THE BAND〔ザ・バンド〕は、活動拠点を米国に置きながらも、メンバーはカナダ人が4人と米国人が1人という構成であり、「~出身」という表現が難しいバンドだ。
筆者が洋楽を聴き始めたのは1980年代初期なのだが、当時、毎月欠かさず購入していた洋楽雑誌のMUSIC LIFEには時々「過去の名盤特集」的な記事が載ることがあった。
そんな記事で必ず取り上げられるのがTHE BANDの1stアルバム「MUSIC FROM BIG PINK」か2ndアルバム「THE BAND」なのである。
洋楽ロックのファンというのは同時代のアーティストを一通り聴いた後、大抵の場合は「過去の名盤」に手を出し始めると思うのだが、そんな時に参考になるのが上記の「過去の名盤特集」的な記事なのである。
そういう訳で、今回取り上げるTHE BANDの1stアルバム「MUSIC FROM BIG PINK」は、筆者がかなり若い時(16~17歳頃)に聴いた「過去の名盤」であり、ロックの歴史においては既に古典である。
このアルバムは、筆者自身のロック人生において、#0195で取り上げたGRATEFUL DEAD〔グレイトフル・デッド〕の「AMERICAN BEAUTY」と並び、最初期に聴いた米国のルーツ・ミュージックに根差したロックだと言える。
ロックを齧り始めた頃の筆者は、英国のニュー・ウェイヴ(特に第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン勢)や米国のグラム・メタルを中心に聴いていた。
これらのアーティストの作品は、今でも好きでよく聴いているものも多数あるのだが、彼ら音楽的ルーツの多くは1960年代以降である場合が多く、それは即ちTHE BEATLES〔ザ・ビートルズ〕以降とも言える。
それに対し、THE BANDが「MUSIC FROM BIG PINK」で鳴らしているロックの音楽的ルーツは、ロック誕生以前の米国のルーツ・ミュージックなのである。
このアルバムを初めて聴いた時のインパクトは凄いものがあり、THE BANDが奏でる音楽の「深み」に恍惚となったことを今でもはっきりと憶えている。
当時の筆者はブルースやカントリーを既に聴き始めていたのだが、それをこれほど巧みにロックに取り入れているアーティストを聴いたのはTHE BANDが初めてであり、ロックでこういうことが出来るということに驚いたのである。
そして、THE BANDの音楽と同じくらい、THE BANDという極めてシンプルなバンド名も好きだ。