一ヶ月ほど前にTHE BEATLES〔ザ・ビートルズ〕から大きな影響を受けているバンドの一つとしてTEENAGE FANCLUB〔ティーンエイジ・ファンクラブ〕を取り上げたのだが、その後少し経ってから、大切なバンドを忘れていたことを思い出した。
そのバンドはTHE SMITHEREENS〔ザ・スミザリーンズ〕であり、今回は彼らの1stアルバム「ESPECIALLY FOR YOU」を取り上げてみる。
あのBON JOVI〔ボン・ジョヴィ〕やBruce Springsteen〔ブルース・スプリングスティーン〕と同じニュージャージー出身のバンドだ。
しかし、上記した大物とは違い、はっきり言って地味なバンドである。
昨年の2017年12月にこのバンドのメイン・ソングライターだったPat DiNizio〔パット・ディニジオ〕が62歳という若さで他界したので、その追悼の意味も込めてTHE SMITHEREENSを取り上げてみたくなった。
THE SMITHEREENSは、このブログで取り上げたロック・バンドの中ではTHE HOUSEMARTINS〔ザ・ハウスマーティンズ〕と並ぶ地味な存在なのではないだろうか。
THE SMITHEREENSをご存じない方は、ぜひ、インターネットで検索してこのバンドの写真をご覧頂きたい。
なんとも言えない気の良さそうなオジサン4人組の写真を見て、多くの人は「ほっこり」とした気分になれるのではないだろうか。
Pat DiNizioは1955年生まれなので、THE SMITHEREENSがこの1stアルバム「ESPECIALLY FOR YOU」をリリースした1986年には既に31歳になっていた。
このバンドは下積みが長かったわけだ。
このバンドをどこで見つけたのか全く憶えていないのだが、それほど期待せずにこのアルバムを買ったことだけは明確に憶えている。
そんな期待値の低い状態で購入したこのアルバムの一曲目、 "Strangers When We Meet"が再生された直後、「ごめんななさい」という気分にさせられた。
何とも切なく、胸を締め付けられるような極上のメロディに完全にやられてしまったのである。
所謂パワー・ポップというジャンルに分類される音楽性だと思うのだが、パワー・ポップ系の曲調にありがちな甘くなりすぎる傾向がこのバンドには無い。
ロック・バンドとしてのエッジも残したまま、ポップだけど甘くなり過ぎないメロディとコーラス、そして、飾り気がなく切れ味のあるアレンジが絶妙なのである。
パワー・ポップというくらいなので、ポップなだけではパワー・ポップにはならない。
ロックらしいパワーがあってこそのパワー・ポップなはずだ。
THE SMITHEREENSというバンドは、正にそれを満たしたバンドなのである。
アルバム毎に音楽性を大きく変えるバンドではないので、どのアルバムから聴き始めてもTHE SMITHEREENSというバンドを楽しむことが出来るのだが、やはり1stアルバムらしい瑞々しさが溢れる「ESPECIALLY FOR YOU」から聴くことをお薦めしたい。
冒頭で、「THE BEATLESから大きな影響を受けているバンド」と書いたが、彼らの作る曲はそれほどTHE BEATLESに似ているわけではない。
このバンドはTHE BEATLESっぽいことをやりたい時は躊躇なくTHE BEATLESの曲をカヴァーしている。
それも、THE BEATLESの曲のカヴァーのみが収録されているアルバムをリリースするという潔さだ。
「MEET THE SMITHEREENS!」、「B-SIDES THE BEATLES」という2枚がそれにあたるのだが、これらのアルバムを聴くとTHE SMITHEREENSの凄さ...ではなく、THE BEATLESの凄さを改めて知ることが出来るのが面白い。
THE SMITHEREENS自身も、きっとそれが目的だったのだろう。