Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0440.12) 好きなオルタナティヴ・ロックのアルバム10選

■ 第10位

cover

title SCREAM, DRACULA, SCREAM![スクリーム、ドラキュラ、スクリーム!]
(4th album)
artist ROCKET FROM THE CRYPT[ロケット・フロム・ザ・クリプト]
released 1995年
origin San Diego, California, US
comment ROCKET FROM THE CRYPTの「SCREAM, DRACULA, SCREAM!」は、洋楽雑誌CROSSBEATの新譜レビューを見て、アルバム・カヴァーのカッコ良さに釣られて買ったアルバムだ。
 アルバム・カヴァーのカッコ良さにばかり目がいってしまい、レビューの内容は全く憶えていないのだが、高い評価を得ていたような気がする。
 筆者なりにこのアルバムを手っ取り早くレビューするなら「物凄くカッコ良いロックン・ロール」或いは「物凄くカッコ良いガレージ・パンク」だ。
 筆者はサクソフォンが好きなので、ROCKET FROM THE CRYPTのメンバーにサクソフォン奏者がいることを知って期待値が上がってしまったのだが、このアルバムはサクソフォンの音がアルバムのテンションを2倍にも3倍にも上げている。
 このアルバムで聴ける音はロックの黎明期からあるスタイルであり、新しいものなんて全く無い。
 しかし、何も考えずにロックを聴きたいときにはこういう音が一番良いような気がする。

■ 第9位

cover

title SATURATION[サチュレイション]
(4th album)
artist URGE OVERKILL[アージ・オーバーキル]
released 1993年
origin Chicago, Illinois, US
comment  URGE OVERKILLは音も見た目も実にスタイリッシュでエレガントだ。
 筆者は「聴く」だけなら曲が良ければ見た目はどうでもいいと思う方なのだが、自分でバンドを「やる」なら多くのオルタナティヴ・ロックの人達が着ているような小汚い服でステージに上がるのは嫌だ(そもそも夏ですらTシャツとジーンズだけで外に遊びにいけないタイプの人間だ)。
 URGE OVERKILLは着ている服がお洒落であり、やっている音楽もその服装にピッタリと合う都会的で洗練されたロックン・ロールなのである。
 URGE OVERKILLというバンドは、音はもちろんのこと、スリーピースというバンド構成といい、お洒落な服装といい、筆者が「やりたい」と思うバンドにかなり近い。
 彼らの曲と演奏は、ライヴハウスで盛り上がりそうな面もあるのだが、ホテルのラウンジで演奏しても映えるような気がする。
 URGE OVERKILLという、ちょっとヤバそうなバンド名も、ありがちな「THE ~S」とは一味も二味も違っていてカッコ良い。

■ 第8位

cover

title ESPECIALLY FOR YOU[エスペシャリー・フォー・ユー]
(1st album)
artist THE SMITHEREENS[ザ・スミザリーンズ]
released 1986年
origin Carteret, New Jersey, US
comment  THE SMITHEREENSの「ESPECIALLY FOR YOU」は、もう少し上位でもよかった気がするのだが、色々と順位を捻くり回していたらこの位置になってしまった。
 THE SMITHEREENSの曲はこの「ESPECIALLY FOR YOU」に限らず、どのアルバムにも筆者の耳にやたらとフィットするメロディーを持つ曲が多い。
 しかし、「ESPECIALLY FOR YOU」はデビュー・アルバムということもあり、初々しいや瑞々しさが最も溢れており、それを聴きたいがためにこのアルバムに手が伸びてしまうのだ。
 このバンドの最も大きな影響源は、やはりTHE BEATLESザ・ビートルズ]なのだろう。
 何しろ、全ての収録曲をTHE BEATLESのカヴァーだけで埋めた「MEET THE SMITHEREENS!」というタイトルのアルバムをリリースしてしまうのだから。
 更には、THE WHOザ・フー]のアルバム「TOMMY」の収録曲の殆どをカヴァーした「THE SMITHEREENS PLAY TOMMY」というタイトルのアルバムもリリースしているので、きっと60年代の英国のバンド全般が好きなのだろう。

