Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0440.12) 好きなインダストリアルのアルバム10選

■ 第10位

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title ANTICHRIST SUPERSTAR[アンチクライスト・スーパースター]
(2nd album)
artist MARILYN MANSONマリリン・マンソン
released 1996年
origin Fort Lauderdale, Florida, US
comment  米国のようなキリスト教の影響力が強い国で「ANTICHRIST SUPERSTAR」というアルバム・タイトルは、かなりヤバいのではないだろうか?
Marilyn MansonことBrian Hugh Warner[ブライアン・ヒュー・ワーナー]以前にも反キリストを掲げるアーティストはいたと思うのだが、それらに比べるとMarilyn Mansonは圧倒的に露骨で挑発的でガチなイメージがある。
 筆者は宗教や信仰に関しては全くの無関心であり、「神」や「あの世」に関しても、たぶん無いんじゃないかなと思っている。
 正直なところ、筆者にとって、MARILYN MANSONの反キリスト的な部分などに興味はなく、ただ単に優れたロック・アルバムとしての「ANTICHRIST SUPERSTAR」が好きなのだ。
 筆者にとってのMARILYN MANSONとは、かつてALICE COOPERアリス・クーパー]が生み出したショック・ロックを、インダストリアル・スタイルで90年代に蘇らせた良質なロック・バンドなのである。

■ 第9位

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title HELLBILLY DELUXE: 13 TALES OF CADAVEROUS CAVORTING INSIDE THE SPOOKSHOW INTERNATIONAL[ヒルビリー・デラックス]
(1st album)
artist Rob Zombie[ロブ・ゾンビ
released 1998年
origin Haverhill, Massachusetts, US
comment  インダストリアルというジャンルの中でも、そのパイオニアであるMINISTRY[ミニストリー]は、普段ラウド系の音楽を聴かない人にはノイジーすぎる。
 同ジャンルの頂点であるNINE INCH NAILSナイン・インチ・ネイルズ]もMINISTRYほどではないが、やはり普段ラウド系の音楽を聴かない人にはノイジーすぎるだろう。
MARILYN MANSONはノイジーな要素を多分に残しつつ、MINISTRYやNINE INCH NAILSよりもインダストリアルというジャンルを大衆化させることに成功した。
 そして、MARILYN MANSON以上にインダストリアルというジャンルを大衆化させることに成功したアーティストがRob Zombieなのではないだろうか?
 筆者の中におけるRob Zombieと、はインダストリアルというジャンルの中で最もポップなアーティストなのである。

■ 第8位

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title THE DOWNWARD SPIRAL[ザ・ダウンワード・スパイラル]
(2nd album)
artist NINE INCH NAILSナイン・インチ・ネイルズ
released 1994年
origin Cleveland, Ohio, US
comment  インダストリアルというジャンルにおいて、その頂点に位置するアーティストと言えばNINE INCH NAILSなのではないだろうか?
 筆者がNINE INCH NAILSを知った切っ掛けは、GUNS N' ROSES[ガンズ・アンド・ローゼズ]のW. Axl Rose[W・アクセル・ローズ]がNINE INCH NAILSを推していたからだ。
 ただし、1st「PRETTY HATE MACHINE」を聴いたときは「激しめのシンセポップ」という感じで、そこまで嵌らなかった。
 嵌ったのは、EP「BROKEN」でのスラッシュ・メタルにも通じる激烈なサウンドを聴いてからだ。
 そして、NINE INCH NAILSの最高傑作と言えば、この2nd「THE DOWNWARD SPIRAL」になるだろう。
 激烈でありながら、暗闇に沈んでいくようなこのサウンドこそがNINE INCH NAILSでありTrent Reznor[トレント・レズナー]なのである。

■ 第7位

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title PSALM 69: THE WAY TO SUCCEED AND THE WAY TO SUCK EGGS[ΚΕΦΑΛΗΞΘ -詩篇69-]
(5th album)
artist MINISTRY[ミニストリー
released 1992年
origin Chicago, Illinois, US
comment  インダストリアルというジャンルにおいて、その頂点に位置するアーティストがNINE INCH NAILSだとするならば、パイオニアに位置するアーティストはMINISTRYなのではないだろうか?
 この話は日本でMINISTRYを語るときに必ず出てくる話しなのだが、MINISTRYが日本のロック・ファンに大きく認知される切っ掛けとなったのはスラッシュ・メタル・バンドMEGADETHメガデス]の来日公演だ。
MEGADETHが来日公演時のSEにMINISTRYの4th「THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE」を使っていたのだ。
 筆者もMEGADETH切っ掛けで「THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE」に嵌り、次作となるこの「PSALM 69」でMINISTRYに完全にノックアウトされたクチである。
 このアルバムはエレクトロニック・ボディ・ミュージックスラッシュ・メタルの完璧な融合である。
 MINISTRYは共和党政権政党であるときに名作をリリースすると言われており、Al Jourgensen[アル・ジュールゲンセン]というミュージシャンは根っからのアンチ保守勢力なのである。

