Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0077) REIGN IN BLOOD / SLAYER 【1986年リリース】

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前回取り上げたのはRufus Wainwrightルーファス・ウェインライト〕、今回取り上げるのはSLAYER〔スレイヤー〕。


自分でも自分の音楽の趣味が判らなくなるくらい節操が無くて恥ずかしい。


こんな無節操な書き方をしていたら両アーティストのファンからお叱りを受けそうだが、幸か不幸かそれほど読まれていないブログなので好き勝手に書かせてもらうことにする。


初めて買ったスラッシュ・メタルのレコードはMETALLICAメタリカ〕の3rdアルバム「MASTER OF PUPPETS」と、今回取り上げるSLAYER〔スレイヤー〕の3rdアルバム「REIGN IN BLOOD」だった。


今でこそ両アルバム共に愛聴盤になっているが、買った直後は圧倒的に「REIGN IN BLOOD」を聴く回数の方が多かった。


「MASTER OF PUPPETS」はアルバム冒頭の2曲の勢いは凄まじいのだが、3曲目以降は抒情的な曲もあり、それらの曲の良さが解るまでは聴いていて少々だるく感じることがあった。


対して、「REIGN IN BLOOD」はどこを切ってもスラッシュ・メタルだと言い切れる高速チューンだけでアルバム1枚を駆け抜ける。


「REIGN IN BLOOD」を聴いて何も感じなかったり、或いは、嫌悪感を覚えたりするのであればスラッシュ・メタルを聴く必要は無いし、そういう人はそもそもラウド・ミュージック自体が不要な人なのだろう。


高速チューンと書いたが、今(2018年現在)ではSLAYERより速い曲をやるバンドなんていくらでもいるはずだ。


筆者も速いと言われているバンドをいくつか聴いてはみたが、速い曲が聴きたくなった時、結局のところ筆者は今でもこのアルバムを再生してしまう。


このアルバムの魅力が速さであることはもちろんなのだが、もう一つの魅力は全てを破壊しつくすようなそのBrutality(残忍さ)だろう。


暴力なんて本当にやってしまったら犯罪になってしまう馬鹿げた行為だ。


しかし、人間も生きている以上、ムシャクシャする時はある。


そんな時、若い頃の筆者は、暗い部屋に閉じこもって、このアルバムをヘッドフォンで聴きながらひたすら瞑想していた。


我ながら気色の悪い少年だったなと思う。

 

#0076) RUFUS WAINWRIGHT / Rufus Wainwright 【1998年リリース】

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Rufus Wainwrightルーファス・ウェインライト〕が今回取り上げた彼の1stアルバム「RUFUS WAINWRIGHT」でデビューした頃、Loudon Wainwright III〔ラウドン・ウェインライトIII〕の息子という紹介のされ方をしていたが、筆者はLoudon Wainwright IIIというシンガー・ソングライターのことは全く知らなかった。


故に、父親の方を先に知っていたJulian Lennonジュリアン・レノン〕(John Lennonジョン・レノン〕の息子)やJeff Buckleyジェフ・バックリィ〕(Tim Buckley〔ティム・バックリィ〕の息子)が登場した時とは受け止め方が違っていて、二世ミュージシャンというよりも、父親の面影の無い新人シンガー・ソングライターのデビューとして受け止めた記憶がある。


このアルバムがリリースされても暫くの間は全く興味が無かった。


このアルバムがリリースされた1998年頃の筆者はロックへの興味が薄らいでいたからだ(Rufus Wainwrightの音楽をロックにカテゴライズ出来るかどうかは微妙だが)。


ある日、地元のデパートの中に入っているCDショップに立ち寄ったところ、このアルバムがディスプレイされていて、更に試聴も出来るようになっていたので聴いてみたところ、ちょっと平常心を保っていられないほど驚いた。


アルバム冒頭の"Foolish Love"を聴いただけではあったが、これはもう間違いないと確信して反射的にレジに持って行き購入である。


それから暫くの間はこのアルバムだけを聴き続けた。


全ての曲が素晴らしいのはもちろんだが、アルバムとしての構成も完璧である。


豊潤で演劇的で、ゆったりとした時の流れの中で揺蕩う(たゆたう)ような彼の歌は、もうそれを聴かずにはいられないほど、当時の筆者はこのアルバムに取り憑かれたのである。


何となく近い感触を挙げるなら"Tennessee Waltz (テネシー・ワルツ)"だろうか?