■ 第7位

cover

title ROCK COLLECTION[ロック・コレクション]
(3rd album)
artist POND[ポンド]
released 1997年
origin Portland, Oregon, US
comment  PONDは今回取り上げている10組の中で最も知名度が低いのではないだろうか?
 確かrockin'onだったと思うのだが、PONDがこのアルバム「ROCK COLLECTION」をリリースしたときのインタビューが載っていて、それでこのバンドに興味を持つことになった。
 ただし、今となっては、そのインタビューの内容は全く記憶に無く、たぶん、彼らが影響を受けたアーティストが筆者の好みと一致したのではないかと思う。
 非常にオルタナティヴ・ロックらしいオルタナティヴ・ロックなのだが、1曲1曲がとても丁寧に作られているように感じられ、ユルっとした演奏と歌が何とも心地良い。
 何に似ているかと問われると答えるのが難しい音なのだが、あえて例えるならDINOSAUR Jr.[ダイナソーJr.]とPAVEMENTペイヴメント]とWEEZER[ウィーザ]による三角形の真ん中にいるような音だろうか?
 個人的には上記した有名な3組よりも、無名に近いPONDの方が好きだったりする。

■ 第6位

cover

title THIRD EYE[サード・アイ]
(3rd album)
artist REDD KROSS[レッド・クロス]
released 1990年
origin Hawthorne, California, US
comment REDD KROSSオルタナティヴ・ロックというよりはパワー・ポップなのだろうか?
REDD KROSSのバックグラウンド的なことは、日本では殆ど紹介されていないと思うのだが、この「THIRD EYE」というパワー・ポップの名盤を聴けばTHE BEATLESザ・ビートルズ]からの影響が大きいことは直ぐに分かる。
 そして、THE BEATLESだけではなく、T. REX[T・レックス]やDavid Bowieデヴィッド・ボウイ]等、英国のアーティストからの影響が大きいように思える。
 このアルバムは日本の殆どの洋楽雑誌で高評価を得ていたので、「これやったら間違いないやろ~」と信じて買って、「間違いがなかった」ケースである。
 今の感覚では、雑誌の評価だけを鵜呑みにして3,000円前後のお金を払うという行為は危険極まりないのだが、当時は今のような世界規模のインターネットなんて無い時代であり、アーティストの音源を視聴できるような環境が殆ど無かったので、雑誌に頼るかテレビやラジオで偶然聴くかくらいしか情報を収集する方法がなかったのである。
 とにかく、当時の筆者はこのアルバムが「大当たり」だったことが嬉しくて嬉しくて、半年くらいの間、毎日聴いていた。

■ 第5位

cover

title NEW MISERABLE EXPERIENCE[ニュー・ミゼラブル・エクスペリアンス]
(2nd album)
artist GIN BLOSSOMS[ジン・ブロッサムズ]
released 1992年
origin Tempe, Arizona, US
comment

 90年代初期の筆者はALICE IN CHAINS[アリス・イン・チェインズ]やSTONE TEMPLE PILOTS[ストーン・テンプル・パイロッツ]等のグランジ、JANE'S ADDICTION[ジェーンズ・アディクション]やFAITH NO MORE[フェイス・ノー・モア]等のファンク・メタルがお気に入りだったので、GIN BLOSSOMSの「NEW MISERABLE EXPERIENCE」を買ったときは「やってもたぁ~、えらい地味なもん買うてしもたぁ~」というのが正直な感想だった。
 と、思いつつも、当時は定額で聴き放題の音楽配信サービスなんて無い時代なので、3,000円前後のお金を払って買ったアルバムを何とか好きになろうと聴き続けるのである。
 結局どうしても「ダメ」なものもあるのだが、いつの間にか「好き」に変わるものも少なくなく、「NEW MISERABLE EXPERIENCE」は見事に「好き」に変わった1枚だったのである。
 最初は「アメリカで売れているらしいから買うてみたけど、この地味なアルバムのどこがえぇの?」という感じだったのだが、聴き続けるうちにこのアルバムの曲たちが持つ清涼感に癒されるようになり、「名盤やん!」と言うようになったのである。
 GIN BLOSSOMSはオルタナティヴ・ロックにカテゴライズされることも多いが、音楽的には上質なアメリカン・ロックであり、メインストリーム・ロックなので、これをオルタナティヴ・ロックと思わない人も多そうな気がする。
 ちなみに、人気のピークが過ぎ去った2006年にリリースした「MAJOR LODGE VICTORY」もメインストリーム・ロックの名盤である。

