時代が1990年代という新たなディケイドを迎えた頃、まるで1970年代初頭を思わせるサザン・ロックを引っ提げて登場したのがTHE BLACK CROWES〔ザ・ブラック・クロウズ〕である。
THE BLACK CROWESのアルバムは全て好きなのだが、今回取り上げている1stアルバム「SHAKE YOUR MONEY MAKER」には殊の外深い思い入れがある。
実を言うと、最初にこのアルバムを洋楽雑誌の新譜レビューで見た時は、「THE BLACK CROWES ?」、「黒烏?」、「烏が黒いんは当たり前やん、だっさいバンド名やなぁ」と思っていた。
そして、メンバーのヴィジュアルを見て、1980年代末期にレコード会社によって青田買いされたGUNS N' ROSES〔ガンズ・アンド・ローゼズ〕のフォロワーだと勝手に思い込んでいたのだ。
本当に1980年代末期の米国にはGUNSフォロワーがゴロゴロと転がっていたのである。
筆者はGUNS N' ROSESも大好きだし、GUNS風の「メタル+パンク+ほどよくアーシー」な音を聴かせてくれるGUNSフォロワーも喜んで聴いていた。
しかし、時代が1990年代を迎える頃になると、流石に食傷気味になってきていたのである。
それ故、THE BLACK CROWESのことは「遅れてきたGUNSフォロワー」だという思いこみで誤解していたため、完全にノーマークだったのである。
ところが、ある日、テレビの洋楽番組で"Jealous Again"のミュージック・ヴィデオを見て、「えっ?全然GUNSフォロワーちゃうやん、本格派のサザン・ロック・バンドやでこれは」という具合に、このバンドの本質に気付いて遅ればせながら「SHAKE YOUR MONEY MAKER」を買いに走ることになったわけである。
1980年代にもTHE GEORGIA SATELLITES〔ザ・ジョージア・サテライツ〕という素晴らしいサザン・ロック・バンドがいたが、彼らの場合は遅咲きだったので、デビューした1986年にはメンバーの年齢が30代になっていた。
ところがTHE BLACK CROWESの場合は筆者と同世代であり(Rich Robinson〔リッチ・ロビンソン〕は筆者と同い年)、デビューした1990年でのメンバーの年齢は20代前半から半ばくらいだ。
今でも「SHAKE YOUR MONEY MAKER」は結構な頻度で聴くアルバムなのだが、聴く度に1970年代さながらのサザン・ロックを演奏している(当時の)若い彼らに尊敬と憧憬の念を抱くのである。
ただし、バンド名だけは素人時代に使っていたMR. CROWE'S GARDEN〔ミスター・クロウズ・ガーデン〕の方がカッコ良いと思っている。