【14位】Mexican R'n'B / The Stairs
[title]
Mexican R'n'B
1st album
released: 1992
[artist]
The Stairs (ザ・ステアーズ)
origin: Liverpool, England, UK
[comment]
60年代の The Rolling Stones[ザ・ローリング・ストーンズ]のレコードを、そのまま再現したようなこのデビュー・アルバムを手放しで評価するのは躊躇われる。
しかし、それを差し置いてでも、一度聴いてしまったら繰り返し聴かずにはいられないほど、このアルバムに収められている曲は素晴らしいのである。
そして、このアルバム・カヴァーに、このアルバム・タイトル!これを見て興味を持つなという方が土対無理な話なのではないだろうか?
【13位】Ferment / Catherine Wheel
[title]
Ferment
1st album
released: 1992
[artist]
Catherine Wheel (キャサリン・ホイール)
origin: Great Yarmouth, England, UK
[comment]
所謂シューゲイザーの中では、My Bloody Valentine[マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン]や Ride[ライド]のような人気者よりも、Catherine Wheel の方が好きだと言うと「おまえはアホか?」と思われるのかもしれない(と言うか、筆者はシューゲイザーへの思入れが殆どない)。
シューゲイザーというムーヴメントには、稽古が足りず基礎体力が出来ていないのに試合に出てきたようなバンドが多かった。
Catherine Wheel はシューゲイザー独特のヘナチョコ感は薄く、Dinosaur Jr.[ダイナソー・ジュニア]や Mudhoney[マッドハニー]あたりの米国産オルタナティヴ・ロックに近いと言うと褒めすぎだろうか?
【12位】Pigeonhole / New Fast Automatic Daffodils
[title]
Pigeonhole
1st album
released: 1990
[artist]
New Fast Automatic Daffodils (ニュー・ファスト・オートマティック・ダフォディルズ)
origin: Manchester, England, UK
[comment]
マッドチェスターやダンス・ロックの名盤と言えば、The Stone Roses[ザ・ストーン・ローゼズ]の The Stone Roses、Primal Scream[プライマル・スクリーム]の Screamadelica あたりを選ぶのが妥当なのだろう。
もちろん、筆者にとってもその2枚は名盤であり、かなりの回数を聴いているのだが、一番聴いた回数が多いのは、たぶん The Soup Dragons[ザ・スープ・ドラゴンズ]の Hotwired と、この New Fast Automatic Daffodils の 1stアルバムだと思う(The Soup Dragons は80年代のデビューなので今回のリストには入れなかった)。
このアルバムの硬質なビートはマッドチェスターらしくないのだが、この時期、安易に The Stone Roses のフォロワーに陥らなかったのは凄いことなのではないだろうか?
【11位】New Wave / The Auteurs
[title]
New Wave
1st album
released: 1993
[artist]
The Auteurs (ジ・オトゥールズ)
origin: London, England, UK
[comment]
ブリットポップの勃興期にリリースされたアルバムだが、大衆向けの弾けるような感じが全く無い、ブリットポップとは正反対のアルバムだ。
このアルバムの曲は、美しく柔らかい印象を与えながらも、その根底にはどこか寒々としたニヒリズムが隠されているような気がする。
アルバム・タイトルの New Wave とは、80年代初期に英国で興ったロックのムーヴメントではなく、1950年代にフランスで興った映画運動である Nouvelle Vague[ヌーヴェル・ヴァーグ]から取っているとのことだが、この音はどう聴いても英国産ニュー・ウェイヴの後継である。
【10位】Tindersticks / Tindersticks
[title]
Tindersticks
1st album
released: 1993
[artist]
Tindersticks (ティンダースティックス)
origin: Nottingham, England, UK
[comment]
前出の The Auteurs も暗いのだが、この Tindersticks も絶望的に暗い。
「世間はブリットポップで楽しく盛り上がっているのに、なんでこんな暗い曲を書くんですか?」と問いたくなるほど暗いのだが、それを好んで聴いていた筆者も実は暗い人間なのかもしれない。
一番近い音を例えとして挙げるなら、Lou Reed[ルー・リード]の Berlin が近いと思うのだが、米国人らしいロックン・ローラー気質も合わせ持つ Lou Reed とは違い、Tindersticks の暗さには欧州の歴史的な闇を感じさせる哀愁さがある。