■ 第4位

cover

title A BOY NAMED GOO[ボーイ・ネームド・グー~グーという名の少年~]
(5th album)
artist GOO GOO DOLLS[グー・グー・ドールズ]
released 1995年
origin Buffalo, New York, US
comment

 初期のGOO GOO DOLLSはパンクやオルタナティヴ・ロックにカテゴライズされていたが、ワーナー・ブラザース・レコードと契約してリリースした4th「SUPERSTAR CAR WASH」以降の彼らはメインストリーム・ロックだと思う。
 故に「好きなオルタナティヴ・ロック~」と銘打ったこのリストに「A BOY NAMED GOO」を入れるのは迷ったのだが、とにかく大好きなアルバムなので入れないわけにはいかなかった(筆者の中ではハード・ロック/ヘヴィ・メタルハートランド・ロック以外は大体オルタナティヴ・ロックなのである)。
 このアルバムには"Name"というヒット・シングルが収録されているが、正直な感想を言うと"Name"はこのアルバムの中では地味な存在であり、もっと派手でロックの王道を行くような名曲がたくさん収録されている。
GOO GOO DOLLSの主役はJohn Rzeznik[ジョン・レズニック](vocals & guitar)であり、アルバムはJohn Rzeznikの曲と歌が中心なのだが、Robby Takac[ロビー・テイキャック](bass & guitar)の曲と歌も収録される。
 Robby Takacの曲と歌が間に挟まるとテンションが下がるという人もいるのだが、筆者は良い感じの箸休めになっているような気がしてけっこう好きだ(Robby Takac自身は箸休めのつもりではないはずなのでこんな言い方は失礼なのだが)。
 ちなみに、人気のピークが過ぎ去った2006年にリリースした「LET LOVE IN」もメインストリーム・ロックの名盤である。

■ 第3位

cover

title GRAVE DANCERS UNION[グレイヴ・ダンサーズ・ユニオン]
(6th album)
artist SOUL ASYLUM[ソウル・アサイラム
released 1992年
origin Minneapolis, Minnesota, US
comment

 A&Mレコードからリリースしたアルバムのセールスが不振だったため、解散を考えていたSOUL ASYLUMが、コロムビア・レコードと契約して放ったキャリア最高の売上を誇るアルバムがこの「GRAVE DANCERS UNION」だ。
 たぶん、オルタナ原理主義の人がこのアルバムを聴くと「セルアウトした」と感じるのではないだろうか?
 極めてメインストリーム寄りのアメリカン・ロックであり、このアルバムをオルタナティヴ・ロックと呼ぶのは少々無理があるような気がするのだが、とにかく大好きなアルバムなのでこのリストに入れないわけにはいかなかった。
 ヒット・シングル"Runaway Train"だけのアルバムだと思われているふしもあるが、このアルバムを最初から最後まで聴いてしまうと"Runaway Train"はけっこう地味な存在のような気がする。
 「セルアウトした」と言われれば確かにそうなのだが、とにかく、上質なアメリカン・ロックがギッシリと詰ったアルバムなのである。
 ちなみに、人気のピークが過ぎ去った2006年にリリースした「THE SILVER LINING」もメインストリーム・ロックの名盤である。

■ 第2位

cover

title NEW DAY RISING[ニュー・デイ・ライジング]
(3rd album)
artist HÜSKER DÜ[ハスカー・ドゥ]
released 1985年
origin Saint Paul, Minnesota, US
comment  HÜSKER DÜも、かなり好きなバンドなのだが、解散してから後追いで聴いたバンドだ。
 HÜSKER DÜのアルバムは全て好きなのだが、初めて聴いたのはこの「NEW DAY RISING」だ。
 HÜSKER DÜは、90年代以降に登場した多くのオルタナティヴ・ロック・バンドから「影響を受けた」と言われることが多いバンドなので、筆者の中では「いつかは聴かなければならない」存在だった。
 2000年代の終わり頃、当時ほぼ毎週末に行っていた京都のタワーレコードで、セール対象の商品として低価格で売られている「NEW DAY RISING」を見つけ、「今だっ!」と思って買ったのだが、1曲目の"New Day Rising"で完全にブチのめされた。
 この世には数多のオルタナティヴ・ロック・バンドが存在するが、"New Day Rising"ほどメロディックでスピーディーでカッコ良い曲を書けるバンドは、なかなか居ないのではないだろうか?
 1曲目の"New Day Rising"を聴くと、「スピードで押し切るのかな?」と思えてしまうのだが、そうではなく、曲毎に様々な変化を付けて、しっかりと聴かせてくれるところも凄いのである。

