【10位】Not Fragile / Bachman–Turner Overdrive
[title]
Not Fragile [驚異のロックン・ロール・マシーン ノット・フラジャイル]
3rd album
released: 1974
[artist]
Bachman–Turner Overdrive [バックマン・ターナー・オーヴァードライヴ]
origin: Winnipeg, Manitoba, Canada
[comment]
Bachman–Turner Overdrive の音楽性にはハード・ロックの要素も含まれてはいるが、80年代以降に隆盛を極めるハード・ロック/ヘヴィ・メタルには殆ど影響を与えていないように思える。
男臭くてむさ苦しい見た目のとおり、図太くて豪快な演奏が彼らの魅力であり、カナダのバンドでありながら彼らの曲は、米国のサザン・ロックに近い。
ただし、米国のサザン・ロックとの決定的な違いもあり、それは、米国のサザン・ロック・バンドの曲は土の匂いがするのだが、メンバー全員が「元木こり」という Bachman–Turner Overdrive の曲は木の匂いがするということだ(メンバー全員が「元木こり」というのは、たぶんプロモーション用の嘘だと思う)。
【9位】Cat Scratch Fever / Ted Nugent
[title]
Cat Scratch Fever [傷だらけの野獣]
3rd album
released: 1977
[artist]
Ted Nugent [テッド・ニュージェント]
origin: Redford, Michigan, US
[comment]
Ted Nugent の曲からは多分に狩猟民族の血を感じるのだが、実際に彼は狩猟を趣味としており、我々日本人のような米(植物)を主食にしている民族にはどうあがいても真似のできないロックを演奏している。
初期の Ted のソロ・アルバムでは Derek St. Holme が歌っており、彼は後に Aerosmith のギタリスト Brad Whitford と共に Whitford/St. Holmes を結成する人なのだが、地味ではあるが良いシンガーだ。
このアルバムを聴いていると、「やっぱりロックは狩猟民族にしかできないのかな」と錯覚してしまいそうになる。
【8位】World Anthem / Frank Marino & Mahogany Rush
[title]
World Anthem [ワールド・アンセム(世界の讃美歌)]
5th album
released: 1977
[artist]
Frank Marino & Mahogany Rush [フランク・マリノとマホガニー・ラッシュ]
origin: Montreal, Quebec, Canada
[comment]
Jimi Hendrix の後継者として優等生と言えるギタリストは数多存在するが、欧州ならドイツの Uli Jon Roth (元Scorpions)、北米ならカナダの Frank Marino (元Mahogany Rush) という2人がツートップなのではないだろうか?
元Mahogany Rush と書いてしまったが、Mahogany Rush とは、即ち Frank Marino であり、特にこのアルバムは Frank Marino & Mahogany Rush 名義でリリースされているので、Frank Marino の ジミヘン愛が全開にされているアルバムだ。
Jimi Hendrix よりも先に Frank Marino を知った筆者にとっては、Frank Marino への思い入れの方が深い(それは Uli Jon Roth につていも同じだ)。
【7位】Montrose / Montrose
[title]
Montrose [ハード☆ショック!]
1st album
released: 1973
[artist]
Montrose [モントローズ]
origin: California, US
[comment]
73年リリースの 1st アルバムなので、Aerosmith の 1st と同年ということになるが、この時点での Montrose は Aerosmith に大差で勝っているではないだろうか?