ニューヨークで生まれ、カナダで幼少期を過ごしたRufus Wainwrightにとって、テネシーは全く縁の無い場所なのだろうが、"Tennessee Waltz"が放つ「失った愛への儚い想い」の様な感触を筆者は彼の音楽から感じ取った。


音楽の愛好家にとって、他人の評価は関係なく、自分にとって完璧と呼べるアルバムが何枚かあると思うのだが、筆者にとってこのアルバムは正にその一枚なのである。

 

#0075) SECOND HELPING / LYNYRD SKYNYRD 【1974年リリース】

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筆者が10代の頃、回り居た(主にバイト先の)歳上世代のロック・ファンがほぼ共通して好きだったバンドが、DEEP PURPLE〔ディープ・パープル〕、RAINBOW〔レインボー〕、ZZ TOP〔ジージー・トップ〕、そして、LYNYRD SKYNYRDレーナード・スキナード〕だった。


どう言う訳か、同じハード・ロックでもLED ZEPPELINレッド・ツェッペリン〕は苦手でDEEP PURPLEとRAINBOWは大好き、同じサザン・ロックでもTHE ALLMAN BROTHERS BAND〔ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド〕は苦手でZZ TOPとLYNYRD SKYNYRDは大好き、という構造までもが判で押したように共通していた。


彼らの影響で筆者も1970年代のハード・ロックやサザン・ロックを聴くようになったのだが、上記のバンドのレコードを聴いて納得した。


確かにLED ZEPPELINTHE ALLMAN BROTHERS BANDが高度な音楽性を持っていることは判るのだが、ロックを聴き始めたばかりの耳には少々難解に聴こえる曲も少なくない。


筆者もLED ZEPPELINTHE ALLMAN BROTHERS BANDの良さが解るまで結構な時間を要した。


それに比べてDEEP PURPLEやRAINBOW、ZZ TOPやLYNYRD SKYNYRDはロックを聴き始めたばかりの耳にもすんなり入ってくる解りやすさがある。


これらのバンドの曲は初めて聴いた時からノリノリで聴けるのである。


今日はその中からLYNYRD SKYNYRDの2ndアルバム「SECOND HELPING」を取り上げてみる。


このアルバムを初めて聴いたのは1980年代の後半で、その時の印象は「パンク・テイストを取り払ったGUNS N' ROSES〔ガンズ・アンド・ローゼズ〕」だった。


GUNS N' ROSESのミニ・アルバム「G N' R LIES」に収録されたいた一連のアコースティック・ソングに近いテイストを感じたのである。


LYNYRD SKYNYRD の曲は米国南部のルーツ・ミュージックをその根源に持ってはいるものの、ダイナミックで且つストレートなアレンジがハード・ロック的であり、1980年代のハード・ロックを聴いて育った筆者の耳にも何の違和感もなく入ってきた。


収録曲の全てがコンパクトなところもロック初心者には解りやすくて良い。


サザン・ロックと言えば確かにその通りなのだが、筆者はこのアルバムを聴く時は、サザン・テイストのあるハード・ロックとして楽しむことにしている。

 

#0074) PROTECTION / MASSIVE ATTACK 【1994年リリース】

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今回取り上げるのはMASSIVE ATTACKマッシヴ・アタック〕の2ndアルバム「PROTECTION」。


筆者が初めて聴いたMASSIVE ATTACKのアルバムだ。


音楽シーンに与えた衝撃や影響の大きさでは1stアルバム「BLUE LINES」の方が上だろう。


また、世界規模での成功の大きさでは3rdアルバム「MEZZANINE」の方が上のはずである。


しかし、どんなアーティストの場合でも共通することなのだが、自分が最初に聴いたそのアーティストのアルバムへの思い入れは深くなる傾向がある。


筆者の場合、「PROTECTION」が初めて聴いたMASSIVE ATTACKのアルバムだった。


このアルバムがリリースされたのは1994年なのだが、その頃から筆者はじわじわとロックへの興味を失いつつあった。


1995年にリリースされたGoldie〔ゴールディー〕の「TIMELESS」でエレクトロニック・ミュージックに衝撃を受け、これを切っ掛けにして筆者は暫く間ロックをそれほど頻繁に聴かなくなったのだが、もっとエレクトロニック・ミュージックを聴きたくて辿り着いた一枚がMASSIVE ATTACKの「PROTECTION」だった。