【9位】The Golden Mile / My Life Story
[title]
The Golden Mile
2nd album
released: 1997
[artist]
My Life Story (マイ・ライフ・ストーリー)
origin: London, England, UK
[comment]
90年代におけるバロック・ポップ/チェンバー・ポップの双頭と言えば、The Divine Comedy[ザ・ディヴァイン・コメディ]と、この My Life Story だ(The Divine Comedyは前回の「好きなアイリッシュ・ロック(90年代)のアルバム5選」で取り上げた)。
My Life Story の曲は結末の予測できるベタベタのメロドラマのようであり、この世界観に入り込めるか否かは、かなりの個人差が出てしまうと思う。
筆者はロックやポップ・ミュージックに対し、real よりも imaginary を求めるタイプなので、My Life Story が描くこの世界観は大歓迎なのである。
【8位】The Sun Is Often Out / Longpigs
[title]
The Sun Is Often Out
1st album
released: 1996
[artist]
Longpigs (ロングピッグス)
origin: Sheffield, England, UK
[comment]
Longpigs について語るときに必ず引き合いに出されるのが Radiohead[レディオヘッド]なのだが(そういう筆者も引き合いに出している)、個人的にはRadioheadよりもLongpigsの方が好みだ。
確かに、Pablo Honey ~ The Bends 期の Radiohead から影響を受けてそうな音なのだが、シンガーの声質がかなり違うので、それほど似ているとは感じない。
Radiohead の Thom Yorke[トム・ヨーク]よりも、Longpigs の Crispin Hunt[クリスピン・ハント]の方が正統派のロック・シンガーに近くて男らしい感じだ。
【7位】Hope Is Important / Idlewild
[title]
Hope Is Important
1st album
released: 1998
[artist]
Idlewild (アイドルワイルド)
origin: Edinburgh, Scotland, UK
[comment]
このアルバムの1曲目 "You've Lost Your Way" を聴いたときはハードコア・パンク・バンドかと思った。
このバンドも、ヘナチョコなバンドが多かった90年代のUKロック・シーンにおいては、異端といってもいいくらいの荒々しさと猛々しさと持ったバンドである。
このバンドを評価するときは、度々「米国のグランジ/オルタナティヴ・ロックに近い」と言われることがあり、確かにそれも一理あるのだが、このメロディ・センスは、やはりどう聴いても英国を感じさせる音なのである。
【6位】Northern Uproar / Northern Uproar
[title]
Northern Uproar
1st album
released: 1996
[artist]
Northern Uproar (ノーザン・アップロアー)
origin: Stockport, England, UK
[comment]
このアルバムに興味を持った切っ掛けは、Manic Street Preachers[マニック・ストリート・プリーチャーズ]の James Dean Bradfield[ジェームス・ディーン・ブラッドフィールド]がプロデュースしているという、ただそれだけの理由だった。
正直なところ全く期待していなかったのだが、このアルバムの骨太で逞しいロック・サウンドは秀逸であり、一聴してすぐに好きになってしまった。
90年代のUKロック・シーンはヘナチョコなバンドが多かったのだが、Northern Uproar はそんなシーンとは真逆のパワフルなバンドだった。
【5位】The Big 3 / 60ft Dolls
[title]
The Big 3
2nd album
released: 1996
[artist]
60ft Dolls (シックスティ・フット・ドールズ)
origin: Newport, Wales, UK
[comment]
筆者は本能的にというくらい3ピース・バンドが好きなのだが、この 60ft Dolls もウェールズから登場した3ピース・バンドであり、自ら「The Big 3」と言ってしまう厚かましいセンスが好きだ(こういうのは大抵の場合、自分から言うのではなく、人が言ってくれるものである)。
このバンドも前出の Northern Uproar に負けつ劣らずパワフルなバンドであり、3ピースのお手本のようなロックン・ロール・バンドだ。
もし、自分が演者側であるなら「このバンドの曲をライヴで演奏してみたい!」と思わせる、そんな名曲がギッシリと詰っているアルバムだ。
【4位】Olympian / Gene
[title]
Olympian
1st album
released: 1995
[artist]
Gene (ジーン)
origin: London, England, UK
