インダストリアル・メタルの大御所アーティストと言えばMINISTRY〔ミニストリー〕とNINE INCH NAILS〔ナイン・インチ・ネイルズ〕である。
筆者もこの二つはかなり聴き込んだ時期があったのだが、最も好きなインダストリアル・メタルのアーティストは、今回取り上げているSTRAPPING YOUNG LAD〔ストラッピング・ヤング・ラッド〕...と言うよりはDevin Townsend〔デヴィン・タウンゼンド〕のような気がする。
Devin Townsendは色々な名義を使い分けて様々な音楽をリリースしているので、純粋なインダストリアル・メタルのアーティストではなく、彼の音楽の表現手段の一つとしてインダストリアル・メタルがあるだけなのかもしれない。
筆者は、Steve Vai〔スティーヴ・ヴァイ〕が1993年にVAIというバンド名義でリリースした「SEX & RELIGION」において、Devin Townsendがシンガーとしてデビューした時から「この人は只者ではない」と感じていた。
バンド名がVAIなので当然ながらSteve Vaiというスーパー・ギタリストのリーダー・アルバムなのだが、このVAIというバンドはベースがT. M. Stevens〔T.M.スティーヴンス〕、ドラムがTerry Bozzio〔テリー・ボジオ〕なのである。
この顔ぶれの中で、当時無名の新人だったDevin Townsendが全く物怖じすることなく歌いまくっている「SEX & RELIGION」を聴いて「只者でない」と感じない人は少ないだろう。
VAIの「SEX & RELIGION」以降、THE WILDHEARTS〔ザ・ワイルドハーツ〕のツアーにギタリストとして参加していたDevin Townsendが、STRAPPING YOUNG LAD名義でリリースしたインダストリアル・メタル・アルバムが今回取り上げている「HEAVY AS A REALLY HEAVY THING」である。
この時点でのSTRAPPING YOUNG LADはまだDevin Townsendのソロ・プロジェクトのようなものだが、当時の筆者は「待ってました」とばかりに、このアルバムに飛びつき、Devin Townsendの才能に改めて感嘆させられたのである。
このアルバムはインダストリアル・メタルなので、かなり激烈な部分もあるのだが、意外なほどキャッチーな面もあり、聴いていると不意に意表を突かれる瞬間がある。
インダストリアル・メタルというジャンルは、ともするとMINISTRYやNINE INCH NAILSのエピゴーネンに陥り易いのだが、Devin Townsendはこの開始時点において既に STRAPPING YOUNG LADとしか言いように無い音を構築している。
これ以降、様々な名義を使い分けながらDevin Townsendの名盤の乱発が開始されるのである。