっきり言って、ブルース・スプリングスティーン以外、日本ではあまり人気が無さそうである。
ハートランド・ロックというジャンル名が日本では浸透しておらず、ロックを聴いている人でも「何それ?」って感じなのではないだろうか?
ハートランドとは、米国の中西部地域のことらしいのだが、上記した四天王のうち、ジョン・メレンキャンプはインディアナ州の出身なのでハートランドだが、ブルース・スプリングスティーンはニュージャージー州、トム・ペティはフロリダ州、ボブ・シーガーはミシガン州の出身なのでハートランドではない。
ハートランドには「心のふるさと」という意味もあるようなので、ハートランド・ロックは地域を指したジャンル名ではなさそうにも思えるのだが、未だによく分からない。
よくわからないのだが、筆者にとっては、ロックン・ロール、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル、サザン・ロックと並んで好きなロックの上位に位置するジャンルである。
「ブルース・スプリングスティーン以外、日本ではあまり人気が無さそうである」と書いたが、その中でも日本ではボブ・シーガーが最も知られていないと思われる。
今まで「ロックが好き」という人には何人も出会ってきたが、「ボブ・シーガーが好き」という人には出会ったことが無い。
筆者がボブ・シーガーを聴く切っ掛けは、80年代に購読していた「音楽専科」という雑誌でボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンドが86年にリリースした Like a Rock というアルバムのレビューを読んだときである。
当時、ブルース・スプリングスティーンの Born in the U.S.A.、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの Southern Accents、ジョン・クーガー・メレンキャンプの Scarecrow で、この手のロックに嵌り始めていた筆者は、上記のレビューを読んで「次はこれだ!」と直感的なひらめきを感じ、Like a Rock を購入したのである。
当時のレコードの価格は2,500~2,800円くらいであり、10代の筆者にとっては大きな買い物なので一か八かの大博打だったのだが(当時は視聴できるような環境は殆どない)、結果は「勝ち」であり、その後、現在に至るまで何十年も聴き続ける愛聴盤となった。
Like a Rock 以降、他のアルバムも徐々に聴いていったのだが、今回取り上げた初期のアルバムは、筆者が好きな80年代のボブ・シーガーとあまりにも違っていたので取っ付きにくかった。
しかし、これは大金を払ってレコードを買っていた時代の良さだと思うのだが、払った分を何とか取り返そうと思い、何度も何度もレコードを聴くのである。
そして、何度も聴いているうちにレコードの中に好きな音が見つかり始め、そのレコードが好きになるという現象が起きるのだ(もちろん、時にはどうしても好きになれないケースもある)。
現在の筆者は配信サービスで音楽を聴いており、レコードやCDなどを全く買わなくなったので、もうボブ・シーガーの初期のアルバムを好きになったときのような音楽の聴き方はできなくなってしまった。