ロック史におけるギタリストの最高峰はJimi Hendrix〔ジミ・ヘンドリックス〕であり、それはこの先どんなギタリストが登場しても変わることがないだろう。
Jimi Hendrixが不動の最高峰である理由は、27歳という若さでこの世を去ったというくだらない理由ではなく、あれほどエモーショナルなギターを弾きながらソウルフルに歌える人が稀有だからである。
そして、Jimi Hendrixの次に来るギタリストとなると、Jeff Beck〔ジェフ・ベック〕、Jimmy Page〔ジミー・ペイジ〕、Eric Clapton〔エリック・クラプトン〕という3大ギタリストになる。
この3人はギタリストとしての個性が違い過ぎるので比較するのが難しいのだが、あえてトップを選ぶなら、それはJeff Beckということになるだろう。
Jeff Beckの凄さというのは自分が興味を魅かれた音楽に対して果敢に挑戦を続けながら、それを自分の血肉にしていくところだ。
今回取り上げている「BLOW BY BLOW」は、次作「WIRED」と並び、Jeff Beckが最もフュージョンに傾倒していた時期のアルバムとして有名だ。
「BLOW BY BLOW」は筆者がロックを聴き始めた頃(中1)に出会ったアルバムなのだが、初めて聴いた時の衝撃は今も忘れられない。
このアルバムはロックに詳しい知り合いの大学生から「これを聴かずしてロックを語るな」と言って渡された1枚なのだが、当時の筆者はヴォーカルの無いインストゥルメンタル・ロックを聴いたのは初めてだったので、そこに先ず大きな衝撃を受けたのである。
そして、ヴォーカル無しでアルバム1枚を聴かせてしまう(というかこのアルバムにヴォーカルは不要である)Jeff Beckのギタリストとしての凄さにノックアウトされたのである。
Jeff Beckは1980年代中期からフィンガー・ピッキングに移行しており、近年の演奏で聴ける人差し指を使った高速なオルタネイト・ピッキングも素晴らしいのだが、「BLOW BY BLOW」や次作「WIRED」で聴けるピック弾きによるフュージョン全開の演奏もまた格別だ。
なお、Jeff Beckは時を経て1999年の「WHO ELSE!」と2001年の「YOU HAD IT COMING」でエレクトロニカに挑むのだが、これが非常に素晴らしく、エレクトロニカのフォーマットだけを借りたアーティストとは次元の違う作品を届けてくれた。
Jeff Beckとは、修行僧の如くギターの可能性を追求する孤高の存在なのである。