Montrose 脱退後にソロや Van Halen のシンガーとして活躍する Sammy Hagar の古巣として有名なバンドだが、やはり、このバンドの主役はバンド名のとおり、超絶カッコ良いリフとソロを奏でる Ronnie Montrose のギターだ。
後に登場する Van Halen、Y&T、そして、80年年代のグラム・メタルに通じるカリフォルニアらしいカラッとした豪快なハード・ロック/ヘヴィ・メタルを演奏しており、あまり売れなかったのは時代を先取りしすぎたからかもしれない。
【6位】On Earth as It Is in Heaven / Angel
[title]
On Earth as It Is in Heaven [舞踏への誘い]
3rd album
released: 1977
[artist]
Angel [エンジェル]
origin: Washington, DC, US
[comment]
Angel は、Kiss の Gene Simmons に発掘され、マネジメントとレーベルの意向によりアイドル・バンドとして大々的に売り出されたらしいのだが、このバンドもトップに登り詰めるには至らなかった。
Gene にアルバムをプロデュースされた80年代の Black 'N Blue や Keel もそうなのだが、彼が「いっちょかみ」したバンドは、後々、窮地に追い込まれているような気がして仕方がない。
アイドル・バンドのイメージとは異なり上質のプログレ・ハードを演奏する実力派のバンドであり、リリースされたアルバムは全て高クオリティなのだが、最近はちょっとポップになったこの 3rd アルバムがお気に入りだ。
【5位】Violation / Starz
[title]
Violation [灼熱の砂漠]
2nd album
released: 1977
[artist]
Starz [スターズ]
origin: New Jersey, US
[comment]
Starz の 1st アルバム Starz [巨星] と、この 2nd アルバムは、非常によくできたアメリカン・ハード・ロックであり、どちらか1枚を選ぶのは難しいのだが、今までに聴いた回数は 2nd の方が多いような気がする。
この 2nd がリリースされた77年は、Aerosmith と Kiss が緩やかに下降線を辿り始める時期と重なっており、上手いことやれば Starz は Aerosmith と Kiss に取って代わる存在になれたように思えるのだが、そうははならかった。
これほどポテンシャルを持つバンドでもロックの世界でトップに登り詰めには、実力以外に「何らかの運が必要である」ということを思い知らされるアルバムである。
【4位】Closer to Home / Grand Funk Railroad
[title]
Closer to Home [クローサー・トゥ・ホーム]
3rd album
released: 1970
[artist]
Grand Funk Railroad [グランド・ファンク・レイルロード]
origin: Flint, Michigan, US
[comment]
Grand Funk Railroad は、筆者がロックを聴き始めの頃に早々に聴いたバンドであり、買ったアルバムは 1st On Time [グランド・ファンク・レイルロード登場] と 2nd Grand Funk [グランド・ファンク] の2枚だけなのだが、定額題配信サービスで他のアルバムを聴くようになってからは、この 3rd アルバムに嵌ってしまった。
ヘヴィな曲あり、哀愁のバラードあり、ブラック・ミュージックからの影響あり、とにかく、ロックらしいロックを聴きたいときは、このアルバムを聴けばその欲求は満たされる。
ハード・ロック黎明期の名盤であり、下で取り上げる Mountain 共に、このバンドが後世に与えた影響は大きい。
【3位】Nantucket Sleighride / Mountain
[title]
Nantucket Sleighride [ナンタケット・スレイライド]
2nd album
released: 1971
[artist]
Mountain [マウンテン]
origin: Long Island, New York, US
[comment]
Mountain も、筆者がロックを聴き始めの頃に早々に聴いたバンドであり、買ったアルバムは 1st Climbing! [勝利への登攀] だけなのだが、定額題配信サービスで他のアルバムを聴くようになってからは、この 2rd アルバムに嵌ってしまった。
聴きどころは、もちろん Leslie West のギターであり、ピッキング・ハーモニクスの美しさなのだが、バンドとしてのアンサンブルも素晴らしく、静と動のふり幅は感動的だ。
ハード・ロック黎明期の名盤であり、上で取り上げた Grand Funk Railroad 共に、このバンドが後世に与えた影響は大きい。
【2位】Rock City / Riot
[title]