■ 第6位

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title HEAVY AS A REALLY HEAVY THING[超怒級怒濤重低爆音]
(1st album)
artist STRAPPING YOUNG LAD[ストラッピング・ヤング・ラッド]
released 1995年
origin Vancouver, British Columbia, Canada
comment  天才Steve Vaiスティーヴ・ヴァイ]に見出された男もやはり天才だった。
 STRAPPING YOUNG LADのDevin Townsend[デヴィン・タウンゼンド]が、Steve Vaiの「SEX & RELIGION」(1993年)のシンガーに抜擢されたは若干21歳のときである。
 そのDevin TownsendがSteve Vaiの元を去って立ち上げたプロジェクトがこのSTRAPPING YOUNG LADだ。
 この1stアルバムはSTRAPPING YOUNG LAD名義となっているが、ソングライティング、ギター、ヴォーカル、キーボード、プログラミング、ミキシング等々、アディショナル・ミュージシャンは使っているものの、Devin Townsendが殆ど1人で作り上げている。
 徹頭徹尾、妥協を許さない機械的なメタルサウンドを聴きたいときには持って来いの1枚でなのである。

■ 第5位

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title KILLING JOKE[黒色革命]
(1st album)
artist KILLING JOKEキリング・ジョーク
released 1980年
origin Notting Hill, London, England, UK
comment  インダストリアルの原点というのは諸説あると思うのだが、現在、我々が共有しているインダストリアルのイメージを作ったのは、英国のTHROBBING GRISTLEスロッビング・グリッスル]、CABARET VOLTAIREキャバレー・ヴォルテール]、KILLING JOKE、米国のSWANS[スワンズ]、BIG BLACK[ビッグ・ブラック]、ドイツのEINSTÜRZENDE NEUBAUTEN[アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン]あたりだろう。
 この中で筆者が最も熱心に聴いたのはKILLING JOKEだ。
KILLING JOKEは90年代以降のアルバムの方がインダストリアル的な要素が強まり、この1stアルバムも含めて80年代のアルバムはポストパンク的な要素の方が強い。
 しかし、このアルバムから聴こえてくる冷ややかでありながらもアグレッシヴな音は間違えなく、その後のインダストリアル系アーティストに多大なる影響を与えている。
 そして、このバンドのギタリストGeordie Walker[ジョーディー・ウォーカー]は、BAUHAUS[バウハウス]のDaniel Ash[ダニエル・アッシュ]、ECHO & THE BUNNYMEN[エコー&ザ・バニーメン]のWill Sergeant[ウィル・サージェント]と並ぶ、ポストパンク世代の3大ギタリストでもある。

■ 第4位

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title VIOLENT NEW BREED[ヴァイオレント・ニュー・ブリード]
(3rd album)
artist SHOTGUN MESSIAH[ショットガン・メサイア
released 1993年
origin Skövde, Sweden
comment  SHOTGUN MESSIAHは、元々はグラム・メタル・バンドだったのだが、この3rd「VIOLENT NEW BREED」では突如その音楽性をインダストリアル・メタルに路線変更した。
 90年代初期は路線変更するグラム・メタル・バンドが多かったのだが、このSHOTGUN MESSIAHの路線変更については、売れたかどうかは別にして、かなり成功したケースである。
 グラム・メタル・バンドのギタリストは、テクニックよりも雰囲気で聴かせる人が多かったのだが、このバンドのギタリストであるHarry Cody[ハリー・コーディ]は物凄いテクニシャンであり、それがこのインダストリアル・メタル路線と実によく合っているのだ。
 結局、このアルバムを最後にSHOTGUN MESSIAHは解散するのだが、その後、シンガーのTim Sköldは、KMFDMやMARILYN MANSONでベーシストやマルチ・インストゥルメンタリストとして活躍する。
 Harry Codyは、Tom Waitsトム・ウェイツ]のアルバム「REAL GONE」に参加したりしていたのだが、現在では表舞台からは退いているようだ。

■ 第3位

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title L'EAU ROUGE[ロー・ルージュ]
(2nd album)
artist THE YOUNG GODS[ザ・ヤング・ゴッズ]
released 1989年
origin Geneva, Switzerland
comment

