THE VELVET UNDERGROUND〔ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド〕と言えば、今回取り上げたバナナのジャケットで有名な1stアルバム「THE VELVET UNDERGROUND & NICO」が有名だが、このアルバムは正式にはTHE VELVET UNDERGROUND & NICO〔ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ〕のアルバムである。
このアルバムは、プロデューサーであるAndy Warhol〔アンディ・ウォーホル〕からゴリ押しされる形でドイツ出身(一説ではハンガリー出身)のNico〔ニコ〕をゲストに迎えて制作されたアルバムであり、いくつかの曲でNicoがリード・ヴォーカルを取っている。
THE VELVET UNDERGROUNDのパブリック・イメージであるダークでアヴァンギャルドなイメージを鵜呑みにしている人が、この1stアルバム「THE VELVET UNDERGROUND & NICO」を聴いた場合、一曲目の"Sunday Morning"が流れた瞬間、少し戸惑うのではないだろうか?
牧歌的な雰囲気を持つ美しいメロディの"Sunday Morning"は、THE VELVET UNDERGROUNDのパブリック・イメージとは、かなりかけ離れた曲である。
このアルバムはロックをアートにまで高めた金字塔と言われている作品だが、実はけっこうメロディアスで聴き易い曲が多いのである。
確かに、時折、このバンドの本質とも言えるアヴァンギャルドな狂気が溢れる曲も出てくるのだが、メロディアスで聴き易い曲の間に挟まれていたりするので、意外なほどすんなりと聴けてしまう。
THE VELVET UNDERGROUNDというバンドのパブリック・イメージでもあるダークでアヴァンギャルドなアルバムは、実は2ndアルバム「WHITE LIGHT/WHITE HEAT」の方であり、今回取り上げた1stアルバム「THE VELVET UNDERGROUND & NICO」は、そのアーティスト名/アルバム名の通り、半分くらいNicoのアルバムなのである。
曲作りの中心を担うLou Reed〔ルー・リード〕も、Andy Warholの顔色を伺いながらNicoに寄せた曲作りを行っているように感じられる(実際にはNicoを迎える前に作っていた曲もあるのかもしれないが)。
今ではロックの名盤となっているこのアルバムは売れなかった。
アルバムがリリースされた時には既にNicoはバンドから離れていたのだが、もし、美しい容姿を持つNicoがバンドに残り、Nicoをフューチャーする形でライヴ活動を行っていたら、このアルバムはもっと売れたのではないだろうか?
そうなると、2ndアルバムはアヴァンギャルドな「WHITE LIGHT/WHITE HEAT」ではなく、もっと美しいガール・ポップ的な作品になっていたのかもしれないが、そういうアルバムも聴いてみたかったような気がする。