米国におけるインダストリアル・メタルは1980年代中期にMINISTRY〔ミニストリー〕が開拓者となり、1980年代後期から1990年代初期にかけてNINE INCH NAILS〔ナイン・インチ・ネイルズ〕が確立させた後、MARILYN MANSON〔マリリン・マンソン〕、WHITE ZOMBIE〔ホワイト・ゾンビ〕~Rob Zombie〔ロブ・ゾンビ〕によって大衆化された。
MINISTRYとNINE INCH NAILSはインダストリアル・ロックと呼ばれる場合もあり、インダストリアル・ロックとインダストリアル・メタルの境界線は極めて曖昧なのだが、私見ではインダストリアル・ロックの中でもスラッシーなギター・リフが強調されている音楽がインダストリアル・メタルなのではないかと考えている。
このインダストリアル・メタルの特徴とも言える「打ち込みによるリズム」と「スラッシーなギター・リフ」の組み合わせに対し、筆者は本能的に反応してしまう体質のようであり、1990年代中期頃はFEAR FACTORY〔フィア・ファクトリー〕、FILTER〔フィルター〕、GRAVITY KILLS〔グラヴィティー・キルズ〕、そして、今回取り上げているSTABBING WESTWARD〔スタッビング・ウエストワード〕を積極的に聴いていた。
STABBING WESTWARDは4枚のアルバムをリリースして2002年に解散し、その後、2016年に再結成して2020年の現在も活動を続けており、アルバムはリリースしていないがEPをリリースしている。
インダストリアル・メタルは音楽性に幅を持たせるのが難しい音楽だと思うのだが、それに加えて先行するMINISTRY、NINE INCH NAILS、MARILYN MANSON、WHITE ZOMBIE~Rob Zombieあたりの存在が大きすぎて生き残るのが難しいのかもしれない。
STABBING WESTWARDは、今回取り上げている1stアルバム「UNGOD」はインダストリアル・メタルらしい作風なのだが、アルバムのリリースを重ねる毎にインダストリアル・メタルから離れてゆき、4thアルバム「STABBING WESTWARD」ではメロディアスな歌物ロックへの変貌を果たした。
4thアルバム「STABBING WESTWARD」で聴ける流麗なメロディも捨てがたいのだが、やはり、筆者としてはSTABBING WESTWARDのインダストリアル・メタル・バンドらしいハードな部分が最も詰まった1stアルバム「UNGOD」を推したい。
「インダストリアル・メタル・バンドらしいハードな部分」と書いてはみたが、実はこのバンドは1stアルバム「UNGOD」の時点でかなりメロディアスな傾向がある。
例えて言うならDEPECHE MODE〔デペッシュ・モード〕をメタル化させたような音であり、1980年代初期の英国に多く居たニュー・ウェイヴ系バンドが好きな人にも聴いてもらえるバンドなのではないかと思う。