筆者は1990年代後半あたりからロックを積極的に聴かなくなったのだが、それでもインダストリアル・ロックやインダストリアル・メタルに関してはけっこう聴いていたような気がする。
他のジャンルのロックは聴かなくなりつつある中、何故インダストリアル・ロックやインダストリアル・メタルだけは積極的に聴いていたのかその理由は自分でもよく分からない。
確かに、インダストリアル・ロックやインダストリアル・メタルのようなデジタル・ビートとスラッシーなギターの組み合わせは生理的に好きなのだが、他のジャンルを圧倒するほど好きかと訊かれるとそれほどでもない。
ここまで「インダストリアル・ロックやインダストリアル・メタル」という具合に長々と書いているが、この二つのジャンルに違いはあるのだろうか?
たぶん、ハード・ロックとヘヴィ・メタルのような明確な違いはないような気がする。
今回はそんなインダストリアル・ロック/インダストリアル・メタル・バンドであるGRAVITY KILLS〔グラヴィティー・キルズ〕の1stアルバム「GRAVITY KILLS」を取り上げている。
このアルバムを簡単に解説するならNINE INCH NAILS〔ナイン・インチ・ネイルズ〕のポップなフォロワーということになる。
ただし、そこら辺に転がっているような有象無象のフォロワーではなく、かなり優秀なフォロワーである。
NINE INCH NAILSのキャッチーな部分と激烈な部分を巧みに拾い上げ、そこに独自のセンスを加えて非常にメロディアスなインダストリアル・メタルに昇華させている。
殆どの収録曲が4分前後の長さに仕上げられていてラジオ向きなのも計算尽くのことなのではないだろうか?
もし、計算尽くのことであったとしても、不思議とあざとさ感じさせないところも良い。
今日はインダストリアル・メタルを聴きたいけど、NINE INCH NAILS やMINISTRY〔ミニストリー〕では少々重たすぎるなという時に聴きたくなるのがこの「GRAVITY KILLS」なのである。
インダストリアル・ロックやインダストリアル・メタルというジャンルはだいぶ影が薄くなってしまったような気もするが、このジャンルを初めて聴く人にお薦めするにも最適なアルバムだと言える。