3年近く前になるのだが「1980年代の英国で最も歌の上手いヴォーカリストの候補はPaul Young〔ポール・ヤング〕だ」という記事を書いた時に、その先輩格にあたる1970年代の英国のヴォーカリストにつても触れている。
その記事の中で、筆者にとって、1970年代における三大ヴォーカリストは、FREE〔フリー〕~BAD COMPANY〔バッド・カンパニー〕のPaul Rodgers〔ポール・ロジャース〕、SMALL FACES〔スモール・フェイセス〕~HUMBLE PIE〔ハンブル・パイ〕のSteve Marriott〔スティーヴ・マリオット〕、THE JEFF BECK GROUP〔ザ・ジェフ・ベック・グループ〕~FACES〔フェイセズ〕のRod Stewart〔ロッド・スチュワート〕であると書いた。
とにかく、この3人は技術、声量、表現力の全てが完璧であり、そもそも地声が良い。
何となく筆者の中では、Paul Rodgersは安定の上手さ、Steve Marriottはド迫力の上手さ、そして、今回取り上げているRod Stewartは問答無用の上手さ、というイメージがある。
あの神の如きギタリストのJeff Beckがインストゥルメンタルに傾倒した原因は、一説によるとRod Stewartに匹敵するヴォーカリストを見つけられなかったからだと言われている。
Rod Stewartを聴いた後に(或いはPaul RodgersやSteve Marriottを聴いた後に)、Mick Jagger〔ミック・ジャガー〕やDavid Bowie〔デヴィッド・ボウイ〕等、同時代の他の人気ヴォーカリスト/シンガーの歌を聴くと、あまりのスキルの違いに愕然とすることがある(ちなみに筆者はMick JaggerやDavid Bowieも大好きなミュージシャンなのだが、彼らの魅力については歌のスキル云々で語れるものではないと思っている)。
今回はRod Stewartを取り上げているのでアルバムも1枚取り上げるわけだが、これはもう迷うことなく6thアルバムの「ATLANTIC CROSSING」にすることをこの記事を書く前から決めていた。
「ATLANTIC CROSSING」は中学生の頃に読んでいたMUSIC LIFEの「過去の名盤特集」的な記事で知り、筆者が初めて買ったRod Stewartのアルバムだ。
「ATLANTIC CROSSING(大西洋横断)」というタイトルのせいか、アメリカナイズされた作品だと批評されることの多いアルバムだが、確かに米国でレコーディングされ、多くの米国のスタジオ・ミュージシャンが制作に関わっているので、そのような面もあるのだが、英国人ヴォーカリストとしてのRod Stewartの魅力が十分に感じられるアルバムだ。
ちなみに、この問答無用に歌の上手いRod Stewartが「英国に俺の次に歌の上手い奴がいる」と言ったのがPaul Youngなのである。