ロックン・ロール・プリズナーの憂鬱

好きな音楽についての四方山話

#0304) THE INNOCENTS / ERASURE 【1988年リリース】

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母体のバンドやグループよりも、そこから派生したバンドやグループの方が好きになるケースがけっこうな頻度であったりする。


いきなり話が横道に逸れるが、筆者の中では、正式メンバーだけで自分たちの曲をライヴで再現できる集合体のことをバンド、正式メンバーだけでは自分たちの曲をライヴで再現できない集合体のことをグループという具合に呼び分けている。


話を戻すと、「母体のバンドやグループよりも、そこから派生したバンドやグループの方が好きになる」というのは、例えば、DEEP PURPLE[ディープ・パープル]よりもRAINBOW[レインボー]が好きだったり、METALLICAメタリカ]よりもMEGADETHメガデス]が好きだったりするということだ。


ただし、L.A. GUNS[LAガンズ]よりはGUNS N' ROSES[ガンズ・アンド・ローゼズ]が好きなので絶対的な法則ではない。


ジャンルをシンセポップに向けてみると、THE HUMAN LEAGUE[ザ・ヒューマン・リーグ]よりもヘヴン17[HEAVEN 17]が好きだし、DEPECHE MODEデペッシュ・モード]よりも今回取り上げているERASURE[イレイジャー]の方が好きだ。


書くまでも無いが、ERASUREとは、DEPECHE MODEのメイン・ソングライターだったVince Clarke[ヴィンス・クラーク]が、YAZOO[ヤズー]~THE ASSEMBLY[ジ・アッセンブリー]の活動を経て、シンガーのAndy Bell[アンディ・ベル]と結成したシンセポップ・デュオだ。


筆者の中におけるDEPECHE MODEERASUREでは、圧倒的にERASUREの方が自分の好みに合っており、レコードを聴いた回数もERASUREの方が大きく上回る。


その理由はと言うと、DEPECHE MODEの曲よりもERASUREの曲の方が断然にキャッチーだからだと思う。


1980年代の英国は多くの優れたシンセポップ・グループを輩出したが、一緒に歌えるキャッチーな曲を書かせたらVince Clarkeがダントツの1位なのではないだろうか。


Vince Clarkeの書く曲は、とにかくしつこいくらい耳に残るのだが、音域の広いAndy Bellの卓越したヴォーカルが更にそれに拍車をかけている。


逆に言えば、これほど優れたソングライターを失いながらも、後に世界規模の成功を修めたDEPECHE MODEも凄いグループだ。


1980年代のERASUREのアルバムは名盤揃いだが、1枚選ぶなら、これぞERASUREというべき名曲"A Little Respect"が収録されている3rdアルバムの「THE INNOCENTS」を推したい。

 

#0403) HARDCORE JOLLIES / FUNKADELIC 【1976年リリース】

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1970年代は名盤の宝庫だ。


特に1970年代の中期には手に負えない名盤が固まっているいるような気がする。


今パッと思いついた名盤を米国に限って列挙してみても、Bruce Springsteenブルース・スプリングスティーン]の「BORN TO RUN」、AEROSMITHエアロスミス]の「ROCKS」、Stevie Wonderスティーヴィー・ワンダー]の「SONGS IN THE KEY OF LIFE」、EAGLESの[イーグルス]の「HOTEL CALIFORNIA」等、永遠に色あせることの無い名盤のタイトルを次から次へ書くことが出来る。


筆者は1980年代初期から洋楽を聴き始めた人間なので1970年代の洋楽は完全に後追いである。


そんな筆者にとって、当時の洋楽雑誌に時々掲載されていた「1970年代の名盤特集」的な記事を読み、それらのアルバムをレコード店に探しに行く時は、まるで宝島に探検に行くかのような高揚感を覚えたものである。


今回取り上げているGeorge Clintonジョージ・クリントン]率いるFUNKADELICファンカデリック]の9thアルバム「HARDCORE JOLLIES」もそんな名盤の一つだと言えるだろう。


筆者がGeorge Clintonに興味を持った切っ掛けはPrince[プリンス]だ。


1980年代中期の筆者はPrinceに狂っていたので、彼の音楽的影響源の一つとして時々名が挙がるP-Funk[Pファンク](Parliament-Funkadelicパーラメントファンカデリック])という言葉を知り、その総帥であるGeorge Clintonに辿り着いた。


P-Funkという言葉が、George Clintonが率いるPARLIAMENTFUNKADELICという二つのプロジェクトを合わせた呼び方であることは、だいぶ後になってから知った。


