今回取り上げているアルバムは、アイルランド出身のギタリスト、Bernie Tormé[バーニー・トーメ]の「ELECTRIC GYPSIES」というアルバムなのだが、実質的にはELECTRIC GYPSIES[エレクトリック・ジプシーズ]というバンドのアルバムだ。
Bernie Torméと言えば、DEEP PURPLEのシンガーだったIan Gillan[イアン・ギラン]のバンド、GILLAN[ギラン]の2ndアルバム「MR. UNIVERSE」(1979年リリース)でギタリストとしてロック・シーンに登場し、その後は急逝したRandy Rhoads[ランディ・ローズ]の代役としてOzzy Osbourne[オジー・オズボーン]のツアーをサポートして名を馳せたというイメージが強い。
当時は若手ギタリストというイメージがあったのだが、調べてみたところ、この人は1952年生れであり、「MR. UNIVERSE」に参加した時は既に27歳なので若手と言えるほど若くはない。
同じ1952年生れの弦楽器系のミュージシャンとしては、KISS[キッス]のPaul Stanley[ポール・スタンレー]、AEROSMITH[エアロスミス]のBrad Whitford[ブラッド・ウィットフォード]、Gary Moore[ゲイリー・ムーア]、THE ONLY ONES[ジ・オンリー・ワンズ]のPeter Perrett[ピーター・ペレット]、FREE[フリー]のAndy Fraser[アンディ・フレイザー]、NEW YORK DOLLS[ニューヨーク・ドールズ]のJohnny Thunders[ジョニー・サンダース]、RAMONES[ラモーンズ]のDee Dee Ramone[ディー・ディー・ラモーン]等がいるのだが、何故かBernie Torméはこの人達よりも一世代くらい若いイメージがあった。
さて、今回取り上げている「ELECTRIC GYPSIES」だが、Bernie Torméで1枚選ぶなら、筆者は迷わずこのアルバムを挙げる。
この人特有の「弦、切れるでぇ」と思わせるほどの荒っぽいギターが見事に生かされているという点において、スタジオ盤ではこのアルバムが一番なのである。
ELECTRIC GYPSIESというバンド名は、たぶんJimi Hendrix[ジミ・ヘンドリックス]の「ELECTRIC LADYLAND」と「BAND OF GYPSYS」から取っていると思うのだが、ストラトキャスター&マーシャルアンプでギャンギャンに弾きまくるというスタイルからしてもBernie Torméがジミヘン・フリークであることは間違いないだろう。
この人は、Ozzy Osbourneのバンドに残っていたら(実際に残って欲しいと言われていた)、たぶんもっと有名になれたはずだし、経済的にも安定したと思うのだが、それを蹴って自分のソロとしてのキャリアを優先させた。
筆者なら絶対にOzzyのバンドを選ぶのだが、アーティスト(芸術家)の生き方というのは、なかなか凡人には理解できないものである。