今回取り上げているMcAlmont〔マッカルモント〕というシンガーを知った切っ掛けは、McAlmont がSUEDE〔スウェード〕を脱退したギタリストのBernard Butler〔バーナード・バトラー〕とMcAlmont & Butler〔マッカルモント&バトラー〕を結成し、1995年に1stアルバム「THE SOUND OF... McALMONT & BUTLER」リリースした時だ。
筆者は1990年代初期のある一時期だけだが、聴くことの出来る英国出身の若手ロック・アーティストがSUEDEとMANIC STREET PREACHERS〔マニック・ストリート・プリーチャーズ〕だけになってしまったことがある。
1990年前後に登場した英国のロック・アーティストは、そこら辺にいる学生のような素人っぽい人が多かった。
「これからはオーディエンスが主役の時代だ」と言ったのは、その時代における英国ロックのカリスマたるTHE STONE ROSES〔ザ・ストーン・ローゼズ〕らしいが、もしかするとその言葉の影響があるのかもしれない。
筆者は、THE STONE ROSESの1stアルバム「THE STONE ROSES」は大好きだったし、今でも「THE STONE ROSES」はロックの歴史に燦然と輝く名盤だと思っているのだが、上記の「オーディエンスが主役」という言葉を洋楽雑誌で読んだ時は「そんなアホなことがあるかっ!」と思ったものである。
そんな素人っぽい人たちで賑わっていた1990年前後の英国ロック界にあって、ロック・スターとしての覚悟を感じさせてくれるアーティストがSUEDEとMANICSだけだったのである。
そのSUEDE のギタリストだったBernard Butler が組む相手なら間違いないはずだと信じて買ったMcAlmont & Butlerの「THE SOUND OF... McALMONT & BUTLER」が掛け値なしの大名盤だったので、後追いで買ったのが今回取り上げているMcAlmontの1stソロ・アルバム「McALMONT」なのだが、こちらもまた掛け値なしの大名盤なのである。
このアルバムは元々McAlmontがマルチ・インストゥルメンタリストのSaul Freeman〔ソウル・フリーマン〕と結成していたTHIEVES〔シーヴス〕というユニットから発展し、McAlmontのソロ・アルバムという体裁でリリースされたものらしい。
筆者は美しいファルセットが聴きたくなったら、このアルバムを聴くことにしている。
とにかく、このアルバムを聴いてMcAlmontのファルセットに溺れたいのだ。
特にシングルとしてもリリースされた"Either"と"Unworthy"が醸し出す多幸感は聴く者を確実に昇天させる名曲であり、美しきポップ・ミュージックのお手本のようなアルバムなのである。