今回取り上げているFUNKADELICの「HARDCORE JOLLIES」は、ファンク・バンドでドラマーをやっていた10歳くらい年上のお兄さんから借りたのだが、とにかく、このアルバムを聴いた時の衝撃はちょっと言葉で表すのが難しい。


このアルバムから聴こえてくる濃厚で、それでいて、切れのある曲を聴いた時、George ClintonがPrinceに与えた影響がクッキリと見えたのだ。


当時の筆者はPrinceの音楽は唯一無二のものだと思い込んでいたのだが、Princeのような天才ですら何らかの影響を他人から受けていることに衝撃を受けたのである。


そして、そんな天才Princeに影響を与えてしまう、これもまた天才George Clintonというミュージシャンに対し、畏怖の念を覚えたのである。

 

#0402) MOVING PICTURES / RUSH 【1981年リリース】

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RUSH[ラッシュ]というバンドを聴いてみようと思ったのは1989年だったような気がする。


記憶が確かなら、筆者は1982年から洋楽を聴き始めたており、RUSHはカナダを代表する大物ロック・バンドなので、名前だけは洋楽を聴き始めた頃から知っていたのだが、当時の日本の洋楽雑誌で紹介されることが少なかったためか、情報が少なく手の出し難い存在だった。


とにかく情報の少なかったRUSHだが、このバンドの名前は洋楽雑誌におけるミュージシャンのインタビューで「好きなアーティスト」として挙げられることが殊の外多かった。


そして、面白いなと思ったのは、殆どのミュージシャンが好きなアーティストのトップにRUSHの名を挙げるのではなく、3つ、4つと好きなアーティストの名を挙げた後に、「それからRUSHも好きだ」という具合に、「おっと、これを忘れちゃいけない」的な感じでRUSHの名を挙げるのである。


決定的にRUSHのことが気になり始めたのは、当時、SKID ROWスキッド・ロウ]のシンガーだったSebastian Bach[セバスチャン・バック]がインタビューで「RUSHが好きだ」と言っていた時であり、それが切っ掛けで購入したのが今回取り上げているRUSHの8thアルバムであり、彼らの最高傑作として名高い「MOVING PICTURES」である。


RUSHを聴いてみよう」と思い立ち、最初に聴いたのは「MOVING PICTURES」の一つ前の7thアルバム「PERMANENT WAVES」なのだが、「PERMANENT WAVES」を聴いた瞬間に筆者はRUSHのファンになり、その次に聴いた「MOVING PICTURES」で完全にRUSHに嵌った。


Geddy Lee[ゲディー・リー](vocals, bass)、Alex Lifeson[アレックス・ライフソン](guitars)、Neil Peart[ニール・パート ](drums)の3人は、いずれも達者なプレイヤーであり、彼らによって演奏される全ての曲は完璧に構築されていて、無駄や不足が一切無いのである。


筆者はラフなロックン・ロールも大好きなのだが、それと同じくらいRUSHのような美しく構築されたプログレッシヴ・ロックも大好きだ。


筆者は仕事に関しては、しばしば人から「完璧主義」と言われることがあり、自分でも何となくそれを自覚しているので、もし、筆者に音楽を創る才能があったなら、ラフなロックン・ロールではなく、RUSHのようなプログレッシヴ・ロックをやっているのではないかと思うことがある。


RUSHの曲は緻密に計算されつくしていながら、ロックとしての猛々しさや、煌びやかな美しさも合わせ持っており、彼らのような曲は余程の音楽的才能がなければ創れないはずだ。

 

#0401) L.A.M.F. / Johnny Thunders & THE HEARTBREAKERS 【1977年リリース】

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Johnny Thundersジョニー・サンダース]は新たなキャリアをスタートさせる時に必ず名盤をリリースするミュージシャンだった。


NEW YORK DOLLSニューヨーク・ドールズ]の1stアルバム「NEW YORK DOLLS」(1973年)、THE HEARTBREAKERS[ザ・ハートブレイカーズ]の1stアルバム「L.A.M.F.」(1977年)、ソロとしての1stアルバム「SO ALONE」(1978年)。


いずれもロックン・ロールの歴史に燦然と輝く名盤中の名盤であり、この3枚を聴いただけでJohnny Thundersジョニー・サンダース]というミュージシャンが稀代のソングライターであることが充分に分かるはずだ。


しかし、この人は自身の持つ稀代の才能をドラッグで潰してしまった残念な人でもある。


Johnny Thundersは1952年の生れであり、ドラッグに塗れたロックン・ロールを地で行く人生を送り、1991年にドラッグのオーバードーズにより38歳という若さで死んでしまった。


