Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0457) 好きなサザン・ロック・アルバム10選 (70年代編)

A

Idlewild South / The Allman Brothers Band

[title]
Idlewild South [アイドルワイルド・サウス]
 2nd album
 released: 1970

[artist]
The Allman Brothers Band [ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド]
 origin: Jacksonville, Florida, U.S. → Macon, Georgia, U.S.

[comment]
 このバンドの名盤と言えば、必ずと言っていいほど71年の At Fillmore East が挙げられるのだが、これはライヴ・アルバムであり、インプロビゼーションがテンコ盛りなので最初に聴くアルバムとしては敷居が高い。
 先ずは、今回取り上げた 2nd と、1st の The Allman Brothers Band を聴き込んで、ブルースやカントリー等、米国のルーツ・ミュージックに根ざしたこのバンドの曲の良さ、そして、演奏技術の高さを知った方が良い。


B

Strikes / Blackfoot

[title]
Strikes [真紅の砦]
 3rd album
 released: 1979

[artist]
 Blackfoot [ブラックフット]
 origin: Jacksonville, Florida, U.S.

[comment]
 筆者のようなハード・ロック/ヘヴィ・メタルからロックに入った輩にとって、極めて無理なくスムーズに聴き始めることができるサザン・ロック・バンドの一つがこの Blackfoot なのではないだろうか?
 もちろん米国南部のテイストはあるのだが、このバンドの音楽性は、Led ZeppelinHumble Pie、Bad Company 等、米国のブルースに影響を受けたブリティッシュハード・ロックに近い。

High on the Hog / Black Oak Arkansas

[title]
High on the Hog [ハイ・オン・ザ・ホッグ]
 4th album
 released: 1973

[artist]
 Black Oak Arkansas [ブラック・オーク・アーカンソー]
 origin: Black Oak, Arkansas, U.S.

[comment]
 米国において、バンド初の大ヒットとなったアルバムらしいのだが、1曲目の "Swimmin' in Quicksand" はサザン・ロックというよりは濃い目のファンクであり、あまりキャッチーではないので意表を突かれる。
 前述のファンクに加え、カントリー、スウィング、ブギー等、米国のルーツ・ミュージックを1枚のアルバムにゴリ押しで詰め込んでおり、統一性は皆無なのだが何故かこのバンドの世界観に引き摺り込まれてしまう不思議な魅力がある。


C, D, E, F, G, H, I, J, K


L

Second Helping / Lynyrd Skynyrd

[title]
Second Helping [セカンド・ヘルピング]
 2nd album
 released: 1974

[artist]
Lynyrd Skynyrd [レーナード・スキナード]
 origin: Jacksonville, Florida, U.S.

[comment]
 サザン・ロックには豪放磊落なイメージがあるが、このバンドとその音楽性は正にそれを体現しており、このアルバムで聴けるトリプル・ギターを主軸に据えた豪快な演奏はサザン・ロックのイメージそのものだ。
 1st の (Pronounced 'Lěh-'nérd 'Skin-'nérd) も素晴らしいのだが、Neil Young から "Southern Man" で売られた喧嘩へのアンサー・ソング "Sweet Home Alabama" で始まるこの 2nd は格別である。


M

The Marshall Tucker Band / The Marshall Tucker Band

[title]
The Marshall Tucker Band [キャロライナの朝焼け]
 1st album
 released: 1973

[artist]
 The Marshall Tucker Band [ザ・マーシャル・タッカー・バンド]
 origin: Spartanburg, South Carolina, U.S.

[comment]
 筆者が主に聴いている音楽はロックなのだが、何故か一番好きな楽器はフルートであり、このアルバムを聴いたときに魅せられた大きな理由はフルートの音色であり、1曲目 "Take the Highway" におけるフルートのソロは圧巻だ。
 フルートと言えば、ビゼーの『アルルの女』やメンデルスゾーンの『春の歌』等、クラシックのイメージが強いのだが、このアルバムのカントリー調の曲にフルートが入ると何故か牧歌的な雰囲気が増すのである。

Molly Hatchet / Molly Hatchet

[title]
Molly Hatchet [モリー・ハチェット]
 1st album
 released: 1978

[artist]
 Molly Hatchet [モリー・ハチェット]
 origin: Jacksonville, Florida, U.S.