■ 第1位

cover

title LET IT BE[レット・イット・ビー]
(3rd album)
artist THE REPLACEMENTS[ザ・リプレイスメンツ]
released 1984
origin Minneapolis, Minnesota, US
comment  THE REPLACEMENTSに関しては、全てのアルバムが好きだし、全てのEPが好きだし、全てのシングルが好きだ。
 70年代の3大ロック・バンドは、AEROSMITHエアロスミス]、KISS[キッス]、QUEEN「クイーン」ということらしいのだが、1969年生れの筆者にとって、リアルタイムで接することができた80年代の3大ロック・バンドと言えば、HANOI ROCKSハノイ・ロックス]、THE DOGS D'AMOUR[ザ・ドッグス・ダムール]、そして、このTHE REPLACEMENTSなのである!
 THE REPLACEMENTS(長いので以下、THE 'MATS)の音楽性は、初期はハードコア・パンクと呼ばれ、後期はオルタナティヴ・ロックと呼ばれていたが、筆者にとってのTHE 'MATSはロックン・ロールという一言で充分なのである。
 THE 'MATSのアルバムならどれを選んでも良いのだが、今回はBob Stinson[ボブ・スティンソン](guitar)が在籍していた頃のアルバムを選びたかったので、何となく「LET IT BE」にしてみた。
 しかし、レイドバックしたアメリカン・ロックを聴かせてくれるラスト・アルバム(7th)の「ALL SHOOK DOWN」も捨て難く、今日の気持ちが少し違っていたらこちらを選んでいたかもしれない。

 それにしても、自分達のアルバムのタイトルを「LET IT BE」にするなんて、何も考えてないのか、とても勇気があるのか、どっちなんだろう?

 

「好きなオルタナティヴ・ロックのアルバム10選」ということなのだが、オルタナティヴ・ロックというのは幅が広いので選ぶのが難しかった。

筆者の中ではハード・ロック/ヘヴィ・メタルハートランド・ロック以外は大体どれも、オルタナティヴ・ロックだ。

これだけ幅が広い場合、無秩序に選ぶと訳が分からなくなるので、グランジ、ファンク・メタル、オルタナティヴ・メタル等、オルタナティヴ・ロックサブジャンル的なものは選択対象から外すことにした。

オルタナティヴ・ロックの大物と言えば、PIXIESピクシーズ]、DINOSAUR Jr.[ダイナソーJr.]、R.E.M.[アール・イー・エム]、SONIC YOUTHソニック・ユース]あたりなのだろうか?

しかし、今回、これらの大物は筆者独自のリストに入らなかった。

PIXIESDINOSAUR Jr.は好きなのだが、今回取り上げた10組ほどではない。

R.E.M.は6thアルバムの「GREEN」まではけっこう好きで聴いていたのだが、以降は何故か自然と聴かなくなった。

SONIC YOUTHは6thアルバムの「GOO」だけはリリース当時によく聴いていたのだが、他のアルバムは何枚か聴いてみたがピンとこなかった。

今回10枚選んでみて分かったのは、筆者はオルタナティヴ・ロックよりもメインストリーム・ロックの方が好きなのだということだ。

上位に入れたSOUL ASYLUMの「GRAVE DANCERS UNION」、GOO GOO DOLLSの「A BOY NAMED GOO」、GIN BLOSSOMSの「NEW MISERABLE EXPERIENCE」はオルタナティヴ・ロックにカテゴライズされてはいるが、音の方は実質的にメインストリーム・ロックだ。

いずれ、グランジ、ファンク・メタル、オルタナティヴ・メタルといった、オルタナティヴ・ロックサブジャンルからも10枚選んでみたい。