米国におけるインダストリアル・ロックの歴史はMINISTRY〔ミニストリー〕によって切り開かれ、NINE INCH NAILS〔ナイン・インチ・ネイルズ〕がそれを完成させた。
視野を世界規模に切り替えれば、他にも好きなアーティストはいるのだが、米国に限定するのであれば、筆者も上記二つのアーティストがこのジャンルにおける最高峰だと思う。
そして、MINISTRYとNINE INCH NAILSに続くアーティストととなると、MARILYN MANSON〔マリリン・マンソン〕とWHITE ZOMBIE 〔ホワイト・ゾンビ〕~Rob Zombie〔ロブ・ゾンビ〕なのだろう。
Marilyn Manson とRob Zombieという稀代のエンターテイナーによって、インダストリアル・ロックは大衆性を得ることに成功した。
やがて、インダストリアル・ロックはインダストリアル・メタルと呼ばれるようにもなるのだが、とにかくこのジャンルにおいては上記4アーティストの存在が大きすぎた。
そんな中、デス・メタルやグルーヴ・メタル等、当時の新しいメタルのスタイルを取り入れたインダストリアル・メタルを構築し、上記4バンド以降の最重要インダストリアル・メタル・バンドとなったのが今回取り上げているFEAR FACTORY〔フィア・ファクトリー〕であり、彼らの存在を世に知らしめた1枚が、今回取り上げている2ndアルバムの「DEMANUFACTURE」だ。
実のところ、FEAR FACTORYはインダストリアル・メタルと呼ぶには機械的感触が薄い。
しかし、デス・メタルと呼ぶにはクリーン・ヴォイスの割合が高く、グルーヴ・メタルと呼べるほどグルーヴィーではなく、そもそもデス・メタルやグルーヴ・メタルと呼ぶには機械的感触が強い。
このように、FEAR FACTORYとは、極めて絶妙なバランスで成り立っているバンドなのである。
例えば「ラウドな音楽は好きなんだけど、MINISTRYやNINE INCH NAILSみたいな機械モンはちょっと...」いう人でもFEAR FACTORYなら抵抗なく聴けるのではないだろうか?
「全部人間が演奏しないとダメ」とか「打ち込み使うのはけしからん」と言うのであれば仕方がないが、FEAR FACTORYはかなりバンド感の強いインダストリアル・メタル・バンドであり、筆者もFEAR FACTORYを聴く時はMINISTRYやNINE INCH NAILSとは違う気持ちで聴いている。
このアルバム以降、FEAR FACTORYはスペース・ロック的な要素を強めながら、よりキャッチーな方向に舵を切っていくことになる。