Ron Sexsmith〔ロン・セクスミス〕のメジャー・レーベルからの1stアルバムは「RON SEXSMITH」という飾り気のないタイトルだ。
それ以前にも自主制作盤やインディー・レーベルからのリリースもあるが、やはり、Ron Sexsmithの1stと言えば、この「RON SEXSMITH」だろう。
きっと、「RON SEXSMITH」というタイトルも、本人がそのつもりで付けたのではないだろうか?
このアルバムにはElvis Costello〔エルヴィス・コステロ〕が、「この先、20年は聴き続けられる」という賛辞を贈っていたこともあり、日本盤がリリースされる前から洋楽雑誌で話題になっていた。
中でもCROSSBEATでは、「ライターが選ぶ今年の名盤」的な企画で、複数のライターが「RON SEXSMITH」を選んでいたことを今でも鮮明に憶えている。
そんな話題作を筆者のような好き者が見逃す訳もなく、日本盤がリリースされると迷うことなく購入した。
巷(ちまた)で評判の話題作であっても、音楽と言うのは個人の好みなので、実際に聴いてみると「あれ?」となることも少なくない。
でも、このアルバムは、そうならなかった。
たぶん、少なくとも1ヶ月以上は毎日聴き続けたと思う。
とにかく、彼の紡ぎ出すメロディが良い。
Ron Sexsmithというソングライターは、タイプはだいぶ違うが、Paul McCartney〔ポール・マッカートニー〕やElton John〔エルトン・ジョン〕等と並ぶ20世紀の天才的なメロディ・メーカーである。
普通、これくらいメロディ作りの上手い人は、壮大なアレンジを施したりする傾向があるが、Ron Sexsmithの曲は(特に初期の曲は)、素っ気ないくらいシンプルなアレンジである。
短いイントロが終わると、実にナチュラルな声で歌い出し、彼の世界にスッと引き込まれる。
そして、歌詞がまた良いのである。
これと言った大きなドラマの無い、素朴な日常を綴った歌詞が多いのだが、そんな歌詞が聴く者の心を優しく包んでくれる。
Elvis Costelloは、「この先、20年は聴き続けられる」と言っていたが、このアルバムに出会って、もう20年以上経った。
きっと、この先も、まだまだ聴き続けるだろう。
ちなみに、筆者がこのアルバムで一番好きな曲は日本盤ボーナス・トラックの"Almost Always"である。
当然だが、この曲は輸入盤には収録されていないが、今では別のアルバム「Rarities」で聴くことが出来る。