こういう死に方をしたミュージシャンには妄信的な信者が多い。


くだらないなと思う。


Johnny Thundersの価値は、「若くしてドラッグで死んだ」ことにあるのではなく、「優れた曲を沢山書いた」ことであり、それが全てだ。


筆者はドラッグに手を出すような人間は救いようの無い愚か者だと思っている。


筆者の近くには生まれながらの障碍で苦労している人がいるので、健康に産んでもらっているにも関わらず、自ら不健康になるようなことをする人はどうしても軽蔑の対象となる。


ただし、人間は誰しも過ちを犯すものなので、一度ドラッグに手を出しても、悔い改めてクリーンに戻れればそれで良いと思っている。


Johnny Thundersの場合は、彼の周りに彼のことを真剣に考えてくれる人が居なかったのかなと思うことがあり、もし、それが事実であるなら悲しいことだと思う。


冒頭に挙げた「NEW YORK DOLLS」、「L.A.M.F.」、「SO ALONE」の3枚は甲乙つけ難い名盤中の名盤だ。


しかし、どうしても1枚選ばなければならないのであれば「L.A.M.F.」かなと思う。


筆者がこのアルバムを初めて聴いたのは1984年にリリースされた「L.A.M.F. REVISITED」というオリジナルとは曲順の異なるリミックス盤なのだが、個人的には"One Track Mind"で始まるREVISITEDよりも"Born to Lose"で始まるオリジナルの方が好きだ。


L.A.M.F.」にはJohnny Thunders単独のペンによる曲だけではなく、もう一人のギタリストWalter Lure[ウォルター・ルー]や、DOLLS時代からの相棒であるドラマーのJerry Nolan[ジェリー・ノーラン]のペンによる曲も収録されているが、それも含めてこのアルバムはロックン・ロールとして完璧である。


有名な"Chinese Rocks"も収録されており、実はこの曲がJohnny Thundersではなく、Dee Dee Ramone[ディー・ディー・ラモーン]とRichard Hell[リチャード・ヘル]のペンによる曲だということは、けっこう時間が経ってから知って驚いたものだ。


ちなみにこのアルバムのアーティスト名表記がJohnny Thunders & THE HEARTBREAKERSなのか、或いは、THE HEARTBREAKERSなのか、どちらが正式なのかが未だに分からなくてモヤっとしている。

 

#0400) ELIZA DOOLITTLE / Eliza Doolittle 【2010年リリース】

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筆者は女性ミュージシャンが好きだ。


最初に好きになった女性ミュージシャンはKate Bushケイト・ブッシュ]であり、自分の中では彼女を頂点としつつ、この歳になるまで色々な女性ミュージシャンを聴いてきた。


どの女性ミュージシャンを聴いても常に感じることと言えば、これは当たり前のことかもしれないが、男である自分とは全く異なる感性で創作活動を行っているなということだ。


今回取り上げているのは、英国・ロンドン、ウェストミンスター出身、Eliza Doolittle[イライザ・ドゥーリトル]が2010年にリリースしたセルフタイトルのデビュー・アルバムだ。


先ほど「自分の中ではKate Bushが頂点」と書いたのだが、Kate Bushは1980年代後半以降、極端に寡作になってしまったので、実のところ現在ではKate Bushへの興味が薄れてしまっている。


そうすると、次から次へと登場してくる若くて生きの良い女性アーティストに興味が移ってしまうのは仕方のないことだ。


筆者の場合、女性アーティストは、先ず、容姿に興味を持ち、それが切っ掛けでそのアーティストの曲を聴いてみるケースが殆どだ。


しかし、Eliza Doolittleを知った切っ掛けは、偶然ラジオで聴いた彼女の"Skinny Genes"であり、分かり易く言えば、筆者にしては珍しく、「顔」切っ掛けではなく、「曲」切っ掛けで聴き始めた女性アーティストなのだ。


ただし、その後、彼女の容姿を見てからは曲と共に容姿のファンにもなった。


Eliza Doolittleの"Skinny Genes"を初めて聴いた時、とにかく声が素晴らしいなと思った。


声の特徴を言葉に置き換えて伝えるのは難しいのだが、彼女の声は少し低めのシルキーヴォイスであり、1960年代に活躍したモータウンの女性シンガーのような感触がある。


ただし、単なる懐古趣味なのかと言えば、そうではなく、現代っ子らしいモダンなセンスも随所に感じられるとことが良い。


惜しむらくは、Eliza Doolittleも、かなり寡作なアーティストだということであり、2010年にデビュー・アルバムをリリースして以降、この記事を書いている2021年3月現在までにリリースしているアルバムはたったの3枚だ。


世の中の人々は必死で毎日を忙しく働いているのだから、ミュージシャンも1年に1枚はアルバムをリリースして欲しいものである。