今回取り上げるのはMASSIVE ATTACK〔マッシヴ・アタック〕の2ndアルバム「PROTECTION」。
筆者が初めて聴いたMASSIVE ATTACKのアルバムだ。
音楽シーンに与えた衝撃や影響の大きさでは1stアルバム「BLUE LINES」の方が上だろう。
また、世界規模での成功の大きさでは3rdアルバム「MEZZANINE」の方が上のはずである。
しかし、どんなアーティストの場合でも共通することなのだが、自分が最初に聴いたそのアーティストのアルバムへの思い入れは深くなる傾向がある。
筆者の場合、「PROTECTION」が初めて聴いたMASSIVE ATTACKのアルバムだった。
このアルバムがリリースされたのは1994年なのだが、その頃から筆者はじわじわとロックへの興味を失いつつあった。
1995年にリリースされたGoldie〔ゴールディー〕の「TIMELESS」でエレクトロニック・ミュージックに衝撃を受け、これを切っ掛けにして筆者は暫く間ロックをそれほど頻繁に聴かなくなったのだが、もっとエレクトロニック・ミュージックを聴きたくて辿り着いた一枚がMASSIVE ATTACKの「PROTECTION」だった。
MASSIVE ATTACKに端を発するトリップ・ホップというジャンルについては、何となく音楽雑誌で目にしていたのだが(ただし、MASSIVE ATTACK自身はトリップ・ホップと呼ばれることを嫌っている)、所謂ヒップ・ホップのサブジャンルである以上、メロディを楽しむための音楽では無いと思い込んでいた。
しかし、実際に「PROTECTION」を聴いて驚いたのは、予想を超えたそのメロディアスなヴォーカルだった。
確かにバック・トラックはサンプリングを駆使したヒップ・ホップのそれなのだが、様々なゲスト・シンガーによって歌われているメロディアスなヴォーカルが印象的で、完璧に歌物として成立しているのだ。
この手法を更に極端に発展させたのがユニット内に専任のシンガーを据えたPORTISHEAD〔ポーティスヘッド〕なのだろう。
MASSIVE ATTACKについて語られる時は、彼らの造り上げたその音楽の革新性故に色々と難しい話が着いて回ることも多い。
しかし、筆者がMASSIVE ATTACKの「PROTECTION」を聴く時に最も聴きたいのは、彼らの紡ぎだす極上のメロディなのである。