一番好きなギタリストは?と問われると、答えるのはかなり難しい。
ロックン・ロール系ならJohnny Thunders〔ジョニー・サンダース〕やAndy McCoy〔アンディ・マッコイ〕は外したくない。
ハード・ロックならMichael Schenker〔マイケル・シェンカー〕、ブルース系ならJeff Healey〔ジェフ・ヒーリー〕、技巧派ならAl Pitrelli〔アル・ピトレリ〕等々、好きなギタリストを列挙していくときりが無い。
これが、一番好きなピアニストは?となると、すぐに答えることができる。
もちろん、他にも好きなピアニストはいるが、一番となると、Monk一択になる。
そもそもジャズを聴き始めたきっかけは、ある地方都市に長期出張していた頃に、住んでいたアパートと勤務先の間に在るジャズ喫茶へ出入りするようになってからである。
なので、ジャズとの出会いは大人になってからであり、その後も本格的なジャズ・リスナーになった訳でもない。
上記のジャズ喫茶には、ほぼ毎週末毎に行っていて、行く度にそこのマスターはジャズの名盤を筆者に教えてくれた。
ある晩、「これは好き嫌いがはっきり分かれるんだけどね」と言って聴かせてくれたのが、今回取り上げた「THELONIOUS HIMSELF」だった。
店内のレコード・プレイヤーで再生された音を聴き進むにつれ、それまで自分が持っていた音楽に対する常識が壊れていくのが解かった。
「こんなものをよくレコードにして出したな」というのが最初の感想だった。
Monkを語るときによく言われることなのだが、最初に聴いたときは、真面目に弾いているのか、ふざけて弾いているのか、よく解らなかった。
未だにどちらなのかよく解らない。
よく解らないのだが、初めて聴いたときからMonkのピアノが、そして「THELONIOUS HIMSELF」というアルバムが好きなことは、ずっと変わっていない。
このアルバムにも収録されている"'Round Midnight"をはじめ、多くのジャズの名曲の作曲者としの一面も持つMonkだが、"'Round Midnight"なんかは作曲者であるMonkの演奏が一番この曲の持つイメージからかけ離れているのではないだろうか?
長年、音楽を聴いてきた筆者だが、自分の持つ音楽への常識を完全に壊してくれたアーティストは、Monkより後にはまだ出会っていない。