Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

自分のロック感を作ったアーティスト(4)Creedence Clearwater Revival

Creedence Clearwater Revival [クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル]

origin: El Cerrito, California, U.S.


Creedence Clearwater Revival [スージー・Q]

 1st studio album
 released: 1968/07
 producer Saul Zaentz, John Fogerty

  • Side one
    1. I Put a Spell on You
    2. The Working Man
    3. Susie Q
  • Side two
    1. Ninety-Nine and a Half (Won't Do)
    2. Get Down Woman
    3. Porterville
    4. Gloomy
    5. Walk on the Water

[comment]
 「デビュー・アルバムとは、こうあるべき!」と言いたくなるような、全くもって奇を衒ったところのない王道のロックン・ロールだ。
 1曲目は、スクリーミン・ジェイ・ホーキンズの名曲 "I Put a Spell on You" のカヴァーであり、CCR のアルバムの中ではカヴァー曲が多めだ。
 デビュー・アルバムだけに、次作以降と比べると粗削りなのだが、逆にそこが良かったりする。


Bayou Country [バイヲー・カントリー]

 2nd studio album
 released: 1969/01
 producer John Fogerty

  • Side one
    1. Born on the Bayou
    2. Bootleg
    3. Graveyard Train
  • Side two
    1. Good Golly, Miss Molly
    2. Penthouse Pauper
    3. Proud Mary
    4. Keep On Chooglin'

[comment]
 初期の代表曲 "Proud Mary" の存在感は大きいのだが、それ以外の曲も秀逸だ。
 デビュー・アルバムは、当時の流行を反映して、少々サイケで混沌とした感じもあったが、このアルバムは南部っぽさが前面に出ており、後のサザン・ロックに繋がるような曲が増えた。
 南部出身ではなく、カリフォルニア出身のバンドなのに、所謂ウェストコースト・サウンドらしさは殆どない。


Green River [グリーン・リヴァー]

 3rd studio album
 released: 1969/08
 producer John Fogerty

  • Side one
    1. Green River
    2. Commotion
    3. Tombstone Shadow
    4. Wrote a Song for Everyone
  • Side two
    1. Bad Moon Rising
    2. Lodi
    3. Cross-Tie Walker
    4. Sinister Purpose
    5. The Night Time Is the Right Time

[comment]
 前作よりも更に商業的成功を意識した曲作りがなされていて、CCR が単なるカリフォルニアの一バンドから、商品価値の高いバンドに昇格したことを世に知らしめたアルバムだ。
 長い曲が無くなり、最長の "Wrote a Song for Everyone" でも5分弱、大ヒット曲の "Bad Moon Rising" は2分ちょっとだ。
 ジョン・フォガティは、ブルーズやカントリーなど、米国のルーツ・ミュージックをベースにした、ポップなロックン・ロールを書くのが実に上手い。


Willy and the Poor Boys [ウィリー・アンド・ザ・プアボーイズ]

 4th studio album
 released: 1969/10
 producer John Fogerty

  • Side one
    1. Down on the Corner
    2. It Came Out of the Sky
    3. Cotton Fields
    4. Poorboy Shuffle
    5. Feelin' Blue
  • Side two
    1. Fortunate Son
    2. Don't Look Now (It Ain't You or Me)
    3. The Midnight Special
    4. Side o' the Road
    5. Effigy

[comment]
 このアルバムは、CCR を知らない人が見たら、タイトルとバンド名が逆だと勘違いしてしまうのではないだろうか?
 ロックン・ロール、ブルーズ、カントリー、更にはフォークまで、ジョン・フォガティというソングライター、ミュージシャンの幅の広さが感じられ、且つ、バランスの取れたアルバムであり、個人的には CCR を初めて聴くならこれが良いと思っている。
 2nd、3rd、そして、この 3rd は、全て1969年のリリースであり、レコード会社から急かされたのかもしれないが、素晴らしい働きっぷりで好感が持てる。


Cosmo's Factory [コスモズ・ファクトリー]

 5th studio album
 released: 1970/07
 producer John Fogerty

  • Side one
    1. Ramble Tamble
    2. Before You Accuse Me
    3. Travelin' Band
    4. Ooby Dooby
    5. Lookin' out My Back Door
    6. Run Through the Jungle
  • Side two
    1. Up Around the Bend
    2. My Baby Left Me
    3. Who'll Stop the Rain
    4. I Heard It Through the Grapevine
    5. Long as I Can See the Light

[comment]
Hanoi Rocks がカヴァーした "Up Around the Bend" が収録されており、筆者世代(2024年で50代半ば)のロック・リスナーの多くは、このアルバムから CCR を聴き始めた人が多いのではないだろうか?
 一般的に CCR の最高傑作というと、このアルバムが挙げられることが多いのだが、確かに曲の質や配置、全体を通してのテンポの良さなど全てにおいて完璧である。
 優秀なバンド・マスターが作曲/編曲し、彼の指揮の下で最高の演奏を聴かせるバンドが創り上げた理想的なロック・アルバムだ。


Pendulum [ペンデュラム]

 6th studio album
 released: 1970/12
 producer John Fogerty

  • Side one
    1. Pagan Baby
    2. Sailor's Lament
    3. Chameleon
    4. Have You Ever Seen the Rain
    5. (Wish I Could) Hideaway
  • Side two
    1. Born to Move
    2. Hey Tonight
    3. It's Just a Thought
    4. Molina
    5. Rude Awakening #2