 THE YOUNG GODSの3rdは「THE YOUNG GODS PLAY KURT WEILL」という全曲Kurt Weill[クルト・ヴァイル]のカヴァー・アルバムであり、Kurt Weillから多大な影響を受けている。
 Kurt Weillと言えば、言わずと知れたオペレッタ三文オペラ』で有名な作曲家だが、THE YOUNG GODSの音楽性にもその影響が色濃く顕れている。
 この2nd「L'EAU ROUGE」でも、オペラやミュージカルのような演劇的表現とインダストリアルが交じり合った実にユニークな楽曲を聴くことができる。
 実のところ、THE YOUNG GODSの音楽性はインダストリアルと言うよりもダーク・キャバレーと言うべきなのかもしれない。
 この2nd「L'EAU ROUGE」は、あのDavid Bowieデヴィッド・ボウイ]もその影響を公言していた名盤中の名盤である。
David Bowieは、その生涯をとおして、自分よりキャリアが上であろうが下であろうが、様々な人達からインスパイアされ続けたアーティストだ。
 Bowie自身が、その影響を租借できたかとうかは別として、彼が「良い」という音楽を聴くと、ほぼ間違いないのである。
 なお、THE YOUNG GODSは現在でも活動を続けており、2022年4月現在に最新アルバムは、2019年の「DATA MIRAGE TANGRAM」だ↓

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 初期のTHE YOUNG GODSとは全然違うのだが、アンビエントな音が心地良い名盤である。

■ 第2位

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title ANGST[アングスト]
(7th album)
artist KMFDM[ケーエムエフディーエム]
released 1993年
origin Hamburg, Germany
comment

 KMFDMは、現在でも頻繁に聴くアーティストだ。
 2022年4月現在におけるKMFDMの最新アルバムは、2019年の「PARADISE」であり↓

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 これも愛聴しているのだが、1枚取り上げるとなると、どうしても90年代のアルバムから選びたくなる。
 今、この記事を書いていて聴きたくなったのが7th「ANGST」だ。
EBM寄りのインダストリアルにメタリックなギターを絡めるのが一番上手いのは、やはりKMFDMだ。
 なにより、KMFDMの良いところは、アルバムを沢山リリースしてくれるところだ。
 1990年代には7枚、2000年代には5枚、2010年代にも5枚という、ハイペースでアルバムをリリースおり、実に働き者である。
 KMFDMの曲には激しい面もあるのだが、シンセポップ的な要素も強いので「米国型の激烈インダストリアルはちょっと...」という人でも聴けるような気がする。
 KMFDMのSascha Konietzko[サシャ・コニエツコ]は、PIG[ピッグ]ことRaymond Watts[レイモンド・ワッツ]や日本のBUCK-TICK[バクチク]のメンバーと組んでSCHWEIN[シュヴァイン]というユニットもやっているのだが、彼らのアルバム「SCHWEIN」も、かなりの名盤である。

■ 第1位

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title THE SWINING[ザ・スワイニング]
(3rd album)
artist PIG[ピッグ]
released 1993年
origin London, England, UK
comment

 PIGもKMFDMと並び、現在でも頻繁に聴くアーティストだ(PIGことRaymond WattsはKMFDMのメンバーだった時期もあった)。
 2022年4月現在におけるKMFDMの最新アルバムは、2020年の「PAIN IS GOD」であり↓

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 これも愛聴しているのだが、1枚取り上げるとなると、どうしても90年代のアルバムから選びたくなる。
 今、この記事を書いていて聴きたくなったのが3rd「THE SWINING」だ。
 本格的なインダストリアルという意味では、次作「SINSATION」以降になるだろう。
 これまでの筆者もPIGと言えば、圧倒的に「SINSATION」以降のアルバムの方が好きだったのだが、最近は初期のPIGを聴くことが増えた。
 初期のPIGはホーンやオーケストラを大袈裟に取り入れた曲が多いのだが、最近はその過剰に派手な音に嵌ってしまているのだ。
 Raymond Wattsは、日本のBUCK-TICKSOFT BALLET[ソフト・バレエ]のメンバー組んでSCHAFT[シャフト]というユニットもやっているのだが、彼らのアルバム「SWITCHBLADE」も、かなりの名盤である。
 余談だが、Raymond Wattsは、とてもハンサムなのに自らをPIGと名乗るところには少しイラっとさせられる。

 

インダストリアル・ロックとインダストリアル・メタルの境界線は曖昧だ。


インダストリアル・ミュージックと呼ばれることもあれば、単にインダストリアルと呼ばれることもある。


しかし、インダストリアル(industrial)は形容詞なので、ロック、メタル、ミュージックなどを付けなければ座りが悪い。


今回のタイトル「好きなインダストリアルのアルバム10選」というのは、我ながら変なタイトルを付けてしまったなと思うのだが、インダストリアルと付くジャンル全般だと思ってほしい。


今回選んだ10枚は、意図した訳ではないのだが、下位5組が米国出身のアーティスト、上位5組が欧州出身のアーティストになった。


今回のリストでは、

1位:PIG
2位:KMFDM
3位:THE YOUNG GODS

としたのだが、この3組は筆者にとっての不動のトップ3であり、順位はあくまでの今日の順位である。


明日には変わっている可能性もある。