Rock City [ロック・シティ ~怒りの廃墟~]
1st album
released: 1977
[artist]
Riot [ライオット]
origin: New York City, US
[comment]
Riot の曲、というよりは、このバンドのギタリスト Mark Reale の書く曲には、やたらと日本人のに琴線に触れるメロディがあり、このアルバム収録の "Warrior (幻の叫び)" が、日本の五十嵐夕紀というアイドルに "バイ・バイ・ボーイ" というタイトルでカヴァーされているのは日本のハード・ロック/ヘヴィ・メタル・マニアの間では有名な話だ。
筆者は80年年代になってから Tony Moore が超絶ハイトーンで歌うパワー・メタルの大名盤 Thundersteel で Riot を知ったので、この 1st を聴いたときは高音域を効かせない Guy Speranza の甘いヴォーカルに違和感があったのだが、今では、初期 Riot の哀愁溢れるヘヴィ・メタルには Guy の声が一番合うと感じるようになった。
70年代の米国で、最もヘヴィ・メタルらしいバンドが Riot であり、このアルバムを1位にしてもよかったと思っている。
【1位】Tyranny and Mutation / Blue Öyster Cult
[title]
Tyranny and Mutation [暴虐と変異]
2nd album
released: 1973
[artist]
Blue Öyster Cult [ブルー・オイスター・カルト]
origin: Stony Brook, Long Island, New York, US
[comment]
プロデューサーの Sandy Pearlman が Blue Öyster Cult を売り出すにあたり、「ヘヴィ・メタル」という言葉を使ったため、元祖ヘヴィ・メタル・バンドと言われることもあるが、このバンドの本質はロックン・ロールだと思う。
このアルバムはかなりロックン・ロール色が強く(特にA面)、ヘヴィ・メタルの重く金属的な質感を期待して聴くと肩透かしを喰らうのだが、ロックン・ロール、或いは、初期のハード・ロックとしては間違いなく名盤である。
大都会ニューヨーク出身という出自がそうさせているのか、このバンドの曲は無機質且つ冷ややかであり、この時期の米国のバンドとしては意外なほど土の匂いを全く感じさせないところもこのバンドの特徴だ。
総括
前回は、「好きなハード・ロック/ヘヴィ・メタル(70年代・欧州編)のアルバム10選」だったので、今回は北米編である。
筆者が70年代のハード・ロック/ヘヴィ・メタルを本格的に聴くようになったのは、Deep Purple のコピー・バンドをやっていた10歳くらい年上の知り合い(本職はホテルマン)から、50枚くらいのレコードを借りてからだ(ちなみに筆者の地元の京都はけっこうバンドマンが多い)。
「借りた」と書いたが、実際には上述の彼が、50枚くらいのレコードを入れたダンボール箱を筆者のところに持ってきて、半ば強引に貸し付けたと言った方が正確だ。
彼は、当時(80年代)、筆者が聴いていたミュージシャン(ニュー・ロマンティック、ニュー・ウェイヴ、グラム・メタル等)を、けちょんけちょんのボロカスに貶し、「そんな偽物を聴いとったらアカン、本物を聴け本物を!」と言ってダンボール箱を置いていったのだが、正直なところ余計なお世話という感じだった。
しかし、前回と今回で取り上げたアルバムの多くは、そのダンボール箱に入っていたものか、そこから知ったアーティストを掘り下げて自分で見つけたものが大半を占める。
古いアルバムだが、最近、定額配信サービスで初めて聴いて好きになったものある。
Grand Funk Railroad の Closer to Home と、Mountain の Nantucket Sleighride がそれだ。
Grand Funk Railroad は 1st と 2nd、Mountain は 1st (つまり、名盤と誉れ高いアルバム) は持っていたのだが、他のアルバムは、なかなか買うことできず、このまま聴くことがないまま人生が終わると思っていた。
ところが、定額配信サービスで気軽に聴けるようになり、Grand Funk Railroad や Mountain に留まらず、ここ数年は、なかなか買うことができなかった古いアルバムを聴きまくっている。
正直なところ、今後、新しく登場するアーティストを追いかけることも無ければ、好きになるようなことも無いと思うので、定額配信サービスで過去のアルバムを聴ければ、それで十分になってしまっている。
定額配信サービスは、筆者のような「懐メロ・ロック・リスナー」には、実にありがたいツールなのである。
【補足】
今回、Aerosmith、Kiss、Van Halen、Cheap Trick は、ビッグ・ネーム過ぎて、これらを入れるとリストに面白味が無くなるので入れなかった。
これらのバンドは、単独で「好きなアルバム5選」として取り上げようと思っている。