[comment]
 本作収録の 名曲 "Have You Ever Seen the Rain" (雨を見たかい) のサビを聴いたとき、「どこかで聴いたことがある」と思ったのだが、結局どこで聴いたのかは思い出せなかった。
 鍵盤や管楽器が効果的に使われ、CCRディスコグラフィの中では最もゴージャスな印象を受けるアルバムなのだが、同時に「最後のあがき」を感じさせるアルバムでもある。
 このアルバムを最後にギターのトム・フォガティ(ジョンの兄)が脱退し、バンドの崩壊が始まる。


Mardi Gras [マルディ・グラ]

 1st live album
 released: 1972/04
 producer Doug Clifford, Stu Cook, John Fogerty

  • Side one
    1. Lookin' for a Reason
    2. Take It Like a Friend
    3. Need Someone to Hold
    4. Tearin' Up the Country
    5. Someday Never Comes
  • Side two
    1. What Are You Gonna Do
    2. Sail Away
    3. Hello Mary Lou
    4. Door to Door
    5. Sweet Hitch-Hiker

[comment]
 前作までとは大きく異なり、ステュ・クック (ba) の曲が 3、ダグ・クリフォード (dr) の曲が 2、ステュとダグの共作曲が 1 という具合に、ジョン・フォガティ以外の曲が増えている(これらの曲はリード・ヴォーカルもジョンではない)。
 最後のアルバムで民主的なバンド運営に変ったのだが、CCR らしさは薄れてしまい、蛇足のようなアルバムでもある。
 これまで短期間でアルバムを制作してきたこのバンドにしては、異例なほど前作との間隔が開いたアルバムであり、制作が難航したことを想像させられる。


~ 総括 ~

Cosmo's Factory のコメントに書いたとおり、筆者が CCR を知ったのは、大好きだった Hanoi Rocks が、5th アルバム Two Steps from the Move で、CCR の "Up Around the Bend" をカヴァーしたからである。

 このカヴァーは同アルバムの1曲目であり、インパクトが強く、とにかく滅茶苦茶カッコいい(ちなみに、日本の the Ryders というバンドも同曲をカヴァーしてるのだが、これもかなりカッコいい)。

 その後、CCR のアルバムが CD 化されたときに Cosmo's Factory を買って、オリジナルを初めて聴いたときは感動したのだが、アルバム1枚を通して聴いたときに「古いな」という印象も否めなかった。

 当時の筆者は、CCR (ジョン・フォガティ) の音楽的ルーツであるブルーズやカントリーに対し、まだそれほど興味を持っていなかったので、CCR の深い音楽性を受け入れる土台ができていなかったのだ。

 その後、ブルーズやカントリーをベースに持つサザン・ロックを掘り下げるようになり、「あっ、この泥臭さ、CCR っぽい!」と感じ、そこから改めて CCR を聴き、ド嵌りしていったのである。

CCR はカリフォルニア出身であり、南部出身ではないのだが、筆者の中では殆どサザン・ロックと同じカテゴリーに入っている。

 60年代後期~70年代初期にかけてのカリフォルニア出身のアーティストと言えば、ジム・モリソンのいた the Doorsジャニス・ジョプリンのいた Big Brother and the Holding Company、アーサー・リーのいた Love など、フロントに強烈なカリスマ性を持つアーティストの評価高い(夭折していると更に評価が上がる)。

 筆者が80年代に読んでいた洋楽雑誌『ミュージック・ライフ』でも、the Doorsジャニス・ジョプリン のレコードは「過去の名盤」として取り上げられることが多かった。

 それに比べると、CCR のレコードが取り上げられることは無かったような気がする。

 もしかすると、CCR の評価は、日本ではあまり高くないのかもしれない。

 しかし、筆者が、今でも聴く機会が多い、この時代のカリフォルニア出身のアーティストは CCR なのである。

 その理由は、筆者が一番好きなロックが「単純明快なロックン・ロール」だからだ。

CCR は、クオリティの高いロックン・ロールが担保されているので、安心して聴けるバンドなのである。

 この数か月、「自分のロック感を作ったアーティスト」と銘打って駄文を書いているのだが、「自分のロック感を作った」というくらいなので、聴いた曲の多いアーティストを取り上げるようにしている。

 これまでに取り上げた、AC/DCAerosmith も70年代にデビューし、2024年現在でも現役だ。

 前回取り上げた the Jeff Beck Group は短命だったが、ジェフ・ベックは生涯現役のギタリストだった。

 それに比べると、CCR はアルバム・デビューから解散まで、4年ちょっとのバンドだ。

 しかし、短い期間に7枚のもスタジオ・アルバムをリリースしており、そのうち、69年には3枚、70年には2枚ものアルバムをリリースしている。

 この働き者っぷりは、掛け値なしで賞賛に値する。

 アルバムといフォーマットが無価値なものになった現在では、アルバムを創る必要がなくなってしまったのだが、アルバムといフォーマットが価値を有していた 80 ~ 90 年代でも、CCR ほど働き者のアーティストは殆どいなかった。

CCR がアルバムを量産しても、その質を落とさなかったのは、言うまでもなくジョン・フォガティの才能によるところが大きい。

CCR はジョン・フォガティのワンマン・バンドと言われがちだが、実は、殆どのバンドはワンマン・バンドだったりする。

 バンド経験のある人には理解してもらい易いと思うのだが、バンドを民主的に運営するというのは難しいのである。

 一人の才能あふれる人物に、強いリーダーシップを発揮してもらい、バンドを引っ張っていってもらった方が、バンド運営は遥かに楽なのである。