MASSIVE ATTACKに端を発するトリップ・ホップというジャンルについては、何となく音楽雑誌で目にしていたのだが(ただし、MASSIVE ATTACK自身はトリップ・ホップと呼ばれることを嫌っている)、所謂ヒップ・ホップのサブジャンルである以上、メロディを楽しむための音楽では無いと思い込んでいた。


しかし、実際に「PROTECTION」を聴いて驚いたのは、予想を超えたそのメロディアスなヴォーカルだった。


確かにバック・トラックはサンプリングを駆使したヒップ・ホップのそれなのだが、様々なゲスト・シンガーによって歌われているメロディアスなヴォーカルが印象的で、完璧に歌物として成立しているのだ。


この手法を更に極端に発展させたのがユニット内に専任のシンガーを据えたPORTISHEAD〔ポーティスヘッド〕なのだろう。


MASSIVE ATTACKについて語られる時は、彼らの造り上げたその音楽の革新性故に色々と難しい話が着いて回ることも多い。


しかし、筆者がMASSIVE ATTACKの「PROTECTION」を聴く時に最も聴きたいのは、彼らの紡ぎだす極上のメロディなのである。

 

#0073) STRENGTH IN NUMBERS / 24-7 SPYZ 【1992年リリース】

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先週、#0071でTHE SEERSの「PSYCH OUT」を取り上げたときに、「永年に渡り聴いている大好きなバンドであるにも関わらずTHE SEERSというバンドの素性が殆ど判らない」という旨の文を書いたが、今回取り上げる24-7 SPYZ〔トゥエンティ・フォー・セヴン・スパイズ〕もTHE SEERS同様に素性が判らないバンドである。


24-7 SPYZを知ったのは洋楽雑誌CROSSBEATのディスクレビューだった。


ロックとは、或いは、ロックン・ロールとは、そのルーツを辿るとChuck Berryチャック・ベリー〕やLittle Richard〔リトル・リチャード〕等、黒人がブルースやR&Bをアップデートして創り出した音楽でる。


それがいつの間にか白人中心の音楽になってしまい、時代が1980年代にもなると黒人とロックが結び付きにくくなっていた。


そんなシーンに風穴を開けたバンドがLIVING COLOUR〔リヴィング・カラー〕であり、彼らのような黒人による新しいロックをもっと聴きたいと思っていた矢先に見つけたのが24-7 SPYZだった。


CROSSBEATのディスクレビューで24-7 SPYZの2ndアルバム「GUMBO MILLENNIUM」を見つけて早速購入したところ、これが大当たり(もしかすると、1stアルバムの「HARDER THAN YOU」たっだかもしれないが、古すぎる記憶なのでうろ覚えだ)。


ただし、その後、このバンドに関する情報がほぼゼロのまま3年近い時間が経過し、忘れた頃に突然これもまた音楽雑誌(この時もCROSSBEATだったように記憶している)のディスクレビューで見つけたのが今回取り上げた3rdアルバムの「STRENGTH IN NUMBERS」だった。


ファンクもメタルもパンクもレゲエも、その全てをゴッタ煮にしたような時にクールで時にファニーなそのサウンドは健在だったが、シンガーが変わった影響なのか、前作よりも本格的なロックに近づけた音になっていて、それが筆者のようなガチガチのロック・リスナーにとっては更に受け入れやすい内容になっていた。


LIVING COLOURと比較ばかりするのは良くないのかもしれないが、曲によってはLIVING COLOURよりもキャッチーでポップな面もあり、大衆性は24-7 SPYZの方が上のような気もする。


ただし、このバンド、けっこう頻繁にメンバー・チェンジを繰り返すので、リスナーにとってはバンドとしての魅力を見出しにくいのかもしれない。


更に、このバンド、どういう訳かメディアに殆ど取り上げられてこなかった。


米国での状況は判らないが、少なくとも日本ではこのバンドの名前を見たのは洋楽雑誌のディスクレビューくらいだ。


LIVING COLOURの1stアルバム「VIVID」のリリースが1988年、24-7 SPYZの1stアルバム「HARDER THAN YOU」のリリースが1989年なので、ほぼ同期と言える二組である。


それにも関わらず、LIVING COLOURの大きな取り上げられ方に比べ、24-7 SPYZの扱いはあまりにも小さい。


これは、Mick Jaggerミック・ジャガー〕にプッシュされたバンド(LIVING COLOUR)と、そうではないバンド(24-7 SPYZ)の違いなのだろうか?