[comment]
1stアルバムとしては「出来過ぎ」と言って良いくらい、実によく出来たロック・アルバムである。
ブリットポップ期に登場したバンドだが、当時の他のブリットポップ・バンドのような瑞々しさは皆無であり、老成した大人の魅力を感じさせてくれるバンドだった。
常に The Smiths[ザ・スミス]に似ていると言われ続けたバンドだったが、Martin Rossiter[マーティン・ロッシター]の歌方が Morrissey[モリッシー]に似ているくらいで、ギターの音やリズムの組み立て方は The Smiths とは全く異なる。
曲調は繊細でありながらもパワフルであり、ロマンティシズム溢れる捨て曲無しの名盤である。
【3位】The Program / Marion
[title]
The Program
2nd album
released: 1998
[artist]
Marion (マリオン)
origin: Macclesfield, England, UK
[comment]
マックルズフィールドというマンチェスター近郊の街の出身ながら、マッドチェスターっぽさは皆無であり、実に潔さを感じさせるロック・バンドである。
一般的には 1st の This World and Body 方が評価が高く、元 The Smiths[ザ・スミス]の Johnny Marr[ジョニー・マー]がプロデュースしたこの 2nd をリリースした頃には、既にこのバンドへの興味が失われつつあった。
しかし、そんな一般的な評価はどうでもよく、筆者にとって、このアルバムは90年代UKロックを代表する名盤なのである。
実に真っ直ぐで且つロマンティックなロック・アルバムであり、人によってはこれを「コンサバ」と言うかもしれないが、ロックの本質とは、やはり王道であり正統派なのである。
【2位】Attack of the Grey Lantern / Mansun
[title]
Attack of the Grey Lantern
1st album
released: 1997
[artist]
Mansun (マンサン)
origin: Chester, England, UK
[comment]
Mansun は活動期間中にリリースした全てのアルバムが名盤だと思うのだが、この 1st を聴いたときのインパクトは物凄かった。
それは、デビュー作ながら素人っぽさが皆無であり、プロとしての意識の高さを感じさせてくれるクオリティだったからである。
90年代のUKロック・シーンは素人っぽいバンドやヘナチョコなバンドが多かったのだが、前出の Gene、Marion、そしてこの Mansun を聴いて、いよいよ Suede[スウェード]や Manic Street Preachers[マニック・ストリート・プリーチャーズ]に匹敵するプロらしいバンドが出てきたなと感じたものである。
そして、このバンドの曲も、Gene や Marion と同様に、重要な要素となっているのがロマンティシズムなのである。
【1位】Fake / Adorable
[title]
Fake
2nd album
released: 1994
[artist]
Adorable (アドラブル)
origin: Coventry, England, UK
[comment]
初期の Adorable はシューゲイザーの一派として紹介されており、正直なところシューゲイザーの軟弱なイメージに好感を持っていなかった筆者はこのバンドへの興味を持てないでいた。
しかし、その後、徐々に Suede[スウェード]あたりに通じるネオ・グラム的な紹介もされるようになり、俄然興味が湧いて買った 1st の Against Perfection が素晴らしい名盤だったのである。
このバンドは、1stシングル "Sunshine Smile" リリース時の評価が最も高く、1stアルバムのリリース時には徐々に興味が失われつつあり、今回取り上げた 2ndアルバムのリリース時には既に興味を失われていた。
しかし、筆者にとってはこの 2nd が Adorable の最高傑作であり、シングルにもなった狂おしいほどのカタルシスを感じさせる名曲 "Vendetta" を聴いたときの感動は今も忘れていない。
Ian McCulloch[イアン・マッカロク]が歌う The House of Love[ザ・ハウス・オブ・ラヴ]と揶揄されることもあったが、それは誉め言葉として受け止めるべきである。
~ 総括 ~
今回は「好きなUKロック(90年代・中堅編)のアルバム14選」ということで選んだので、Suede[スウェード]、Manic Street Preachers[マニック・ストリート・プリーチャーズ]、Ocean Colour Scene[オーシャン・カラー・シーン]、Supergrass[スーパーグラス]、Stereophonics[ステレオフォニックス]、Kula Shaker[クーラ・シェイカー]あたりの大物感のあるバンドは入れなかった。
UKロックと題しているが、前回「好きなアイリッシュ・ロック(90年代)のアルバム5選」を書いているので、北アイルランドは入れず、イングランド、スコットランド、ウェールズのみを入れた。
メタル系やスリージー・ロックン・ロール系は別の機会に取り上げたいので入れなかった(入れると収拾がつかなくなるので)。