[comment]
 このバンドは上述の Blackfoot と並び、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルのリスナーが違和感なく聴くことができるサザン・ロック・バンドであり、土埃の匂いのするアーシーなハード・ロック・バンドとしての側面もある。
 結成は71年だが、このデビュー・アルバムは78年のリリースであり、当時のロックのトレンドだったパンク/ニュー・ウェイヴに完全に背を向けたトリプル・ギターの豪快なサザン・ロックからは漢気が感じられる。


N


O

Outlaws / Outlaws

[title]
Outlaws [戦慄のアウトローズ]
 1st album
 released: 1975

[artist]
 Outlaws [アウトローズ]
 origin: Tampa, Florida, U.S.

[comment]
 このアルバムの聴きどころは、何といっても Hughie Thomasson のストラトキャスターと Billy Jones のレスポールという、個性が真逆の二人のギタリストによるツイン・ギターのアンサンブルだ。
 Hughie Thomasson のカントリー・テイストなギターと、Billy Jones のブルージーなギターが絡むと乾いた哀愁が溢れ出し、南部のフロリダ出身でありながら、何故か西部っぽさも感じられるところが興味深い。


P, Q, R, S


T

38 Special / 38 Special

[title]
38 Special [38スペシャル]
 1st album
 released: 1977

[artist]
 38 Special [サーティエイト・スペシャル]
 origin: Jacksonville, Florida, U.S.

[comment]
 このバンドの全盛期は80年代初期であり、中でも 4th の Wild-Eyed Southern Boys と 5th の Special Forces は、70年代型のサザン・ロックを80年代仕様にアップデートしたアリーナ・ロックの名盤だ。
 この 1st は曲も素晴らしく、演奏もツイン・リード・ギター、ツイン・ドラムスという、いかにもサザン・ロックらしいサウンドで売れる要素が満載なのに、何故か大ヒットにはならなかった隠れた名盤なのである。


U, V


W

Keep On Smilin' / Wet Willie

[title]
Keep On Smilin' [キープ・オン・スマイリン]
 3rd album
 released: 1974

[artist]
 Wet Willie [ウェット・ウィリー]
 origin: Mobile, Alabama, U.S.

[comment]
 アルバム・カヴァーに使われているギターを弾く老人を見ると戦前のデルタ・ブルースっぽい音を連想してしまうのだが、実際にレコード再生してみるとそこまで古い音ではなく、そこから聴こえてくるのはR&Bだ。
 多くのサザン・ロック・バンドはブルースやカントリーをベースにしているのだが、R&Bをベースにしているバンドはレアであり、特に女性コーラスの入れ方はかなりR&Bっぽくてユニークで興味深い。


X, Y


Z

Tres Hombres / ZZ Top

[title]
Tres Hombres [トレス・オンブレス]
 3rd album
 released: 1973

[artist]
 ZZ Top [ズィー・ズィー・トップ]
 origin: Houston, Texas, U.S.

[comment]
 ZZ Top のアルバムは全て名盤なのだが、80年代からロックを聴き始めた筆者にとっては、当時のテクノロジーを取り入れて超絶ヒットを記録した 8th の Eliminator と 9th の Afterburner への思い入れが深い。
 この 3rd は当然ながら後追いで聴いたアルバムなのだが、Billy Gibbons のギュインと鳴るピッキングハーモニクスが美しく、泥臭いながらも時折感傷的なブルース・ロックが聴ける初期の名盤である。


~ 総括 ~

 ロックを聴き始めてから40年以上が経過しているのだが、50歳の手前あたりから聴くジャンルに明確な偏りが生じてきた。

 そもそも、新しいアーティストは40歳くらいから殆ど聴かなくなったのだが、50歳の手前あたりからはハード・ロック/ヘヴィ・メタル、ロックン・ロール、ハートランド・ロック、そして今回取り上げたサザン・ロックばかりを聴くようになった。

 いずれも、ロックを聴き始めた80年代に出会ったジャンルであり、どちらかと言えばメインストリームであり、コンサバティブな部類に入るジャンルだ。

 今回取り上げたサザン・ロックについては、音楽的に素晴らしいということは当然なのだが、聴き続けても全く疲れないのが良い。

 例えば、Black Sabbath は大好きなのだが、長時間に渡り聴き続けると流石に疲れてしまう。

 しかし、ZZ Top なら一日中聴いていても疲れない。

 休日の日がな一日、音楽配信サービスでサザン・ロックを聴いていると、現実の世界が危機的な状況でも、そこから逃避して仮初の平和に浸れるのだ。

 新しい音楽を受け入れられなくなった筆者のような老人ロック・リスナーにとって、サザン・ロックはとてもありがたい音楽なのである。